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BULLETS(ブレッツ)  作者: 砂川 武
24/63

21発目 やっぱりこんな異世界があったら良いんじゃない?って考えちゃうよね。



 未確認生物みかくにんせいぶつ


 それは、目撃や伝聞、写真などの情報はあるが、実在が確認されていない生物のことを言う。日本ではその生物を総じてUMAユーマと呼ぶ。ネス湖のネッシー、ビックフット、チュパカブラにまだまだたくさんいる。しかし、こういったものは大体がでっち上げで、最終的には夢を壊すようなことになる。

だが、"未確認生物"自体はまだ"存在している"と言えるのだ。ある動物の新種を見つけることが可能なのが良い証拠だ。

 全世界の既知の総種数は約175万種で、このうち、哺乳類は約6,000種、鳥類は約9,000種、昆虫は約95万種、維管束植物は約27万種とされている。

 この数世紀にわたる懸命な努力にも関わらず、人類は地球上の生物種のおよそ86%はいまだに発見されていないか名前が無いと言う説がある。

 そして22世紀に入って能力者の存在が知れ渡っている“進化の世紀”の今の時代。未確認生物の存在を否定できる根拠はますます無くなってしまった。

 今ではその“別の発想”を主張する学者がたくさんいるのだ。



 “存在するのは、人類の世界だけではない”と。





 イギリスに来て2日目。

 ロンドンはフィアと内匠総理の声明を待ちわびている国民で混雑していた。

私は奈々、巴ちゃん、乱場先輩の4人で、ギラと一緒に寝ていたバッキンガム宮殿の部屋で彼が置いていってくれたホログラムプロジェクターでテレビ中継を見ているところだ。ちなみにテレビ中継に映っている場所はトラファルガー広場だ。ここで声明を発表することになっている。そのため舞台が用意されてその周りにおびただしい数の観客が集まっている。だが私は、肝心なことに気付いた。

「そういえばギラは?もしかしてテレビ中継に映ったりするの?」

「もう映ってるよ」と巴ちゃん。

「え、どこに?」

「よく見ればわかるよ」

巴ちゃんの言うとおりに画面をよく見ると、確かにいた。ただ場所が変だった。

「何で音楽隊に混じってるの!?」

しかもガチだ。広場に並んでいる衛兵の音楽隊と同じ制服を着ているし、ベアスキンの長帽子被ってるし、楽器も持ってる。

「混じってるんじゃなくて元々音楽隊の一員として参加する予定だったから、あれで普通なの」

「案件に深く関わってるってそういうこと!?」

「ううん、事情はもっと深いから・・・」

それにしても、ギラが楽器を吹けるとは知らなかった。確か持っているのはホルンっていう金管楽器のはず。音楽が好きなのは前から知っていた。この前なんかカラオケで色んな曲を熱唱していたが結構上手かった。まさか経験者だったとは。

しかし変だ。ギラは人生のほとんどを海外で過ごしたって自分で言っていた。戦いに明け暮れていた感じなのに楽器を演奏するほどの腕があるのはおかしい・・・。

しばらくすると、指揮者が用意された指揮台に上って指揮棒を構えて音楽隊に合図を送った。そしてギラを含めた音楽隊員たちが合図に反応してそれぞれの楽器、ではなく足踏みの構えを始め、指揮者が振り始めて曲をスタートさせた。



『We Will Rock You』

この曲は、イギリスのロックバンド"QUEEN"の楽曲である。なぜ、この曲が日英会談の催しに使われているのか。その理由はただ流行が再発したワケでもなければ、演奏者の記念日とかでもない。

"ブリテンの奇跡"事件。この出来事が起きてる間、イギリス国民は事件の首謀者の仕業で毎日が見張られるというとても窮屈な時期だった。王女が脱出に成功した暁に首謀者がしたことが明るみになったのでは国民を解放せざるを得なくなるからだ。だが軍隊に見張られている日が続くというのはとても辛い。まるで別の国に占領されてしまったような状況だったという。そして軍隊の一人一人もまた嫌な心境であったそうだ。本来守るべき国民を監視の対象にだなんて馬鹿げていると。イギリス全体の心が沈んでいる中、各地のテレビ放送が割り込まれ、ある映像が流れたのだ。その映像にはイギリスの人々に向けた励ましの言葉と『We Will Rock You』が歌詞付きで流れたのだ。人々はその映像の言葉と音楽に突き動かされ、ある人は家の外に出て人を集めて、軍隊は自分の武器を捨てて次々と歌い始めた。やがては島全体が揺れたのではないかと思うくらいの大合唱へと変わった。この歌は今日まで"奇跡の曲"とされ今もイギリスの人々の支えとなっているのだ


そして今日、その曲をテレビで世界中継されている中で演奏されてるものだから、アクセス数がとんでもないことになっているに違いない。囲っている観客たちにパレードを予定しているらしき通りの脇にいる観客たちも曲に合わせて足踏みし、そして歌い始めている。

