18発目 ありのままの自分を受け入れてくれる奴こそ、真の友である。
さあて、突然だが、悪の組織と戦うことによって起こる影響について良い点と悪い点を考えてみよう。
良い点:脅かされつつあったたくさんの命が事前に救われ、様々な事件を未然に防げて世の為にもなる。公にもなれば、ヒーロー、またはヒーローチームとしてみんなに迎えられるし、女にモテてヤり放題!
悪い点:事後処理が面倒くさい。
「おい、全部聞こえてるぞ?」と、ツッコんでくる剛。
「お前に話してるんじゃねぇよ。読者のみんなにだ」
熊堂会が壊滅してから三日後。
ニュースでは、ある暴力団の組織が人身売買をしていて、大量の銃火器を仕入れていたと報道され、生物兵器のことは伏せられていた。まあ、GW中に首相がイギリス訪問する話題のおかげであまり注目されずに済んでいる。五十嵐も身辺問題が解決した為、もう男装することをやめて克也改め、“五十嵐克江”女子であることを菫楼高校の朝のHRで明かした。元々美少年として少なからず人気があって、クラスの男子は五十嵐が女だと知ってからはナンパをするようになってしまった。
そしてそのHRがあった午後の昼休み。
俺と唯、剛、奈々、巴、渡辺、剣、五十嵐の8人は今、倉田会長に呼ばれて生徒会室に来ていた。
あ、ちなみに柳田とはカラオケの場で名前で呼び合うことになっている。
で、ここ。説明終わり。
「実央ちゃんの言う通り、本当に自由人だね、君」
「あの・・・会長。何で私たちを呼んだのでしょうか?」
どうやら同じ生徒会員である渡辺ですら話を聞かされていないらしい。
「実は校内で、君たちのことが少し噂になっていてね。先日の熊堂会一斉逮捕事件に関与してるんじゃないかって」
「・・・そうすか」
「あ〜そう隠さなくてもいいから、もう俺は説明受けてるから」
「説明?誰にです?」と剛が聞き返すと。
「私だよ」
生徒会室の奥にある倉庫の扉から制服おじさんが登場。
「再登場が早くないか?おやっさん。サミュエル・L・ジャクソンだってアイアンマンの続編で登場するのに1時間も掛けてたのに・・・」
「まあ、そう言うなギラ。私は警視総監としてではなく、お前を心配するただのおじさんとしてここに来たんだからな」
おやっさんのその一言で巴を除いた6人が、"コイツ、警視庁のトップと知り合いって、マジ何者?"と言わんばかりの目で俺を見てくる。
あー目線が痛い痛い。
「倉田君には全てを話しておいたよ。君たちがやったことは我々警察、防衛省、そして政府としても感謝しきれないくらい嬉しい行為だ。だがそれでも諸君はまだ未成年。そんな君たちに向けられる社会の目は決して易しくはない。だからこそ、理事長に校長、そして生徒会長である彼にも協力してもらい、先日の救出活動には触れないよう約束してもらった。君たちのここでの高校生活を失わないよう、私が責任を持って保証しよう」
「「「「「「あ・・・・ありがとうございます!」」」」」」
さすが五十六のおやっさん。仕事が早い。
「さて、私からは以上だ。それとギラ」と、人差し指で耳を近付けるよう相づちをしてきたおやっさん。
そして俺の耳元でささやいた。
「例の計画は順調だ。休みに呆けて参加するのを忘れるなよ。彼女が悲しむ」
「ご心配なく。ちゃんと行くって」
「それじゃあみんな、良い高校生活を。じゃ」
と、言い残しておやっさんは生徒会室から出て行った。
「それじゃあ、今度は俺からも話をしよっか。知ってるかもしれないけど、うちの学校には派閥があるんだけど・・・」
初耳ですが?この学校そんなのあるのかよ。
「少し前まではあの神田、北条、高井の三つの財閥の御曹司たちが生徒会と張り合うほどの覇権を握っていたんだが、この前、君たちと関わったことで権威は完全に地の底に落ちている。だから、神田君を失脚させた杉田君を含めた君たちは、我が菫楼高校のカーストトップに最も近いって位置付けられていることを自覚しておいてね」
いつの間にか周りの評価が変わり過ぎていた。俺達がカーストトップ?入学して4週間でこれってどうよ。
「会長!まさかそれって私もですか!?」
「実央、お前も有名人になってるぞ。"あの杉田義羅にもの申して、逆に手込めにされた女子"って」
