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BULLETS(ブレッツ)  作者: 砂川 武
28/63

24発目 懐の深さは銀河級が一番。

 

 オーク戦争。


 それは、生物兵器として生み出された、腰が低い者もいれば普通に歩く者もいて、肌の色は様々だがどの人類のそれと合わず、知能はあるが残虐で醜悪で鈍く惨めな生物、“オーク”が世界中の敵として各地で大量に出現したことから由来している。

 この生物兵器は破壊する存在として、人を殺す道具、つまりナイフや鈍器、さらに銃火器を作れるほどの技術を身につけることができていた。その為、出現する度にそれらを作る材料をオークたちは略奪を繰り返していた。

 しかし、それでも人類は幸運であった。

 オークたちが軍艦までは作れて、戦闘機を作れる技術を手に入れる寸前で戦争を終結させることができたからである。

 戦争末期に、残ったオークたちはあるものを作るための材料を大量にかき集めていた。


 

 ミラージュIII。


 フランスのダッソー社が開発したデルタ翼が特徴的なこの戦闘機が、戦争末期にオークが搭乗していた2機だけ出現したのだが、それ以外は現れず、生産工程も途中で阻止させることができたため。オークが戦闘機を使いこなすことはなかった。もし阻止できていなかったら、戦争もまだ終わらなかっただろう。それどころか戦禍はさらに広がっていたに違いない。

 しかし、オークたちが略奪したミラージュを作る機材の材料は、まだ全て見つかったワケではない。生物兵器たちももういない。

 




 では、材料は誰の手に?






 日本の翔蓮神社にて。


 単純ではあったが、重みがあった渡辺泉の葬式を終わらせ、全員が渡辺一家に挨拶をし、帰る準備をしていた。

 俺はというと、最後に俊さんと二人で話をしていた。


「1945年の玉音放送で世界中を巻き込んだ戦争が終わってから167年か・・・・。二日前に公表されたオーク戦争に、日本が巻き込まれなかったのは君たちが阻止していたからなんだね」

「・・・・・・まあ・・」

「・・・・改めて戦争は酷いものだな。世紀をまたいでも続く醜い人類の欲望の現れに等しい。それを止めるのがまた、同じ人類。君はそんなジレンマを理解しながら、11年間も戦い続けていたのか?」

「・・・・・忘れたくても、忘れるワケにはいかないんですよ。あの戦争の意義を。確かに始まり自体が過ちの塊だった。それを止めるにしても戦いでしか導くことができなかった自分たちもまた、ヤツらと同じ罪人です」