私は当時のイギリスの人が携帯で撮っていた映像が今も動画サイトに載っていて、それを視聴したことがあるが今まさにその映像と同じ光景が出来上がっている。





「思えば、あの曲を使って映像を流したのって、ギラの仕業だったんだね・・・」

私がしみじみに呟くと、巴ちゃんがそれに応えた。

「そう、フィアのお願いを聞いてね・・・」

そして、噂をすれば金髪ロングのカツラを被ったフィアと内匠総理とイギリスのランドン首相が曲にノリながら広場の舞台に現れた。

曲が終わると共に拍手が鳴り響く。そして二人の首相が揃って演説を始めた。

『皆さん、おはようございます。今日までに、我々の国では様々な困難がありました。事件、国家の乗っ取り、そして国家の復活。どれも大事な試練であり大事な犠牲もありました。決してこれらのことを忘れてはなりません!』

『その通りです!そしてそのセリフは世界にも向けて言えることです!皆さんのなかで、ある噂を信じている方もいますでしょう。ひとつ昔に世界では、戦争が起きていたと!』

二人の首相は本来丁寧な英語で演説をしているが、それだと私たちにはわからないと考えたのか、ギラが気を利かせてかれてホログラムプロジェクターに翻訳機能をつけてくれた。二人の英語を即座に吹き替えてくれているので助かる。


この演説は世界が見ているのだ。あらゆる世界がこの中継を見ている。



『今日まで決して公にすることは憚れていましたが、とうとう発表する時が来ました』とフィアも演説に加わってきた。

で、次の瞬間、二人の首相とフィアが一斉に声を張り上げて宣言した、堂々と世界に。



『『『実際に戦争は、ありました!!』』』



『皆さんどうか心して聞いてください。この戦争は十数年にも渡り、去年の初頭にようやく終結しました』

『しかし、この戦争が公にできなかったのは、あまりにも深すぎた"人類の業"によって起きてしまったからです!』

『21世紀末、世界の年間行方不明者数が急激に増えたのはご存じでしょう。その実、我々が気付けなかった犯罪が行われていたせいなのです!』



『その犯罪内容とは、【生物兵器"オーク"を製造するために世界中から約100万人を拉致】というものです』




・・・・・・・・・・・。


世界は沈黙した。



私たちも。


なんとか意識を戻して、フィアが証言した内容を思い出そうとした。

・・・・・・生物兵器・・・・。

私は熊堂会の騒動でギラが生物兵器の存在を知ったときの反応を思い出していた。

21世紀末の世界の年間行方不明者数の増加は確かに有名だ。しかし家出が流行ってる、などとはっきりした理由が無かったことから迷宮入りしていた。でもそれがあの"ウルフルズ"みたいな生物兵器を、それも十数年もかかった戦争の原因となるには・・・。

「・・・嘘だろ、じゃあ拉致された人って・・・」

奈々が答えを呟く前にフィアが広場の舞台で答えた。


『・・・ただ、ただ残念に思うことしかできません。拉致された約100万人の人々は悉く実験台にされ、もうこの世にはいません』






王女の発言に無言で答えるしかない観客たちに私たち、そして世界中の人々。




『私たちのグレートブリテン王国を襲った独裁者ランドルフ・スコーンも、その犯罪に関与していました。私たちの国も、その犯罪に間接的被害を受けていたのです。人類は人類の負の業によって混乱に落ちるところだったのです』

とランドン首相がそう付け加えると。

『しかし!我々人類は助けがあったからこそ!この困難に打ち勝つことができたのです!!』



・・・・・・・・助け?


私は内匠総理の言っていることが理解できなかった。"人類"が助けがあってと言っている意味がわからない。考えすぎだが、その助けをギラに当てはめるとしたらおかしい。彼も人類であるからだ。

そうなると、総理が言っているのは"人類ではない何かの助け"があって困難を乗り越えたと・・・・!?



『ある学者たちはこう主張しています。"世界にいるのは、我々人類だけではない"と!・・・・・・・・・・ええ、そうです、世界は私たち人類だけではないんです!!』

フィアはそう宣言すると、広場に設置されている特大のホログラムプロジェクター画面の方に手をやった。画面はフィアの動作に合わせて、ある山の麓が映し出された。

『皆さん、こちらの画面に映し出されている場所はペナイン山脈に含まれるピークディストリクト国立公園とランダル・サンディブルック・ロッジズの間に位置する山の斜面です』

 映像をよく見ると画面の脇にはなんと自衛隊のCH-47JAチヌークが何台もエンジンをつけたまま待機していたのだ。確かあそこはイギリス政府の意向で何故か閉鎖されていたはず・・・。

『私フィアは11年前の事件で、ある日本人の少年に助けられました。その少年は当時、この山である妙なものを見つけました。事態が収束したあと、彼と共に秘密裏に調査したところ、ついに“彼ら”を見つけたのです!』

 すると、映像の中の山の麓の上空にゴロゴロと雷雲が発生し、一筋の雷がバリリッ!と落ちるとそこに銀色のスーツ・・・いや、鉄でできたスーツを纏った誰かがいた。顔まで覆っているから初めは思い当たらなかったが、その“雷”で気づいた。

