32発目 信じられないモノが目の前に現れた時、君ならどうする?落ちついていられる?
さて、突然だがハーレム系作品について色々考えるとしよう。
その一:女にモテてヤり放題。
そのニ:どんなに出会いが無いやつでも、作品の主人公にしてもらえばそれによる補正で自動的に良い子ちゃんポジションにしてもらって困り事になりにくい。
その三:色んな個性ある女と出会って、ジワジワと自分の人脈と支配圏を広げていく。異世界モノで主人公はその方法ばっかで勇者というより魔王的な存在になりがち。
その四:たくさんの女がいるってことは、その数だけ女心を理解していないと痛い目に遭う。
その五:倫理観無視してエロエロ展開ばっか出てくる。
「「それ全部お前の将来に当てはまるんじゃね?」」
と、教室の屋上で寝そべりながら語る俺にツッコむ剛と剣。
あ、ちなみにもう学校も夏シーズン入ってるから俺たち学ラン着てないぞ~。ただの半袖カッターシャツだから~。
「黙れ!いいか重機関車。剣はともかく、お前だってこの条件に入るかもしんないんだぞ?前回メイド喫茶でリンちゃんとLUME交換、バッチリしたんだろ?」
「ま、まあな」
「え?何それ」と初耳な剣。
「いや、実は渡辺からバイト先のメイド喫茶に来ないかって誘われてな。で行ってみると受付の子に突然指名志願にLUME交換をせがまれて・・・・」
「そのメイドちゃん、剛の筋肉がちょうど好みのタイプだったってよ~」
「筋肉が好き・・・・肉好き・・・肉食・・・肉食系女子・・・・っは!ビッチ!!」
「そのネタはもうやったっての!」
そんな俺たち男子のやり取りを眺める女子陣は。
「そっか。ギラも腹をくくったか」と奈々。
「まあアイラちゃんとシオリちゃんに関しては悩んで当然のことだけどね・・・・・」とエリ。
「何にせよ、全員がギラとお付き合いできるってことになって良かったよ」とヒナ。
「それにしても、またみんなで“ご一緒”できると良いわよね~♥」と広子。
「「「「ね~♥」」」」
全員が彼女に賛同した。
どうやら“あの夜”がどうしても忘れられないようだ。
そして女子たちも薄着の半袖セーラー服を着ている。
うっひょ~目の保養だ~。
「ねえみんな。そういえば私、一番大事なこと忘れてたんだけど・・・」と唯。
「大事なことって?」と好華。
「みんな、ギラとデートってしたことってあるの?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
デート。
それは、男女が休日に2人で出かける約束をして、食事をしたり買い物をしたりすること。また、お互いの気持ちは確認済みで、もっとよく知り合うことを目的にすることでも言える。
彼女らの場合、一部お互いをよく知り合うよりも前に肉体関係を結んでしまっている。
唯に諭されて奈々、広子、実央、クレアがくわっと衝撃の顔をし、
「「「「大事なイベントすっぽかしてエンド迎えちゃってるじゃん!!」」」」
と、膝からガクッと落ちて四つん這いになった。
「私は小学校時代に何度かあるけどね」とエリ。
「私は任務中に一度だけ、ギラはアーマー付きだったけど・・・・」と巴。
「私も」とヒナ。
「あたしも」と好華。
「まずい。これじゃあたしたち、体だけの関係だなんて・・・!ただの肉食系女子、ビッチじゃねえか!!」
「いや、もっと悪く言えば痴女じゃん!!」
「「「「二人は元から痴女じゃん」」」」
と、慌てふためく唯と奈々にだけ冷たいツッコミを送る巴たち。
「でも今からでも遅くないわ! さっそく誘っちゃお!!」と息巻く広子。
「「「おう!!」」」
「いや待て、ダメに決まってるだろ」
そこへずっと彼女たちの会話を聞いていた俺が止めに入る。
「でもよギラ!これは大事なことなんだ。普通の女子は男をオとす為にまずデートに誘うのが先なんだぞ?こんな関係から始まってるなら尚更だ!」
「普通の女子どころか、俺たちみんなすでに歪な存在だろが。それにデートイベントはまだ先の話になる」
「「「「ええー!何でー?」」」」
「おいギラ。断ることはないだろ?ハーレムハーレムって言ってるならちゃんとデートに付き合えよ」