キツい言葉かもしれないが、自分たちがやったことはそういうことだ。

何もかもが戦いで解決するワケではない。

そして誰もがその行為を肯定するワケでもない。

事実、自分自身が完全に肯定できないと断言するからだ。

「それでも、戦いによって生まれたものもあったんですよ、俊さん」

「生まれた・・・・・もの?」

「・・・・・彼らのあの顔が、何よりの証拠です」



俺はそう言って、唯や渡辺、奈々たちと昔の仲間たちが楽しげに笑顔で会話している光景を目に写した。

俊さんも俺につられて彼らを見た。


「『自分は大事な仲間の笑顔を守るために生まれて、今日も明日も戦っている』。泉が残した言葉です」


「・・・・・・そうか・・・・」






 さて、ケジメも果たしたワケだし、アンドリューたちを送ってからあいつらとも話し合いを・・・


「ギラっ!!大変だ!!」

 突然、焦りを込めた口調で叫ぶブラッキー。


「おいブラッキー!もう良い感じで締めくくりなんだよ!今更何だ?」

「まだ1部分が始まったばかりだろ!ってそうじゃなくて!今パキスタン政府から連絡が入って、紛争地域からC-5輸送機6機と戦闘機20機以上が飛び立ったそうだ!!」


「っ!!アイラ!パキスタン領空をスキャン!!」

「オッケー!!」

 アイラは右目を黄色に変化させ、静電気をバチバチさせながら能力を発動させて、パキスタンの空を飛んでいるとおぼしき飛行物体を突き止めている。

「・・・・まずいお兄ちゃん!輸送機の中身は戦闘車とゲリラたちで一杯。しかも戦闘機はあのミラージュIII!!」

 その戦闘機の名前に昔の仲間全員が反応した。


「行き先はやっぱりあそこか!?」

「うん、巨門・・・・・」


 ついに来たか・・・・。テロリストたちの武装蜂起が。あの異種族公表の影響で一応懸念はしていたが、予想よりも早く動いてきたな。

「どうするよ?ギラ」とトラ。

「・・・・・一応聞くけどみんな。スターリンたちエスペランサの住人はともかく、明日は都合が合うかな?」

 俺の問いかけに昔の仲間は各々自分で持っていた、武器をチラ見せして意思表示をしていた。


「私たちは学生だから、いつでも」とモスバーグM590のポンプアクションを動かす銀髪女ペティ。


「明日まで休暇を取っておいて良かったよ」とグロック19を手にするブラッキー。


「店の売り上げが減るけど、まあいいか・・・」と刀を腰に差すトラ。


「久々の戦場帰り、良いかもしれないね」とレイピアを片手に迷彩柄のバンダナを頭に結ぶエリ。


 クレアとスターリンは何も言わなかったが、それぞれの甲冑を遠隔操作で引き寄せてガチャンと着地させることで準備OKだった。

「それじゃ、全員一致ってことで良いんだな?」と俺が聞くと、

「待ってギラ。本当に全員に聞いてる?」と、ロングヘアを斜め下へ二つにまとめた女子、服部はっとりひながそう言いながら、俺に後ろを向くように促していた。俺が振り向くとそこには、唯、奈々、剛、巴、剣、五十嵐、そして広子のBULLETSブレッツのメンバーが俺の指示を待つように待機していた。

「あーみんな、今回の件は楽勝じゃない。戦争だぞ?そんなところにお前らを連れてくなんてことはできないからな」

 念を押してみるが、みんなこうだ。


「私は自分で飛んででも行くよ?」と人差し指に炎を灯す唯。


「あたしはスーパージャンプしてでも」と拳を握る奈々。


「戦争なら、元賞金稼ぎの私を使えば良いでしょ?」と2丁のUZIを用意する巴。


 ・・・・こういうやつらだからなー。

「おい、ツッコミ仕事してくれよ剛」

 と投げやりで剛に頼み込むが。

「俺たちに生物兵器とは戦えって言ったのに、テロリストとは戦うなって矛盾してないか?」

「誰がそこにツッコめっつったよ!」

 と逆に俺が剛にツッコんでしまう始末。

 この通り剛もやる気満々だ。

「ギラ。今更どこの誰が相手だろうがもう俺たちは構わねえよ。今回だって俺が突っ込む先は、ギラの敵に決まってる」

「一本取られたな、ギラ」

 剣の一言でメンバーのみんながどっと笑い出した。

「あーもう!わかったわかった!!ただしお前ら!!二式大艇に乗っている間、途中でぐずり出したら空中に放り投げるからな!!」

 ヤケクソ気味になっている俺だが、渋々とBULLETSブレッツの参加も決めた。でも予想した通りにその決定で最悪な展開に事が運ぶことになってしまった。俺が考えていた最悪なこととは。



「それなら!!私も連れて行って!!」



 ・・・・・彼女が参加したがることだ。


 渡辺は普段着に着替え、自分の刀を持って実家の玄関から姿を現した。

「ダメだ実央!お前は・・・」

「父さんは黙って!!」

 当然父親である俊さんは止めるが、娘の強気な反抗に押され、黙ってしまった。

「ダメだ渡辺。俊さんの言う通りにここに残るんだ」

「『自分は大事な仲間の笑顔を守るために生まれて、今日も明日も戦っている』。でしょ?」

 渡辺はそう言って俺に近づいてくる。

「その言葉はダメ!使って良いのは泉だけ。彼女の専売特許だ」

「姉さんは死んでる。だから私が姉さんの意志を引き継ぐ」

「君が引き継ぐ必要は無いんだ!わざわざこんな危険に飛び込むような・・・」



 パァァンッ!!



