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BULLETS(ブレッツ)  作者: 砂川 武
34/63

30発目 愛と命の重さは紙一重




 “大人の階段”

 それは、未成年者たちがいずれ必ず通る人生のルートの一部分を指す言葉である。

 俺の前世では通らなかったけど☆。

 やあこんばんは。さて、何で俺がそんな思春期迎えた子供たちなら全員知ってるような言葉を、夜の部屋のベッドの上でわざわざ説明したのか、その理由は約4日前から始まるよ~。





 変死体連続事件。


 それは、6月に入って日本各地で起きている迷宮入りしている事件。

 その理由はいくつかある。

 一つ:殺害方法がまちまちであること。鈍器や素手による殴打、ナイフ・刀・鋭利な刃物による裂傷・一突き、素手や何かで首を絞める絞殺、その他色々。

 二つ:凶器や犯人を特定できる証拠が一切見つからないこと。素手で殺して被害者も相手ともみ合った形跡があるのに、現場からは犯人のDNAすら一切検知されないという。

 三つ:犯人の動機がはっきりしない。被害者も全員がこれといった接点が見つかっていない。


 警視庁本部、万事係(ALIVE部署の中の部屋)、通称“あの二人組”。

「つーわけで、そっちにもデータ送るからさー、捜査手伝ってくんないー?」とダラけきった態度でパイプ椅子に座りながらホログラム電話で自宅にいる俺に頼むブラッキー。

『公僕が一般高校生に重大事件捜査を頼んでんじゃねえよ。大体こういうの、おまえらが勝手に捜査して、上から“担当違いなんだからお前たちは何もするな!!”って釘を刺されるってオチじゃないの?』

「それがどっこいってやつだよギラ。意外と捜査一課の人たちも協力的で捜査資料をこっちにもくれる位なんだ。なんせ、警察庁トップである大道さんが直々にALIVEと一緒に設立するよう指示してくれた部署だからな、ここは」

 とブラッキーの後ろでコーヒーを作りながら会話に入ってくるジェイク。

「だから、文句たらたらに釘を刺してくる刑事部長・参事官もいなければ、一課にも俺たちを目の敵にしてるやつらはこの世界にはいねえよ」

『それはそれで張り合いがなくてつまんなそうだねー、っじゃねーだろ!!捜査は警察であるお前らがやれって言ってんの!!』

「頼むよ~、杉えも~ん。高校生探偵の君ならちょちょーいと解決してくれるでしょ~?」

『俺は猫型ロボットじゃないし、眼鏡かけたちびっ子死神になる予定もないからな?』

「まあそう言わずに、資料だけでも目を通してくれないか? こっちの捜査もみんな行き詰っていてなー」

「「「「そうですよ~。俺たちからも頼みますよ~」」」」

『うっさいぞ 生け捕り集団!! 今日もお前ら暇か?』

「「「「今日は俺たちも捜査に駆り出されてて忙しいんですよ~」」」」

「ってわけだ」とあぐらをかきながら親指で彼らを指すブラッキー。

 ・・・・これだけ総掛かりでやってるのに見つからないのか・・・・。




 杉田宅にて。

「はい教科書閉じて~。突然だが、警視庁のウザさ解消の為に事件捜査を行う。という事で今日の夕方サバイバル能力講習は変更して、これから捜査会議を始めるぞ~」

「「「「本当に突然だなぁっ!!!?」」」」

 全くだ、人生は突然ばっかだ。

 一応言っておくけど、ただいま俺、義四先生スタイルだ。

「今回は国内問題の解決に至る件なんで、俺が厳選した今このガレージ内にいるメンバーだけで事に当たることにした」

「え?ああ、どうりで今日は少ないなと思ってたけどそれでか・・・・」

 そう、ここには剛、唯、巴、ヒナ、好華、アイラ、シオリ、ペティの8人だけだ。




『それでは皆さん、事件データをホログラムスクリーンに映し出します』

 ボニータがガレージのスピーカーを通して声をかけながらデータをアップしてくれる。

「さて、どこから説明すれば良いか・・・。全員知っていると思うが、今巷で話題になっている事件、“変死体連続事件”。その件数はおとといで14件に達した。被害者も一件に一人ずつだから14人」

『テレビや新聞でも報道されている通り、警察庁も犯人像すら掴めていない状況です。殺害方法がどれも同じではない、そのためどの事件も別々の犯人が実行した可能性も考えられました』

「だが、俺の考えでは全部同じ犯人だと思うんだ。その理由は現場の監視カメラ映像を見通してみたからだ」

「監視カメラ?ニュースではそんな話してなかったけど?」と唯。

『そこは警察側の市民への配慮してのことです。なぜなら、その映像に被害者に近づいた人物が一人も映っていないのです。監視カメラに映らない死角を狙って』

「現場になっている路地裏、倉庫とかにずうっと前からいたっていう線は?」と一つの可能性を上げる巴。

「それも全くナシ。何人かはその現場を普段から通りとかに利用している者もいるが、その死角の場所に留まることなくあとにしている」

「じゃあ、お前は犯人が幽霊だとでも言うのか?」と剛。

「幽霊にはそんなことはできないぞ~。あいつらは霊感の強い人間と話はできても、人を呪い殺すだとかはできない存在だ」

「「「「あの~、幽霊って存在するの?」」」」

 しまった、剛はわかっていても実央以外他のみんなは知らなかったっけか?

 頭をかきながら適当に受け流すことにする俺。

「ま、まあそれは置いといてだ、その監視カメラを避けて犯人が犯行を起こすのはまず無理なんだ。人が無理にでも出入りできる窓もマンホールもない。ではどうする?」

「忍者なら・・・屋上からあるいは?」

 と一つの可能性をあげながら二人のくノ一に視線を送るペティ。

 彼女につられてみんなも同じ方に視線を送る

「「・・・・とりあえず仕事は受けてないよ?」」

 と答えるヒナと好華。

「? 仕事は受けられるのか?」と疑問をこぼす剛。

「ヒナと好華は忍の里で飛び級の才能持ちだからね。4年前の時点でもう一人前として仕事をやっていたし、その経緯いきさつで私たちと合流することもあったよ」

 と説明してくれるペティ。

「もちろん俺もその線で一応二人を拷問してみたは良いが、収穫は全くナシだったなー」

「・・・・・ちょっと待て。今お前“拷問”って言った?」と鋭い察しの剛君。

「言ったけど何か?」

「いや何かじゃねーよ!? お前自分が年上だからって年頃の女子に何てことしてんだぁ!! ヤったのか?とうとうヤっちまったのか!!?」

「ヤってはいないぞ? でもこのS道に入るとマジで踏ん切りがつかなくなっちゃったんだよね~俺。もうプレイが止まんないのなんのって、んふふふふふっ」

「「確かに拷問されたけど・・・、あれはアレでー、良いかもしんないし♥」」

 と頬を染めるくノ一っ娘二人。

「誰かー!!この暴走列車にブレーキをおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 シャウトする剛だが、俺は気にしない。

「話は脱線してしまったが、元の線路に戻そう。要は犯人がどうやって“監視カメラの映像に映らず”に犯行を行ったかだ」

『カメラの映像も改ざんされたかも調べましたが、成果はありませんでした。ですので残った可能性がギラ様が仰った通りのことしかないのです。しかし、今の時代ではそんな科学の常識を超えて犯行に及ぶことが可能です』

「そう、今の能力持ちの人類にならな。ボニータと考えたところ、もし犯人が能力者だとしたらどんな奴か? まず人間としての体はなく、自由自在に変形できる能力と推定する」

「まさか・・・・変形人間だとか?」とアイラ。

「いや。その線だと被害者の中に外傷無しの窒息死があるのが変になる。現場も少し荒れてなきゃおかしい。俺はそこから流動性のある能力だと考えている。となると犯人は自然ネイチャー能力持ち」

「水は?」とペティ。

『それなら現場は濡れているはずです。しかし、いくつかの現場だけ排水管からの水漏れがあっただけで、他の現場では湿気は見受けられませんでした』

「じゃあ・・・・他に流動性のあるものって?」

 シオリの疑問に一歩先に答えたのは、


「・・・・・・粘土」


 巴だった。


「当たりだ。そう、粘土だ。犯人は粘土人間である可能性が極めて高い。粘土なら殺害方法を変えるのに最も適しているからな。手垢や指紋をつけなければ抵抗されても平気に絞殺。体の一部を焼き固めることで自前の鈍器や刃物を用意して殺害。自分自身が相手の口から入り込んで窒息死させる。そして、それらの現場を窓の隙間や排水管とかのパイプを使ってカメラに映ることなく移動できるって寸法さ」

 犯行の手口を、俺はみんなにジェスチャーしながら説明する。

「おお・・・なるほど・・・・あれ? でも動機は? そいつは怨恨か何かか?」

「いや、違うんだ。被害者リストを全体的に見ると、大々的にヤクザか闇営業を営んでいる人間が多い。だがそれはフェイクのために狙った人間だ。この二人のデータを見てくれ」