「そうだそうだ!俺なんかもうすでに克江と3回もデートに・・・・」
その先は俺たちによるリア充死ねコール&ストンピングでバキッボコッとかき消された。
「お前らも十分リア充だろが!!」
「デート自体が問題じゃない。お前ら2週間後は期末テストだってことすっかり忘れてるだろ」
「「「「あ」」」」
ほーらやっぱり忘れてた。
「期末をちゃんとクリアしなけりゃ、中間で剛がやらかしたように補習でムフフな夏休みが削れちゃうぞ?」
「「「ムフフな夏休み・・・・」」」
唯たちがそう呟いて何を想像しているのかは手に取るようにわかる。
時も場所も変わって、杉田ガレージにて。
「「「お願いします!!義四先生!!どうかご指導を!!」」」
テストに自信がない唯と奈々、そしてクレアが土下座をしていた。例によって眼鏡と白衣に身を包み広子を椅子にしている俺に向かって。
「お前なぁ・・・・、少しは自重しろよ」
「もうこれは止められない。それよりお前だって今度こそ補習回避しないと」
「って言われてもよ~、俺には目的がないからいまいちやる気が出ないっつーか・・・・」
と頭を掻きながら言う剛。
「学生としてはあるまじき発言だぞそれ。わーったよ、なら夏休みにブリテン連れてってやるから、そうすればお前も」
「よろしくお願いします!!」
剛の手の平返しの図は、それはそれは見事なスライディング土下座であった。
買収完了っと。餌はもちろん、アンナだ。
「どうも~、勉強会やるって?」
「おう来たかペティ。それじゃ、みんな行くとするかー」
「あれ?ここでするんじゃないの?」
前回の勉強会ではたしかにここで行ったが、
「今回はそれを兼ねて紹介したい相手がいるからな」
「「「「まさか・・・・この期に及んでまだハーレム要員を?」」」」
「はっはっは~、よーしお前ら~今夜は寝かせてあげないコース一直線だ~」
今回の勉強会、ギラは誰かを紹介したいらしい。
一応聞いたが、お父さんである大介さんの知り合いだそうだ。
で、ギラの家から歩くこと15分、目的地にたどり着いたと思ったら。
そこは重みのある和装の豪邸だった。
門のところには『亜弁組』と書かれた看板が。
敷地内に入ると、中庭のにはヤクザっぽい強面男たちが目をぎらつかせてズラリと並んでいた。
私や奈々、剛、剣、克江ちゃん、巴は以前の熊堂会の経験もあって思わず臨戦態勢に入っていた。
実央とクレアは私たちにつられて身構えていた。
「待て待てお前ら。ここへは戦いに来たんじゃないぞ?大物ちゃん抑えて~。能力も解除、銃も出すな。クレア、まさかもうシュワーベン呼んじゃった?」
すると、彼女の後ろに聖鎧『シュワーベン』が飛んできてガチャンと着地した。
「ごめん、もう呼んじゃった・・・・」
「ハァ、ちゃんと管理しておけよ」
そう言ってギラはエリと一緒に私たちよりも前に進むと、
「「「ギラの兄貴ィッ!エリの姉貴ィッ!お勤めご苦労様でぇす!!」」」
ヤクザっぽい人たちにいかにもな歓迎を受けながら。
「「やあみんな久しぶり~元気してた~?」」
どうやら二人はもうすでに馴染んでるようだ。
「おうおう、相変わらず元気だねぇお二人さん」
すると、奥の玄関から髪がない小さなお爺さんが出てきて私たちを出迎えていた。
「茶じいさん、お久しぶりです!!」
エリは再会を喜んでお爺さんとハグをした。
「ほほほっ、大きくなったねぇ~、色んなところが・・・」
と、おじい・・・いや、スケベじいさんはハグにかこつけてエリのアレを堪能しているようだ。
「じっちゃん、もうそれくらいにしろよ~。でないとマグナム弾で三つ目の穴を掘ってやるぞ~」
「そうなるのは嫌だから、この辺にしとこうか。やあギラ」
「久しぶり」
エリに続いてギラとも抱き合うこのおじいさんは何者だろうか。
極道な人にしては温和のような気がするし・・・・・。
「場所は空けてある?」とエリ。
「ああもちろんだ、いつでも勉強できるぞ」
「ありがとな。そらそらみんな~、上がった上がった~」
「ねぇ、この人たちってどういう人なの?」と聞いてみるが、
「それは今日の勉強会が終わってから紹介する」
勉強会が終わってから?なんでわざわざそうする必要が?
