31発目 メイドは昔では女性使用人のみ、現在では萌要素も追加である。
どうも、鉢ノ上鈴陀です。
突然誰?って反応する人しかいないと思うだろうけど、メイド喫茶『Agata Eden』の従業員のリンと言えば分かる人もいるはず!
私は今、悩んでいる。今度のメイドのイベントテーマを店長から頼まれ、思案中なのだ。
6月も終わって、7月に入ったんだから涼しげな何かをやってみよっかな~。
私はそんなことを通っている木槿高校の教室の机で考えていた。
「どうしました?リンダさん」
この子は斉賀深美。クラスメイトの中で一番付き合いが多い一人である。例の“稀代の天下人”がいる生徒会と知り合いらしく校内でもちょっと有名である。愛称は“フカミン”。
「ちょっとね~、私が働いてるバイト先のイベントテーマが中々決まらなくってね~」
「夏にあった涼しげな何かとかはどうですか?」
「そこまでは出てるんだけどね~。ん~、この際、去年やったアニマルイベントをまたやった方が良いかな~?」
「それはダメです失敗しますよ」
何か突然、フカミンがズバッと進言しだした。顔もズイっと近づけてきた。
「ど、どしたの?フカミン」
「アニマル、いや!生物系はダメです!!店のためにも!!」
「お、おうなんかよくわからないけど、やめとくね・・・・」
止める理由は一体なんだろう?フカミン実は動物が苦手とかかな?
「じゃあベタに冷たい食べ物とかをモチーフにした着ぐるみとかは?」
「それだと従業員自身がベターになりますよ?汗で」
「うまいっ!でもまいったね~。あ、そういえばフカミンも『TEISHOKU』で働いてるんだよね?何かメニューで涼しいものない?」
「あーでしたら、『あのマッハ20なせんせーでも逃げられず瞬殺!!タコとミョウガの冷製和風ゆずぽんパスタ』がありますね」
「なんかメニュー名に悪意が感じられるんだけど・・・、大丈夫それ?」
「あと、冷たいサービスでこんなのがありますよ?」
【冷たいサービス:一例】
店のテーブルにいるお客様にお冷を持っていく金髪女従業員。
「あの~すいません。この“例のお冷”というのをお一つ・・・」
お客様の要望に応え、従業員は顔を少し上げ、
「何ですかそれ、そんなメニューうちにはありませんよ」
と、冷ややかな態度で客を見下す。
「冷たいサービスってそういうことぉっ!!?」
「店長が考えたアイデアでしてね。これが意外とウケましてね~。男女問わずお客様の入りも良くて少しずつ店の売り上げも上がってるんですよ?」
それ、ドM変態客が集まってるだけじゃね?
「それはウチのメイド喫茶には合わないよ・・・・」
「んーでしたら、この際メイドという土台自体から変えるのはどうですか?」
「メイド自体を?」
「そうです。要はお客様と何か関係あるというシチュエーションがあれば良いわけですよね?ならメイド以外の何かを期間限定でやるというのはどうでしょうか?例えば、『アラ~シャチョサン、コンヤモゴヒイキニ~』」
「それ違う店ぇっ!!」
この子は時々冗談がキツすぎる。
「っとまあ、友人と色々相談したんですけど、やっぱり中々上手く決まらなくって・・・」
「でもリンちゃん。そのメイド以外の何かを期間限定でやるっていうのはいいんじゃない?思い切ってて」
「そうですよね~。私もアマゾネス喫茶を考えてみたんですけど、店長に断れましてー」
「ああ・・・・うん、君も大概だね・・・」
ちなみに私が今接客しているのは浜田さん。実は新婚したてホヤホヤなお客さんだ。待って!それじゃ若奥さんは?って大丈夫。その若奥さんが実はこの店の元従業員で私たちの大先輩。で、ただいま同僚のヨッスー(本名:豊田縁)チーフと接客とは名ばかりの世間話をしている。
「でもやっぱりアニマル系も良いと思うんですけどね~」
「それはダメだ失敗するよ」
と、いつものようにミオの緑茶を飲みに来たCT様が、専用個室カーテンから顔・・・・いや、ヘルメットを覗かせながら意見を述べてきた。
デジャヴかな?
「あの、そんなに動物が嫌ですか?」
「嫌いじゃないよ?むしろ好きな方だよ」
「ではなぜ?」
「本当に失敗するから忠告しているのさ、では」
と言い残し、再び個室の中にヘルメットを引っ込ませた。
なんだろう、まさか一例を知っているとか?