「・・・アイラ、ちゃん?」と答え合わせをするように私は巴ちゃんに聞いた。

「正解」

 と笑って答える巴ちゃん。

 メタルスーツを着た巴ちゃんは次に手をペナイン山脈の方に掲げた。すると、山の斜面が突然光り出したかと思うと急に轟音と一緒に土埃が立ち始めたのだ。

『我々は彼らと協定を結び、彼らが我々世界中の人類と共存することに協力を惜しまない!代わりに彼らの助力を得て6年前のグレートブリテンの奪還を成功させることができました』

 ランドン首相が演説を続ける中、現地の中継で土煙が消えると山の斜面に巨大な鉄の扉・・・いや、門が露わになったのだ。次にその巨門からガチャガチャと音を立てて、絡繰りのように門が開き始めたのだ。

「・・・奥から何か出てきた・・・?」と乱場先輩。

 ペナイン山脈の巨門が開き終わると、中から甲冑を着た集団――中世の軍隊が足並みを揃えてザッザッザッザッと前進し始めたのだ。列の中には異様に背が低い甲冑兵士など明らかに“ファンタジーの世界にしか居ないはずの存在”のものまで混じっていた。さらに追い撃ちをかけるように奥から10mを超えるものも含めた巨大な生物がぞろぞろと出てきた。普通なら信じられない光景だが、私たちはすでに日本で経験済みだ。だからこそ、この事実を目の当たりにして落ち着いてられたのだろう。観客の中には驚き過ぎてレスキューされている人まで、出始めている。おそらく世界中で同じことが起きているに違いない。

 巨門から出てきた軍隊が次々とチヌークに乗り込み、収容が完了した輸送機から順に飛び立っていく。行き先はおそらく、ここだ。

 しばらくすると中継が変わり、チヌークの群集たちがチャーリング・クロス・ロードのギャリック劇場辺りで降り立ち、各後部ランプから先程収容された甲冑集団が出てきた。

 すると、ギラを含めた衛兵の音楽隊が演奏をスタートさせた。町からは各地に設置されているスピーカーを通して演奏が響き始めた。そして、観客たちが演奏に呼応して甲冑軍団を迎えるように歓声と拍手をし出した。


 パレードだ!パレードが始まったんだ!


 甲冑軍団が広場に向かって行進する中、首相たちは演説を続けた

『彼らの歴史は162年前の1950年に始まります。ゴホン。ある世界の惑星では我々地球のような環境が存在しながらも、漫画・小説・アニメーション・映画にしか存在しない生き物たちが生息していました。この場でこういう事を言うのもなんですが・・・、彼らがいた世界には邪悪な存在がおり、彼らはその存在を抑えきれず呑み込まれてしまったのです。唯一生き残る手段を考えに考え抜いた結果が・・・!』


『“別の世界に難を逃れること”です』


 と、ランドン首相に代わってフィアが続いた。

『その世界には魔法も存在しており、彼らは禁術とされていた空間魔法を使って別の世界への道を作りました。しかし苦労して繋いだ道は行き先も選べず、繋ながった先がペナイン山脈の地表から約13kmの位置だったのです!彼らはトンネルを掘り続けて約12年、ようやくこの地球上に出ることができました。ですが地球上のことを調査していくにつれ、彼らは自分たちの存在が架空のものとされていることを知り、“今、何も知らないまま地上に出れば彼らは混乱してしまう”。そう考えた彼らの指導者たちは、ペナイン山脈の下に地下都市を築くことを決めたのです』

『そしていつの日か、自分たちの事情を理解し、地上にいる国々と共存できるよう頼める協力者が現れるのを待ち続けて155年。ついに、彼女と出会ったワケです!』

 さらに続けた内匠総理が視線を彼女に送りながら宣言した。

 そして丁度、甲冑軍団の最初の部隊が広場に到着し、そして北側の空からは4機のチヌークに吊られた体長10mを越えた生物が運ばれてきた。その生物の正体が、地球上では大昔に絶滅したと言われる"恐竜"で、その中で最も有名な肉食恐竜:ティラノサウルス【通称:T-レックス】だったのだ。地上に降り立つと周りの観客たちがもの凄い勢いで離れた。当然だ、みんな絶対恐竜が暴れだす園地が舞台の映画を思い出してるに間違いない。観客の反応にT-レックスは落ち込んでいるようにも見えた。舞台にはフィアたちが説明していた別の世界から来た代表達が集まっていた。フィアと二人の首相は彼らの傍に行き、それぞれ一人一人と握手を交わしていった。


 その映像が流れると、私は泊まり込みの時にギラが言っていた言葉を思い出していた。


 “お前らはより大きな世界の一員になったに過ぎない”。


 すると、巴ちゃんが身を乗り出して、不敵な笑みを浮かべながら呟いた。


 そして同じ頃、演奏を続けていた音楽隊にいる杉田義羅がちょうど曲の休みに入っていて、偶然にも細川巴と同じセリフを不敵な笑みを浮かべながら左目を閉じて呟いていた。




「「Fantasy,welcome to the earth.(ファンタジーよ、ようこそ地球へ)」」






『彼らがその異世界から来た、各種族の代表の方々です。これでも極一部なのでご了承を。ではご紹介いたします。では左から聖オーク代表のヘムキン・シャガール、ミノタウロス代表のカムジュ・ナダール、ケンタウロス代表のトルード・カトー、エルフ代表のアンナ・サターシャ、ドワーフ代表のカーリン・アーケン、人間代表のアンドリュー・シェリフそしてあちらにいます皆さんが恐竜だとお考えになっている方はサウルス代表のベルダン・メナテルローです』