 ホログラムディスプレイを少々操作して目当ての資料をアップさせて、みんなに見せる俺。

 大画面のホログラム映像にはそれぞれ眼鏡の茶髪男とおかっぱな女性の人物画像がデータとともに映った。

 データ内容をみんながまじまじ読んでいく中、いち早く理解した巴が声を漏らした。


「放射能・・・研究者?」

 巴の反応に合わせて俺は説明を続けた。

「この二人は3、4件目にして殺害された、ちょうど3週間前のことだ。今週の今頃、この二人はある施設に配属される予定だった。その施設とは、ここ」

 ボニータが地図をアップしてくれて、配属先の場所を俺が指で示した。


「三河原子力研究開発施設だ」



「「「「あそこに!!?」」」」

 唯と剛、アイラ、シオリだけがその施設の名前に強く反応した。他の4人は頭の上に?を出すだけだった。無理もない。


 “三河原子力研究開発施設”。

 日本の中でも一番規模が大きく、原子力に関係する研究機関全てを揃えた施設として有名な場所なのだ。

 日本にずうっと滞在していた4人ならわかっても、少し前まで世界中で俺と一緒にドンパチしていたペティたちがあまり知らないのは当然だ。

 俺は追加で他の人物のデータを映し出すようボニータに指示した。

「とにかく、この二人の後釜に抜擢されたのがこっちの二人、元自衛官だ」

「元自衛官が? 何で?」

「それにはこの男が深く関係してくるんだ」

 俺はボニータに相槌し、

 奥村おくむらぜんのデータをアップさせた。

「この男も元自衛官なんだが、少々厄介な人間でな。東シナ海戦のことは覚えてるよな?」

「ああ・・・日本が標的にされてたっていう・・・・」

「奈々も参戦してた海戦・・・・」

「こっから先の話は、ここにいる全員が初耳だ。知ってるのはエリとかトラたちの古株ぐらいだな。当時その海戦前に、オーク共が舵を取る大艦隊が原因で日本政府も決断を迫られていた状況にあった。この奥村善って奴は、その時交戦側の中でもかなりの過激派でな。“今こそ! 自衛隊の手で!国を、国民を守るべきである!!”なんて古い考え方を以て海自と空自を出動させる気満々だったからな。当然、日本が戦いに交じることを危惧した俺たちはおやっさんと猪之助に頼んで自衛隊の出番をギリギリまで食い止めて時間を稼ぎ、その期間にあとの俺たちが日本に向かっていた敵さんの大艦隊を東シナ海にて交戦し、奈々の協力もあって見事全滅させることに成功した。政府も戦いを避けれたことに大喜び。だが不満を吐き捨てる奴がいた、“日本はいざという時のための心構えが足りない、もっと自衛隊を強化するべきである!!”ってな。知っての通り猪之助が推し進めた防衛費削りで奥村は猛抗議した。同時に奴は俺たちの存在も知っていたから若いモンに負けるかなんて考えもよぎってさらに反発、それでも猪之助の改革に賛同した政府の方針は変わらず、奴はそれに耐えかねて防衛省及び自衛隊を去った。ただ、ここ最近行方をくらましていたらしい」

『場所はすでにアイラ様が特定済みです。重要なのは彼が何故わざわざ行方をくらます必要があったのかです』

「・・・・何か、後ろ暗いことを企んでいるからかな?」と唯。

「後ろ暗いことではあるが、企みとかそういうんじゃない。面倒くさい奴だが、あの小僧なりにも国を憂いての行動を取ろうとしているのは確かだ。さっき上げた元自衛官である二人の研究者は奥村と意気投合している。そんな奴らが三河の原子力施設に配属になったのは明らかに偶然じゃない、意図的にそうなるように仕向けたんだ。人を殺害してまでな。今の奥村は少々クレイジーだ」

 俺の最後の言葉に唯と剛は息を飲んだ。

「つまり、今回の事件の犯人:粘土人間は奥村の指示で施設に行くはずだった研究者二人を殺害をするために犯行を始めたと?」と好華。

『私もはじめはそのように推察しました。しかしギラ様の考えは少し違いました』

「「少しって?」」

「おそらくだが、奥村の奴もその実行犯に手を焼いているんだと思う。研究者二人を殺害するためにわざわざ他12名をフェイク目的で殺すメリットはない。二人の前後の件はそのつもりだったんだろうが、そのせいで止まらなくなったんだろうな・・・」

「・・・・・実行犯である粘土人間が、殺しによる楽しみを覚えてしまった・・・・・?」

『そうです。殺害方法を変えている理由も犯人が複数であると思わせることから、実行犯が楽しむ方へと変貌してしまった』

「快楽殺人に目覚めてしまった粘土人間を制御できなくなった奥村は、その後もターゲットを教えることでなんとかしている。後ろ暗い経歴を持っている人間ばかりを狙わせているのはせめて悪人への正義の鉄槌としての行動にさせようと・・・」



「そんなの、正義なんかじゃないっ!!!」

 俺の推察内容に苛立ちを覚えたペティの突然の怒号にみんなが驚いた。

「・・・・ペティ・・・」と呟く唯。

 



「・・・・まあ、ペティの言い分は尤もだ。俺たちが正義を語るのもおこがましいが、あれを正義だなんて考える奴は大馬鹿だ」

「じゃあ、これからどうするんだギラ?」

 剛の問いに俺は答える。


「奥村の馬鹿共を施設から追い出す。そして粘土人間の暴走を止める」




 後日。

 こういう倒すべき相手がわかった時、映画の主要人物たちが戦場へと向かう際にピッタリなBGMを背景に行動を起こすシーンは痺れるよな。

 この小説を読んでくれている君も想像してご覧?

 俺たちが戦闘服を着て、弾倉の準備に武器の手入れ、体のほぐし、能力のチェックとかをカチャカチャと目的地へと向かっている改造型二式大艇の中で済ませている風景を。


 心躍るよ、マジで。




 比叡山の延暦寺根本中堂にて。

 どうも、わしは泰平。奈々ちゃんが最近月一どころか時々レベルで来るようになって退屈しなくなって嬉しくなっています。しかも先月起きた“アシュボーンの戦い”の動画を見ていると、モザイクで顔は隠されてたけど明らかにギラと奈々ちゃんが戦っているのを見つけてびっくらこん。

 今日は友達を連れてここでトレーニングだそうだ。何でも今日は訓練続きからの久しぶりの休みだそうだ。

 わしは女の子たちが笑顔で戯れているのを眺めながらお茶をすするのみだ。

 まあ爆発とかで地面が穴ぼこだらけになってるけど。

「ところで奈々ちゃん。最近ギラとは上手くいってるのかい?」

 何気ない問いかけのつもりだったんだが、みんな突然トレーニング中に、動きを止めた。奈々ちゃんなんかちょうど飛び上がってたもんだからそのまま地面にビターンと落ちた。

 え?・・・・まさかこの子たち全員ギラのアレ・・・・?

「そういえば・・・・そうだった・・・・・」と奈々ちゃん。

「・・・・・私たち、ここ数週そういうこと全く考えてなかったっけ・・・・?」とエリちゃん。

「ギラ君への規制事実計画をちっとも練ってないなんて・・・・」と友達サイドテールっ子。

「え!?あ、あの~私は違いますけど?」と、い・・・・実央ちゃん。

 ・・・・・最近の高校生って肉食系に変貌するって噂は本当だったのかな?

「まあ、確かに学校のこととかはともかく、訓練のことしか頭になかったかもねー・・・・」と青髪ポニーテールっ子。

「くう・・・・これが生活習慣病ってやつか!!」

「「「待って奈々、その言葉使い方が違うから」」」

「?」

 青髪っ子はどうやら今の日本語はわからなかったらしいね・・・・。

「しかしエリちゃんに久しぶりに会えるとは嬉しいねぇ」

「私もですよ、泰平さん」

「ギラともエリとも知り合いってことは、じいさんは二人の小学生時代の時からか?」

 と、奈々ちゃん。

「エリちゃんとはそうなんだが、ギラとはねー・・・」

「あ、泰平さん。生まれ変わりのことはみんな知ってますよ~」

「およ?あいつもう話したのか。なら話しておけるな。わしとギラは彼の前世からの付き合いなんだ」

「「「「前世から!!!?」」」」

「そう、わしが20代の頃に一時スーパーに勤めていた時があってな、店に担当職員になった時主任としてわしの上司になったのがギラだったんだ」

「「「「その話もっと詳しく!!!」」」」

 なんか食いつき良いねー。昔のエリちゃんを思い出すよ~。

 しばらく昔話に付き合ってくれた女の子たち。よっぽどギラにぞっこんみたいだな~。罪作りな男よ。

「泰平さん。もしかして泉姉さんのこともご存じで?」

 

「・・・・エリちゃん。ずっと気になっていたけど、ギラはもう・・・?」

「・・・・・ケジメをつけたんだって」

「・・・・わかった。・・・・ああ、昔、ギラたちは彼女も含めてよくここでトレーニングをしていたんだよ。思えばあの風景が一番微笑ましかったよ。彼女が亡くなったと聞いた時にはとてもショックを受けたよ。もちろん君のことも耳に入っていたよ。泉ちゃんそっくりだ」

「ど、どうも」

 そうだ。主任は前世で一生恋は無いと言っていた。

 しかし生まれ変わりを経て彼はようやく恋を見つけた。あの子二人のおかげで。


「よし!!あたしたちでギラを幸せにするよう尽力しよう!!!まずはハーレム計画を推し進めるために既成事実じゃああああああああああああああああ!!!」

「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」」」



 ・・・・・・・うん、これはうらやまけしからんという奴ではないかな(すっとぼけ)。もう知らん☆


「そうなれば早速情報収集だ!今ギラがどこにいるのかを・・・・」

「ボニータ。ギラって今日どこにいる?」

『はい、本日は三河原子力施設にて作戦行動中です』

「「「「「へ?」」」」」





 時は少し経ち、三河原子力施設地下室にて。

 地下室とはいってもそれはフェイクのための名称。実際は大規模な工房になっている。

 そんな中のある個室では一人の青年が鋭利なものを研いでいた。

 