ところ変わって、個室の中では。
「何でアニマル系はダメなの?」
すでに正体を知っているミオ(実央)はCTに理由を聞きだす。
「これは機密情報なんだけどな、実はエスペランサの連中がよ、今度の8月に異種族のみで構成した喫茶をブリテンで開く予定なんだ」
「え?それ本当?」
「ホントホント。ちなみに執事とメイドの両方がいる。異種族のイケメンに渋かっこいいおっさんもいれば可愛い子ちゃんもいる」
「たしかに、本場の獣人が出たら勝てないもんね~」
「だからこそ――――」
場面は個室の外へと。
「ここの店はアニマルとは別の面から攻めた方が得策ってことだ。この際だからお客さんの意見も聞きながらここで決めてしまおう。みんな了解したか?」
「「「「Sir,Yes sir!!」」」」
あり?なんか、いつの間にかCTさんがウチの店取り仕切ってる・・・・?
そりゃー、前の強盗団占拠の時に世話になったし信用はあるけど、何故?
最近じゃこの人、例のアシュボーンの戦いに現れたBULLETSのメンバー:フォース・トルーパーと同じ格好だから同一人物なんじゃないかって疑いがあるけど・・・・。
お客さんもわーいわーいって盛り上がってるけど良いのそれ?
「ところでチーフ君。君はテーマを決めたのちの服のデザインを頼まれているんだったね?どんなのが良い?」
「はっ!従業員たちの熱中症対策も兼ねてなるべく布地は薄い方向に考えております、軍曹!!」
ってヨッスーぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!?
何で取り込まれちゃってるのぉっ!!あんたチーフでしょうがっ!!
っていうか軍曹って何!?
「世の中思い切った策を練らなければ売り上げは成功しない。例えばこういったモニュメントを立てているだけで人々の注目を集めることができる! ねぇ、店長」
「はい・・・そうですね・・・・・」
と、その十字架モニュメントにくくりつけられてる店ちょ・・・・。
「って店ちょおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!?」
私は思わずシャウトしてしまった。
「何でそこにいるんですか!?」
「いやね?CTさんの言う通り、私一人でも注目を集めれば店の売り上げも戻るかなと」
「少しは抵抗してください!!」
「もうなりふり構ってらんないだよぉっ!!この前の事件が尾を引いて、売り上げも少しずつだけど下がってるしぃっ!!」
・・・・人の尊厳って、時々脆いな・・・。
「まあこのように店長さんも体張ってるので、俺たちも一肌と言わず色々と脱ごうじゃないか!」
「「「「おおー!!」」」」
「おおーって本当に脱いじゃダメですってば!!」
マジで服に手をかけて脱ごうとしだす客たちを、私は全力で阻止した。
「氷の精霊喫茶!」
「水着喫茶!」
「樹液の精霊喫茶!」
「ドS嬢喫茶!」
「トワイレック喫茶!」
・・・・・意見を出してくれるのは嬉しいんだけど、どれもロクなものになりそうもなくて危険だ・・・・。
「CTさ~ん。トワイレックって何ですか~?」
と、ある客が質問を投げかけてきた。
「トワイレックとはスター・ウォーズの世界に登場する惑星ライロスを故郷とする種族名だ。代表的なキャラクターで言えばジェダイナイトのアイラ・セキュラに反乱軍パイロットのヘラ・シンドゥーラ、そして・・・・」
「スター・ウォーズ談義に脱線しないで下さい!!」
「いや、リンちゃん!これは大事なことなのだよ!最近の日本の若いのはみんな劇場アニメにしか興味がなくって洋画をしっかり見ようともしない。上辺だけしか見ない!その劇場アニメがちゃんと作り込まれてるのはわかるけど、それだけしか見ないのはよくない!!だからこそこうやって布教を続けてだな!」
「わかりましたわかりました!!いずれ必ずスター・ウォーズ喫茶もやりますから!!それと私も今度洋画を観ますから!!今はとりあえず抑えてください!!」
この暴走アーマーさんは時々洋画のことになると熱くなりやすいのだ。
「ラブロマンス風のシチュエーションを入れたらどうかな?」
と浜田さんが提案を出してきた。
「う~ん、悪くはないんですが・・・、それだと従業員たちの演技力が求められますね」
「試してみたら?」と、香枝さん(浜田さんの若奥さん)が言うと。
「いえ、そこは“やるか、やらぬかだ。試しなど」
「さ~従業員のみんな~!演技力見せてもらおっか~!」
またCTさんが暴走する前に私は阻止して先に進ませた。
で。
一通りやってはみたものの、
「わ、私と一時の愛を育てませんきゃ?」
緊張してセリフ噛んじゃうし。
「ワタシトヒトトキノアイヲ・・・」
カタコトになっちゃってるし。
「私と一緒に一時と言わず全ての愛を粉砕してみませんか?」
ヤんじゃってるし・・・最後の子、最近失恋でもした?