 その場にいた全員が彼女の行動に驚き、唖然としていた。

 平手打ちを食らって顔が横に向いてしまった俺は、顔を正面に向き直して見ると、

 

 彼女は、涙を流していた。


「・・・・・まだ私を遠ざけるつもりなの?」


「・・・・渡辺・・・?」



「熊堂会騒動の時だってあなた言ったよね!私は非戦闘員だって!あれって姉さんを意識して指示してたんでしょ!」

「いや・・・・それは・・・・」

 ご名答。実はあの時、無意識に彼女を泉と重ねながら指示していた。どこかで考えてしまうからだ。いつの日か、泉みたいなことが起きるんじゃないかって・・・・・。

「杉田君は何を恐れているの!?私が姉さんと同じ血を持っていて、戦いに目覚めて姉さんと同じ末路を辿るんじゃないかって!?そんな気遣いはやめて!!私をちゃんと見て!!私は実央よ!泉じゃない!!」

 

 ・・・・・今の彼女の言葉に反応したのか、俺まで涙を流してしまった。

 そんな俺の肩に両手を置いて、少し潤んだ俺の瞳を真っ直ぐ見て彼女は言った。

「お願い、あなたが母さんとの約束を守るつもりがあるなら、私にも約束させて。あなたが私を悲しませないように、私もあなたを悲しませないよう生き続ける、絶対に!!」

 

 その顔を俺は何度も忘れようとしていた。


 でも結局は無理だった。


 俺にとってその顔は、人生の暗い道を進むのに必要なかがり火の一つだった。しかもお気に入り。


 一度は消えてしまったその火が目の前で再び燃え上がっていた。


 俺は彼女がたった今見せたその覚悟ほのおを、


 ・・・・・・・もう手放したくなかった。


「・・・・・・破ったら承知しねえからな・・・!」

 

 彼女を思いっきり抱きしめた。彼女もまたそれに応えて俺を抱きしめ返した。

「それとこれも。私を名前で呼んで」

「ははっ、欲張りな妹さんだこと。よろしくな、実央」

「こっちもね、ギラ君」

 さて、そろそろ周りのこともなんとかしないとだな。

「みんな悪い。時間取っちゃってホントごめん」

「いやいや良いぞぉ~。中々のドラマチックなシーンだったな、ギラ」

 顔をニヤけさせている親父やその他の男性陣。そして俺と実央に嫉妬の目を向けながらほっぺを膨らます女性陣。あー嫉妬するみんなも可愛いったらありゃしない!

「まあ急ごう。ゲリラたちは待ってはくれない。おやっさん!ブリテンの自衛隊に連絡!直ちにエスペランサブリテンにて待機しろと。防戦は全てイギリス軍に任せるように!エン!軍部に連絡だ!ロッジにいる部隊はすぐに巨門に移動して防備を固めろと!」

「わかった!」

「Sir,Yes sir!!」

二人はさっそく電話で現地の部下と連絡をとり、指示を伝えていった。

「よしみんな!全員、二式大艇に乗り込め!!」









パキスタンから飛び立ったゲリラの輸送機の内の一機の中にて。

ここでは今回の武装蜂起に参加したゲリラの各組織のリーダーたちが作戦を確認しあっていた。

「いいか?巨門を攻めるのはまだだ。恐らくあそこの防備は俺たちが向かっていることでさらに厳重になっていることだろう。まずアシュボーンの町を占領しよう。必要なものがたくさん手に入ることだろう。それから俺たちに賛同している世界中のゲリラとテロの組織が一斉に飛び出しそこに集結。戦力を倍にしてからあの巨門に攻撃を仕掛けて一気に攻め落とす!」

