26発目 世界の宮殿、どれか一度は行ってみたいってあるよね~?
やっほー。こっちの世界では有名になってるチーム名だけどリアルの世界ではまだまだな名前の連載小説作品の26発目だよ~。そんな作品の主人公である俺は今、ある牢屋の中で寝転がってる。色々とパクり過ぎて逮捕!な~んてことじゃないけど・・・。刑務所が舞台の映画ってよくあるよな~。『大脱出』シリーズ『ショーシャンクの空に』『グリーンマイル』『告発』、実はあの『パディントン2』もそう、刑務所なのにあんなに和やかで良いのかなって、まあやっぱり平和が一番だから別にいっか。あ、あとアニメでいえば『監獄学園』、あれ告知PVの時点で大丈夫なのかって思ったけど中身も超ヤバかった、良い意味で。
さて、ちょっと余計に刑務所の話が出ちゃったけど、先に言っておくぞ。ここは牢屋であって刑務所じゃない。
じゃあ何で俺がただの牢屋に入れられて余裕でゴロンチョしてるのかって?
説明しよう!その答えは2時間前の俺の学校の教室から始まる。
クラスは美少女転校生4人の出現に大盛り上がり、でもその4人がとんでもない爆弾発言しちゃってさらに大盛り上がり。クラスメイトの女子は許容量オーバーしちゃうし、男子たちは殺意の矛先を俺に向けちゃうし。ちょっと男子~。
「お前も男子だろうがぁっ!」
「何であんな美少女4人からも言い寄られてるんだよ!」
「只でさえてめぇの周りには5人も女子がいるってのに!」
「さらに+4で9人て!死ねよ!マジ死んでくれよぉ!!」
全員が目から血涙を流しちゃってる。あと最後の叫びは宮田先生、職員室行けよ未婚の男性教師。
でもコイツらの気持ちもよ~く分かる。この彼女いない歴100年越えの男がそう考えるのだから間違いない!!
俺は男子たちを解散させて、唯たちと“これからよろしく”をしているエリたちの元へいった。
「やってくれたなお前らー。アドリブ奇襲大成功だよ全く・・・」
「でもこれであたしたちに言い寄る男たちはいなくなる!」と好華。
「ついでにギラも男子たちに早くしろ早くしろと急かされてますます決めざるを得なくなる!」とヒナ。
「「一石二鳥!!」」と、エリとクレアが笑顔で声を揃えて叫ぶ。
「トホホー、オレチャン困ッチャウー(棒)って馬鹿ぁっ!!俺には迷惑かけて良いってのか!? 返答によっちゃこっちも出るとこ出るぞ!!全員を標的でなぁ!!」
そう怒鳴ると彼女たちは顔を見合わせて頬を赤くしながら、
「「「「むしろ・・・、カモンだよ♥」」」」
とスカートをチラチラさせる素振りや上着部分を捲ってへそを見せたりする盛り女子。いや、大人の女性一歩手前の奴もいるけど。
・・・やれやれ。
「・・・私もイけるよ?」と割り込んでくる唯。
「いや、無理に入らなくて良いからキャプテン」
「っ! 無理じゃないもん!!」
「あの~ヒナさんと好華さんはともかく、フィ、ごほん!エリさんとクレアさんはどうやって転入したんですか?」と五十嵐が聞いてくる。
「偽造だよ偽造。まずエリは“エリ・ブーリン”の名前で一時期フランスと日本に滞在していたからな。俺と同じ小学校にも行ったことがあるし。クレアは今回が初めてだろうな、こいつ年齢も偽造しやがった」
と、親指で差しながら説明する俺。
ぎゅむっ!!(胸ぐらを掴む音)
「それは言わないで!!」
♪ブン、ブン、ブン、脳が揺れる~
「さあお前らー、授業始まるから席に・・・何だありゃ?」
「「「「「?」」」」」
感知能力で気づいた俺が見た教室の後扉から、黒服の男達がズラーッと入ってきた。
何だ何だ!? 何かの演出!? なわけないだろ!!
