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BULLETS(ブレッツ)  作者: 砂川 武
23/63

20発目 イギリスという名の国家は存在しない。



「ついにこの時が来た」

「ついにか」

「ついになんだな、神田」

 夜中の0時過ぎ頃、住宅地の通りに留まっている1台のワゴン車の中で、怪しげな話をしている財閥っ子三人組。

「人員は揃った。後は実行あるのみだ」

「まさかお前があの杉田にここまで仕返しをしようとするなんて」

「よっぽどあの時のことが気に入らなかったんだな」

「当たり前だ。あれのせいで学校内での俺の評価はだだ下がり、この前なんか1年の女子に『へっぽこ財閥っ子』って陰口叩かれたんだしよ」

「だからってよ~、杉田の妹二人を攫ってたけし城ならぬ、かんだ城に誘い込むだなんて。っていうか、女の子を誘拐する時点で犯罪だからな?」

「そこはウチの財力でねじ伏せる!!」

「はぁ〜。とにかくいいな?俺たちは止めたからな? たとえ警察沙汰になっても真っ先にお前がやめなかったって証言するからな」

「わかってるって。よし、まずは双子の確保だ。実行班、そっちの状況は?」

『はい、利助様。それが・・・ターゲットの自宅を生態スキャンしたところ、誰も居ないんです・・・』

「「「なぬっ!? って、またこれぇ!?」」」







現在、世間では日本の首相がイギリス訪問をすることで大注目されている。

注目の理由は3つある。


一つ:日本の内匠たくみ栄介えいすけ総理大臣。彼は二十歳の若さで首相に就任し、5年に渡って務めている日本史上最年少の大臣として知られている。その猛烈な感情に全く濁りのない理性を持ってして政を行う様子から、「板垣退助いたがきたいすけの再来」と呼ばれ、国内外でも有名なのである。


二つ:イングランド王国のフィア王女。彼女もまた、11年前に一度国家がひっくり返った大事件が起きた当時、命を狙われるも生き残り、そして再びイングランド王国を復活させることに成功した王族として世界中で有名なのである。


三つ:そして、この二人が仕事でもプライベートでも友人関係を築いていることも有名で、3月末に首相のイギリス訪問声明を発表した際にテレビの前で二人が揃って発言した言葉が、世界各国首脳陣の注目の的となったのだ。



『『5月初旬に、歴史的興奮の瞬間が訪れます!』』




「内匠首相、一体何を発表する気何だろうねー」

「わからねーけど、王女と同じ発言をしてたからイギリス共同の何かだろうな」

と、原賀唯はGW期間を使って海外旅行券を使って北野奈々と一緒にロンドン・シティ国際空港に降り立ち、これから催される日英会談について議論しながらフロアを歩いていた。

「第二次日英同盟!みたいなものかな?」

「そんな戦争に関係しそうなことは絶対あり得ないと思うな。あの自衛隊の運営費用を削りまくった首相がそんな方針転換をするわけないだろうからな」

「まあとりあえず、ホテルの行きがてらに観光しよ!まずはロンドン塔に!!」

「おっと、その前にタワーブリッジだ」

ホテルは旅行券とは別に確保する必要があったのだ。バッキンガム宮殿近くの安宿を使う予定だ。 そのため交通費を浮かすため自力のみで移動することにしている。とはいっても私たちには問題どころかむしろこっちが早い。能力を使えば目的地にすぐ到着〜。