「我らゲリラ連合総勢3000の兵、そして戦車に戦闘機がある!イギリス軍や自衛隊など恐るるにたらん!!」

『おおおおおおおおおおおおおーっ!』

無線を通して全ての輸送機内にあるスピーカーで組織全員に演説をしていた。そして、それに応えるように部下たちは雄叫びをあげている。





「はいはい、全部筒抜けですよーだ」


ゲリラたちの演説を聞きながら、俺たちは飛行中の二式大艇の中でアイラの感知能力を介して敵の動向を探っていた。ちなみに、両親とおやっさんと猪之助の4人は置いてきた。親父たちはともかく、さすがに現警視総監と現総理大臣を戦いに参加させるのは良くないからな。いくら戦場を駆け抜けていた時期があったとしても。

戦いの前に作戦を立てるのって大事だよなー。それだけで戦況が大きく変わっちゃう。デップーだってクレヨンでわざわざプラン書いてたし、クズマさんだってリザードランナーの群れを攻略するのに仲間たちと打ち合わせまでしていた。

まあどっちも全然プラン通りにいってなかったけど。

「よし、ペティ。コースをアシュボーンにセット!スピードアップ!」

「Yes sir!!」

「クレア!スターリン!唯!俺と一緒に来い!!」

俺は3人を連れて飛行艇の出入口まで来た。

「ギラ?何をする気?」

扉を開けて外の轟音で遮られないように俺は大声で唯の質問に答えた。

「この機体をもっと速くする!俺たちで押して速度を上げるんだ!ほら無線を!」

俺はガチャガチャとジェットパック付きアーマーを着ながら唯に無線機を渡した。

昔、事情があって巴と同じ賞金稼ぎになっていた時期があって、当時クレアとスターリンの3人でよく使っていた手段だ。

「待ってギラ君!それなら私も手伝う!!」

と、後ろでこっそりと話を聞いていた実央が名乗り出てきた。

「それは却下だぞ実央!」

「はい実央です!」

改めて俺からの名前呼びに嬉しがる実央。はいはい可愛いなコノヤロー。

「そもそもこれは君が飛べるかどうかじゃないと成立しない問題であってぇぇぇぇぇっ!!?」

終始大声で喋っていた俺だが驚いてさらに大きな声を上げちゃった。なぜなら、実央が突然飛行艇から外へ飛び出したからだ。俺たちがあわてて扉から乗り出して見ると、彼女は青白いエネルギーみたいなものを体から発生させて、唯みたいに両手両足からジェットエンジンのように放出して飛んでいた。

クレアとスターリンは兜を収納してまで口をあーんぐり。俺も唯も口をあーんぐり。

「問題は解決?」

飛行しながら聞いてくる実央。

・・・・・そうですな。





手段の内容はこうだ。俺とスターリンは艇体下面に、実央とクレアは上方動力銃塔の前後に、そして唯は尾部に引っ付いて全員で各飛行能力を最大限に引き出して機体を押し続けること。もちろん、機体がもたないなんてことはない。どんな圧力でも耐えられるよう強度はバッチリだ。