ただ、ギラがそうする必要があるってことは、何か訳ありなのだとみんなが察した。
あと聞き流してたけど、中庭にいる男の人たち全員がギラとエリを兄貴姉貴呼びしていたのはやっぱり二人の正体を知っているから?
「さあ、例によって勉強が苦手なメンバーを指導しながら勉強会やんぞ~」
「「「「お~」」」」
なぜ書道机があるのかが気になったが和装に合ってると納得することで聞かないことにした。
だって・・・・・、男の人たちが中庭からメッチャ見てくるんだもの!!
なんか怖くて聞けない!
色んな戦いをやっていて今更?って思うだろうけど、私はキャプテンとはいえ心はまだ普通の女の子だよ!!
こんな状況気にしない方がおかしい・・・・はずなんだけど、みんなもう勉強モードに入ってて集中してる。
あれ?おかしいのは気にしてる私だけ?
「気にしたら負けだと思えよ~。集中力さえあればテストも上手くいくし余計な情報も一切入らなくなる」
化学の教科書を読みながら見回りをしているギラがそう言って遠回しにキョロキョロしてる私に気を遣ってくれたみたいだ。
そうだ、集中しよう。
唯がようやく勉強に入れ込み始めたのを確認すると、俺はこっそりと勉強会を抜け出してじっちゃんの待つ書斎にたどり着いた。
「お前が白衣を着るとはなー、教師にでもなるつもりか?」
「少なくとも俺は資格試験を受ける未来設計を練ってはいないぞ?」
「でも教育はしてるんじゃないか?特別な力を持った子供たちを正しく導くための“教育”を」
「うまい言い回しだな・・・」
「エリちゃんはとりあえず、あの子らがそうなんじゃろ?例のアシュボーンの戦いで戦ったっというのは」
「ああそうだ」
「お前とエリちゃん、それにトラたちがウチに遊びに来ていた頃が懐かしいわい。しばらくすると偉人たちとチーム組んで核を消しおったり、オークハンティングしたり。で?今度は可愛い子ちゃんをたくさん侍らせて、ハーレムチームでも作ってみんなでワイワイ世界を救おうというのか?」
「あー・・・、付け加えるなら“もう一つの世界”って言った方が良いかもな・・・・」
「まさか・・・・あの話本気なのか?」
「遠征は本気だ。そもそも俺の存在自体が標的になりかねない世界だからな、ここは。出ていくのが正解だ」
「・・・・・ふむ、そうか。ん?そういやお前、ハーレムってところは否定しなかったな。てっきり“冗談はよせやい”って反論するものとばかり・・・・・」
「・・・・・・・」
俺が黙り込んで暗に意思表示をしているのを察すると、じっちゃんは冗談まじりの喋りから驚きの表情に変えた。
「・・・・マジで?昔みたいに“俺はまだ童貞だ!”とかもう言えないのか?」
「生憎、もうな。なんとつい最近のことだ。その前までは連呼していたけどもう使えない」
「まさか・・・お前、14Pだなんて!!」
「おい待て、その数字だと剛と剣が入ってるじゃねえか!俺はそっちに目覚めてないから!!あと女子も一人は剣の相手だからハブけ」
「いや、それでもあの人数!お前はモテてると大介から聞いてたが・・・・・あの子ら全員了解しとるのか?」
「・・・・おかしなことに、な。それは置いとくとして、今日こっちにあいつらを連れてきたのは他でもない、じっちゃんたちの存在を教えるためだ」
「・・・・大丈夫か?さっき物凄く警戒されていたが。それに“あの子”だって・・・」
「話はわかる奴らだから大丈夫だ。それと頼みたいことが一つあるんだが・・・・」
みんなのところに戻ると、
「どこ行ってたの?」