タワーブリッジ。

1894年に完成した、イギリスのロンドン市内を流れるテムズ川に架かるこの跳開橋の名前は、すぐ傍にある世界遺産であるロンドン塔から由来している。

イギリスのロンドンのデカい橋と言えば多くの人がこの橋を想像するだろう。私と奈々は北側の主塔のてっぺんまで飛んできたところだ。

「おおー、こないだギラの薦めで見た『スパイダーマン』に出てた歩道橋だ。ミステリオいたりして」

「もう奈々、居るわけない・・・んんっ!?」

私がそこで驚いたのは、もちろん歩道橋にジェイク・ジレンホールが居たわけでもなければトム・ホランドが居たわけでもない。


その歩道橋の中にいた乱場先輩と窓越しで目が合ったからだ。




「首相の訪問費用を乱場先輩の財閥が!?」

「まさかそれ・・・、国家を騙してる悪い金とか使ってんじゃないよな?」

「二人とも私のことをなんだと思ってるの!?」


「「ギラの下僕志望の残念先輩」」

初対面であんな痴態を見れば誰だってそう思うはずですが。

「確かに。それでもれっきとした乱場財閥の子女として、父の仕事を手伝いに来たのよ!」

やっぱ、否定しないんだ・・・。

「だからあんた、GWにギラを誘わなかったのか?」

「いや・・・、本当はもっとスンゴイ調教を彼にお願いしたかったんだけど、父がどうしてもと言って・・・」

ギラがそれを受けるとは思わないけど乱場先輩のお父さん、Thank you!!

「でもここで会ったのも杉田君の縁のおかげね。二人とも良かったら私が泊まるところに来ない?どうせなら一緒に泊まることも!」

なんか、もう良い人過ぎる。

「・・・あの・・・、先輩ってそんなキャラでしたっけ?」

「それにそんなにサービスしなくてもよ・・・」

「遠慮しないで。先輩としての威厳と、同じ男性に恋してフラれ続けてる仲なんだから」

私と奈々は同じ感想を浮かべてた。

(まあ・・・、愛のカタチは人それぞれだし・・・)

「ここは・・・、先輩に甘えてみよっか、唯」

「そだね〜。あ、ちなみに泊まり先ってどこですか?」



「バッキンガム宮殿よ」

「「やっぱいいです!!」」

即遠慮した。




バッキンガム宮殿。

最初は非常に粗末な邸宅に過ぎなかった場所だったが、1825年から12年にかけて全面改築され、1837年にヴィクトリア女王が住み始めてから、イギリス王室の公式の宮殿となっている。


22世紀に入って色んな出来事があったものの、今年もまた7月から9月にかけて一般公開される予定だ。

まさか自分たちがその公開に先駆けてバッキンガム宮殿に入り、しかも泊まることになるとは。両親が聞いたら卒倒するだろう。ちなみに、始めは遠慮していたが乱場先輩の強いすすめで、私と奈々が本来ホテルに使うはずだったお金を先輩に出すだけでも、ということで手を打ってもらった。明らかに釣り合わない額だったが・・・。

「荷物を置いたらビッグ・ベンへ行かない?私、前から一度行ってみたくて」

今なら乱場先輩の頼みでも聞いてあげれる。奈々も同意して昼の予定がビッグ・ベン行きに決まった。乗せてもらっていた車がバードケージ・ウォークからスプール・ロードに入った瞬間、窓越しで見えてきた宮殿周辺の通りに目をやると、見慣れた顔があることに驚いた。


「ギラぁ!?」

「「ええっ!?」」


 なんと通りに、黒のカーディガンに茶色のパンツ、そしてハンチング帽子と普段では全く見ない格好をしていたギラが人混みの中を歩いていた。

 乱場先輩の使用人に荷物を預けてもらい、3人で一緒に車を降りてギラのあとを追い始めたが、

「あれ?ギラの奴、宮殿の敷地内に入っていくぞ?」

「まさか・・・中に好きな人がいるとか?」

「いや、そうでもないみたいよ」

 乱場先輩がそう言ったワケは、ギラが宮殿の衛兵たちに普通に話し掛けていたからだ。

「知り合いなのか?あ、ハグしてる」

「ほとんどの生活を色んな国で過ごしてたって剛から聞いてたけど、まさかイギリスもその一つだったなんて・・・」

「色んな国に?私それ初耳よ!」

 とにかく、ここでグズグズしているワケにはいかない。ギラが宮殿の中に入るのを確認すると、私たちも急いで宮殿の敷地内に入った。

「Have a nice day,my name is Hiroko Ranba. I was accompanied my father:

Sigeru Ranba.(ごきげんよう。私は乱場広子です。私の父:乱場繁の付き添いで来ました。)」

「I have been waiting for you,miss Ranba.(お待ちしておりました、乱場お嬢様。)」

さすが学年成績トップの先輩。英語もお手の物で助かった。

「Then I will guide you immediately...(では早速ご案内を・・・)」

「Wait! Where did the man who came in go?(待って!さっき入ってきた男性はどこへ行きました?)」

 乱場先輩が英語でギラのことを聞くと衛兵の人は右目を閉じ、人差し指を口に当てて答えた。

「禁則事項です」

「「いや、日本語喋れるんかいぃぃぃ!!」」

 アニメは世界共通ですね、はい。



 衛兵さんの話だと、ギラは“特別な人”で王室の方へ向かったはずだから、会うのは困難だとのこと。入ることができたんだからここで追わなければと私たちは人目を盗んで、宮殿の一般公開されてない2階の奥へと進んでいって、ようやく廊下を歩いていたギラを発見した。ちょうど王室に入ろうとしているところだった。

「ギラってイギリスの王族とどういう関係なんだろ?」

「あたし・・・なんとなくわかってきた気がする・・・」

「まさか、杉田君って・・・」

各々の頭の中で真実に辿り着こうと考えを捻ってる間に、ギラは部屋の中に入っていった。私たちはすぐに扉の前に来て耳を当てた。すると中から声が聞こえてきた。

「ギラ!!久しぶり!!」

「エリ。また会えて嬉しいよ、ここのところ忙しかったろ」

誰かがギラとにこやかに話をしている。明らかに女の声だった。泊まり込みの時にアイラちゃんたちが言っていたギラに好意を寄せている人に違いない。

「Hey! Who is there!!(おい!そこにいるのは誰だ!!)」

「やばっ。っあ!」

「「うわっ!!」」

宮殿内の衛兵に見つかって、奈々が反応した拍子に私と乱場先輩の背中を押してしまったおかげで、扉に耳を当ててた私たちはバランスを崩して前に倒れるように扉をバタンと開けて部屋に入り込んでしまった。

「すみません!間違えて入ってしまって・・・うえっ!?」

私がすぐさま謝ろうとして間抜けな声を上げてしまったのは、目の前で使用人っぽい人たちが私たちの乱入に驚く中、ギラがあのイギリス王女:フィア様に抱きつかれた挙げ句キスまでされていた瞬間だったからだ。

「・・・え、なな何で!?」

「杉田君!?ど、どうしてフィア王女に?」

混乱に落ちた私たちだが、宮殿の衛兵は待たなかった。私たちは取り押さえられそうになって抵抗しながらも、"何かを言わなければ、あの二人に"と考えて導き出した答えが偶然にも同じで3人揃って叫んだ。


「「「こ、この、泥棒猫おぉぉぉッ!!」」」



私たちの叫びでその場の空気が一瞬固まった。

すると、私を羽交い締めにしていた衛兵さんが喋った。

「シュラバ?」


「「「!?」」」


何で、その言葉知ってるの!?