肝心なのは機内にいる乗員たちが大丈夫かだが・・・・。




「うがががががががががががががががががががががががががががががっ!!」

 機内では乗員全員が、機体のスピードアップによる圧力に耐えられるよう座席に座っていた。だが圧力初体験な奈々は声が漏れてしまうほど堪えていた。

「お前、パワー系な癖してこういうのは苦手なのか?」

「初めてなんだから仕方ねーだろ!そういうお前は・・・」

 剛、能力を使って自分にかかる圧力を無効化していてへっちゃら。

「汚ねぇ!!っ!!だけど巴ならわかるよな・・・」

「ん?何が?」

 経験アリなようでもう慣れた感を漂わせた態度を取っている巴。

「・・・じゃあ先輩」

 浅はかな考えだ。今の乱場広子にとってこの圧力は、

「あああああああああっ!これまた初めての感覚っ!快感っ!!」

 ただのご褒美である。

 奈々は他も見渡してみるが、全員が平静さを保っていた。


「やだこれ!!音を上げてるのあたしだけ!!?」


 そのようですな・・・・・・。




 さて、クレアとスターリンが使っているそれぞれの甲冑がなんで飛ぶことができるのか、そろそろ読者のみんなにも教えないといけないな。

 まずはクレアの甲冑からだ。21発目で設計図を書いた紙に甲冑に刻まれた紋章を記すと、甲冑が設計図通りの構造に変化する異世界の聖鎧『シュワーペン』だってことは知ってるよな?知らない?

 とにかく、その設計図を書く過程で飛行を可能にするには一つだけやることがある。それは飛行魔法の魔方陣を書き記すことだ。それで光る翼のようなものが発現してこの甲冑は飛ぶことができるんだ。

 異世界には一応魔法の類いはある。だけどそれを広くは使われてなかったらしい。使うとしてもこの飛行魔法と水を出す放水魔法だけで、あとは種族別で個々が使う特殊な魔法しかない。例えばエルフは医術や鍛冶のみで合わせて使う精霊魔法。サウルス族とかは意志疎通の為だけの思念魔法。向こうでの噂では召還魔法もあるとかないとか。


 異世界での魔法の原点は地中からなる"魔石"にある。


 その魔石を刺激するだけで火、水、氷、風などの事象を引き起こすことができるんだ。中でも特にすごいのが炸裂の魔石だ。火薬と似ているようで違うこの魔石は、爆発しても魔石自体が残るという、言わば"無限の火薬"とのこと。と言っても、あっちの世界では火薬の概念すら無いのだが。

 さらに言えば、これらの魔石が異世界で最初に発見されたのが地球に移動していた最中のことだということだ。エスペランサの住人の話によると、向こうでの生活は地球で言うところの種族がたくさんいるだけの中世時代となんら変わらなかったそうだ。

 要するに、あっちの世界での魔法は遅れすぎているということだ。

 だがエスペランサの住人たちはこれらの魔石を持ち運べるだけ運んで、あの地下で長年研究を重ねた結果、それらを加工する方法を編みだし、生活必需品や、車などのエンジン、さらには武器にも応用して製作することができる異世界だけの技術を生み出すことに成功した。

 そしてこの魔石こそが、スターリンが使っているゴテゴテな甲冑の飛行能力の正体なのだ。

 構造はこうだ。適量の風を起こす魔石を詰めた筒状の金属を両足のと背中に取り付ける。そして甲冑内に埋め込んだ電気を起こす魔石を動力源として、そこから電線を繋げて電気で魔石を刺激させてジェット噴射のように飛ぶっていう仕組みだ。

 そして二人の甲冑は実際のところパワードスーツとなんら変わらなく、中身は機械仕掛けになっていて、重いものも簡単に運べる。

 ちなみにこの2人の甲冑が俺の大好きなクローン・トルーパーのアーマー寄りなのは俺と同じくそれが好きだからだ。類友だ。

 そして、ここからは無線を介しての俺たちスピードアップ隊と機内で戦闘準備中の仲間たちとの会話中でわかったことだが、実央の能力はこの世に生ける生命全てを繋ぐ"霊気"を操り、時には具現化できるとのことだ。












 読者のみんなは、こう思ってる?

 あれ?ゲリラたちが向かってるアシュボーンってかなりの町だし、超ヤバいじゃん!市民に避難呼び掛けなくて良いの?あと世界中からくるテロリストとゲリラのこと、ちゃんと考えてる?