 俺は、正義の権化になるんだ。

 俺にはそれを実行できる能力ちからがある。

 俺は知っている、間違っている人間がどれほど腐っているのかを。

 俺は知っている、そんな奴らは改めることを知らないことを。

 俺の両親もそうだった、いつも家の金を遊びにしか使っていなかった。

 キャバクラ、ホストクラブ、酒代、さらには馬券、パチンコにもつぎ込んでいた。

 俺は14年間我慢し続けていた。

 ある日、俺はなけなしの金で自分の飯としてパンを買った。

 俺がパンを食べようとすると、あの二人はそれをぶんどって自分たちだけで食べやがった。

 そんなことは今に始まったことじゃなかったが、それが俺の限界だったのかもしれない。

 俺はキレた。

 その時の記憶は曖昧だ。気が付けばリビングは血まみれ、目の前には粘土が、床に転がっていた両親はピクリとも動かなくなっていた。

 俺は自分がやったのか?と“手を上げる”と意識すると妙なことが起きた。

 目の前の粘土が手の形をしてせり上がってきたのだ。

 違う、この粘土は俺だ!きっと俺も能力持ちに生まれていたのだ。

 それから俺は家を飛び出し、さすらって生きるようになった。

 もう学校も家のことも知るものか。

 この能力を使えばどこでも侵入できる。

 夜中のスーパーにでも入れば簡単に食い物が手に入る。

 だが、ただ生きていくためだけの生活では満足していない自分がいた。

 家を飛び出してから5年後、街中で親戚の自衛官に久しぶりに会った。

 俺はその自衛官に全てを話した。

 すると自衛官は俺を憐みの眼で見て、警察に引き渡すどころかある提案を出してきた。

 自衛官:奥村はある計画の為に俺の能力である研究者二人を殺してほしいとのこと。その代わりに俺を警察には引き渡さないと。

 人殺し、初めてではなかったが、ろくでなしな両親以来誰も殺っていない。

 奥村はフェイクの為に二人の前後でとあるヤクザを標的に紹介してくれた。

 そいつらは麻薬を裏で売って人を堕落させているそうだ。

 そいつらを殺した時、俺は何かを感じた。

 心を押さえつけていた何かが壊れるのを感じ取った。

 これだ。きっと俺はこれを望んでたんだ。

 神だ。神が俺に使命を与えてこの能力を授かったんだ。

 この世に生ける全ての腐った人間を全員を排除する為に。



 彼の個室を下の作業場から眺めているのは、仲間である研究者二人と話し合っている元自衛官:奥村善だった。

「善さん、六介ろくすけ君をどうにかしましょう。このまま暴走が続くと国民の半数を殺しまくることになりますよ?」

「わかっている。だがしかし、まだだ。あの子は正しいと思ってやっているんだ。もしかしたら途中で修まってくれるかもしれない」

「そうは言っても、あの子の能力の性能上、どうにもできませんよ? ここはどこかに誘い込んで手を打つしか・・・・・」




「やれやれ、厄介者になったら即始末ときたか」



「「!!?」」


 声がした方向へ目を向けると、どこから侵入したのか、ジェットパックで飛行しながらあの複製兵士のアーマーを着た人間が降り立った。

「あんたら子育てには向いてないな」

 よく見ると、工房のあちらこちらに“あの緑のスーツ”を着た10代の子供が控えてこっちを窺っている。

「・・・・・君はその恰好がお気に入りみたいだな、杉田君」

「これが俺のスタイルなんでね、わっぱ君」

「っ!善さんを侮辱するなっ!!」

 起こった英志えいし直和なおかずがそれぞれ懐に隠していたトカレフを抜いて撃とうとしたが、

 チョンッ!ドンッ!

その前に杉田がブラスターで、奥の二階工房から覗いていた銀髪女がショットガンで二人の銃を撃ちぬいた。

「「・・・・く・・・!」」


 あの銀髪女はたしか、最近になって名前が確定したという“ショットシルバー”に違いない。

「・・・・・・似たもの集団で、今度はヒーローショーを気取ってるつもりか?」

「お前にはこれがヒーローショーに見えるのか?」

「いや、俺が言っているのはアシュボーンの戦いのことだ」

「あれもヒーローショーだと思うのなら、お前さんの目も節穴だね~」

 ・・・・やはりこいつなんだよな。

 杉田義羅。大道さんと同じ生まれ変わり人間。この男はどこまでも自分の道を貫き続ける男だ。自分の心に間違いがないと踏んだ時にはどこまでいっても曲げずに戦場へ飛び出す。

「5年前のあの東シナ海戦に、私の日本の参戦方針を君はダメだと言い、仲間を引き連れて阻止に向かった。案の定、君たちはやってのけた。本当は母国日本が巻き込まれなくて良かったと喜ぶべきなんだろうが、私はできなかった。国が一人のヒーローに甘えていて、自衛力を強めないで国を守れるものか。国家とはそういうものではないだろう?私はあれから必死に自衛隊の増強に奮闘し続けた。だがお前に絆された大道さんに元々軍事力強化に反対な内匠首相、そして平和ボケしてしまった国民に邪魔された!!!」

「それでお前さんがたどり着いた答えが、これってワケかよ」

 杉田はそういって辺りを見回している。

 ちっ。もうお見通しか。

「ところで杉田君。君はどうやってここへたどり着いたのかな?」

「っは!そこにいるガキンチョだよ!」

「っ!?」

 まさか・・・・そこまで!?

 そういえば最初から奴は気づいてるような口振りだった。

「おおっと動くなよ?ガキンチョ。そこから一歩・・・いや、能力を使って1ミリでも動いてみろ。お前がいるその個室を後ろに控えておりますロケットランチャーさんがお前の粘土の体を焼き固めて動けなくしてやんよ?」

 奥を確認すると、黒髪ショートのマスクをつけた子がロケットランチャーをしっかり構えている。

「ろくでなし夫婦の子に、殺しを教えるとロクなことは起きねえぜ?童君」

「くっ! もう調査済みか・・・・・」

「もしかしたらと思って、あんたの身辺を調べさせてもらったよ。そしたらピンポイントで出やがった。お前さんの親戚夫婦が惨殺された事件があの5年前に起きていたとはねー。とどのつまりは息子:六介が行方不明。完全にビンゴだったよ」

「黙れ!!たかが人生を生き抜いただけのお前に!あの子の辛い14年間がわかるものか!!」

「確かにわからないよなぁっ!!俺は少なくともそれを知ることができる“親”になる機会を作ろうともすらしなかった臆病者だ!! だがな、ああゆうストレスという名の爆弾抱えた子供を前にして正しい発散の仕方を教えなかったんじゃあ、臆病者よりも立ちが悪い人間失格者なんだよぉっ!!」

 ・・・・・たしかに、そうだ。私はあの子にはそれを教えなかった。

「今のてめーには子育てどころか女心を理解することもできねえ!! 未来のことを一つも考えないで“核兵器”の開発なんて考えるんじゃあなぁっ!!」

「っ!!あれは必要なことだ!!日本さえ核兵器を持てば、もう国家もビクビクする必要はない!!」

「こんの分からず屋がぁっ!!そんな古い考え、21世紀以前に仕舞っておけやぁっ!!!」

処理者プロセッサーである君などに、元々理解してもらうつもりはない!!」

 杉田はその時、わずかだが私の口元がほんのちょっぴり歪んだのに気付いたのか、すぐさま後ろを振り向いた。

「好華ぁ!!下だぁっ!!」

「っ!!」

 下にいた私の部下たちがFNハースタル・モデルP90サブマシンガンでロケットランチャーを狙って撃ち始めた。

 黒髪ショートもやはり杉田の仲間だけあって熟練の戦士のようで、弾丸を避けながらロケットランチャーにも当たらないよう頭の上に掲げた。

 だがそれが私の狙いだ。

「今だ!六介君、逃げろぉ!!!」

「ちっ!!好華!構わねぇっ!撃てぇ!!」と下から撃っていた私の部下をブラスターで撃つ杉田。

「っ了解!!」

 無理な態勢から急いでランチャーの引き金を引いてなんとか個室に向けてロケットを発射させた。

 バシュッ!ドカーンッ!!!

 ロケットは個室に着弾、爆発が起きたが、

「全員警戒!標的ターゲットは逃げた!」

 なぜ奴にはわかるのかは知らないが、とりあえず六介君は無事なようだ。ならば、


「「全員っ、応戦!!!」」




 乱戦だ。

 部下たちも手にハンドガンやらサブマシンガンを持って杉田とその仲間に対して射撃を開始した。

 しかし、一筋縄ではいかないのが、杉田とその仲間だ。

 杉田はアーマーにわざと弾丸の一発一発をカンカンと当てながら部下たちを長いブラスターで撃ちまくり、槍術を駆使して薙ぎ払ったり、殴り、蹴り、きりもみ回転しながらまた弾丸を避けたりして倒しまくっている。

 さっきの黒髪ショートの子も使い切ったランチャーを、迫りくる部下たちに投げて昏倒させ、手から糸らしきものを出しては工房の空中をブランコのように移動し、部下たちの動きを糸で絡めて殴り飛ばしている。噂通りならあの子は賞金稼ぎチーム“八咫烏やたがらす”の“フィート”のはずだ。

 ショットシルバーはショットガンで味方に迫っている部下たちを撃って援護している。自分に迫る相手にはどこから出したのか、左手の棒で払っている。

 緑の布で顔を隠した小柄な子は工房の作業場を利用して素早く動き回り、サブマシンガン2丁を撃ちまくっている。あの子はきっと“高速クイック時雨シグレ”だ。

 ツーサイドアップの子は体に電流を走らせて細かい鉄をアーマーにして弾丸を防いだり、磁場を形成して弾丸を跳ね返したり、そして部下たちを痺れさせて戦闘不能にしている。

 ハーフアップの子は両手に持ったトンファーで部下たちを次々と倒していっている。よく見るとツーサイドアップの子と顔がそっくりだ。双子だ。大道さんが言っていた杉田の双子の妹だ!