さて、次はミオの番だが、
「私と一緒に、思い出になる一時の愛を作っちゃいましょ♥」
「「「「お、おお、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」
ミオの演技を見て、お客さんたちは今までにない反応を大声で叫んだ。
・・・・・なんだろう、演技が良いというか・・・・。
「あのミオちゃんが妙に色っぽい!!」
「あの真面目っ子ミオちゃんが!!」
たしかにそうだ。実は2、3日前から接客で初対面の客たちの感想を聞くと、妙に艶めかしい感じがしたらしい。
「・・・・ミオ、最近イイことでもあった?」
ふと思いついたことをそのまま彼女に聞いてみたのだが・・・・。
「へあっ!?あ、いやその・・・・・」
ドキンヌなミオ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?
「「「「ごばあぁっ!!」」」」
明らかにメイド喫茶ではご法度な彼女の反応に客さん全員がショックを受けて血反吐を吐いた。CTさんなんかヘルメットの呼吸口から血がぶっしゃああっと出てきていた。
「ミオちゃん!!まさかいつの間にラブをっ!!?」
「男なの!?やっぱ男なのぉっ!!?」
「誰だか教えてくれ!!俺が仕留める!!」
ちょい待ち。CTさんあんた殺人はダメだよ?
お客さんたちのミオに対する質問攻めはエスカレートするばかりだ。だが、
「そいつはどこの馬の骨ですか!?」
この質問に反応したらしく
「っ!!馬の骨なんかじゃないです!!!彼は・・・・・その、王子っじゃなくて~・・・和風だったら~・・・」
意中の人を表す言葉が見つからなず、頬を染めながらひねり出したミオの答えはこうだった。
「しょ、将軍様ですっ!!」
です!です!です!とエコーがかかって店内に響き渡り、
しょ・・・・しょ・・・・・しょ・・・・・・。
「「「「将軍かよォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」」」」
お約束な反応を客も従業員も、そして私もした。
仕事終わりの更衣室にて。
「あっはっはっはっはっはっはっはっ!!」
「リン先輩、もうやめて下さいよ・・・・」
「いやぁごめんごめん。でも意中の人のことを将軍様っていう人初めて見たもんだから。王子様の和風版って言いたかったんでしょ?」
「はい、なので本来なら将軍の子って言うべきなのかもしれないんですけど、それだとしっくりこなかったのであんな風に・・・」
「要するにその人は侍ってこと?現代の侍かー。ずっと気になってたんだけど、その人からもらったんでしょ?そのネックレス」
そう言って私は、今まさに彼女が首にかけたばかりのネックレスを指差した。
「・・・・そうです」
「侍なのにその人弾丸を送るなんて。嬉しいの?」
「先輩。大事なのは貰った物じゃなくて、貰った時のシチュエーションなんですよ?」
もうこの前までの真面目なだけが取り柄だった彼女が、今や乙女の表情まで出すようになってしまっていた。
「経験者は語るとはよくいったものだね~。私も恋人欲しいな~」
「先輩はどんな人が好みですか?」
「私は~、筋肉質な人かな?」
「つまり先輩は肉食系女子=ビッチであると?」
「なんで意味合い変えた?」
さっきの仕返しですかい。
「でも先輩、あの木槿高校に通ってるんですよね?気になるスポーツアスリートとかはいないんですか?」
「ダメダメ!!うちの学校にいる筋肉系男子ってスポーツのことしか頭にないらしいし、なんかこう心にズッキューンってくる感じじゃないのよね~。あ、ミオの意中の人も筋肉質?」
「さあこの話は終わりです。先輩、お先に失礼しま~す」
そう言って彼女は素早く着替えを終わらせて、更衣室のドアをバタンと閉めて店を後にした。
・・・・・・逃げた。
さて、イベントテーマの候補だが、今日一番に印象に残ったことを基に考えたものがある。
ところ変わって、秋葉原の路地裏で帰ろうとしている男女が二人。
「だーっはっはっはっはっはっはっは!!俺が!俺が将軍かっ!?あーっはっはっはっはっはっはっはっは!!!」
男は、抱腹絶倒の真っ最中であった。