「え、名前あんのかよ・・・」とフィアの紹介に驚いて呟いた奈々だった。

 私もビックリだった。あの恐竜はてっきり彼らにとっての乗りこなす馬みたいな存在だと考えていた。

 代表の人たちを紹介された順で見てみると、聖オークは巨体でオールバックの髪に牙を生やしている。ミノタウロスは牛の頭と足と尻尾に屈強な肉体に剛毛を生やした感じだ。ケンタウロスは人間の上半身と馬の首から下の全身の組み合わせで馬の耳を持っている。エルフは長耳に金髪ロングヘアでイメージ通り神秘的な雰囲気を漂わせている。ドワーフは背が低いが生やしている髭が剛健さを一層際立たせている。

『さらに・・・!』

フィアが続けると北側の空から今度は2つの何かが近づいてくるのがテレビ中継画面が捉えた。

その2つの人型の何かは広場の舞台に向かってもの凄い勢いで同時に着地した、しかもポーズを決めて。

これは確かあれだ、アメコミヒーローがよくやってる・・・、


「Woo〜スーパーヒーロー着地〜!あれ膝にくるんだ。マジきついのにみんなやる。あたしもだけど」と奈々が拍手しながらどこかを向きながら言った。

・・・・・・それ言っちゃダメでしょ・・・。


そのスーパーヒーロー着地をして登場した二人はそれぞれ銀色と銅色のガッチガチな甲冑を身に纏っている上、顔も兜で覆っていて性別もわからないし、背丈も違う。銀色甲冑の方は普通の身長なのだが銅色甲冑の方は小さすぎだ。ただ妙な点が一つだけあったのだ。二人の兜の除き穴のデザインが明らかにあの星戦争の複製兵士が使っていた第2ヘルメットのファインダーと同じだった。さらによく見れば二人の甲冑のデザインもどことなくあのアーマーに似ているような気がするのだ。ギラがその作品を見せてきたから今は分かるのだが、その兵士が着ているアーマー・スーツをつい最近私たちの前で堂々と纏って戦っていた日本人がいた・・・・。

音楽隊の方に目を向けると、いつの間にか演奏は終わっているし、ギラの姿が見えなかった。

『世界的に有名になってます数々の都市伝説の一部、"戦う背がとても小さい甲冑戦士"に"空飛ぶ甲冑騎士"。この都市伝説の元になった存在がこの二人なのです!彼らもまた異世界から来た者で、名前は本人の希望で伏せますが、ドワーフ族の男性と人間の女性なのです』

『ちょっとぉ!?それは言わないはずじゃ!』

銀色甲冑の中から女の人の声が漏れていた。どうやらフィアは本人の許可無しに喋ったようだ。銀色甲冑はぽかぽかとフィアを叩く素振りをして観客たちは笑いを誘ってしまっていた。

『では、本格的な調印式を行った後、ふれあいの場を設けるので観客の・・・』

『フィア王女、会いたかったですか?』

 突然誰かがマイクでフィアの喋りに割り込んだかと思ったら次の瞬間町中から花火が打ち上げられ、曲が流れ始めた。


『Shoot to Thrill』

 オーストラリアのロックバンド、“AC/DC” の楽曲である。あの鉄男の続編映画の登場シーンに使われたことで有名だ。これを流すということは誰かが現れるということだ。


「・・・やっぱり出ちゃった・・・」

 と巴ちゃんが呆れ気味に呟いていた。

 窓を見てみると、何かが空高く浮遊しているのが分かった。曲が見せ所になるとそれに合わせて降下し始め、最終的にトラファルガー広場の舞台の中心にまたもやスーパーヒーロー着地でキメた。降り立ったのが誰かはもう見当がついていた。こういう映画のシチュエーションを好む知り合いは一人しかいない。

『これは驚きです!今日三つ目の都市伝説、“スター・ウォーズの遺物”ことフォース・トルーパーが現れました!!』

 自分オリジナルのジェット・パック付きクローン・アーマー・スーツを着たギラが会場に乱入したのだ。しかも豪快に。観客たちも大盛り上がりで拍車喝采が鳴り止まない。

 ・・・やることが派手だねぇ~・・・。

 しかし誰が花火を・・・?