エリがヒソヒソと聞いてきた。
「じっちゃんと密会」
「やっぱりみんなに教えるの?茶じいさんたちのこと」
「ああもちろんだ。下手に隠すと、後でロクなことが起きないからな」
さて、そろそろみんなのことをすんごく気になっている組員たちにちょっと注意しとかないとな。
「「「「兄貴ィッ!一体誰が兄貴の番なんですかぁっ!!?」」」」
「っちょ!お前らボリューム下げろっての!!」
ぶーっ!!!
もちろん丸聞こえな唯たちはそれを聞いてさっそく噴き出した。
「壮真、近所の人たちのこと考えろよな」
「だって兄貴、去年泉ちゃんを亡くしてずっと傷心状態だって聞かされてたんですから。その兄貴があんなにベっぴんちゃんばかり連れてくるなんて気にしない方がおかしいっスよ?」
「ま、そらそうだよな」
この成人してる割には少し小柄な男は大峡壮真。
じっちゃんが看板背負ってる亜弁組の中でも側近中の側近で、これまた親父の世代からの付き合いだ。
ここの豪邸は元々剣術道場として建てられたもので、主が死んで使われなくなったところをじっちゃんが大昔に買い取ったらしい。なので今俺たちが勉強会に使っている場所がその道場の場所なのである。
今もたまに近所の学校の剣道部の練習場所として提供することがあるそうだ。
「それで?どの子が番なんですか!」
俺をイジり倒そうと目を輝かせてやがるコイツら・・・・。
「えっとなー、男子二人とあの団子っ子いるだろ?あいつらは・・・・」
「へ?まさか、兄貴どっちもイけるクチなんですか?」
「しかも男は二人もなんて!」
「逆だ逆!あいつら3人とはそういう関係じゃなくって!他の全員がそうだって言ってんの?」
「ああ、そういうことですか。なるほどね・・・・・っえ?あとの女子が全員が番って・・・・5人以上はいるじゃないですかい!!」
「正確には10人だ」
「兄貴が失恋ショックで絶倫男にィッ!!」
「ちょ!だからボリューム!!」
もう面倒だからとことん言ってやる。俺が彼女らとどう接していくつもりなのかを。
「「「最終的にそれ、酒池肉林になってるっスよね」」」
まあ、予想はしてた反応だけども・・・・・。
「しっかしそうですかい。兄貴の兄貴があの子ら全員を相手取れるほどの業物ですかいムフフフ」
「あの~君たち。全員視線が俺の下半身に向かってるんだけどやめてくんない?」
「おっとすいません。では目を閉じますんでムフフフ」
「結局想像して下半身のこと考えてるだろ」
「いえ、下半身だけでなく●●●●とか●●●に更には●●●までを想像してます」
「甘いなお前ら。俺なんか●●●●●●●●・・・・・」
「「「「猥談始めんな!!!」」」」
おっと、壮真たちに釣られてしまった。
俺も会話にノリかけたところに勉強中の唯たちが顔を赤くして止めた。
「よしこんなもんか。それじゃ、今日の勉強会はここまで~」
時間は午後20時、もう完全に夜だ。
「「「「長過ぎ!!!」」」」
そうだね。
何時間もの間、みんなかつてない程の集中力を発揮して勉強をしていた。その反動でいつ帰るのかとかをすっかり忘れていた。
「やっべ!親からも呼ばれてる!」と携帯を見る剣。
「あー待て待て剣。例のついでがまだ残ってるだろ?それを済ませてからだ」
俺としては、理由あってできるだけ夜のうちにやっておきたかったついでなのだがな。
「まー今回、みんなをわざわざここに連れてきたのは他でもない、ある存在を紹介する為だ。それには奈々が大きく関係してくる」
俺の名指しにより、全員の視線が奈々に集中した。