ギラはついさっきまでアーマーを着たまま店の裏で私の帰りを待ってくれていた。だがアーマーを解いてひとたび普段着(和服)になると、さっきのことで抑えていた感情を爆発させ始めた。
「・・・・ギラ笑いすぎ」
「いや、王子あるいは将軍って考え方がすっげえ面白くってっはは!」
先輩よりも笑っちゃって・・・・。少し仕返ししよ。
「は~笑った笑った~。んじゃ帰ろっか」
「そうだね、妹と肉」
「ごばあぁっ!!」
私のたった二言だけでギラはまた地面に倒れた。今度は血反吐を吐きながら。
「そんなにアイラちゃんたちとシちゃったこと後悔してるの?」
「・・・・長生きしてみりゃわかるもんさ。俺は一生を生き抜いた後、また人生が始まってんだ。本来なら新しい家族のことも他人だって考えていてもおかしくないんだぞ?でも俺は彼、彼女らと家族として接してきた。この際シオリは良かったとしても、アイラは正真正銘血の繋がった兄妹だ。そんな子と肉体関係を持つなんてこと事案モノだ。だから頭を抱えないほうがおかしいんだよ」
「・・・・でもそれで、アイラちゃんの気持ちはどうなるの?あの子はギラのことをよく知っているからこそ、お兄ちゃんである依然に一人の男として見てきたんでしょ?」
「・・・・・・お前は俺にどうして欲しいんだ?」
「アイラちゃんたちもひっくるめてみんなを幸せにして。どうせもう過ぎたことなんだし、こうなったらとことん愛をみんなにふりかけて」
「それをいうと、その愛はふりかけでお前らはご飯、つまり俺にふりかけご飯を食べなさいってことか?」
「お残しは許しまへんでー!!」
「いっただっきま~す」
と、ギラはノリの勢いでパンツ一丁になり、私めがけてルパンダイブ・・・ってこらっ!!
次にはギラが創造したのだろうか、私の足元から急にバネのついたグローブが突然びよ~んと伸びてギラの左頬に当たり、そのまま壁に叩きつけた。
「これが俺の自重の図だ」
と、壁にめり込みながらも喋るギラ。
「ハァ、その脆い壁よりも堅く考え過ぎだと思うよ?みんな思ってる。だからもう少し柔らかく考えようよ」
「まず実の妹に手を出したこの世で最も最低な兄って罵った方が正しいんじゃないか?あっやべっ、これ本当に抜けね」
めり込み過ぎたギラが喋りながら抜こうとするのを私は手伝った。
「兄としての威厳なんか捨てて、男としての責任を果たして。お願いだから」
「なら手っ取り早く責任を取れる方法っが!!あるぞ?拳銃で俺の頭を・・・・?」
ようやく頭を引っこ抜くことができたギラは創造したトカレフを渡そうとするが、相手が私だけじゃなくアイラもいたことに驚いていた。
「あー・・・そうか!妹に撃ってもらえばもっと責任を取れるカタチになれるな!っはは!・・・・・いつからいた?」
「ついさっき。帰るの遅いから迎えに来ちゃった♥ 話の内容も全部わかってる。これはやめて」
「ああそうか!トカレフじゃだめだよな!リボルバーでやろう!ロシアンルーレット風に・・・」
自殺一択の思考から出られない錯乱状態のギラのHPはもう0だった。
「人道から外れないで。私も一緒に異世界に行くんだから、それで解決。それとも、こんな良い妹を突き放す気?」
「いやそんなことはない!アイラ、以前も言った通り、俺にとってお前とシオリは自慢の妹だ。誇りの一つさ。ただ・・・そんな良い子たちを俺がヤっちゃったとなると、自分が嘘ついたことになるし・・・」
「誇りを傷つけたことになると思ってるの?まさかっ!ベッドの上でもお兄ちゃんはいつもの倍以上のお兄ちゃんだったもん♥」
「うごおぉぉぉっ、やめてくれ~・・・・自分がヤったことだとわかってても今では精神的にクる~」
と、ギラはまた地面で狂い悶え始める。
「「ほらほらぁ~諦めちゃお?そうすれば楽になるからさ!」」
「おいぃぃぃぃっ!本来鬼畜男が言うべきセリフなのに!お前ら女だろがぁ!!」
悲痛なツッコミだが、私たちは止まらない。
私たちにはわからないが、今彼が考えている感想はこうだ。
(ピーター・グリル先輩・・・今ならあんたの苦労がわかるよ・・・・)
その夜、杉田宅の食卓にて。
「家族会議を始める。ギラ、妹たちと一緒になってハーレムを作りなさい。以上」
「親父ぃっ!!?辞書で家族会議って言葉調べてくんない!!?」
こんなこと命令する親なんて聞いたこともないぞ・・・・。