クラスメイトがざわつく中、黒服たちは俺の前で止まった。
「ギラ。これってあれか?あのー・・・何たら財閥の坊ちゃん先輩の仕業か?」と覚えてない剛。
「もしくは財閥っ子スリーアミーゴスの馬鹿3人共かもな、どうなんだあんたら?」
まあ俺もこう呼んでるから別にいっか。
「いえ!我々は乱場財閥に属する使用人であります!!」
先頭の天然パーマな黒服が名乗ってくれた。
乱場・・・ってことは広子のか。
「この度は会長である乱場繁様からのお呼び出しでございます!杉田義羅様!どうか、ご同行願います!!」
何故だ?・・・・いや、心当たりはある。巨門の前でかけたあの電話が原因だろう。きっとアレだ。娘の周りに纏わり付く男は排除的なアレだ。
「あんたら常識持ち合わせてる?これから俺達は学生の本文である勉強を始めるん・・・」
「「「「お願いします!!今すぐ連れて行かないと会長にクビにされます!!!」」」」
黒服たちの土下座は、それはそれはクズマさんもやるな言うくらい床に頭をこすりつけるっていうか床を頭でゴシゴシする程の必死さだった。
「ハァ~やれやれだぜ。分かったよ、だが公欠扱いにしてくれよ?」
「「「「はっ!!我が命に代えても!!」」」」
命は言い過ぎだろ、命は大事に。
「つーわけだから俺行ってくるわー。じゃ」
「「「「「ちょ、学園ライフはぁ~!?」」」」」
呼び止めようと叫ぶ唯たちの声を背に、俺は黒服たちと共に教室をあとにする。
俺はこの後、リムジンで送られ、東京都中央区並の広さがある土地の中心に建っている豪邸に連れられ、何故かある牢屋に入れられた。牢屋に入れた理由は、繁さんが戻るまで万が一にも逃げられないようにとのことだそうだ。牢屋のもともとの用途は分からず終いだったが。
繁さんは娘を通して俺のことを少なからず聞いていたそうだ。とにかく強い男であると。だからそう命令したんだと。
でも、失礼だよな。
さて、説明終わり。
一杯喋ったし、牢屋に入れられて鍵をかけられてから1時間の間、籠に入れられたカナリア気分を十分味わったことだし、そろそろ出るか。ぶっちゃけもう飽きた。
鉄格子の向こうでは、一応見張りがいるが関係ない。俺は鉄格子を曲げて牢屋から出た。やっぱり怪力は裏切らない!この手に限る!!
「え?あ、ちょっと!出ちゃダメですよ!!あなたは・・・」
ゴンッ!!ドサッ!!(拳で気絶させる音)
「ごめんな、ちょっくら屋敷を歩いてくるね~」
こういった屋敷に入るのはもう慣れっこだ。バッキンガム宮殿はもちろん、実は俺、フランスのベルサイユ宮殿も経験済み。あれはすごかった~。鏡の間なんか特に!あそこで太陽王:ルイ14世が歩いたり、第一次世界大戦の講和会議のためにアメリカ合衆国第28代大統領:ウッドロウ・ウィルソンとイギリス首相:ロイド・ジョージにフランス首相:ジョルジュ・クレマンソーが出席したのを想像しながら歩いたもんだよ。さすがにこの屋敷はそこまでじゃないけど。
しばらくぐるぐると屋敷を散歩していたら、ようやく俺が脱獄したのに気づいたのか使用人たちが集まって・・・・・あり?