 後ろを二本結びの髪の子は、飛んでは大量のクナイを部下たちに浴びせては、囲まれてもカポエラで返り討ちにしている。あの子も噂通りなら賞金稼ぎチーム“八咫烏やたがらす”の“ウィング”だろう。

 鉢巻をしている丸刈りの青年は弾丸こそ避けてはいるが、時々当たっても何ともなく部下たちを体術で倒しまくっている。中でも目立っているのがレッカーの如く複数人をまとめて吹っ飛ばしているタックルだ。間違いない、“ヘビーロコモ”だ。

 そして極めつけは工房の広い空間を両手足から出ているジェットのようなもので自由自在に飛び、滑空中または降りては人差し指と中指をピストルのように構えてその先からオレンジ色の光る何かを弾丸の如く発射しまくっている背中に暁をつけたポニーテールの女の子。彼女だ!彼女がキャプテン・ベイカーなんだ!


 念のためいつか杉田か大道さんがここを嗅ぎつけて来るのではと人員を増やしていた途中だというのに、予想よりもはるかに早く来るとは。

 状況はいたってこっちが不利だ。なんとか活路を見出さなければ・・・・。


「っ!!剛!!標的がそっちに行った!!構えろ!!」

「おう!!」

 何!?六介君が!?

 二階にいるヘビーロコモが“剛”らしく、彼の前に六介君が粘土状になって現れ襲い掛かろうとするも、六介君は彼にまとわりつくことができずに、ズルリと床に落ちた。

「な、何でだ!?」

「“摩擦”を無効化したからな。やれ!ギラ!!」

 呼びかけに答えた杉田はジェットパックからミサイルを二人がいる二階に向けて発射した。

 ドーンッ!!

「ギラッ!どう?」

「いや、ギリギリで逃げられた!次に気をつけろ!」

 その時ちょうどここから遠い別の工房で待機していた部下たちが到着した。その数は実に100人。


「ってオイオイ。あんなわっぱに賛同する馬鹿団体様がこんなにもいんのかよ!!」

「黙れぇ!善さんの邪魔はさせないぞ!!」

 と、団体ご筆頭様が同じく怒りに燃えている同類と一緒に襲い掛かってきた。

 俺は当然構えるが、感知能力である存在が近づいてくるのに気づき臨戦態勢を解いた。

 ドガァッ!!

 次の瞬間、壁から派手に敵を吹っ飛ばしながら“裸足の番長”こと奈々の登場だった。

「ノックしてもしもしー?って奴だ・・・」



「バッキャロォッ!!早く飛べ奈々ぁ!!」


 助けに入ったのに突然ギラに怒鳴られた。一瞬意味が分からなかったが、ギラが焦ってあたしの方へアーマーを解いて戦闘服を着て軍刀を構えながら走ってくるのを見てすぐに変だとわかった。

 あたしは自分の体を見た。脚が動かなかった。何かヘドロのようなもので固められていた。その何かから尖ったもの・・・・キュイーンと回っているドリルが私の腹に先を向けている。殴って壊そうと思ったがいつの間にか両腕も何かで拘束されていてちょっとやそっとでは動けなかった。するとドリルの付け根あたりからボール状のものができ、それは段々人の顔になりながら喋ったのだ。


「丁度試してみたい殺害方法があったから、お前でも良いやー・・・・」


 ドリルが、

 近づいて、

 あたしの腹を、

 抉っ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


 ザンッ!!

「ぐっ!うがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」

「奈々ぁっ!!」

 何とか俺の雷龍で足の拘束している部分を焼き斬ることで奴に痛みを与えて悲鳴を起こさせ、奈々から遠ざけることはできた。

 しかし、ちょっとだけだが遅かった。奈々は必死の思いで腹を抑えているが、床には彼女の血が流れ始めていた。敵はまだ撃ってくる。盾を創造して彼女を守る俺だが、急いで傷を治さないと鬼の末裔といえども失血多量で死んでしまう。

「っは!奈々ぁっ!!」

 二階には奈々と一緒に来たであろう、エリ、広子、実央、クレアがいた。

「っく!!エリ!そこの部屋、10人以上は入れるか!!」

「っ!(ドアを開けて確認)入れるよ!!」

「全員一旦退けぇっ!!あの部屋に難を逃れるっ!!」

 敵の弾丸が飛び交う中、俺の指示に従ってみんなが部屋に入り始めた。俺もタイミングを見計らって傷の痛みに耐えている奈々を抱えて最後に部屋に飛び込み、ドアを閉めた。

「みんな!奴が侵入できないようにするためだ。いっせーので同時に飛べ。いいな?」

 みんなが頷くのを確認すると俺はいっせーのっと叫び、奈々を抱えてみんなと飛んだ。その瞬間に部屋中の壁・床・天井に継ぎ目全く無しの鉄の壁をガチンと創造した。これであの粘土小僧は入ってこれない。

「奈々。痛いだろうが傷を見なきゃ対処できねぇ。腕をどけてくれ」

「・・・・・わがっだ・・・」

 痛みに耐えながら彼女は答え、途中声を漏らしながらも動かしてくれた。

「みんな見るな!!」

 とは言ったものの、全員が手遅れだった。エリや昔からの仲間は顔を引きつるだけだったが、妹二人と経験ありの唯は何とか乗り切り、他の者はアウトだった。

 まずい。傷の具合を見てみたが奈々の腹が少し抉られている。内臓は何とか露わにはなっていないが、予想は的中。このままでは失血多量死は免れない。

「ちっ。奈々。かなりの痛みが走るが我慢してくれ。じゃないとお前は死んじまう。コイツで歯を食いしばれ!」

 そう言って俺は、濡れたタオルを直径4cmほどの棒状に丸めた状態で創造して、奈々の口に咥えさせた。

 俺は医師免許も持っていなければ手術ができるあの天才外科医でもない。髪の色分けはちょっと似てるけど。

 だが、彼女の致命傷を治すことはできる。

 炎症期。それは止血から白血球やマクロファージなどが体内に侵入した細菌を除去し、血管の清浄化が進むまでの時期のことをそう呼ぶ。

 まずは、出血を止めるために血小板を増幅させる。俺は小型装着型原子顕微鏡を右目につけて、奈々の血流のミクロの世界を見ながら、“活動が早い奈々の血小板”を創造し続けていく。そして1分も経たないうちに血は固まり、出血も止まった。これでこれ以上失血することはない。

 次に、“活動が早い奈々の白血球やマクロファージ”を創造して、細菌の除去を2分以内に終わらせた。

「・・・よし、こっからだぞ奈々。増殖期に入る。気をしっかり持てよ」

 切り傷とかで血が止まった後、傷口がズキズキする時があるだろ?あれは新しい細胞が形成されている段階に入ったていう合図だ。その状態を増殖期と呼ぶ。

 俺は急ぎに急いで“奈々の細胞”一つ一つを創造しまくった。

 だが奈々の怪我では痛いどころじゃない。ましてやその傷の自然治癒力を無理矢理早めようってんだ。

「ん゛ん゛――――――――――――――っ!ん゛ん゛――――――――――――――!!!」

 だから当然こうなる。

 今、奈々は地獄の痛みに涙目でタオルを噛みしめて耐えているのだ。

 その様子をみんなは怖がりながらも後ろで祈りながら見ていた。

 そんな中、ペティは少し物思いにふけりながら見ていた。





 一方、部屋の外では。

「もうやめるんだ六介君!!彼らを殺せばますます君の罪は重くなってしまう・・・・」

「黙れ!!もうあんたの指図は受けない!俺は俺の正義の名の下に、あいつらを殺す!!!」

 と怒鳴り返し、彼は焼き固めた粘土であらゆる道具にして杉田たちが入った部屋の壁を全部壊し、中から杉田が貼った鉄の壁をこじ開けようと必死になっていた。

 ・・・・・もう彼も、ここも手遅れだ。万が一あの子を抑え込めても、あの杉田が警察に私やここのことを話していないわけがない。もう核兵器は作れない。あと一歩だというところで!

「・・・・英志、直和、そしてみんな。私と一緒にこの国の防波堤となる覚悟があると、言ってくれたよな?」

「「っ!!・・・・もちろんです!!」」

「「「「善さん!!!」」」」

 ・・・・・やむを得ん・・・・。






「ハァ・・・・ハァ・・・・ハァ・・・・」

「峠は越えた。だがもう今回は戦うな。輸血したとはいえ過度の運動をすれば目まいを起こす」

「良かったぁぁぁぁぁっ!!」

 唯が朗報を聞いて安心し、奈々に抱きついた。

 治癒は成功し、傷もすっかり治った。もちろん失血した分の血も輸血してある。ぬかりはない。だが彼女の特攻服とサラシには生々しい血の跡が今も残っていた。

「・・・・・ギラ、ありがとう。そして、ごめん。勝手に・・・」と奈々が謝りかけるが。

「言うな。今はそんなことを話している場合じゃない。アイラ、穴を開けるから外の確認を頼めるか?」

「任せて」

 今奴ら・・・・いや、粘土小僧は俺たちを殺そうと躍起になって部屋をなんとかこじ開けようとガンガンしているらしい。考えてみたが、今の状況を踏まえて粘土小僧のそんな姿を見て奥村の小童がどんな考えを起こすか。

「追い詰められた奴ほど、やることがめちゃくちゃになるだろうからな・・・・」

 唯に頼んで彼女の指で俺が創造した鉄の壁を熱で溶かして、奴にバレないよう一つの穴を作ってもらった。これで外に電波を送って様子がわかる。

「どうだ様子は?」

「待ってお兄ちゃん。奥村が何かリモコンのスイッチを押してる・・・・」

「何!?そのリモコン受信機がわかるか?」

「ん~多分・・・、あった!ここにってええっ!!?」

 アイラが何に驚いたのか。彼女の電波を感じ取って俺も確認すると、その受信機はComposition—4、つまりプラスチック爆弾とセットされていて、それが複数あってとんでもない場所に設置されていたのだ。その場所とは、

 原子炉だ。


「あんのっ小童が!コナン的爆弾シーズンはとっくに過ぎてんだぞ!おととい来やがれってんだ!!」

「「「「キレるとこそこぉっ!!!?」」」」

 こんな時になんだが、みんなにツッコミを受けるとは思わなんだ。

 だが、それより時間だ。爆弾の電子掲示板を感知してみると、あと20分しかない!