帰ってみると両親がアイラから俺の話を聞くなり、全員を集合させた。
「お前がそこまで思い詰めていたとは思ってもみなかったよ。てっきり高校卒業に先駆けてDT卒業できて浮かれてるのかと」
「まあたしかに良い時間を過ごせたのは事実・・・・って言わせんなよ!!」
「「「「じゃあ今夜は私たちとヤっちゃう?」」」」
と、妹二人とまだ家族じゃないはずの居候エリたちが誘ってくる。
「頼むから!ただでさえツッコミ疲れが溜まってるのに!!」
こんなことでストレスを溜まるのはもうごめんだ。
「いい?ギラ。私たちもあなたの幸せを願って言ってるのよ。妹と一緒でも良いじゃない?」
「そうは言うが・・・俺は良くても世間がそれを許さないだろ」
「「そんな世間なんか無視すればいい」」
さすが俺の両親。自分たちの結婚のために大喧嘩をやった夫婦は言うことが違えや。
「あの子たちはみんな愛に生きようとしてるのよ?アイラは特にそう。だって私たちが名付けた通りの娘だもの。だからあなたもあの子たち全員の愛に答えてあげて。お願い」
「お前には俺たちの世界にとって計り知れないほどの恩がある。お前の団結力、義理人情、そして覚悟が、みんなを救ってくれた。もう十分だろ?妹だろうが構わない、女と幸せになれ」
・・・・・・・嬉しいね、全く。
前世ではこんなことを言ってくれる奴は誰一人いなかったのに・・・・。
「「お兄ちゃん。どうするの?」」
・・・・・自分が作った命の感情を否定することは絶対にしない。また一人の女の子の感情も無視できない。葛藤は色々あるが、いつまでもこの二人は俺の自慢の妹だ。
「じゃあこんなお兄ちゃんでも、メイドになってご奉仕してくれる?」
「「っ!もちろん!だって私たちの自慢の妹だもの!!」」
俺の周りは優しい人間ばかりだ。
で、翌日の『Agata Eden』にて。
イベントテーマは。
「というわけで!御庭番喫茶に決定いたしましたー!!」
「「「「ウェーイ!!」」」」
と、磔モニュメントにくくりつけられた店長が発表し、その内容にお客さんたちは大喜び。
イベント内容は簡単。メイドはみんなくノ一に、ご主人様は将軍様にとのこと。
「つまりお客様全員にブリーフ一丁になってもらうのか?」とCTさん。
「そんな酷いことさせるわけないでしょ・・・・。まあ、せめてちょんまげだけつけてもらうっていうのは良いかも」
「だったら良い助っ人を今度紹介するよモノホンのくノ一と知り合いだからさ」
この人の人脈どうなってんの?
「リン!ちょっとの間、入口対応の方を頼める?」
「わかったチーフ!今行く!」
急いでレジの方へ向かう私だが、残ったヨッスーとミオはなにやらヒソヒソしていた。
「これで良かったの?ミオちゃん」
「ええ、もうそろそろ来ると思いますよ?」
何を喋っているのか聞こえなかったが、お客様が来たので意識をそっちから仕事に集中させた。
「お帰りなさいませ!ご主人様・・・!?」
だが、お客さんの顔を見た途端、私は雷に打たれたような衝撃を受けることになった。
筋肉質な丸刈り男だった。
彼はこういう店が初めてだったようで、喋りも辿々《たどたど》しかった。
「ど・・・どうも。あの~・・うおっ!!?」
自分でもよくわからなかった。
だが、体が勝手に動いていたのだ。
私はもう自然に彼の手を取り、こう告げた。
「お名前はなんです?私とLUME交換しましょう!!」
「仕事投げちゃダメ!!」
と、後ろからはヨッスーからのツッコミ。
そんなやり取りを振り向きながら、専用個室に入るミオとCT。
「お前がこういうお膳立てするとはなー」
「絶対ストライクゾーンだと思ったからね」
「でもあいつ、もし彼女の気持ちに気づいたとして、アンナのことどうすんだ?」
「う~んその時はギラと一緒に別でハーレムを作るとか?」
「確かに、ここからあいつモテ期が来るかもしれないしなー。あの強面は前々からモテると見抜いてたし」
「じゃあ剛のモテ期到来を祝して、私たちもここでもっと楽しんじゃお!CT様!!」
「っはは!おう!!」
「あと、アイラちゃんたちもちゃんと愛でてね!」
「・・・・昨日すでに愛でまくった」
「!?」
ちなみに、磔にされた店長は“体張り店長”としてネットで有名になり、イベントに先駆けて店の売り上げが回復したとか。