「知ってる奴もいるが、奈々は一つ昔までにとある理由で“番長”として名を馳せていた。世間ではそれをバケモノ退治として見てはいるが、実際は単なるバケモノじゃない。一部存在による悪事への成敗だ」
「「「「悪事を成敗、ねぇ・・・・」」」」
「なんだよ?その信じられないって言いたげな疑いの目は!」
「普段の生活から見て、想像ができないってことなのであろう?」
全員がその重々しい口調の発生源の方角に目をやった。中庭だ。そこへ空から浮遊しつつ降り立ったのは、長い鼻にとても雄々しい髭をたくわえ、錫杖を持ち、和服の背中から鳥の翼をバサッバサッとはためかせ、“あの下駄”を履くことで世に知られている存在。
「天じいさん!!」
奈々はその人物を指す名前を呼びながら笑顔で駆け寄り、そして弱めなのだろうが、互いに拳と拳をぶつけた。ちょっとだがそれを中心に風圧も起きた。いかにも脳筋的な挨拶だなおい。
「久しいな、番長。いや・・・・今や“裸足の番長”であったなっはは!」
「もしかして鞍馬山からわざわざここに?」
「ぬらりの奴からお前さんが来てるから誤解を生まない様、わしにこっちへ来るようにと通達を受けたからな」
二人はそう話しながら器用にハンドサインを行っている。そこから二人の親睦の深さが窺える。
「え?ぬらりってまさか・・・・」
話を聞いて奈々はその“ぬらり”の正体に気づきながら、ちょうどそこへ大きな木箱を運び込んできた壮真たちを引き連れてやってきたじっちゃんの方へ視線を送った。当然唯たちも同じ行動を取った。
「その通りだ。みんなの目の前にいるこの爺さんこそ、東一の妖怪一家:亜弁組総大将のぬらりひょんだ」
俺の紹介と共に、人間としての姿を見せていた変化を解き、真のぬらりひょんの姿を晒すじっちゃん。
「改めてご挨拶を。番長の嬢ちゃん、わしらは危険じゃないからどうか警戒せんでくれよ」
「ああ、はい・・・・」
「危険じゃないって言っといて油断させる悪人もいるんだから。それあんまり説得力ないぞ~じっちゃん」
「わしゃ、この子の強さは鞍馬の爺から直接聞かされておるのじゃぞ?誤解一つでワンパンオチは笑えんし・・・」
たしかに。少し前にじっちゃんから聞いたところ、奈々は暴れ妖怪を相手に、八瀬童子の末裔としての力をまだまだ一部ではあったが、振るいに振るいまくって相手以上に暴れていたので、妖怪の間では恐れられる存在になっているそうな。
「あの~、ってことは妖怪は本当に実在するってことですか?」
置いてけぼりになっていたみんなを代表して唯がようやく口を開いて聞いた。
「「「「だからそう言ったじゃん?」」」」
俺、奈々、エリ、そしてじっちゃんたちはあっけらかんと返事した。
「「「「いや軽すぎだから!!!」」」」
元気にツッコミを返す唯たち。
「「私たち忍者はもう知ってま~す」」
そこへさらりと報告するヒナと好華。
「「「「!!?」」」」
だもんね~。
現代の忍者。
一人前になった忍者・くノ一は大抵、傭兵的な仕事を請け負ったりするのが一般的だが、実はある特殊な任務をこなすこともある。
それは、日本を含め世界中にいる妖怪たちによる犯罪を対象とした警戒パトロールである。
要するに、対魔忍ならぬ対妖忍なのである。
「くっ殺だとかア〇顔とかはないのでそーいう期待はしないように」
「「余計な気、回さなくていいから!!」」
ヒナたちに言われつつも、俺は妖怪について色々と説明を続けた。