はっはっ、その心配はないからなー。何故ならもう手は打ってあるし、そもそもあいつらあそこの状況に騙されてるから。




ゲリラたちがパキスタンから飛び立ってから8時間後のアシュボーンにて。


ゲリラの輸送機が町の東の外に着陸すると、戦闘員が中から一斉に飛び出して、戦闘車を伴って町の中心に向かい始めた。

意気揚々と進軍していたゲリラ3000名はアシュボーン・パークを抜けた後、セント・ジョン・ストリート沿いで町に入ると様子がおかしいことに気づき始めたのだ。

人々が行き交う音は聞こえるのに歩いても歩いても人影が見当たらない。よく見ると音は全て町中に設置されているスピーカーからだった。道路の車もパッパパッパ鳴り響いてるだけで動いていない。市場も建物も灯りがついているだけで中には誰もいない。店には商品も食べ物もないし、宝石店なんかダイヤモンドがあると思えばそれは偽物だったり。町中を部下たちに調べ上げさせたが全く何も無かった。

「おいどうなってる!ネットでもここは人が行き交っているし店も営業って表示されているのに!!」

ゲリラ連合のリーダーたちはパソコンを調べながらもうメチャクチャ頭にきていた。そこへ町に仕掛けられていたスピーカーから声が聞こえてきたのだ。


『は〜い、ど〜も〜ゲリラのみなさ〜ん!!わざわざパキスタンからのご足労、誠にありがとうございま〜す!!当町はあなたがたの来訪を心より感謝いたしま〜す!!つきましては我々よりプレゼントを用意しておりま〜す!!鳥籠という名のプレゼントを・・・・』


「トリカゴ?」

 それだけは日本語だった為意味がわからなかったが、一つだけはっきりした。

 ここにはもう市民はいない。きっとイギリス政府が仕組んで本当は封鎖していたのを隠していたんだ。我々はまんまと騙されてここに来てしまったんだ!

 すると、ある轟音がちょうど我らが進んでいる西の方角から聞こえてきて、それは段々近づいてきていた。

 日が落ちている為何なのかが全く分からなかったが、轟音と共にオレンジ色の光がパパパっと点滅して、正体がわかったゲリラ連合のリーダーたち。








ゲリラたちがアシュボーンに到着する6時間前の二式大艇にて。


機体はすでにイギリス上空を飛んでいた。

「ところでペティ、義眼の調子はどうだ?」

「お陰様で、もう絶好調」

「Woo〜.それは最悪だな、ゲリラにとって。ニヒヒ」

操縦席で何やら楽しげに会話中のギラとペティさんことペトラ・ロマーノという私と同じ16歳の長身銀髪ロングヘアの女子。

イタリア人でギラ君の昔の仲間だと聞くけどあの二人、妙に気が合ってるような・・・・ムムッ。私との約束はほっといてもう他の女とだなんて。

「嫉妬しちゃうでしょ?彼の周りに女がいると」

私がこっそり操縦席を覗いているのに気づいていたフィアさんが、巴と一緒に私の近くに来た。

「・・・・・・随分と親しげだよね、あの二人」と唯。

「ギラが正体を隠して賞金稼ぎを装っていた時期があったのは知ってる?」

「それって、5年前の海戦の後のことだよね。奈々から聞いたけど、その後、ギラについての噂がパタリと消えたって」

たしか、あの暗黒物質が原因で・・・。

「うん。本当は敵の支援組織を潰すのが目的だったんだけど、もう一つ理由があったの。ギラは仲間内でとっても貴重な存在だったわ。リーダーではなかったけど彼がいるだけで仲間の士気が上がってたんだから。そして彼もそのことに気づいていた。だからこそ暗黒物質の件で悩まされたの。どうしても治らない、あと数年しかない命だということが皆にバレたら間違いなく士気は下がってしまう。そうなることを恐れてギラはしばらく賞金稼ぎになって正体と体のことを隠したの」