 その頃ロンドンのある路地裏では。

「ったく、ギラの奴。この俺を裏方役にするとは!」

「良いじゃないですか。こういうことを短時間でできるのは信司しかいないんですから」

「そうですよ御屋形様。適材適所です!」

『絶妙に良いタイミングの打ち上げ花火でした、御屋形様』

「・・・それはどうも」

『TEISHOKU』のメンバーたちがギラのちょっとした頼みを聞いて、彼が盛り上げる為に用意した打ち上げ花火を、信司の能力を使ってトラファルガー広場の舞台を中心にして町中に円状に仕掛けたのだ。

「さあ行きましょう!今夜のパーティの準備に遅れたら損ですし!」

 正士の呼びかけに一同が元気よく笑顔で答えた。

「「「おう!」」」



『彼の中身は私たちと同じ世界の人間ですが、グレートブリテン王国の尽力して下さった方のお一人なのです!来ていただいて本当に嬉しいです!』

『正体は秘密なのに登場は派手ですなぁ、フォース殿ぉ!はっはっは!!』

 さすがフィアと内匠総理。ギラの即興のアドリブに見事合わせて仕切っている。ランドン首相はアドリブについて行けずあたふたしているが、異世界の代表たちは慣れているみたいで、にこやかに笑いながら拍手している。そして銀色甲冑と銅色甲冑の二人はフォース・トルーパーと腕を肩に並べている。ただし、ドワーフの方とはできなかったが。

『『では皆さん、改めて彼らを歓迎しましょう!ようこそ!我らが地球へ!!』』

 フィアと内匠総理の宣明により、会談とは名ばかりの"異世界歓迎式”の終了であった。


 だが、これだけは言える。世界中の誰もがこの中継を見てこう考えているだろう。



 “異世界は本当にあったんだ!!”と。




その日の昼に、地下都市『エスペランサブリテン』との条約調印式が無事終了してからは、フィアが言っていた通りに異種族たちとのふれあいの場を設けられ、観客の子どもたちは大はしゃぎだった。ケンタウロスたちには乗せてもらったり、聖オークたちやミノタウロスたちには腕一本で何人もの子どもを持ち上げてもらったり。更に言えば、観客たちの動員数が午前よりも何倍も増えていた。おそらく中継を見た影響でだろう。間違いなくイギリスは今後、観光客動員数も半端ない数になるだろう。

その間に、バッキンガム宮殿で異種族代表と日英の首脳とフィア王女の謁見インタビューをやることになり、中継でその様子がテレビに映されている。このインタビューでわかったことがある。

代表の一人、アンドリュー・シェリフ氏の話だと、地下都市の『エスペランサブリテン』の意味は、スペイン語で"期待のブリテン"だそうだ。なぜスペイン語なのか。理由はまず、向こうの異世界の国際共通言語がこっちの人間たちと同じ英語なのだが、それ以外の地球上の言語が初めてだったらしい。その中の期待を意味する言語の内、スペイン語が気に入ったからだと言う。

さらに日本が何故、チヌークを用意するほど異種族の件に深く関わっているのか。それは"サムライキッド"が関係しており、それを経由してイギリスの国家復活を支援していたからだそうだ。


そしてもう一つ、こんな出来事が。


ある記者が王女にこう質問をしたのだ。

『11年前、あなたを救った日本人の少年"サムライキッド"ですが。以前のインタビューで彼は生きていると言っていましたが、それってつまりは彼はもう“キッド”から“ガイ”になっているということですよね?フィ様は彼と今も交流しているのですか?“サムライガイ”とはどういう関係を築いていますか?』

なんともマスゴミの名にふさわしい下世話な質問を出されたフィアだったが、彼女の返事はこうだった。



『ええ、今でも彼と仲良く交流を続けていますよ。隙あらば彼との関係を更に向こうへ!の勢いで進めたい位にお慕いしております。ただ、以前に彼は失恋してしまって今は誰とも付き合うつもりがないのです。



ですのでわたくしフィアは決めました!今後彼の傍に付き、全力で振り向かせることに!!』



彼女のその言葉には迷いは無かった。まるで私と奈々がギラに振り向かせると宣言した時のように。



世界中がフィアの覚悟に感動した。しかしこの後に彼女が付け加えた発言で世界中がある言葉を叫ぶことになった。


『まあ、彼に言い寄るライバルの女の子が私以外にもたくさんいるので、とにかく頑張ります!』



"リア充死ね!"と。





 そして、日が暮れて夜になり、バッキンガム宮殿の舞踏会場では異種族を交えてのパーティが行われていた。もちろん料理は全部あの信司の指揮の下に作られている。ここではテレビの撮影やインタビュー及びマスコミの立ち入りを禁じている為、ここで行われることは報道されることはない。なので俺はさっそく和服姿でお構いなしの行動を起こすことにした。

「おい元女王。俺に話す言葉は無いのか?」

 と、夕方のフィアの爆弾発言によって、特定はされてないもののギラが正体である“サムライガイ”が世界中でリア充死ね扱いを受ける結果になってしまったことを受けて、俺はショートヘアドレス姿の彼女に詰め寄って頬を引っ張っているところだ。

「責任取ってみんなを幸せにしてね、ギラ☆」

「ハーレム作れってか!?重婚罪で逮捕だわ!!」

「女の心を奪いまくったルパン窃盗だけでも十分罪だと思うけどー?」

 とジト目をしながら唯と奈々、巴、乱場先輩が俺たちのところに近づいて文句をぶつけてきた。

 言われて俺はつねっていたフィアの頬から指を離した。

「くそっ!何一つうまくいかねえ!こちとら11年間も色んな女をフり続けてきたってのに、どいつもこいつも俺を嫌いにならないイイ女しかいねえし!!マジありがとう!!そして、おまえら5人とも!良いドレスだ、似合ってるぞ!」と、キレながら唯たちのドレスを褒めてあげる親指を立てる器用な俺。