「初めまして、イングランド王国王女、フィアです。ギラが学校でお世話になってるようで」

「「「ア、アアア、アノ、コチラコソ・・」」」

もうガタガタだ。いきなりこの一国の王女と会うことになるとは予想もできなかった。おかげで緊張しまくりだ。

「落ち着きなって3人とも。開発に失敗したロボットの試作品みたいになってるぞ」

 何そのたとえ・・・。

「そうそう、同い年なんだから。私とはフランクに接しても構わないよ。敬語もなしで、ほら、お構いなくー」

あの高貴なブロンドがかかった金髪ロングの女の子の口から"フランク"だとか“お構いなく”なんて言葉が出るとは。

「じゃ、じゃあ遠慮なく、日本語上手なんですね・・」

もう日本に住んでてもおかしくないレベルだ。親日家なのは聞いていたが、まさかここまでとは。

「小さい頃両親に薦められてね。おかげで私も日本にハマっちゃった」

「男の趣味も、ですよね。フィア様は」と傍にいた執事っぽい使用人さんが皮肉を挟んできた。

「エン、それは余計だぞー」

「だって本当のことじゃない、侍が好きなのは」

「私たちだって好きよ、ねえダーリン☆」と二人のメイドさんがエンと呼ばれている使用人の両腕にひっついた。

「黙れ!ダブルメアリー!!まだ3人には紹介してないんだからややこしくするな!」

 なんというか・・・アットホーム感がすごい王室だ。ギラなんかまるで自宅にいるように、宮殿の王室で和服姿で椅子に座っている。

「とりあえずこっちの紹介からいくか。この二人のメイドは左からブレンダ・リッチーとジリアン・イーストンだ。そしてこのエセ黒執事が国防大臣兼秘密情報部長官のエン・ノーリッシュだ」

「お前も一言余計だぞ・・・」と呟くエンという方。

「秘密情報部と言いますと、やはりあの有名な・・・」

乱場先輩が言いたいことがに、私と奈々が気付き始めたところで本人が答えた。

「ご想像の通りです。私は通称:MI6の長官でございます」



秘密情報部。英語でSecret Intelligence Service。


小説や漫画、映画「007」シリーズなどでSISやMI6の名で知られているイギリスの情報機関である。


「今この時が正念場でしてね。先の事件のおかげで行政機関はあまり機能を果たしてなくて、自分が二つの大機関の管理を受けざるを得ないんですよ、全く・・・」

と、疲れ気味にため息をするエン長官だった。

「じゃあ今度はそっちの紹介だけど、まずは北野奈々さんかな?」

「え、あたし?」

突然奈々が指名されて反応すると、フィア王女とエン長官、そして二人のメイドが改まって奈々に向けて頭を下げたのだ。

「5年前の東シナ海戦での参戦、そして長年"番長"として日本での騒動をおさめていただき、誠に感謝しています」

「「「ありがとうございます」」」

「え、あ、あーその、こちらこそ、どうも」

どうやら王女たちはギラからあらまし聞いていたようだ。だが私と先輩だけは"番長"の件だけはここで聞くのが初めてだった。

「「奈々ってあの都市伝説"番長"だったの!?」」

「そーだよ、ていうか唯も気付かなかったのか?学帽で赤髪と言えば"番長"で有名なはずなのに・・・」と、ギラが付け加える。

確かにこの前、ギラが奈々に着せていた格好はいかにも番長っぽかったが、その答えには至らなかった。

「で、ポニーテールの子が"日本のケツ"?」

「・・・・・・・・・・・・ギラ?」

「はっはっはー、さすがは"日本のケツ"。容赦なく俺の首を絞めに来るとは。あ、そろそろやめて、マジでヤバくなってきた・・・」と、私に首を絞められて顔色が悪くなったギラが懇願してきた。