まず、妖怪は死なずに生き続ける。基本は人を脅かすだけの存在だが、時に人間に対する支配欲を持つ者が災害級の大事件を起こすことがある。そういった妖怪を忍者たちが未然に防ぐのが普通だが、ギリギリでもある。それが5年前の日本が特に活発の時期だったので、都市伝説として噂になるほどに現代にも存在がちらっと見え隠れしていたのだ。だが、その噂程度で済んだのも奈々の活動によるおかげなのだ。
「妖怪は一度瀕死レベルまでに倒せば消滅するものの、数日経てばまた復活する。言わばゲームで言うほっとくとまた復活するが倒す度に経験値だけが増える敵キャラだ」
「ドロップアイテムはナシ?」と剣。
「そうだ」
「・・・・クソゲーだな」
「現実はいつもクソゲーだ。攻略ページを待っていたらその生き物は生き残れない」
「いや、そもそも現代社会にドロップアイテムすら存在しないから。んでよ、その悪事をやらかした妖怪は一度倒されるとどうなるんだ?復活するならまた悪事を働くとかじゃあ・・・・」
「そこなんだがな剛。それは妖怪たちの本懐を理解しないとわからない。てなわけで、今回はゲストとしてこいつらにそこを説明してもらうことにする」
「ゲストってなに?これなんかの番組じゃなくて小説だろ?」
剛のツッコミも虚しく、話は進められていく。
俺が言う“こいつら”とは、壮真たちが運び、すでに蓋を開けた木箱の中身の品々を指している。
みんなはその品々を覗き込み、それぞれで手に取っていった。
「うわっ、古そうなお椀に三味線!」と唯。
「ひょうたんに、草履・・・」と実央。
「昔のガラケーにブラウン管パソコン」と広子。
「それに80年代の・・・・何だっけこれ?」と五十嵐。
「ポケベルだ」と俺が補足。
「この卵みたいなのは?」と剣。
「たまごっち」と、また俺が補足。
「で?こいつらが何?」と巴が珍しく間抜けな質問をしてきた。
唯たちも同じ反応をするもんで、俺はエリと奈々、ヒナ、好華たちと顔を見合わせた。
「・・・・・まさかお前ら、付喪神知らねーのか?」
付喪神、別名:器物妖怪。
使われずにほったらかしにされるか、大事に扱われた道具が100年の年月を経て魂が宿って化けた存在のことをそう呼ぶ。
「基本の付喪神は人間が悪い扱いをしたことによる恨みが理由で化けて、人を脅かすんだ」と俺。
「だけどここにいるのは茶じいさんが100年大事に使い続けたことによって妖怪化してるの」とエリ。
「粗末にした者には仇を、大切にした者には恩をってな」と好華。
「お~いお前たち~、少し早いが出てきてくれんか~?」
じっちゃんが呼びかけながら木箱をコンコンと叩くと、やがて中に入っていた道具が次々と動き始め、各所に目・口・手足が出てきた。
「「「「おっじき~!なんで今日はこんなに早いんですか~い?」」」」
〈ワレワレハ、ネノコクガイチバン。ナゼオコスヒツヨウガ?〉
とポケベルの付喪神:ポッケーは口が無い代わりに電子掲示板でカタカナ文字を表記して意思疎通を図っている。
「“ねのこく”って何?」と抜粋して聞く唯。
「全く。最近の若い者ときたら・・・・。干支は知ってるだろ?」
呆れながらヒントを出してみるものの、
「そりゃあ子丑寅・・・・、あそっか!ネズミのー・・・だから何だっけ?」
思わせぶりな・・・。
「いいか?大昔の日本では十二刻、または十二辰刻と呼ばれる干支でお馴染みの十二の動物の名前で振り分けた時法を使っていたんだ。現在のと照らし合わせると、各干支には2時間ずつ振り分けられている。子の刻は夜中の23時から1時を示しているんだ」