「あのおっさん、ここをまとめてきのこ雲にする気だね。粘土人間だけは私たちを殺そうとしているけど、他の人たちは何もしないで囲んでるだけだし・・・」

「あいつら・・・・もう覚悟は決まってますよってか?フザケんじゃねえよ!!ヒナ、爆弾回収は!?」

「時間の猶予は?」

「20分を切った!!」

「上等!!!」

 自信満々に満ちた顔をしたヒナはナノテクアーマーを解除し、身軽になって飛び出す準備に入った。

「で、粘土人間はどうするんだ?あいつ粘土のくせに意外にすばしっこいぞ?」と剛が。

「ああ、ランチャーじゃすぐ逃げられちまうしな。唯の熱波でも確実性がない・・・」

 するとその唯が声を挙げた。

「ねえギラ!!粘土人間のことで頼みたいことがあるんだけど!」

 唯の提案を聞いてみた。

 ・・・・・・・・・。

「んなっ。それ本気でいってるのか!?」

「他に方法ある?それに、キャプテンの考えが信用できないって言うの?」

 唯もまたヒナに負けない自信たっぷりな顔をしている。

「にひっ、了解キャプテン!!よしみんな、集まれ!マップで作戦確認だ!!」

 俺は一通り説明を終わらせると、改めてみんなに呼び掛けた。


「今回は緊急なんで円陣は無し!野郎ども!勝負に出るぞ!!!」


「「「「Sir,Yes sir!!」」」」




 声が、聞こえる。

 あのガキどもが張った鉄の壁には防音壁も仕込んでいたらしく、中から全く声が聞こえなかった。

 だが、今確かに中から声が聞こえた。どこかに声が漏れている穴があるはず!

 あった!この穴だ!ようしあのガキどもめ。お前らは正義を気取っているつもりらしいが、それは間違いだ。神から天命を受けた俺が正義なんだ!!

 つまり、お前らが悪で俺に殺されるべきなんだ!!

 今だ!侵入してやる!!

 俺の粘土能力で隙間さえあれば侵入できる。ただ、目を形成できないほどの小さな隙間、もしくは穴の場合視界がゼロ状態になる。この穴の場合もそう。粘土が侵入しきってから顔出すと、

「そらガキども!!皆殺しにしてや・・・・・あれ?」

 鉄の部屋はもぬけの殻・・・・というか、ちょうどガキどもが全員出て行ったタイミングだった。あとを追って部屋を出ると、また乱戦をしていたが何人かに分かれて行動しているのがわかる。

 すると、


「おーい粘土馬鹿ー!あんたはもう誰も殺せやしないよ~!!あんたのやってることは全部悪で正義なんかじゃないからね~!!」


 銀髪女が、俺の正義を否定してきた。超軽いノリで。

 ピキッ。

 その時、俺の中で何かが切れた。

「許さねぇ、許さねぇぞクソビッチがあああああああっ!!!」

 頭にキた俺は、銀髪女をどう殺すか考えながら追いかけ始めた。





「よし、かかったぁっ!!急ぐぞ!キャプテン!!」

「あの粘土人間、沸点低いね・・・」

「クズな親にしてあの息子ありだ。まともな教育を受けていなかったんだから当然だ!」

 即興だが、作戦通り4つに分かれることになった。ペティは粘土小僧の囮役に、俺と唯はある準備に、ヒナとアイラは爆弾回収に、あとのみんなは残った奥村一味を制圧する。

 俺と唯はある準備のためにファイアージェットとジェットパックで飛んでペティたちの先に向かっている。廊下だろうがドアだろうが知ったこっちゃねえ!!

「ねえ、爆弾って知って真っ先にヒナに頼み込んでたけど、そんなに信頼してるの?」

「ああ、あいつならこういう状況を何とかしてくれる。くノ一のエリート様だからな!」

「何で?爆弾の解除方法を知り尽くしているとか?」

「違う、あいつに“あだ名がゼロ”君か松田君ほどの技術はない」

「へ?じゃあ何で?」



 一方、少しだけ時間が経って奥村制圧組。

「現代のヒーローが聞いて呆れるね。上にいる施設の従業員たちに避難すら呼びかけないとはな。気づいてないのか?もうカウントダウンは始まっているのだ・・・・」

「はいはいはい、そういうお決まりのセリフはもういいから。あと5分か・・・・」

 とフィートに言葉を遮られた私。

 あれから15分経ち、私や英志たち部下はあっという間に制圧されてしまった。よく見ると、戦いもしなかったが、さっき六介君にドリルで刺されて血を流していたはずの“裸足の番長”が腹に傷もなく、五体満足で立っていた。一体、どうやって・・・・?

「残念だったね。あんたの覚悟は正直言って古臭すぎて理解不能だけど、こっちにはこういう状況を覆してくれるエリート様がいたからね」

「「「「???」」」」



 また時は戻って、俺と唯サイド。

「言ったろ?さっき俺がヒナに対して言った言葉は爆弾解除じゃなくて、“爆弾回収”だってな!」




 ヒナの能力:追加説明。

 体の一部に自分専用の空間の穴を作ることができるが、体の個所によって別々の空間が備わっている。なので忍者道具だけじゃなく、銃火器に爆弾、私物なども箇所に分けて出せるようにしてある。ただ、取り出しがあまり恰好がつかないという理由で一か所だけ何も入れていない空間の穴がある。

 それは、頭のてっぺんである。


 そして、その空間は万が一、危険な爆発物があったとしたら、そこにポイっとする。




 原子炉の内部にて、爆発1分前にヒナがアイラにプラスチック爆弾の場所を教えてもらって回収するの図。

 ヒナは爆弾をべりっと取り外しては頭の穴にポイっとするを繰り返している。

 

 べりっポイっべりっポイっべりっポイっべりっポイっべりっポイっ。


 爆発の1秒前。

「終わりっ!!」

 シ~~ン。

 当然だけど、頭はもちろん爆発したりしない。穴閉じてるし。

「開けるなよー絶対開けるなよー」

「絶対フリとして受け取らないからね~アイラちゃん~」

 と気軽にジョークを言い合う二人。



 時間は戻って、それぞれの時間軸でヒナの能力の説明を受ける唯と奥村一味。


 タイミングは違えども、彼らの感想は同じだった。



「「「「エリート要素全く関係ないじゃん!!!」」」」


 ・・・・せやな。

 



 

 はてさて、粘土小僧の囮役を引き受けたペティはというと、爆発予定時間まで約8分の頃。

 電子モノクルと義眼のデバイスを駆使してショットガンでスラグ弾で、粘土人間の相手をしながら時間を稼いでいた。奴がドロドロと現れる度にぶっぱなしてはいるが、当たっても粘土が飛び散って仰け反るだけで効果はない。

『ふはははははははははっ!!!威勢が良いのは口だけか?』

 そして、奴は姿を形作っていないと、こうやってそこらに置いた複数の口で煽ってくるのだ。

 私は次の襲撃に備えてスピードローダーで弾の装填を済ませながら奴と会話をする。

「・・・・あんたは自分がやっていることがただの殺人だって自覚ないんじゃないの?」

『・・・・・これは殺人じゃない。天命による救済だ。腐りきった人間の業を根絶するためのな』

「へー。そのための慈悲を下す役目に神はあんたを選んだって?つまり、偉大な羊飼いになるように。そんなんで人間は救われないよ?」

『羊飼いじゃねえ!神の子:スサノオだ!!』

「あーそういうアレ?悪さして地上に落とされたっていう?」

『・・・・・お前本当に外国人か?妙に日本に詳しいな』

「あーっはっはっはっはっはっはっはっはっ!凶悪犯にもツッコまれるとはお手上げね全く!!」

『笑い事じゃねえ!!とにかく俺がやっていることは天命であるからして、全ては迷える人類のための行為だ。だからこれは殺人じゃない・・・・』


「殺人に正しさを求めてるんじゃあんたは神どころか人間以下よ」


『・・・・・なんだと?』



 私はそんな勘違い野郎に、家族を、右目を奪われたのだ。


『俺たちは人類の過剰な人口増加を防ぐためにやっているんだ!!おとなしく殺されるんだガキ!!!』


 私は当時、その雇われ傭兵が口にしていた意味がわからなかった。後にそいつが言っていた人口爆発阻止説の内容と、その説を建前に吐き気を催す真の目的が分かった時、

 私は心を閉ざした。必要なこと以外女の子らしいことを喋らないようになっていた。

 私の周りには、汚れた人間しかいない。

 どこまで行っても、真っ当な人間はいない。

 絶望、まさにそれを感じていた。

 

 だが、白いアーマーを着たコスプレ男が、その絶望を殺してくれた。



「生物は間違いがあってこそ誕生と永眠を繰り返して存続しているの。後ろ暗い経歴を持っているだけの人間を殺すことが世のため?正義?あんたは遊びを正当化しようと建前で正義を語ってるただのガキだ!!!」

「・・・くぅ・・・・こんのビッチ女が、言わせておけば・・・・!」


「ビッチビッチうるせえな~ガキンチョ~。ぴちぴちピッチなら大歓迎だけど。このネタわかる~?」


「「っ!?」」

 私が粘土人間と対峙しているところに、ギラは粘土人間を挟んでウィンチェスターM1887ソードオフモデルを携えて出入口に立っていた。

 ああ、そうだ。

 この男だ。

 今はアーマーこそ着ていないが、4年前のあの時と全く同じ大胆不敵なオーラを放っている。


「一応話の内容は理解してるんで、一つお前に追加しておくぞガキンチョ。てめーは正義だ正義と言い張るがな」

 ギラはウィンチェスターを腰撃ちの構えをしながらセリフを続けた。


「本来正義ってのは、胸に秘めるのが一番なんだよ」


 ウィンチェスターの銃口から、

 ドンッシャコッドンッシャコッドンッシャコッドンッシャコッドンッシャコッドンッシャコッドンッ!!!