「「「「杉田義羅殿!!これ以上のご勝手は困ります!!もう一度牢・・・部屋にお戻り下さい!!」」」」
言い直さなくたって、アレどう見ても牢屋だろが。
そして俺が変に思ったのは、囲んできた黒服使用人が全員女性だったことだ。
「・・・・何故に女性だけ?さっきは野郎しかいなかったのに?」
「旦那様はもともと男女平等に使用人を雇っているのです。ただ今日は私たちに杉田殿の相手をするようにとの指示を受けているのです」
おさげな黒服さんが説明してくれた。この人グラサン似合わねえな・・・。
「・・・・会長さんから男子高校生を籠絡しろとでも言われた?」
「いいえ。ですが万が一の時はヤれとは言われてます」
それ、言ってるに等しいんじゃね?
「自分がもし、ここを出るって言い出したら?」
ちょっとした思いつきで聞いてみると、彼女たちは一切の躊躇も無く、
ババッ!!(服を脱ぐ音)
「「「「ご堪能あれっ!!」」」」
と、一斉に水着姿に変わってセクシーポーズを取る。
「しませんっ!!」
はっきり断った。しかし使用人たちは中々の美女たちだった。自信があった分、俺に拒否されたのがショックだったようで全員がっくし!!
そんなに魅力無いかなぁ・・・ 私、くびれには自信あるのに・・・ 私は尻に・・・ あたしは胸に・・・Eだから・・・ 私は脚に・・・。
何この状況・・・、ご立派な屋敷の廊下で女性たちが男子を水着姿で囲んで四つん這いになり、魅力自慢大会始めちゃってるよ。哀れな女たちよ・・・・。
なんか楽しいことを・・・。
「・・・・なあ、ここって舞台劇場とかある?」
「え?あーはい、ありますけど・・・」とおさげさん。
・・・・・・・・・・・・・。
ちょ~っと閃いちゃった☆。
「ちょっとお付き合いしてくれたら、まだ居てあげるけど?」
「「「「?」」」」
学校の昼休み、校舎の屋上にて。
「女性・・・・使用人・・・」
実央は広子先輩からの話を聞いてジト目をしながら弁当のにんじんを箸で口まで運びつつ口ずさんだ。
「そ。私の財閥は国にも認められてるからね。だから父さんったらいつも自分の傘下にいる会社が何か悪さしてないかチェックしてるし、自分の屋敷で雇っている使用人も男女共に等しく雇って待遇も良くしているワケ。おまけに敷地内には使用人たちの為の寮施設まであるすごい快適なんだよ~」
「そんな幸せそうな使用人たちが何でクビになるとか言ってギラを連れ出すのに必死こいてたんだ?」と奈々が朝の状況を聞いた上で質問をした。
「う~ん多分イギリスでの電話が切っ掛けで私がギラ君のことを知りたがった父さんに少し話たのが原因かな?突然使用人たちを集めて指示してて、使用人たちが衝撃を受けてたし」
「ちなみに何て説明したんですか?」とさらに質問を加える実央。
「ドSな人とか?」
「それ決定打じゃないですか!!」とツッコむ剛君。
「でも、気にならない?その女性使用人たちがギラの相手をしてるんだよね」と巴ちゃん。
「もう多分今頃手遅れになってると思うよ?」と全てを諦めているエリ。
「あの男は他人を手懐ける達人だから」とクレアさん。
「そんな余裕がある男は同時に心も広いってこと」とヒナ。
「それがあたしたちの好きなギラ」と好華。
「「「「「「「「ウンウン」」」」」」」」
私も含めた女子達が頷き、彼から貰った弾丸のペンダントをいじる。
「「お前らそれで良いのか」」
一緒に昼飯を食べている剛君と剣君が聞いてくる。克江ちゃんもこっちを見る。
私たちは答える。
「「「「「「「「イイ、タダゼンリョクヲ以テキセイジジツヲツクルノミ」」」」」」」」
「「怖えよぉ!!カタコトだけじゃなくその西洋のくるみ割人形みたいなカタカタも怖いからぁ!!!」」
全力で怖がる剛君と剣君と克江ちゃん。
私は乱場財閥会長:乱場繁である。
今やウチの財閥は政府の資金まで支えるほどの重要な立ち位置にまで昇りつめている。国の為に働けるとはこの上ない名誉だ。だからこそ、私は毎日傘下にいる会社がとんでもないことをしてないか視察している。
だが!今は全っ然それに集中できないっ!!