「そして私は、ギラが賞金稼ぎになっていたその時に仕事仲間としてチームに加わったの。ペティもそうで彼女は女副官的な立場でチームに参加していたわ」

それで、あんな感じに・・・・・。

「あの海戦までは私が彼の隣でよく戦っていたんだけどね〜」とフィアさん。

何それ、羨ましい。

「もうすぐアシュボーンに到着だ。後ろでろごちゃごちゃ喋るのはその辺にしてくれよ〜」

 バレバレか・・・。


 機体が広場に着陸して外に降り立つと、町には誰もいなかった。市場にも、車にも、建物も中も何もかも人っこ一人もいなかった。

「これぞまさに、ゴーストタウンだな・・・・」

同じように飛行艇から降りた剛君が町の風景を見て感想を漏らしていた。

「こうなることを予想して、町を封鎖してあの異種族公表をやったのか?」と奈々がギラに聞いていた。

「この町を狙うかは確率が低くて、真っ先に巨門を攻めるんじゃないかって考えられてたけどな。だけど万が一に備えてあの巨門周辺の町は秘密裏に封鎖していたのさ。見事に的中!これで市民の心配はせずに俺たちは思いっきり戦えるってワケだ」

「それで?作戦はどうするの?」

次々と出てくる色んな個性を持ったギラ君の昔の仲間の中から、いかにもくノ一な二人が出てきた。質問したのは黒髪ショートカットの方だった。いや、くノ一の前にあの格好は・・・・・。

「「「・・・・・・対魔忍?」」」

「「OK.言いたいことはわかるから、その先は絶対に言わないで」」

二人のスーツが二人のボディラインをスンゴイ強調しているものだから、私たちはつい声に出してしまった。

「本当にねぇ、何でこうも格差社会があるのかなぁぁっ!!」

「「ウワッ!?」」

二人のくノ一の背後をとって、一瞬で腕を回して二人同時に胸を揉みまくっていたのは、巴さんだった。

どうやら昔馴染みが胸をおっきくして現れたことが、自分の胸も気にしていたこともあってそれが引き金になってしまったらしく、いつもは冷静な彼女が珍しく感情を爆発させていた。

それを見ていた私や唯、奈々は自分たちの胸を見て身の危険を感じ、知らんぷりを決め込もうとしたが時すでに遅し。

「知らんぷりをしても無駄無駄ぁっ!!貰えないならせめて揉ませろぉ!!」

 彼女はキラーンと目を光らせ、ものスンゴイ勢いで飛びかかってきた。

「「「うぎゃあああああああ!」」」

私たちは悲鳴を上げるも、巴さんに襲われることはなかった。逆に巴さんが襲われていた。ギラ君に。

「全く、お前にはお前の魅力がちゃんとあるだろうが。貧乳は?」

「ス、ステータスぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

憤っていた巴さんを大人しくさせるためなのだろうけど、無表情とはいえ女の子の胸を後ろから揉みしだいている彼には少し引いてしまった。

巴さんはすっかり骨抜きにされて、顔を赤くしたまま倒れ込んでしまった。ビクッビクッとし悶えながら。

「あらら、ギラってば本当にそういうところは容赦ないんだから。それでいてよく自分の貞操を守っているよね〜」

ショットガンを肩に乗せながらペティさんがやれやれ気味な言葉を投げていた。

「貞操って、ペティさん・・・・もしかして・・・・?」

私の途切れ途切れな問いかけに、彼女は笑顔で制して答えてきた。


「お察しの通り。私もギラにホの字よ」

「お前その表現もう古いぞ?」とツッコむギラ君。

「おっと、あたしたちも忘れて貰っちゃ困るね!」

「ちょっとぉ!私もぉ!」

さらにはくノ一二人まで名乗ってきた。


このやり取りを見ていた私を含めた女子全員がこう考えたであろう。


“この男、どこまで罪を作ってるんだ?”と。


 そして私はというと、こうも考えていた。


 “何故私は、この男に惚れたのだろう・・・”と。


 いや、今まで見せていた彼の態度が全てを物語っていたのだろう。

 ギラ君には誰に対しても自分を通す決して曲がることのない精神がある。私の父に対しても態度こそ変えてはいたがそれは初対面の大人同士でのこと。あの時の真剣な眼差しは思い出すだけでもまだドキドキする。フィアさんが言っていたように、仲間内での彼の人気の秘訣がそれなのだろう。