 同時にモスバーグの銃口からも、

 ドンッシャコッドンッシャコッドンッシャコッドンッシャコッドンッシャコッドンッシャコッドンッ!!!

 私とギラは粘土人間の胴体にお互いのショットガンに装填してあるスラグ弾5発ずつ、頭に1発ずつ移動しながら撃ち、そして奴の両足右左をそれぞれで最後の7発目で、私は左目で狙って、ギラは右目で狙って、撃ち抜き、膝をつかせた。

「「な、なぜだ?どうして体が戻らない?」」

 口部分をギラに撃たれて二つに分かれている為、粘土人間の声が二重になっている。

 たしかに、普段通りなら私が時間稼ぎしていた時のように撃たれてもすぐ形を変えて移動できた。だが今、奴が立っている場所が普段通りではないからだ。

 熱だ。

 粘土人間が今立っている鉄の床は300度の熱を帯びていて、奴の体がボロボロ状態で少しずつだが焼き固められているのだ。畳2枚分の大きさの電磁調理器みたいなものだ。私たちが発砲した熱を帯びたスラグ弾が体内に全部入っている為、奴自身も床の熱でコントロールが少しずつ効かなくなっていることに気づけなかったのだ。

「「ぐぐ・・・ガキどもが、よくもこんな・・・・」」

「生物は間違いを起こすのとそれを正すのが存在して生存競争を繰り返すことで今に至っているんだ。お前は今の話上では自分は後者だと考えているが、世間から見ても、俺たちから見ても、お前は前者の絶滅する生物に当たるよ」

「・・・殺す、絶対こr」

 ようやく顔も元に戻りかけ、口も一つになって二重から普通の声になったところで粘土人間がいる鉄の床がギラの指パッチンを合図一瞬で消えた。元々ここは2階下の作業場と繋がって3階分の高さがあり、鉄の床はギラが創造して用意していただけなのだ。四つん這いになっていた奴は当然真っ逆さま、


 唯が熱していた巨大な大釜に。


「Adiós!(さよなら!)ガキンチョ!」


「Arrivederci!(さよなら!)」


「そして地獄の熱を!あんたに!HELL 2 U!!」


 大釜にぼとっと入った粘土人間は、

「があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛・・・・・」

 苦痛の叫びをあげるがギラが指パッチン合図で大釜の蓋を閉めてため途中で途切れた。

『ザザッ、こちらヒナ。たった今爆弾回収が終了。繰り返す、爆弾回収は終了!』

『こちら好華。奥村一味も全員制圧。ギラ、そっちの作戦の成果は?送れ!』

 各チームから無線報告がどうやら他もちゃんと上手くいったようだ。


「こちら唯。作戦は成功、粘土人間は陶器に還った。これより全員を警察へ引き渡しに向かう!」

 元気よく無線で報告をする唯を、ギラはニヤニヤしながら見下ろしていた。


「段々ノってきたみたいだなー、キャプテン」

「どうも、トルーパー」




 その後、待機していた愛知県警に奥村一味を引き渡す。奥村と陶器になった元粘土人間:蛇間だま六介は後に東京に移されることになるが、その移送中に元々バランスが良くない状態で焼き固められた陶器小僧がトラックの揺れに耐えきれず割れたそうな。

 さらにその先の未来の話になるが、割れた陶器・・・・いや、不燃ゴミ人間はその後、破片をすり潰し粘土と混ぜる実験をしたら粘土人間に復活したそうな。

 ま、結局刑務所行きだけど。






 東京拘置所へ移送されることが決まる前の事件の翌日。

 愛知県半田拘置支所にて。

 俺の下に、面会を求めてきた意外な人物が来ていたのだ。

「堕ちたもんだな、奥村」

「・・・・・愛知まで来て説教に来たんですか、大道さん」

 杉田から事の顛末を聞いて東京から来た次第だそうだ。

「お前が突然防衛省を去ると言い出したのは何かあるんじゃないかとは思っていたが、まさか核兵器にまで手を出そうとするとは思いもしなかったよ。何の躊躇もなかったのか?」

「そうです。思い切ったことをしなければ国家は動こうともしない。大昔の20世紀のアメリカがやったようにね!」

「あの広島・長崎が人類の間違いの一つだ。くしくも原子力の軍事利用に関するフランクリン・ルーズベルト大統領宛ての手紙に署名してしまったアルベルト・アインシュタイン本人がそうだと言っているんだぞ」

「きのこ雲を見る前に戦死したあなたがその後に起こったことを気にするとはね・・・・・。大道さん・・・・いや、五十六さん。海洋戦線で戦ったあなたなら考えたことぐらいあるはずだ。先のオーク戦争で今の日本が戦争に巻き込まれたら、間違いなく壊滅的打撃を被ることになると! 私は時々想像してしまいます、この先の未来、日本が焼け野原になっている光景を・・・」

「そして最悪なのが、自分だけが生き残ることか?」

 私はその通りである意思表示を頷きで示した。

「ハァ・・・、まさに恐怖だな。だがそこだけは私も否定できないな。ギラもここにいれば、同じことを言っただろう。たしかにお前の言う通り、私も日本の今の自衛力を見て、心のどこかで憂いていた時もあった。想像もした。日本が最悪のルートを辿る未来を。でもな、一番想像力が豊かなはずのギラが、そんな未来を来させない為に体を張って命を投げ打ってまであの海戦で日本が戦争に巻き込まれるのを阻止したんだ。国による交戦をやめさせるようにと、私と猪之助にこうべを垂れて懇願してまでな。一番日本の色んな最悪に至る未来の可能性を考えているはずのあいつが耐えているのを近くで見てきたからこそ、私は彼に賛同して今日まで自衛力の強化に反対してきたんだ。私は信じたいんだ。希望は常にあって、それがギラが率いている次の世代の子供たちにあると。そして、私の前世では全く考えられなかった、子供たちの未来を切り開く力を。そのためにも誰かが言ったように、大事なのは、我々が次の世代に何を残すかだ」


 “お国の為に死ね”。

 それが大昔の戦時中の日本の常識だった。戦争が長引き、国民の中から男たちが次々に徴兵され、彼らは喜んで命を捧げて戦場へと向かっていく。残された家族はただ悲しむことしかできない。だが誰も戦争に反対することはない。

 国のために戦ったのだから。

 名誉なこと。

 戦争反対などもってのほか。

 そう考える者しかいなかったのだ。

 終いには一億玉砕を覚悟して本土決戦まで考えていた日本人もいるほどに。

 杉田は歴史を好んでより知り尽くしていた。それら苦い日本の歴史も当然理解している。理解しているからこそ、歴史を繰り返さないために11年間、彼はその身を削ってまで世界を奔走し、戦争終結に尽力した。

 なればこそ、私が戦争の発端になりかねない核兵器を作ろうとするのも当然だ。

 でも、やはり私には理解ができない。

「だが何故ですか?何が彼をそこまで動かすんですか。杉田には一体何の秘密が?」

 私の質問に、大道さんはこう答えた。


「それは、あいつがこの世で一番“命の重み”を理解しているからだよ」






 時はまた遡っちゃうんでご了承下さ~い。



 原子力施設での作戦行動を終えたその日の帰り、東京に着いたら早速参加した全員が杉田宅のガレージに集められていた。さらにこれには杉田両親も呼ばれた。

 


 ガレージにて全員が体育座りをして待機中。

「よーし、揃ったな~」

「なあ、ギラ」

「何だ?剛。まだ俺ボケてねえぞ~?」

「いや、ツッコミのために挙手したんじゃないけど・・・・。奈々たちにこんなの被せる必要あんのか?」

 剛の言う、今回の作戦に飛び入り参加した奈々、実央、広子、エリ、クレアの5人に俺が被せているのは、“反省”と書かれたステッカーを貼られた園児用の帽子である。

「建前だけ反省させておくためのものだ。深い意味はない」

「あれ?怒らないのか?」

 一番気負っていた奈々が驚きの声を上げる。

「本来なら、何の気構えもしないで乱入したことをちょび髭制服な部長さんよろしく“ばっかもーん!!”っと叱るべきなのだろうが、そうもいかない。俺は今回報連相を守らずに作戦を始動したからな。こっちに非がある分、俺はお前らに何も叱りたくない」