原因は娘の携帯で私に連絡してきた杉田義羅と名乗る少年だっ!娘が通っている高校の後輩だというが、娘に心を許す男ができているということ自体が問題なんだ!!
ここのところは使用人たちからの話で大丈夫だと踏んではいたが、あの“異種族公表”の直前あたりでなんかおかしいと思った!やたら女の子らしい服を選びに行ったり、髪を念入りに手入れしてたり!
今日はその男を試すためにわざわざ学校から呼び出したのだ。
そして今、全ての視察を早めに終わらせて屋敷に戻っているところだ。
「ちゃんと連れ出して来たんだろうな?池田!」
「も、もちろんでございます!夏樹からもちゃんと連絡して屋敷内にいるとのことです!」
「牢屋に入れたよなぁ!しっかり鍵も閉めたよなぁ!!」
「入れました!鍵も閉めました!でも彼の自前のマスターキーで開けられました!!ちなみにそのマスターキーの名前は怪力ーです!!」
「うまい!けど腹立つからボコる!!」
ボコッ!!
そんなやり取りを車の中でこの天然パーマ使用人としながら、屋敷に到着すると、真っ先にその少年がどこにいるかを使用人たちに聞いた。
「そ、それが・・・夏樹たち女性使用人を連れて舞台劇場に・・・」
「「なぬっ!!?」」
そんな報告は受けていない。まさか・・・・。
急いで劇場に向かい出入り口の扉を開けると、
「ハイヨー!!テンガロンハットちゃーん!そうやって帽子を押さえながら膝をついて顔上げてぇ!腕を使って胸を強調!!Yeah!!良いねぇ、最高のエロカウガールだ!!はい次ぃ!!チャイナちゃーん!ご自慢の脚をスリットからもっと見えるように上げてぇ!!Oh!!ナイス美脚ぅ!!(小声:触りたい)はい次ぃ!!ミリタリーちゃーん!M60マシンガンを肩に担ぎながら後ろ向いてぇ!そのご立派な桃尻をぷりっとさせてぇ!!Wao!!マジぷるんぷるん!!(小声:食べたい)はい次ぃ!!マイクロビキニちゃーん!君はすでに、エロってる。存在がエロになってるねぇ!!これはさすがにやり過ぎ?でもやっぱ最高!!(小声:俺と一夜を共にしてみる?)はい次ぃ!!」
・・・・・・・・・よし、状況確認だ。まず私は杉田義羅君を見極める為にここへ連れてくるように池田たちに頼んだ。屋敷では夏樹たちに彼を見張るよう頼んだ。その夏樹たちが舞台劇場でグラサンをかける彼が指示するままに喜んでエロい顔をしながらエロコスチュームを
「「「「ごばあぁっ!!」」」」
エロコスチュームってところまでが限界で私は連れていた池田たちと共に血反吐を吐いた。
「あ、繁さん。お務めご苦労様でーす!!」
「「「「旦那様、お帰りなさいませ!!」」」」
私の存在に気づいた杉田君と夏樹たちはおかしすぎる状況なはずなのにあっけらかんとしていた。
私や池田たちは、彼女らの反応を見て許容量オーバーし、両手を顔の側面に当ててムンクの叫びを上げた。
「「「「Holy,shit!!」」」」
そして仲良く、みんな後ろへばたーんと倒れた。
「「「「旦那様ぁー!?」」」」
夏樹たちの驚く声を微かに聞き取りながら、私は気を失った。
ハッ!!