絞めを解いて、げほげほと咳き込むギラに質問をした。

「何をしたの?」

「いや〜、実は唯のことをLUMEで話したら、意外にも広まっちゃってな〜」

「「「「うん、悪くないケツだ・・・」」」」と王女たち。

王女たちになんてことを話してるんだ・・・。

私は恥ずかしながらみんなの注目の的になっている自分のケツを隠した。

「唯ちゃん、大丈夫よ。私もギラに"ブリテンのケツ"って言われちゃってるし。"ケツ"仲間だよ〜」

「ギラぁ!!王女になんて名前をっ!!」

私は涙目になってギラの胸ぐらを掴んでゆさゆさと揺らした。本人はあうあうと言うだけで動じなかった。

「別に良いんだよ。俺とフィアは昔馴染みなんだから・・・」

「それで、残ったサイドポニーテールの子が・・・、下僕志望先輩?」

「ああっ!一国の王女様に下僕って言われる日が来るなんて・・・最っ高!!」

「とまあこんな感じで、高校生活の始めはうまくやってるよ」

「ふふっ、予想通りモテてるね、ギラ」

「・・・まあな」

この時、ギラとフィア王女の何気ないやりとりを見ててモヤっとした何かを感じ取った私たちは、多分それが女の直感だとすぐにわかってしまった。


「・・・フィア王女は、ギラが好きなんですか?」

「!・・・・・ええ、大好きよ。私の初恋だもの」


・・・・・・・・・。



その時、私はアイラちゃんが言っていた言葉を思い出していた。

『少なくとも3回以上はその“ルパン窃盗”をやらかしてるよ』


ギラはとんでもない人の心を盗んでいた・・・。





すると沈黙を破るが如く王室の扉をバターン!!と勢いよく開けて入ってきたのは、

「よー王女さん!久しぶりー!おっ、ギラも来てたか!」

内匠総理だった。

「空気読めや、猪之助ぇぇぇぇっ!!」

そう叫びながらギラは故郷の指導者相手にドロップキックを決めた。

「あべしっ!!」と声を上げて、テレビでも見たことがない吹っ飛んだ総理を私たちは目の当たりにしてしまった。

すると扉の影からひょっこりと顔を出した人物がいた。

「巴ちゃん!?どうしてここに!?」

「それこっちのセリフ」




その後、午後では内匠総理とフィア王女がテレビの前で謁見した。内匠総理はギラにキックされた傷を治さず出たため大騒ぎになっていたが、総理はテレビカメラの前で、

「いや〜、ここに来る途中リスにライダーキックされてしまって、はっはっは」と、世に言う"内匠節"で和やかにごまかしていた。






「総理とも知り合いだったなんて・・・、ギラの人脈ってどうなってるの?巴ちゃん」

「これからもっと驚くことになるから、覚悟しておいた方が良いよ」

いや、王族と知り合いどころか王女の心まで盗んでる時点でヤバいんですが・・・。

今はもう夜になって、内匠総理がインタビューに答えている映像を流しているニュースを王室のテレビで奈々と巴ちゃんの3人で見ているところだ。ギラは家族ぐるみで女王ヴァレリーに会いに行っている。

ギラが総理にドロップキックを浴びせた後、巴ちゃんと共にギラの家族も総理と一緒に来ていたことがわかった。なんでも明日行われる日英会談を見届ける為で、理由はギラがその案件に深く関わっているからだそうだ。

「日英会談で発表することって、何か知ってるのか?」

「私も知ってるけど、ここで二人に話すわけにはいかない」

「歴史的興奮の瞬間が訪れるって言ってたけど、そんなにすごいことなの?」



「歴史が引っくり返るくらいスンゴイこと・・・・」



・・・・・・・。

何気ない質問のつもりで聞いてたのに、巴ちゃんの返事でとんでもない案件に触れたことに気付いて逆に怖くなってきた。

「奈々、少なくともあなたはその片鱗に関わってるはずよ」

「え?・・・あ、そっか・・・」

 ・・・何それ、どういうこと?私だけハブ?