「・・・・じゃあ、何でここに?」

「それは今回、奈々の致命傷で使わざるを得なかった、俺の治癒能力に関係することだ。唯、剛。初めてお前らに俺の能力のことを話した時の内容、お覚えてるか?」

「えっとー・・・・ごめん、忘れちゃった・・・・・剛は?」

「あー・・・・“ある程度自分が考えた通りの物を作り出す”・・・・だっけか?」

「そう。そこで俺から謝っておきたい」

「へ?」と唯。

「謝る?」と剛。

頭をかき、俺は謝罪と同時に事実を告白した。

「すまない、俺はあの時嘘をついた。俺の能力は“ある程度”じゃなく、“本当に自分が考えた通りの物を作り出す”ことができてしまうんだ」

 

「「「「!!?」」」」

 大体のメンバーは、俺が何を言いたいのかを一瞬で理解したようだが、

「「「???」」」

 どうやら頭の悪い唯、剛、奈々は俺の告白を聞いてピンと来なかったらしい。

「えっと・・・・つまりー、どういうことだ?」

 誰かに教えてもらおうと奈々はあたりを見回した。彼女のヘルプにはペティがため息交じりに答えた。

「ギラの言う考えた通りの物を作りだせちゃうってことは、文字通りのこと。ギラが使っている銃の弾丸全てが相手に当たれば実体が消える代わりに相手を痺れさせるって考えれば簡単にその通りの物が出てくる。二式大艇の頑丈さもそうで、ギラが絶対に壊れないって念じて創造すればあれも撃墜されることはなくなる」

「え?ってことは・・・・」と奈々。

「お・・・お前まさか・・・・」と剛。

「そんな・・・まさか・・・」と唯。

 ・・・・・ったく、ようやく気づいたかよ。


「「「お前・・・作る気なのか? デススタ」」」

「違うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

 俺は何とかツッコんだが、他のみんな“古い!”とかは無視するが如くズッコケた。

「全っ然違う! なんで今の話の流れでデススターが出てきやがんだ!!」

「いや・・・ギラといえばスターウォーズの線かなって考えて・・・。基地に専務するためだからクローン・トルーパーになってデモンストレーションをしているのかと」

「おい!!それ時代も違うし、あの馬鹿でかい基地1、2に勤務してたトルーパーは“ストーム”だ!クローンじゃねえよ!!DVDシリーズもっかい見直せ!!俺の前であの間抜けバケツ頭共と真の戦士:クローン・トルーパーを混同させるのは許さねぇからな!!あと、地球がカイバークリスタルによるスーパーレーザーで即滅ぶなんてフラグにオチ、俺はお断りだ!!!」

「え?じゃあデススターじゃなかったらなんなんだよ。え?ひょっとして・・・・・」


「「「お前・・・・“一つの指輪”を?」」」

「俺にサウロンみてーなあらゆる命の支配を企む邪悪で残酷な思いはねぇから!!つーかSF・ファンタジーに飛びすぎだっ!現実に戻ってこいってああくそ!もうこの世界も現実味が無くなり始めてるんだった!!」

「お・・・おい嘘だろ。じゃあお前・・・・」

「「「あの無限インフィニティストーンを!!?」」」

「それだけは作ってガントレットで指パッチンしててめーら塵にしたろかぁ!!?」


 ゴンッゴンッゴンッ!!


 ボケ暴走列車は止まりそうになかったので、強硬手段を取った、頭突きで。

 ようやく3人が落ち着いたところで俺が話を元のレールに戻した。

「まだわからねーのかお前ら・・・・。思い出せよ、今日俺が何をやったのかを」

「何をって・・・・奈々の致命傷を治したことか?」

「傷ついた生物が大々的に必要なものは?」

 俺の最後の問いかけで、ようやく3人は答えに辿りつき、表情も重たくなった。


「「「細・・・胞・・・・?」」」


 そうだ。細胞を創造できるということはつまり、


「生物の創造も可能だってことだ。例えどんな架空のヤツでもな」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


 しばらく沈黙が起きたが、それを最初に破ったのは唯だった。

「それって、もう能力の範疇を超えてるってこと?」

 俺に先立って唯に答えたのは、

「その通り。俺たちの息子は場合によっちゃ“神”なんて呼ばれてもおかしくないワケだ。まあもっとも、こいつにはそんなくだらない存在になるつもりは毛頭ないそうだが」

 親父だった。

「物事には裏表が必ずあるものよ。この子の場合は表が“神”、でも裏を返せば“パンドラの箱”、もしくは“禁断の果実”にたとえられるわ」

 そして母さんの追加説明を聞いて全員が息を呑んだ。

「つまりだ、この秘密が世に知れ渡れば、俺の存在自体が原因で第三次世界大戦が起きてもおかしくないのだー、アッハッハー」

「「「「シャレにならないよ!!?」」」」

 せやかて本当のことやし・・・・。




 今日はもう遅いということで、全員がお泊りということになった。

 思春期真っ盛りな女子たちの入浴タイムであ~る。ほらほらみんな~心のカメラワークを働かせて~。

「う~ん、なんかすっごい事実を知ったはずなのにあまり実感がない・・・・」

「能力者やら異種族やら異世界の存在やらで規模がデカいことばっかに触れてきたからね~」

「「「「私たち自身の常識的感覚が麻痺してる証拠だ~。アッハッハー、アッハッハー」」」」

 そう、私たちが常識を語れることはないのだ。とほほ・・・・。

「あたし、今日は生死の片鱗に深く触れた気分だな・・・」

「「「「ごめん奈々。今その話はやめて、サービスカットがモザイクカットになる!!」」」」

 広子、実央、アイラとシオリはトラウマになってしまったらしい。私は熊堂会騒動でもっとヤバいものを見てしまったため耐性があってなんとか乗り切ったけど・・・・。

「ねぇみんな。仮にだけど、ギラが生物を創造するとしたらどんなのを出すと思う?」

 と突然ヒナがみんなに聞いてきた。

「う~ん、男のあいつならドラゴンじゃねえか?」と奈々。

「いやいやっ、巨人だったりして~」と好華。

「巨神兵は?」と巴。

「「「火の七日間が起きちゃうからやんない」」」

 気軽に話し合う奈々たちだが、私はそれらの根本的な疑問に直面した。


「まずギラって、生物を創造したことがあるのかな?」

「・・・・言われてみれば実証したような口振りはなかったね?」と実央も私に賛同した。


「みんな、それなんだけど・・・」

 するとエリが何か知ってそうで声を挙げてきた。




 俺は入浴を済ませた後、事の顛末を部屋でホログラム映像電話を介しておやっさんに伝えていた。

『苦労をかけたなギラ。私の後輩の尻ぬぐいをしてもらうことになるとは』

「いいんだよ。ああいうことを考えるヤツは他にいくらでもいるし、今回実行しようとしたのがあの小童だっただけ。俺たちが果たすべき仕事だよ」

『ありがとう。それじゃあ明日半田拘置所に面会に行ってくる。今日はお疲れ』

「お休み~、おやっさん」

 通信を終わらせて、俺もそろそろベッドに・・・。

『ギラ様。今夜は唯様たちのお相手をするのはいかがですか?』

「いかがですか?っじゃねえよ!!AIのくせにナニをおすすめしてんだ!!」

 部屋に設置してあるスピーカーを使ってボニータが話しかけてきた。

『あなたは十数年間異性からのお誘いを断り続けています。以前までは想い人がいたからこその納得がありましたが、その想い人がいなくなった今でも、あなたは異性のお誘いを躊躇っている』

 ボニータの指摘に反論できず、俺は唸りながらベッドに横になった。

『エリ様から事情は全て聞いています。彼女たちと一緒に最上の答えを出すと宣言したそうですね』

「恋愛相談してあげたい気心どうも。だが生憎間に合ってんだ。“ピーター・パーカー”って名前の人物検索して、そいつの恋愛相談に乗ってやれよボニータ君」

 ボニータはマジで検索したらしく、一瞬間ができた。

『検索してみましたが、“ピーター・パーカー”という人物名はヒットしませんでした』

「そりゃそうだろうな」

『“ペニス・パーカー”はヒットしました』

「ヒットしちゃったんだー!!?」

『その人物に恋愛相談を問い合せてみますか?』

「やめろやめろぉっ!!エライところから集中砲火を浴びるわ!!」

『では話を元に戻します。あなたは彼女たちからのアプローチにそっけない対応をしています。しかし、別の機会では性欲丸出しの口調が目立ったりしています。しかも彼女たち一人一人の的確な魅力を時々発言している。ここ1ヶ月間あなたの普段の生活を観察し、以上のデータをまとめ踏まえると、杉田義羅という人物は、唯様たち全員を抱きたいが義理を守るという自らかけた枷のせいで童貞を捨てられない男であると』

「ボニータ君!言わぬが花って言葉検索して! 赤線引いて!!」

『エリ様たちはいつも仰っていますよ。“私たちは束になっても構わない”と。ギラ様は素直になるべきかと』

「回りくどいな、要するになんだ?」

『オタクの言葉を借りて、さっさと全員とおっ始めろー、です』

「それ直球過ぎない?」

 こいつ、ウルトロン化しないよね? スカイネットにジェニシス、リージョンとかにも。あ、のぞみもお忘れなく。

『今夜はよくお考えになられた方が良いかと、では』

 そう言ってボニータはスピーカーの電源どころか頼んでもないのに俺の部屋のライトまで消した。

 なんのつもりかは感知能力ですぐにわかった。

 俺の部屋のドアを開け、入ってくるネグリジェ集団がいたのだ。

「わぁー団体様のお着きだー」

 団体の正体は言うまでもなく唯たちだ。

 だが変だ。

 顔が全員無表情なのだ。

 服をヒラヒラーだとか色気を誘うどころか何も喋らずただみんなしてゆっくりとベッドにいる俺に向かってきている。

 そして段々両手を前に上げてこう呟き始めた。

「「「「ヤらせろヤらせろヤらせろヤらせろヤらせろヤらせろヤらせろヤらせろヤらせろ」」」」

「ゾンビかアマゾネスかはっきりしろや、このドアホ共ぉっ!!」




「趣味趣向は色々あると思うが、少なくともさっきの雰囲気じゃ俺は何も興奮しないぞ?」

「ふむふむ、ギラはシチュエーションに拘る派と」

「「「「なるほどなるほど」」」」

「そこメモるな。大体何で妹たちまで連れてきてんだよ!」

「「あ、いやこれは、その・・・」」

 アイラとシオリが珍しく歯切れが悪い返事をした。・・・・・まさか。


「ギラ、みんなにはもう話したよ。シオリちゃんのことを」と代わりにエリが答えてくれた。


 ・・・・やはりか。




 時はまた遡り・・・・って! 今回時間があっちこっちしてばっかり!!!