目が覚めると、そこには毎日見る寝室の天井だった。
「おや、目が覚めましたか?繁さん」
私はベッドに横になっているようだ。ベッドの脇には件の杉田君が椅子に・・・・。
「そうだ!!君!!ウチの使用人たちを使って何してたんだね!!」
「ファッションショー的なアレを催してたんですよ。繁さんが来るまで退屈するのは嫌だったし、かと言って使用人たちも楽しめなきゃつまんないだろうし、何かないかと考えに考えた結果、ファッションショーしかないって結論が出て」
「エロコスチュームにする理由はどこにも無いよね!?」
「え?何?エロコスチュームお嫌い?」
「いやー、それは好きだけど・・・ってばかぁ!何言わせてるんだぁ!!」
私は自他共に認める強面で他人にはよく避けられがちなのだが、このニヤニヤした青年、全くたじろぎしないどころかグイグイ来る!とてつもない精神力の持ち主だ。
「それで・・・、今回お招きいただいたのはどういったご了見でしょうか?」
「!」
空気が変わった。彼の表情がニヤニヤから真剣に変わり、姿勢も丁寧で真っ直ぐになった。
切り替えを上手にコントロールできるのはポイント高いな・・・。
「いやね、この前の電話から君のことを気になり始めてね。昨日帰ってきた娘から色々聞いたんだ。後輩でとっても強いしとってもイケメンで色んな女子に言い寄られても、昔想っていた女のことを引きずっていて告白を断り続けている究極の義理堅い漢。あと究極のドS」
「最後のが一番気がかりになったのでは?」
「いやーそこはむしろ感謝したいところなんだけどね・・・。実はあの娘、高校以前はずっと女子校に通っていてね。男女共学の高校に入れてみたんだが初めはうまくいかなくてね。ある日、能力持ちの不良に襲われかけたが逆に護身用として隠し持っていた鞭で返り討ちにするとその不良がたちまち従順になってしまって、さらにその光景に快感を覚えてしまった娘が大暴走し始め、たくさんの不良を従えて学園の女王に成り上がってしまったんだ。私でもどうしようもなくって・・・・」
「そこはしっかりしなさいよぉ!!親御さぁんっ!!」
怒られちゃった。でも当然だ。何もできなかったのはこの不甲斐ない父なのだから。そして、娘を変えてくれたのがこの杉田君なのだから。
『父さん!!今日スンゴイ男子と出会っちゃったよ~☆』
あの時はまたM不良を見つけたのかと思って意に介さなかったが、よく考えれば娘の表情が今まで見せたことのない乙女の表情をしていた。そして昨日の娘の反応を見て確信した!
広子は!この年下の男を好いていると!!
「しかしそれでも娘は渡したくないとでも言いたいのでしょうか?新世紀になった今、そんな古くさすぎる考えで若者には伝わりませんよ。これは娘さん本人が抱えている問題です」
「・・・・・わかっている。だがわたしが理由にしているのはそれじゃない」
「?」
「“娘の命”を失いたくない!どんな時代になっても、この考えだけは古いとは言わせない!!」
「・・・・命?」
「杉田君、ここからのことは君の誇りに懸けて誓う、決して口外はしないことを! 娘から話は聞いている。君は例の地下都市『エスペランサブリテン』の関係者なのだろう?」
「・・・・・・・・」
青年は顔に少し影を落とした。自分の秘密を誰かに漏らされたのはあまり気が進まなかったのだろうか。
「どうか娘を責めないでくれ、聞き出したのは私だ。続けて聞くが君は将来、そのエスペランサの奥にある巨門を超えて異世界に行くつもりなのだろう?しかもただ行くのではなく、エスペランサの住人と共に遠征、つまり戦いに赴くということ」
「・・・・・・娘さんはその話をしてなんと?」
やはり察しが良いな、この青年は。
「あの娘は、君に付き添う覚悟を決めていた」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「だから頼む!!私と一緒に娘を説得してくれないか!!そうすればあの娘だって・・・・」
「お断りします」
青年の口から出たのは、非情な返事だった。
・・・・何故だ?