「それも、明日になればわかるよ」

公務に出ていたフィア王女が付け加えながら乱場先輩を連れて部屋に入ってきた。

「あ、フィア。お疲れ」

「久しぶり!ビシャ・・・じゃなくて巴で、良かったよね?」

「そうよ、でもまさかもう唯たちに会うことになるなんて・・・。感想は?」

「う〜ん、いかにもギラの周りにいる女の子って感じ!」

やはり面識があった二人は友人同士のように喋っている。いつまでも王女相手にガチガチしてるのは逆に失礼だと思った私も、正面切って話し始めた。


「フィアさん!今までのご無礼をお許し下さい!そして改めて、これからもよろしくお願いします!」

そう言った私に触発されてか、奈々と乱場先輩も続いた。

「あたしからも!これからよろしくお願いします!」

「右に同じ!私もこれからよろしくお願いします!」

私たちの誠意に、王女は笑顔で答えてくれた。

「うん、こちらこそよろしく!そして、昼にも言ったけど敬語はなしでお願いね。唯、奈々、広子さん」

「じゃあ早速・・・」と私が切り出して、気になっていたことを奈々と先輩と一緒に声を揃えて質問をした。


「「「フィア!ギラとはどこまでの関係!?」」」


「まさかの"どういう"じゃなく"どこまでか"の質問!?」

さすが王女。ツッコミも的確だ。

「そりゃあだって・・・、もう好きになった切っ掛けは“サムライキッド”しか無いでしょ?」





 2101年。

 

 それは、世界中が前年で新世紀が始まったことで浮かれていた時期であった。

 グレートブリテン王国もそうだった。女王ヴァレリーはフランス訪問、皇太子夫妻は娘の誕生日を祝うためにとあるホテルに滞在していた。

 そのホテルで爆破テロが起き、皇太子夫妻は死亡。しかし、偶然ホテルの外にいた王女フィアは辛くも無事だった。だが、悪夢はそれだけでは終わらなかった。爆破テロの首謀者はすでに行政機関に秘密情報部、軍隊、警察を牛耳っており、王女がまだ生存していることに気付くと即座に抹殺するよう命令を下した。当時のイギリスは首謀者によって国を完全閉鎖、各情報も握り潰されていて国民はもちろん海外の人々ですらイギリスで何が起きているかほとんど何もわからない状況だったのだ。


 フィア王女は孤立し、もうどこにも逃げ場が無い。



 だが一人ではなかった。ある“少年”が彼女を救ったのだ。



 その少年はあらゆる追っ手から王女を守り続け、色んな手段を使って移動し、島からの脱出前夜にフランスにメッセージを発信、唯一味方になったイギリスのパイロットと共に王女を連れてヘリでイギリス脱出に成功した。

 ドーバー海峡上で王女たちを保護した当時のフランス政府は、その少年が日本人であることを明かした。その報道を受けて安堵し世界中がお祭り騒ぎになり、“サムライキッド”と呼び、少年を称えた。



 この事件を今では“ブリテンの奇跡”と呼ばれている。




「あの“サムライキッド”の正体が小さい頃のギラなら納得するよ。っていうかまさにロマンチック過ぎる!羨ましい!!」

「命を狙われるお姫様、絶体絶命のピンチに駆けつける騎士!まさに理想の中の理想のシチュエーションじゃねぇか!マジで王族変わってくれ!!」

 奈々の性格じゃ無理そうだけど・・・。でも彼女の言う通りだ。少年少女の時代とはいえ、これでギラに惚れないワケがない。

「それで、結局どこまでの関係なの?」

「実はね、その事件当時に私、彼に告白しちゃったの・・・」

「「「早っ!!」」」

 早すぎる。思春期迎えるにも時期がとても早すぎる。しかも事件当時にそんなことをしてるとか・・・、いや、年齢はともかく最悪の状況だったら自分も同じことをしていたかもしれない。

「でも、フラれちゃったんだよねぇ~」

「え?じゃあ、もうその時にはギラは例の初恋相手に恋してたってことなのか?」

「そうなの。先超されちゃっててね」

 おかしい。いくら何でもおかしすぎる。五歳児でも物心がつくかどうかもわからない年齢なのに、ギラとフィアは11年前なのに感情がしっかりし過ぎている。

「フィア、ギラとあなたって何者?何を隠してるの?」

 私、ではなく乱場先輩がその質問をした。多分私と同じ考えの上で聞いたのだろう。

「・・・ギラが教えてないのなら、私からも言えないね・・・」

「やっぱり、巴ちゃんと同じだよね・・・。何で二人ともそう隠すの?」


「「これがギラの"ケジメ"だからよ」」


何も聞けない、こんな真面目な顔でまっすぐに見られながら言われたら。二人の顔からはギラと付き合いが長い者としての器量が伺える。

「あ、でもこれは今バラしても大丈夫よね」

そう言うとフィアはなんと自分の長い金髪を引っ張って取ってしまったのだ。その下からは彼女の金髪外ハネショートの髪型が露になった。

「カ、ツラ?」

「ツラじゃない、カツラだ!」

待って王女、そのネタはマズイ!!