「そんであっしら付喪神が本来、自然に化けて姿を現すのがその子の刻なんすよ~。説明ありがとうございやす、ギラの兄貴」
「まあこいつらも各々妖力を使えば、今もこうして自力で動けるってわけさ。それよりしゃみー(三味線の付喪神)、こいつらに妖怪がどういうものか教えてやってくれねーか?」
「御意に!ささっ皆さんこちらへ!」
「改めまして! あっしはこの一家の付喪神筆頭を務めさせてもらっています、しゃみーと申す者ございやす。それでは皆さん、ブラウン氏の画面のプレゼンテーションを交えながらご説明をお聞き下さいやせ~」
ブラウン(ブラウン管パソコンの付喪神)の画面にはまず“妖怪とはそもそも何か?”と書かれたタイトル画面が映された。
「妖怪とは人間の理解を超える奇怪で異常な現象か、あるいはそれらを起こす不可思議な力を持つ非日常的・非科学的な存在って表記されてやすよね~、この何ペディアで」
画面には言った通りのサイトが。
「「「「それ言っちゃってアリなの?」」」」
「アリアリでお願いしやす。要はあっしら妖怪は生き物の存在意義から外れているんで生きているようで実は生きていない、なのに人格があるのでやはり生きているのか?その答えを知っている妖怪がいるのか。またそれを知っている妖怪を探す妖怪を探す妖怪を探す妖怪を探す妖怪を探す妖怪を探す妖怪を探す妖怪を探す・・・・・」
止まりそうもなかったからここで俺が一発蹴りを入れて止めた。
「ややこしい」
「すいやせん兄貴。これ一度やってみたくって☆」
「いいから仕切りなおせ。この二人そこまで頭良くねーからおかげでゲシュタルト崩壊しちまってるじゃねーか」
唯、剛は「妖怪を探す妖怪を探す妖怪を探す・・・・」と呟きながら目を回していた。
「ともかく、妖怪は他者の感情:畏を糧に存在し続けている為、それが怨念であれば受けた妖怪は悪に走りやすい。元々凶暴な妖怪は特にそうで、時には災害級の恐れを起こして人間たちを襲ってしまい、最悪の場合殺しもしてしまいやす。一つ昔前では人間たちは妖怪をまるっきり信じないようになった反面、畏もあまり起きず、人を脅かす程度で平和だったのでやんす。しかし、近年になって人間たちの変化によってあっしら妖怪も釣られるように活発化してるんでやんす」
「「「「進化の世紀に入ってから?」」」」
「ご名答」と俺。
「人間たちも、もはや今までの常識は通用しない、もしかしたら伝承上の怪物・妖怪だって存在するのではと考えを改める者が現れ始めたもんで、またまた凶暴な妖怪が悪事を働き、暴れ始めるようになったんでやんす。活発化してしまった妖怪たちをどうしたものかと考えた末、ある部族に協力を求めたんでやんす。それがそちらにおわしますくノ一お二人の故郷、伊賀の里・甲賀の里なのでやんす」
『そこから我ら妖怪と忍者は密かに契約を結んで、忍者の方々が妖怪の存在がおおやけにならないよう抑え続けて今に至るわけです』
しばらくしゃみーの説明に合わせて色んな画像を映していたブラウンが、スピーカーを通してしゃみーに代わって喋り始めた。
『元々人間たちの怨念で悪さをしようとし始める妖怪を、元凶と同じ人間:忍者によって倒されればその怨念は消え、妖怪は復活すれば改めて悪事を働かなくなるのです』
「つまり現代の忍者は神道上で言うお祓いもしてるってこと?」と実央。
「その通りでやんす。ただ、相手の妖怪が強ければ強いほど鎮めるのがそりゃもう大変で。多いとは言い切れないでやんすが、過去にも大物妖怪が暴れたことで鎮めるために命を落とした忍者もいたんでやんす」