「何故だ!?君とて戦場がいかに危険かを知っているだろう?命の重みがどれほどのものかも・・・」
「娘さんの命を失いたくないと言いましたよね?それはそうだ。誰にだって失くしたくないものはあります。しかしあなたはこうも言った!彼女は付き添う覚悟を決めていたと!!あなたは、女性の一途な想いを覚悟だと言い切った!!あなたは心のどこかでもう認めているのではないですか?」
彼の言葉は、どれも重く、真っ直ぐで、鋭く、そして私の心に纏わり付いたボロボロの鎧を撃ち抜いた。確かに昨日、娘の口から“覚悟”という言葉は出なかった。私は彼女の態度そのものから“覚悟”を感じ取ったのだ。
「自分はもう、そんな彼女の覚悟を無視することはできません。命も大事ですが、女性の一途な想いを踏みにじることの方が、男として最も重罪ですからね」
・・・・・・・・・・これなのか、これが娘が惚れた男。
「さて、話の続きは俺と同じ後輩たちをつれて早めに帰ってきてドアの前で聞き耳を立てている娘さんとして下さい!」
ビクゥッ!ガタガタガタァッ!!
嘘ぉっ!!全部聞いてた?何これ恥ずかしいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃ!!!
繁さんとの話し合いが終わったあと、父と娘との話し合いの場を設けて俺は舞台劇場の座席でダラダラ~zzz。
「寝ちゃダメ寝ちゃダメ!!」
と唯に叩き起こされた。
「っはは。劇場の座席で叩き起こされる、か。前世でよく寝ちゃってたよな~俺」
「ギラ。思い出に浸るのは良いけど、こっちは激オコだよ?またたぶらかしてたでしょあんたぁ!!」
とプリプリ怒る好華。かわゆいの~。おっと爺出ちゃった。
あれからおさげな姐さん:夏樹さん率いる女性使用人たちときたら、エロファッションショーで俺がアドバイスのつもりで放った言葉が気に入っちゃったらしく、俺に対してより従順になっちゃったんだ。
「ギラ様!!私共になんなりとご命令を!!夜の世話でも、下の世話でも、テカテカなマット上の運動でも、ローションの用意でもします!!!」
「・・・・要するにあんたら俺専用の風俗嬢にでもなるつもり?」
「「「「はあい♥何でもお申し付け下さいませ、ご主人様♥」」」」
全員目が本気だ。キラキラしてやがる。メスの顔だ・・・。ってかそうはならんやろ!
「・・・・・・・なあ、俺って魅了の能力でもあったっけ?」
「「「「それこっちが聞きたいよ!!!」」」」
唯たちは予想通りの反応。
ですよねー。
「みんな~そろそろ帰る~?送ってく・・・・・よ?」
繁さんとの話し合いが終わったらしく、劇場の出入り口の扉を開いて入ってきた広子。
そして、自分んちに仕えているはずの女性使用人たちが俺にメロメロになっている光景を目の当たりにし、
「夏樹さんたちも、ついに入り込んだのね・・・・・」
仲間を見る目で"ようこそ、変態の世界へ"と歓迎する構えだった。
ああ、お前はそういう奴だよな・・・・・。
娘との話し合いも終わって、彼女が杉田君と後輩たちを連れて敷地の通りを歩きながら送っていくのを屋敷の窓から見届けながら、私は杉田君との話し合いを思い出して呟いた。
「・・・・・血は争えないな、楓」
乱場楓。
私の妻であり、広子の母。
彼女は難病を抱えながらも元気に明るくというか、普段からは病気を患っているという素振りすら感じさせない程の活発力を出していた。彼女の口癖はいつもこうだった。「幸せは絶対に大事にしな!!」と。
そんな彼女も広子を生んだあとに、わたしたちを置いて逝ってしまった。
ずっと忘れていたあの生命力溢れる言葉力、彼から漂う雰囲気そのものが楓とそっくりだった。
きっと広子も、私に似て彼の雰囲気に惹かれたのかもしれないな・・・・。
「親父さん何だって?」
一応、何を言われたかを広子に聞いてみた。