「いつからなんだ?そのカツラ」

と奈々が聞くと、フィアは答えた。

「11年前のあの時からずっとよ。伸ばした風に見せてたのは正体を隠せるようにするため」

「正体を?一体何のために?」

「奈々、あなたは知らなったかもしれないけど、私も5年前のあの海戦に参戦してたの」

「フィアもか!?」

「そう、これが証拠よ」

そう言うとフィアは左手を後ろに向けて、大きく掲げた。すると、奥の隅に置かれていた鞘におさめられたレイピアが独りでに飛んできて彼女の左手に収まった。

「!・・・・・フィアも能力者なの!?」

「いいえ、私は能力者じゃないわ。このレイピアはアイラちゃんに作って貰ったの」

「は!?アイラってそんなことも出来んのかよ!?」

「これだけじゃないわ。ギラが持ってる軍刀:雷龍もアイラちゃんが作ったのよ」

それは初耳だ。ギラは服を創造する時に腰に差していたからてっきり同じ創造で作った軍刀だと思っていた。

「そうだ。みんなこの後どうする?」

「どうするって・・・、あたしと唯は乱場先輩の部屋に戻るつもりだけど?」

「私、ギラからあなたちのこと詳しく聞いてるの、例えば"泊まり込み"の時とか」

「「A oh・・・」」

「?」

フィアが口にした内容に乱場先輩だけが首を傾げた。実はあの時の夜のことは奈々と一緒で少々後悔しているのだ。

「あ、あのー、なんていうかー・・・」

「あ、あの時は、あたしたちの、ギラに対する気持ちが爆発した的なアレで・・・」

なんとか取り繕うとした私たちだが、次の瞬間フィアの反応が超ド級のレベルだったため、頭の中が何もかも吹き飛んでしまった。





「大丈夫、大丈夫!私も"経験"あるし!!」

「「何ですと!!?」」




王女、まさかギラのせいでとんでもない方向に育ってしまったのでは?




「ギラが泊まる寝室がどこか知ってるんだけど、風呂のあとどうする?」









俺が泊まっている寝室にて。

やあ、こんばんわ。おかしいと思ってるだろ?主人公をやらせて貰ってる小説のはずなのになんでこいつ今回自分視点の出番が遅いのかって。覚えておいた方が良いぞ?『これは杉田義羅が生まれ変わって16年、能力を持った人類が誕生し始めた“進化の世紀”の時代で、彼の二度目の高校生活から始まる物語である』って。復唱しろよ。なんなら小説情報のところクリックして見てみな。これは俺だけの物語じゃないんだ。"俺たちの物語"だ。他所では主人公視点どころか外伝でもないのに終始サブキャラ視点で物語が進行する巻が含まれる作品だってある。この小説ではまだ書籍化すらままなってないから、そんな企画考えてないけど。

とにかく、世間ではフィアと猪之助の宣言でスっゲぇ盛り上がってるけど、覚えとけよ?明日になればさらに世界が興奮しちゃうから。・・・ヤらしくなっちゃった・・・。いや、ヤらしくなってんのはあいつらもか・・・。