 再び女子たちの入浴。

「どうしたの?改まって話すだなんて」

 エリとペティ、アイラちゃん、そしてシオリちゃんから何かみんなに知って欲しいことがあるそうだ。

「唯。さっきギラが生物を創造したこと経験のあるなしが気になったでしょ?」

「うん・・・そうだけどそれが?」

「唯さん。お兄ちゃんは本当に生物を創造することができるんだよ。現にここに、それを証明する存在がいるんだから」

 アイラちゃんはそう言って、左隣にいるシオリに視線を向けた。

「え・・・嘘。まさか・・・!」

 声を上げて驚いたのは私だけだったが、表情からして他のみんなも驚いていた。



「私、杉田枝折はね。本当は双子の妹じゃなくて、ギラお兄ちゃんが唯一創造した生物なの」

 



 頭が真っ白になった。

 二人は双子じゃない。

 シオリちゃんはギラが創造した。え?え?

「「「「えええええええええええええええええええええええええええええええ!!?」」」」

 私もみんなも大分反応が遅れてようやく声に出すことができた。

「ど、どういった経緯で?」

 なんとか気持ちを抑えて質問する巴。

「両親がとある日にお兄ちゃんの能力の可能性を談義していたのが切っ掛け」

 息子の危険な能力を談義材に・・・・だと?

「それで色々話したら、“娘、作ってくれない?”との結論になったらしいよ」

「「「「そんな軽い感じで妹誕生させちゃったの!!?」」」」

 てゆーか、それは親同士でやりなさいよ!

「エリとペティはなんで知ってるの?」

 広子が聞くとまずエリが答えた。

「私は当時、ここに住んでいたからちょうど立ち会ったの。この子が誕生する瞬間をね」

 次にペティが。

「私は今回で言う奈々と同じ境遇に遭ったことがあってね。その線でギラからシオリちゃんの話を聞いてたの」

 



 はい、元の時間軸に戻るよ~。


「要するに、ギラは自分の能力でもう一人の“いもろいど”を創造したと」

「妹とねんどろいどを組み合わせるな」

 と説明を受けた唯の解釈にツッコミを入れる俺。

「えー?気に入ってるのにー。私は“妹ろいど”だー!!」

「やめなさい!!」

「あとね、私たち夜這いついでに聞きたいことがあるんだけど」

 こいつら、さらっと夜這いを軽々しく扱いやがった!

「今日自分の存在が危険だってわざわざ告白した本当の理由は何?」


 ・・・・・・・・・・。

「そう言えば、自分を怖がって私たちが少なからず距離を取り始めるんじゃないかとでも思った?」

 ・・・・・・・お察しのいい娘たちだこと・・・・。

 俺は何も言わない。

 言葉は必要ない。

 沈黙で答えるしかなかった。

 すると、一人ベッドに座って俺の手を取り、握ってくる者がいた。

 奈々だ。

「なあギラ。あたしが粘土人間のドリルに刺された瞬間、何を思い浮かべたと思う?」

 ・・・おそらく彼女はあの時、自分の死を悟ったのだろう。そんな機会、人間にとっては最初最後であり、そしてその経験を後で語るなんてことは到底できるものではない。

 生まれ変わりでもない彼女が経験したのだ。

「・・・・何だっていうんだ?」


「ギラとの行為」

「シリアスブレイクすなよっ!!」

 こいつ、あんな状況でなんてことを・・・・。

「「「「なるほど、一理あるね」」」」

「ってあれー!?お前らこれ肯定しちゃうのぉ!!?」

「だって今のわたしたちなら同じこと絶対に考えると思うよ?」

 と唯。

「それに、女の子にとって大事な人を最期までも絶対忘れないなんて、何よりの勲章でしょ?」

 ・・・・ギリギリ女の子のお前が言うのか?クレアよ。

 でもまあ・・・・たしかにそうだ。

 そして女にそう思ってくれる男にとっても、それは勲章だな。

「待ち焦がれる乙女っていうのもロマンチックだけど、ここには11年間も待っている女もいるのよ?」

 とエリ。

「それに、ボニータの推察通りならギラだってあたしたちが束になるの満更じゃないらしいしー」

 と好華。

 ・・・・・しまった。そうだよなー。ここにアイラがいるってことはさっきの話、全部筒抜けなのは当然だ。

「それとも何?ギラは私のお母さんとの約束を破る気なの?」

 言われて俺は実央の母:真理さんとの約束を思い出した。

『杉田義羅君にはもう一つ約束!私のもう一人の娘である実央を絶対に悲しませないこと!いいですね!!』

「実央・・・、ここでそれを使うのは反則だぞ?大体、お前らが求めてる答えだと、場合によっちゃそれこそお前を悲しませることに・・・・」

「いいよ、そういうことはヤってからみんなで話し合おうよ☆」

「お前の真面目さはどこ行った!?」

「実家に帰っちゃった☆」

「帰らないで!お願い!!」

「「「「“今夜は帰さないぜ!”って意味かな?」」」」

「泊まってる時点でお前ら帰る気ないだろが!!!」

 次から次へとキリがない・・・・・。

「じゃあ、こうすれば良い?」

「?何を・・・・っ!?」

 実央が取った行動とは。

 俺の手を取り、自分の胸へと丁寧に触れさせたのだ。

「じゃあ私も!」

 続いて唯までもがもう片方の俺の手を取って自分の胸に触れさせてきた。

 こ、これは・・・・キツい・・・。

 こういう手段を取られるのは初めてではない。

「要するに、みんな奈々の言うように、デキないまま死ぬのは嫌ってこと」とペティ。

「そもそもこれが私たちが出した答えであるアプローチなのよ?」と広子。

「「全力で答えるって言ったのに、どうする気?」」と返事を聞いてくる唯と実央。

 だが、この状況で畳みかけるようにされてはなあ・・・。

 ただでさえ目の前にはとろんとした女が12人もいる。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 一つだけだが主張がある。

 俺は恋愛事で優柔不断なのは嫌いだ。

「みんな。俺の119年分、受け止める自信は?」


 ニィッ(笑顔12人分)。

「「「「「もちろん!!!」」」」」




 あとは読者の想像に任せるよ~。



 さて、説明終わり。

 まあこんな感じだ。俺は今ベッドの上で全裸だ。ベッドの周りには彼女たちが毛布一枚だけの状態で幸せそうに寝ちゃってる。風邪ひくぞ~?

 まあ・・・・なんだ。最高の一時ではあったんだが・・・・・。

 ・・・妹二人が混じってたの、忘れてた・・・・気づくの遅え・・・・。

『異世界に行けば何の問題もありません』

 作品としてはもうポルノに鞍替えだよ・・・・。

「・・・・・お前、いつから見てた・・・・・」

『最初からです。記録映像も見事なものですよ。編集次第では、AVとして売れます』

「売るな!絶対!!!」




 人間歴119年、2112年6月25日。


 俺の童貞は、死んだ。


 そして、心の重い十字架も背負うことになってしまった。






 翌日の朝。

 俺はとんでもない事実を目の当たりにしてしまった。

 あのギラが、本当に峠を越えてしまった・・・・!

 リビングではギラの母さんが唯たちに感想を求めていた。

「どうだった?息子は“息子”は?」

「本人の前で聞ける母さんマジパネェっすわー」

 ギラのツッコミを他所に、唯たちは、

「「「「今日が命日にと思うくらいに~♥♥♥」」」」

 これ以上ないってくらいに満面の笑みで返していた。

「それはなにより☆」


「生々しすぎるうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

 俺はそう叫ぶしかなかった。








 命より大切なものはこの世にはない。

 だが、同等の価値のものはある。

 それは愛だ。

 愛は人間一人一人の感情で同じものは決してない。

 命も人間一人一人が生むもので同じものは決してない。

 愛は一度生まれたら実るか果てるかだ。

 命も一度生まれたら実るか果てるかだ。

 これらは決してコントロールできるものではない。

 どちらも軽々しく見る者がいれば周りから憤りを覚えられるものである。

 だからこそ人類は、この二つを守るために生き続ける義務がある。

 世界の命を脅かしかけた、あの核の脅威を再び復活させず、

 国との壁など関係なく、分かち合える愛を思い出して。









 どうも、皆さん!こんにちは!!

 今回の次話投稿は25発目:Bをさらに上回る文字数になりました!!またスンゴイのを書こうとした結果がこれになりました(単に分けなかっただけかもしれませんがw)。

 そして、主人公もアレを失くしました!!

 また読者の方々には想像力を豊かにして(後半ではエロい方向で)読んでいただけると幸いです!!

 では!コロナに負けず、まだまだうがい手洗いと執筆を続けます!弾丸の如く!!

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