「・・・・・・・“それがお前の幸せへの道なら、後悔はするな、突き進め”だって」
それを聞いた全員がニヤリと口元を歪めた。
「良いお父さんを持ったね。私なんか男の子ばかり求めていて娘には気にかけない父親だったし」
「俺も最初の親とは良い思い出が無かったなー」
と人生の先輩であるエリと俺は語る。
「それで・・・・、頼みたいんだけどギラ君、っん!」
言葉を続けようとする広子の口を人差し指で止める俺。
「その前に!親父さんの前ではああ言ったが、今一度聞く。他のみんなもそうだ!」
俺の呼びかけに反応して、全員が後ろにいる俺を見てくる。
俺はみんなに問いかける。
「カラオケで俺の目標を聞いたのはわかっている。だからこそ俺はみんなに聞く。エリたちはともかく、唯を始めとした戦闘経験が薄すぎる者はここから先3年間は俺と同じ学校に通っているのだから行動を共にしてもおかしくはない。ただし3年過ぎた後はそうじゃない。俺は高校を卒業してからあの巨門をくぐり抜けて遠征に行く。戦いの日々が待ち受けているだろう。もしかしたら力及ばず死ぬこともあり得る。そういう危険な旅に行くことを俺はもう決めている。今の話を聞いて、誰がどう受け取ってどう考えようが構わない。聞かせてくれ!広子が繁さんに言ったように、俺と付き添う覚悟はあるのかを!!」
少し間ができたが、それも一瞬。
11人全員が沈む一歩手前の太陽を背に、俺から貰ったペンダントの弾丸を見せびらかした。
「キャプテン・ベイカーの名に懸けて、私は行く」
と、唯。
「ヘビー・ロコモの名に懸けて、俺も」
と、剛。
「番長の名に懸けて、あたしも」
と、奈々。
「毘沙門天に懸けて」
と、巴。
「姉さんの名に懸けて」
と、実央。
「薙刀に懸けて」
と、剣。
「父の正義に懸けて」
と、五十嵐。
「ブリテン王国に懸けて」
と、エリ。
「半蔵の血に懸けて」
と、ヒナ。
「バルフォアに懸けて」
と、クレア。
「甲賀の里に懸けて」
と、好華。
そして、広子も弾丸のペンダントを上げる。
「父さんの名に懸けて、異世界だろうとどこへでも、あなたと共に行きます」
そう言うと広子はみんなと同じ場所へ行き、顔を見合わせて声を揃えて叫ぶ。
「「「「弾丸の如く!!!」」」」
みんなの返事に、俺は笑顔で迎える。
「・・・・・お前ら、絶対打ち合わせしただろ?」
「ヤダな~ギラ~。素に決まってるじゃな~い」
からかうヒナを始め、一斉に笑い出すみんな。
「さて、みんなの言い分は分かった。俺は喜んで受け入れる。だが決めたからにはこの場にいる全員がここからの3年間は特訓の日々になるからな。覚悟しろよ。そのために広子、ここの敷地は訓練場に適している。だからこれからはここに通うことになるだろうからその時は繁さんにも話は通しておいてくれ。3年の間に娘さんを含めたみんなを一人前の戦士に育て上げるためにってな」
「OK.じゃあ父さんには未来の孫を見せられるよう頑張るって言っておくね☆」と冗談を言う広子。
「待て待て待て!そういうのはまだわからないまま言うのは良くないぞ!」
その時、場にいた全員がん?って思っただろう。
「ギラ、今“わからない”って言ったよな?お前にしては珍しく否定的じゃないよな?」
と、腰に手を当てる奈々。
察しが良いことで、そんな君は嫌いじゃないよ。
「あー、この際だからこの場を借りて宣言させてくれ。長い間俺は泉のことを引きずりっぱなしでみんなからの告白を断り続けてきた。エリたちは特に。だがもうそのケジメはこの前でつけた!」
さすがにこれだけは恥ずかしいから顔を赤らめてしまう俺だが、話を聞いて目をだんだんキラキラと輝かせていく彼女たちの前で堂々と声を張り上げて叫んだ。
「杉田義羅!!人生初の真剣な男としての責任を含めた未来設計の為にみんなと付き合う!!