コンコンッ!と、俺が浴衣姿でベッドにごろんとしている中、部屋の扉をノックしてきたのは、予想通りエリたちだ。感知能力で丸分かり。

「ギラー、入って良いー?」

「断ってもどうせ強行突破するつもりだったろ?入って良いからドタバタするのはやめてくれよー」

老人臭いこと言っちゃうけど、俺はどうせ100歳越えのジジイなんだから。

「じゃあ、入るね・・・」

俺の了解を受けたエリは色っぽい口調で扉を開けてきた。まあ、わかってはいたけど・・・、エロいパンツしか履かず、その上スケスケのネグリジェを着た女子・・・いやウソ、独りだけ亀甲縛りを追加してる変態が混じった女子集団が俺の部屋に入ってきた。しかも彼女たち風呂上がりでさらに色気ムンムンでうっひょおおおおおおっ!!

「お前らもはや自重する気ゼロだろ。そんなにこの小説を18禁にしたいワケ?」

「・・・その、私と奈々は遠慮したかったんだけど・・・、それでもやるからってフィアが言うから居ても立ってもいられなくって・・・」

「ギラにけしかけるならこれくらいしないとね。あなたの義理堅さは天下一品だし」

さすがは昔馴染み、痛いところを突いてくるよな。

「とにかく杉田君!早くぅ!この前の続きをやってぇ!!」

「黙れ雌豚!正直言ってあんたの初登場回、官能小説に鞍替え寸前だったんだぞ!!」

「いや、あれはギリギリアウトでしょ・・・」と巴が余計な一言を挟んでくる。

「それに、ここから先、官能小説になるかは私たちのアプローチ次第、そうでしょ?ギラ」

「ハァ、断り続けた俺もだけどよー、拗らせすぎだぞ?大体、この状況だと、俺が全員を相手してもOKみたいなモンだぞ」

「「「「「Com on!!(来て!!)」」」」」

5人の女子たちはそれはそれは良い笑顔で答えやがった。

「お前ら・・・恋愛ゲームでのバッドエンドを知らないワケじゃないだろ。嫉妬に駆られたヒロインが狂気に発して主人公を殺しちゃうストーリー。ゲーム主人公はともかくヒロインの今後の人生を考えたらそんな展開起きて欲しくないだろ。俺はそんな未来はゴメンだ。だからお前らとそんな勝手な繋がりは持ちたくない」


「まるで自分と関わるとロクなことがないから離れろって聞こえるけど?」

突然唯が真剣な口調で話してきた。


・・・・・・・・・・・・。


「シオリちゃんが言ってたギラが好きだった女の子。ずっと気になってたけど、今どうし」

「「唯」」

質問を続けようとした唯をエリと巴が制した。

「それについてはそれ以上聞かないで」

エリの真剣な目を見て唯は聞くのをやめた。

「ゴメン、今日は出直すからまた」

「いや、待ってくれ」

 唯の質問で空気が変わっってしまったのを気にして引き返そうとするエリを俺は止めた。

「この微妙な空気のまま追い返すのは気が進まない。お前ら今夜はここで寝ろ」

「・・・良いのか?ギラ」と奈々。

「良いって。俺はすれ違いとかで亀裂が入るのが一番嫌いなんだ」

「・・・ありがとう、ギラ」

 唯が申し訳なさそうに礼を言った。


「とりあえず乱場先輩はその縄を解こうか」





 夜中、みんなが同じベッドで眠る中、俺は目を覚まして体を起こした。ちゃんと事後じゃないぞ?俺はまだ童貞だ。

「起きちゃったの?ギラ」

 もう一人目を覚ましていたらしい、エリだった。

「ああ。さっきはありがとうな、エリ」

「どういたしまして。・・・終わったらやっぱり言うの?」

「もちろんだ。全てを話す。唯たちにも、あの子にも・・・」




 今、俺の頭の中に浮かんでいるのは、長いストレートの黒髪の女の子の顔だった。



「お兄ちゃ〜ん一緒に寝よ・・・げっ、先越されたか・・・」

「あ、ついに事後?」

空気を読まない妹たちが夜這いに来た。


「D・T!!」



渾身の叫びを俺は宮殿中に響かせた。



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