「「「「「ほらそういうところ。でも本当にありがとう!」」」」」

 フィアも加わって5人でツッコんで、そして嬉しがってお礼を言ってくる。なんというコンビネーション。

『はっはっは。相変わらずだな、ギラ!』と、銅色の甲冑から籠り声を出すドワーフが会場に現れてガチャッガチャッとやってきた。

「お、スターリン!久しぶり!!」


「「「へ!?」」」

 と、フィアと巴を除いた3人が間の抜けた反応をした。

 まあ、そりゃそうだよな・・・。 あの旧ソビエト連邦の書記の名前と同じなんだから。

銅色甲冑がガチャガチャと音を立てて鉄男のアーマースーツみたいに開き、中から燕尾服を着たドワーフの友人スターリン・アーケンが出てきた。

「会いたかったよ、ギラ」

「こっちもだよ」と、俺は彼に合わせて膝をつき、ハグをした。

そしてスターリンは唯たちに向かって改めて挨拶をした。

「初めまして、ドワーフ軍隊長のスターリン・アーケンだ。ギラから話は伺ってるよ」

「ど、どうも・・・意外と髭が少ないですね・・・」

「あっはっはっは!やっぱりそう思うよなぁ。それもそのはずさ。俺はまだ119歳だからな」

唯の素朴な疑問にスターリンは笑って答えるが、119歳って聞いて?マーク顔になるのが普通だ。唯たちも当然その反応だ。

「ドワーフ族の一生は大体500〜600歳なんだ。だからスターリンはドワーフの中でも若い方だ」と俺が捕捉しておいた。

「でも・・・その119歳の人と何でそう仲良いんだ?」と奈々が質問。

「それはギラが俺と同い・・・ぺふっ!」とうっかり口を滑らしそうだったスターリンの顔をはたいて止めた俺。

「スターリンまだなんだよ。LUMEで事情は知ってるだろうが!」と小声で耳打ちした。

「あー悪い悪い・・・。!じゃあこれは聞いていいよな?ところで君たち3人は、現状ギラを狙ってるんだろ?こいつのどこに惚れたんだ?」とスターリンは、唯、奈々、乱場先輩に向かって気まずい質問を仕掛けた。

コノヤロー、はたかれた腹いせに余計なことを・・・。

「私は入学式の時に丁度ギラの隣にいて、なんか良いな〜と思ってたら、いつの間にか惹かれてました・・・」ともじもじしながら言う唯。

「あたしは5年前の東シナ海戦に参戦して、偶然ギラと共闘して格好いいなと感じたその時からだ!」と堂々と言う奈々。

「私はついこの前に噂で知って、初めは彼を下僕にしようという馬鹿なことをやったんですけど、逆に彼のものスンゴイプレイで身も心も虜にされちゃったんです☆」と興奮しながら下ネタをカマす乱場先輩。

 

「「「「「うん、ごちそうさまです!!」」」」」


 気付くと会場に来ているみんなが3人の告白声明に注目していて、一斉にお礼を言った。

 ヤダこれ恥ずかしい!!

「おうおうおうどうすんだギラぁ。こんなに良い美少女たちをフってばっかでぇ~」

「スターリン・・・、ウザいぞ・・・」

『・・・ギラ・・・』

俺の名前を呼んだ籠り声に反応して俺は後ろを振り向くと、銀色甲冑が立っていた。するとスターリンと同じように甲冑をガチャガチャと音を立てながら開き、中から装着者であるクレア・ガトレアが首周りの空いたフリルドレス姿で出て来た。

「クレア・・・、お前がそんな大胆なドレスで登場するとはな・・・ってうおっ」

「向こうに行ってる間、女を増やすなってあれ程言っておいたのにっ!!なんで作っちゃうかな!?」

このクレア・ガトレアという青髪ロングポニーテールな女騎士は、歳が19で頭は良いが普段の生活がトレーニングばかりで女の子らしさが皆無なのである。ドレス姿を見た時は少しは女の子らしさを身につけたと思ったが、胸ぐらを掴まれてあうあうされてる今ではそれは勘違いだったと思う。

「そうだ、唯、奈々、巴、乱場先輩、エリ。一緒に来てくれ」と手招きしながら5人とクレアを宮殿の中庭に連れて行った。唯たちは「また出た・・・」とブツブツ言いながらだったが。




「早速だけどよ、唯、奈々、そして先輩。・・・俺のことをどう思ってる?」

 俺は真剣な眼差しで3人に問いかけた。



「「「ずっと愛しています!」」」

 即答だった。

「すまん、質問の仕方を間違えた。3人は俺の人となりをどう考えているかなんだ。どうなんだ?」

「えっと、それは・・・、趣味が結構渋い?」と唯。

「100年以上前の映画とか曲を好んでるし、11年前の事件当時5歳児なはずなのに王女様助けてるしな・・・、あ、しんのすけがいるから別に良いか」と奈々。

 いや、良かねーよ。

「あと、今日初めて知ったけど杉田君が楽器経験者なのもなんか怪しいかな。唯ちゃんたちから聞いてるけど、ほとんど海外で過ごしてて尚且つ戦いに参加してたって・・・。そんな人がいつ楽器を覚えたのかが疑問かな・・・?」と乱場先輩。