 隠し事をせず、ありのままの自分を受け入れてくれる、


 100年で培ってきた彼の包容力に、その懐の深さに、


 “私たち”は惚れてしまったのだ。



「まさにハーレムだな、ギラ。もういい加減認めて一夫多妻を受け入れたらどうだ?」

と、アンドリューさんが余計な入れ知恵を挟んできた。

「・・・・・今は作戦に集中だ。それよりアンドリュー、アンナとカーリンを連れてエスペランサに戻っていてくれ。あとは俺たちだけでなんとかする」

そう言ってギラ君はウィリスを創造して、アンドリューさんに行くよう促している。

「おいおい。ここまで来て戦わず穴に籠ってろって言うのか?」

「万が一の時の為だ。いいから早く行けって」

不満そうなアンドリューさんだったが、ギラ君に説得されて、渋々と二人を連れて車に乗り、走り去っていった。

「うっかり死んだら承知しねえからなー!!」

と、捨て台詞を置いて。



「アンナさーん!!またお会いできたらその時はお茶でもー!!」


 突然、走り去る車に剛君はウキウキな調子でアンナさんを呼んだ。


「じゃあその時にまたねー!!」


 剛の誘いに遠くからでも快く答えたアンナ。


「お前・・・、アンナと何かあったのか?」と質問するギラ君。

「ああ、いや・・・そのなー」

 ・・・・・・・ほほう・・・・。

 顔を赤くしてしどろもどろになった剛を見て、ギラ君や私はもちろん、ちょうど機内から出きったみんなが同じ反応をしていた。

 


「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!!みんなゲスな顔してやがるぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」


 剛君の気恥ずかしさ混じりのツッコミが、アシュボーンの町に響き渡った。



 



 装備を整えたみんなをアシュボーンの中心に集め、作戦会議を立てた。


「よし、計画はこうだ。アシュボーンの町に、ゲリラたちを誘い込み、俺たちだけで、制圧する」



俺はみんなに作戦の内容を伝えると、そのままスピーチを付け加えた。


「去年、俺や泉を含めた仲間とでオーク戦争を終わらせた。だが同時に負の遺産も残した。ゲリラたちが持っている武器・弾薬、そして兵器。これからその遺産の一部を片付けることになる。各自、やるべきことはわかるな?ゲリラ総勢約3000名と戦車6両に戦闘機25機を、俺たち28人で倒す。今回の戦いで全てが終わるワケじゃない、大量に略奪された武器はまだ世界中に残っている。だからここで命を懸けてはダメだ。ヤバくなったら逃げたって良い。気をつけろ、お互いを守って戦え」


 そして、俺はみんなに円陣を組むように促した。

「俺たち野球児でもないのにか?」と剛からツッコミを受けたが。

「一番野球児に近い頭をしているお前が言えるか?」

 と俺は返し、言えてる~と一同の笑いを誘った。

「まあ折角だし、組もっか!みんな!!」

 エリの賛同で、全員が笑顔で俺と一緒に円陣を組んでくれた。


「全員生きて、家に帰るぞぉ!!」

「「「「おうっ!!」」」」





そして今、二式大艇を操縦し、轟音を立てて町の中心に集結しているゲリラたちに向かって急降下しながら俺は、無線でチーム全員に呼び掛けた。


「さあ野郎共!勝負に出るぞ!!」



そして、俺の呼び掛けにチーム全員が無線越しに答えた。



『『『『Sir,Yes sir!!』』』』





 夜戦の、始まりだ。










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