「5年前が特にそうだったんだ。だから奇跡的に死者も出さずに大物妖怪を鎮めることができたのも、世界中でオーク相手に無双するのに忙しかった俺やエリたちの代わりに暴れてくれたこの頭が悪い鬼っ娘番長のおかげだってことさ」
そう言いながら赤髪っ娘の頭をポンポンと軽く叩く俺。
「お、おいギラ。それ馬鹿にしてるだろ。あたしだってちゃんと素直に褒めて欲しいんだからよ~・・・・」
「この件に関しての褒め言葉は修行の時の一度のみだ。まだ何か欲しいって言うのなら他を言いな」
「え?じゃあ・・・・・さっそく夜のお遊びを」
「お~いみんな~。こいつこれからビッチ番長って名乗りたいんだってよ~。連呼してやろうぜ~」
「「「「抜け駆けビッチ番長!抜け駆けビッチ番長!抜け駆けビッチ番長!抜け駆けビッチ番長!」」」」
「うぎゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!!過去のどの妖怪よりも厄介イィィィィィィィィィィ!!」
抜け駆けをしようとした赤髪っ娘を集団イジりする唯たち。
それを他所にしゃみーが小声で俺に話しかけてきた。
「もしかしてこの娘さんらの誰かが総大将から聞きやした、兄貴の・・・・イイ人で?」
「誰かじゃなく一部を除いたほとんどの女が将来俺のアレになる」
「「「「何ですと!!!?」」」」
聞いた付喪神たちが驚きのあまり腰を抜かした。
こいつら・・・腰あったっけか?
「そういえば、何でお父さんの頃からの知り合いだったの?あのぬらりひょん」
帰り道の途中、ふと思い出したかのように訊ねてくる巴。
「親父の家がこの亜弁組の一員として代々受け継がれていたんだとさ。だけど親父がじっちゃんと誓いの盃を交わす前に結婚を済ませたからもうこの組の敷居をまたぐことができなくなったってわけ。まあ仲が良いのは元からだから親戚のような間柄が続いてるからどうってこともないがな」
「そもそも妖怪ってどれくらい生きてるんだ?」
「あいつらには死ぬという概念がないから長生きっていう言葉も必要ないんだ。まあ聞いたところじっちゃんは千年はとうに超えてるってよ」
「・・・・・・一千年前って何時代だっけ?」と誰かに説明を求める唯。
「日本では平安時代で白河上皇が法皇になってまだまだ院政を続けてる頃だね。ヨーロッパは中世時代で十字軍の遠征が始まって聖地エルサレムがキリスト教側に入ってる頃かな?」
「博識になったな~エラいぞ~イタへケ(イタリアのへそ・ケツの略称)~」
「その略称がなかったら素直に喜べたんだけどな~」
今日、剛たちに妖怪の存在を教えたのは他でもない。これからの3年間、その暴れ妖怪の相手を俺たちも担うからだ。現に何やら企みをしている妖怪がいるそうな。
亜弁組邸を出る前、
「ギラ。今回呼びかけに応じたのは奈々の顔を見ることともう一つ、お主の耳に直接入れておきたい話があってな」
「ほう?一体どのような?」
鞍馬の旦那から直々とはな。
「西の地で妙な動きがあってな。獣たちが山から頻繁に下りてきているそうだ。野生の本能とかではなく、明らかに統率された動きだとのことだ。西の妖怪は獣系の者が多いからな、お主も十分警戒しておいてくれ」
とのことらしい。
や~れやれだぜ、こっちは静かに期末テストを迎えたいってのに。
真夜中。
奈良県:吉野の山奥にあるとても小さな祠の前に立ち、祠の中からある金属でできた物を取り出す影が一つ。
「773年前の無念、今こそ晴らさせてもらうぞ」
と、その影はそう口からこぼしながら赤目を光らせる。