 そう。唯たちは一番近くで俺と過ごしていたんだ。そしてそれが1月経った今、俺の違和感に気付かないワケがない。俺は本当のことを言わずに彼女たちと接してきた。


 だがそれももうやめだ。


 俺が正体を隠していた理由はいくつかあるが、まずはオーク戦争と地下都市『エスペランサブリテン』にある。

 もし戦時中にあの胸クソ悪い事件が原因で起きてしまった戦争が起きていると公表していれば、世界中で混乱が起きていただろう。、だから公表する前に終わらせる必要があったのだ。

 地下都市の件も同じ理由からだ。去年初頭に戦争が終結したというのは、やっとのことでオークの残党を全て倒し終わったということなのだ。そこからこれからの都市との物流や通貨の制定などの難しい手続きを済ませること約1年が経ったのだ。だからこれまで地球上であり得ない存在がいることを徹底的に隠す為、俺の正体も同時に隠したのだ。

 ようやくオーク戦争の存在に異世界の存在、ブリテンの地下都市のこと、異種族の彼らと契約を結んでいることなどを世界に公表した今。もう唯たちに隠す必要はない。



「お前らは、生まれ変わりって信じるか?」



「「「・・・・・・?」」」

「生まれ変わりって・・・、よく事故とかで死んじゃったけど神様の計らいで別の世界に生まれるアレのこと?」と唯が言う。

「まあ・・・、確かにそう考えるのが普通だな。俺の勝手な発想だけどそれは単純な"転生"って考えてるけどな。そうじゃなくて俺が言う"生まれ変わり"ってのは、一回死んでも同じ世界に新しい命として生まれることだ。しかも前世の記憶が残っていて赤ん坊の時からすでに物事をよく知っているときたら、信じるか?」


「「「・・・・・・・・・」」」

俺の説明を聞いてしばらくの間、3人はフリーズしてしまった。

 



その沈黙を最初に破ったのは奈々だった。

「じゃあギラ!あんたひょっとして・・・どっかの国の有名な偉人だったとかか!?」

「待て、ハードル上げるな」

奈々に少々ツッコミを入れたが、俺はそれから3人に正体を話した。自分の本当の生まれが2096年ではなく1993年であること、前世では103歳で生涯を一度閉じたこと、死んでから4日経ってから杉田義羅として生まれてその翌日に生まれ変わったことに気付いたこと、今では実年齢が119歳であること全部を話した。