まあ・・・その、何だ・・・!
(少しモゴモゴ)
全力でアプローチしてこい!!それに見合う答えを俺は全力で出す!!!」
「「「「「「やったーーーーーー!!!」」」」」」
元気いっぱいになった発育が暴力な女子たち(一人を除いて)が一斉に俺に向かって抱きついてきた。
俺は119歳の大人。今更女子たちの抱きつきに反応したりはしうほほほーい!たわわな胸をたくさん押し付けやがって!!全くけしからんではないか〜♪もう最高で〜す!!!
「幸せ男め・・・・」と、ツッコミ剛君の呟きを俺は見逃さなかった。
「おい剛!お前もエスペランサに飛んでいって、アンナを口説いてこいよ!!」
よし、存分にからかってやる!!
「な!?・・・・いや、でもあの人、聞いた話だと未亡人らしいし・・・・」
モゴモゴし、左右の人差し指をいじる剛。
「剛君。私、アンナとはよく話すことがあるけど。彼女、行為をする前に旦那を亡くしたんだってさ」
エリが出した耳寄りな情報に、
「んなっ!?」
ポンッと顔を赤くしてビックリする剛。
ほほう、なーるへそ。つまり彼女は"まだ"なのか。
「チャンスじゃねえか!アタックのNo.1決めて来いよ!!」
「・・・・お前なぁ・・・」
すると、実央がふと思い出したように疑問を口にした。
「でも聞くけどギラ、もしかしてこの中から・・・・むごっ!!」
最後まで言わせず、実央の口を塞いだのはエリだった。すると彼女はニヤリと俺を見ながら笑い、
「みんな〜!ここでさらに重要な情報〜!アンナの話によると、ギラが3年後に行こうとしてる異世界では〜」
あ、まさか・・・・。
「一夫多妻制が認められてるんだって〜」
とんでも情報を暴露しやがった!このサバサバ女王っ娘め!!
「「「「「「マジですかっ!!!?」」」」」」
驚きながらも嬉しがっちゃってるみんな。っておい!!
次の瞬間、俺を見る彼女たちの目は、完全に獲物を見る目に変わっていた。
「待てみんな。俺は確かに性欲丸出しな男だ。だが同時に節操を持ち合わせていると自負している。お前らが考えていることは、見境なしの色魔男像を求めていることになるぞ!?」
「よく言うじゃないかギラ。あの〜何だっけ、"英雄色を好む"って」
いつもは生真面目なあのクレアの口から出ちゃいけない言葉が出ちゃった。ヤバい・・・逃げ場が無い・・・。
「お、俺は英雄ってタイプじゃ、ないし〜第一これって~、“ま”なこと~死ねだし~」
俺の目が泳ぐ、じゃぶじゃぶと泳いでいく。お、俺は、決してこの子たち全員を相手にするつもりなんか、ないんだからね!!
「「「「「「好色、無節操、酒池肉林」」」」」」
「お、おいいい!何て言葉使ってんだぁ!!やめ・・・やめろぉー!!」
色々とたじたじになった俺に猛追撃してくる唯たち。
さらに極めつけは、
「ギラ殿〜!我々とLUME交換しましょ〜♥️」
と屋敷の方角からやってくる夏樹さんたちだった。
うん、三十六計逃げるに如かず!!
「ああ!逃げた!!」と奈々。
「捕まえろー!!」といきり立つ唯。
「逃げるんだよォォォーーー!!!」
逃げるギラとそれを追いかける女子たちに置いてけぼりを食らった俺と剣は、
「「・・・・一夫多妻制・・・・」」
と、呟いた。
「剣ー?」
と負のオーラを放つ五十嵐から剣に向けて殺意が送られた。