全てを吐き出したあと、3人の反応は、


「「「で?結婚はしたの?」」」


こうだった。


「お前ら・・・、こっちは覚悟決めて正体を明かしたってのに・・・」

「正体を知ったところで私たちがどうでると思ったの?杉田君を嫌いになるとでも?」

「・・・万が一のことも考えると、そうならないとも限らないし・・・」

「じゃあこれで答え合わせしてみて」

そう言うと乱場先輩は俺の顎を引き、無理矢理自分の方に向けさせて唇を重ねてきた。それだけではなく舌も入れてきた。

その場にいた女性たち全員がむっとしたのは言うまでもない。

キスを終えて離れた先輩は、上目遣いで聞いてきた。

「どう?何点?」


「ハァ、抜き打ちテスト結果、俺が0点で広子が百点満点だな」


「ふふっ、ありがと」


ズルいねぇ、俺が年上のはずなのに・・・。


「「「「「・・・ズルいよ・・・」」」」」



「言っとくけどよお前ら、この流れでキス大会なんてそんなハレンチな行為、宮殿の屋上でやるなよ?」と俺はみんなに釘を刺した。

「っていうかギラって、前世はどうだったの?相手とかいなかったの?」

唯の何気ない質問に、俺は誰かに狙撃ぃ!されたように深く落ち込んだ。

・・・・・・・・・言わせんなよ。

「あー、ギラは前世で独身のまま一生を終えたの。だから二度目の人生でやっと初恋を見つけたってワケ」

気を利かせてくれたエリが唯たちに説明してくれた。だが巴はさっきのキスの仕返しに追撃をした。

「つまりギラは100年も生きたのにモテなかったってこと」

・・・・はい、そうです・・・・。




「じゃあギラのこと、これからどう呼べば良いんだ?ギラさんの方が良いのか?」

「奈々、ラノベでもよくあることだろ?異世界転生した主人公が自分が相手より年上だと自覚しててもわざわざさん付けで呼ばせたり、敬語を喋れなんて言わねえだろ」

「そうだけどよ・・・、そもそも生まれ変わりの奴ってギラだけなんだろ?」


「いや?俺は生まれ変わりの中では異例なんだ。それにここにはもう一人、俺と同じ生まれ変わりがいるんだぞ」



「「「え?」」」

誰がだ?っと言わんばかりの顔で訴える3人に、俺は目線で当人を見て教えた。その先には、グレートブリテン王国の王女がいた。

そう、俺が彼女を"エリ"と呼ぶのは、本人の正体から由来しているからだ。





「改めまして、わたくしフィア王女。前世は1533年から1603年。名前はエリザベス・テューダー」


「1533年・・・」

「エリザベス・・・」

「テューダー家・・・」

3人が各々呟いた単語を掛け合わせて、導き出した答えを同時に叫んだ。



「「「エリザベス一世!!」」」



エリザベス一世。


イングランド・アイルランドのテューダー朝第5代にして最後の君主。



そう、俺は歴史的人物の一人に求愛されてしまっているのだ。




「今日一番の驚き!」

一言余計だぞ唯。

「ピンポーン!その通りー。私たちはお互い独身同士なんでーす☆」

誇らしげにエリは俺の腕に抱きついてきた。

「そっか・・・確か"処女王"って呼ばれてたっけ・・・」

「うう・・・、これはとんでもないライバルね・・・」

「お、おいおい!だからってギラは渡さねーぞ!」

「ダメ、ギラは元女王でも渡さないんだから・・・」

「フィア様!私の存在を忘れないで下さい!!」

エリの挑発により婿争奪戦が始まってしまった。

俺が外野だったら遠慮なく言わせてもらおう・・・羨まけしからん!

だがすぐに終わるだろう。

「おーいギラ!陛下がお前のピアノ演奏聴きたいってさ!イチャイチャしてねーで早く来い!」

「分かったトラ!すぐ行く!というわけで俺は行くから、何か聞きたいことがあったらエリたちに聞いてくれ。じゃあな」

「ギラって・・・ピアノも弾けるの?」

唯の質問に、俺は満面の笑みで答えた。




「ああ!前世で俺は青春時代を音楽に費やしたからな!」






「ヴァレリー女王がギラのピアノ演奏を?」

「そう。ギラって前世の中学、高校で吹奏楽部でホルンをやってたんだけど、その前にはピアノ教室にも行っていた時期があったらしいの。だから技術があるって女王陛下の前で弾いてみたら、陛下が彼の演奏を気に入っちゃってね」

「だからあんなに音楽に詳しいんだ・・・」

ギラが会場に戻ってピアノでトルコ行進曲を弾き始める中、屋上に残された私たちはギラについてフィアたちに色々と聞きまくっていた。

「杉田君って本当に童貞なの?にしてはスンゴイプレイをしてくれたけど!?」とハァハァ言いながら聞く乱場先輩。

「落ち着いて、彼本当にヤったことないらしいよー?ただそういった知識とかは十分学習したって言ってたけど」

「巴はいつ聞いたんだ?ギラが生まれ変わりだっていうこと」

「私は3年前の夏だったかなー。まだ戦争が終わってなかった頃に」

「クレアさんはギラとどういう関係なんですか?」

「あなたと同じでね。私もいつの間にか惹かれてた口よ」

聞いてみると、クレアさんとギラが仲良くなったきっかけがスター・ウォーズだったそうで、同じくクローン・トルーパーが好きであの甲冑のデザインに起用しているのだと言う。

ちなみにクレアさんの甲冑は聞いたところ異世界の聖鎧『シュワーペン』というものらしく、何でも設計図を書いた紙に甲冑に刻まれた紋章を記すと、設計図通りの構造に変化するのだそうだ。


にしてもあのイギリス女王:エリザベス一世の生まれ変わりが中学とか高校とか口にしている。なんという光景だ。だが、あの事件のことを考えると。

「辛い時間を過ごしてたんだね、フィアは。前世では父親が男の子を欲しさに母親と離婚した挙げ句、陰謀をでっち上げて処刑しちゃうし、せっかくの二度目の人生なのに世界でも親しまれていた皇太子夫妻の両親も殺されて危うく自分まで命を狙われるなんて・・・」

私の話を聞いたフィアは寂しそうな顔をして口を開いた。



「私なんかまだまだ幸運だよ。むしろ一番不幸なのは、ギラの方だから・・・」


「え・・・?」










パキスタンのとある紛争地域にて。

ゲリラの組織リーダーがおびただしい数の部下に向かって演説をしていた。

「今朝見たイングランドのテレビ中継!あれが騙しでなければあのブリテン島に"未知の世界"への入り口があるということだ!我々は今日まで、見えざる敵:オークに怯えながらも巣穴に潜み、力を蓄えてきた!だがそれも、あの中継のおかげでその心配はないことが判明した!同時に宝の在処も知らせてくれた!間違いなくあの山の下には巨万の富があると見た!それを我々が奪い取り!そして我らだけの国を築こうぞ!!」

部下たちはリーダーの演説に呼応し、各々の武器を掲げ、「我らの国に!我らの国に!」と繰り返し叫び続けていた。



オーク戦争が続いていた間、紛争地域でのテロリストやゲリラたちは成りを潜めていた。理由はオークがゲリラやテロリスト相手でも一切の交渉も無しに容赦なく殺す為であった。しかし、戦争が起きない日本ですら武器の物流が活発化していたのならば、当然元々戦禍が激しかったここでも武器が出回りやすくなる。オークという脅威がなくなった今、世界にとって警戒すべき次の脅威は、



"テロリストとゲリラたちの武装蜂起"である。









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