「んなぁ!?」
誰だ、そんな評価している奴。割り出してぶん殴りに行こっかな。
「私はそんなんじゃ・・・ないはず・・・」と渡辺は少しだけ顔を赤らめる。
オイ、オイ、歯切れ悪いとさらに誤解されるぞ。
「それと、もう一つ忠告しておきたいんだが、杉田君」
「ん?何ですか?」
「乱場広子っていう2年女子には注意しろよ」
“女子”という単語に五十嵐以外のその場の女性陣がピクリとした。
乱場?待てよ。それって確か・・・・。
「誰ですか?その人・・・」
「神田たちと同じ財閥の子でね、彼らよりも勢力が上の子なんだよ」
やっぱ。財閥の子だったか。
「で?その財閥のお嬢様が何で俺を狙うんですか?」
「それが・・・、彼女が従えている男子達がいるんだけどね・・・。世に言う能力者ですごく強いんだけど、何故かそのお嬢様に従順になっちゃってるんだ」
「金で雇ったとかじゃないんですか?」と剛が聞くが会長は首を横に振る。
「それが違うんだ。雇われたというより、喜んで従うようになったって感じなんだ。1年の初期はそいつら全員不良だったのに乱場に勧誘されるとあっさり引き受けちゃって」
確かに妙だ。一般生徒ならともかく、我の強い不良が付き従うのは変だ。何をしたのだろうか。
「・・・催眠とかかな?」
と突然、渡辺が意見を出してきた。
「その乱場さんっていう人も能力者じゃないとも限らないし、もしそうだとしたら強制になるから厳重注意しないと・・・。今までにそんな能力者って確認されたことってある?」と、渡辺は意見を述べながら俺に確認してくる。
「似たようなケースは確かにある。その乱場って人が催眠能力を持っている可能性も否定できないな・・・」
「まあとにかく、彼女が男子である杉田君、鈴村君、柳田君をマークしていないとも限らないから気をつけてね。また神田君の時みたいなことになって一騒動になるのは困るからね」
これは聞いた話だが、前に俺が神田の使用人たちを叩きのめしたことは会長がうまく上に説明して丸くおさめたそうだ。どうもあざーっす。
「わかりました。ではそのように」
今後、言い寄ってくる女子は全員警戒しておこう。
「私は2年の乱場広子。後輩君☆ちょっと付き合ってくれない?」
「嫌デス、サヨナラ」
授業が終わって、放課後トイレにいったことで俺が一人になったところを狙って、茶髪のサイドポニーテールな女子が上目遣いで話しかけてきた。相手が作り笑いをしているのは明白だった。しかし、あまりにもあざと過ぎたので、振り払おうと歩き始めたのだが、やはり付いてくる。
見たところ、お嬢様というより普通のJKとなんら変わりない感じだ。背も普通でさっきの“後輩君”と言わなければ同期だと間違えてしまうくらいだし、可愛さで言えば唯と良い勝負だ。引っ込むところも引っ込んでいて、出るところも出て・・・いや、むしろ出過ぎか? 例えお嬢様じゃなくても、モデル女優でも十分食っていけるだろう。
「ねえ後輩君。一緒に来て欲しいところがあるんだってぇ。ちょっとでも良いでしょ?」
どうやら能力は使ってないみたいだ。能力者じゃない?それとも使うのに発動条件があるとかか?
しばらく探りながら廊下を歩いて行くと、2年男子たちがどんどん俺のあとをぞろぞろと付いてきて、ついには行く手も阻んで包囲してきた。
「ちょっと付き合うぐらい良いでしょ?こんなに素敵な先輩が誘ってるんだから・・・ね☆」
「すいません先輩、笑ってるのに目が死んでる女子が見えるんですが。これって学校の幽霊ですか?」
「幽霊じゃないわ、ちゃんと現実に生きてるわよ」
・・・こりゃはぐらかすのは面倒だな。
「・・・わかりましたよ。それで?どこに行くんです?」
仕方なく乗ることにした俺はそう聞くと、乱場先輩は人差し指を口に当てながらウィンクして答えた。
「私の特別教室☆」
オイ、オイ、興奮するだろ。
その頃、私と剛君、奈々、巴ちゃん、拳君、花枝ちゃんのみんなでギラがトイレに行ったっきり帰ってこないのを心配して、探し始めたところだ。
「おかしいなー。見つかんないね」
「あいつ・・・、まさかもう声を掛けられたんじゃ・・・」と、不穏なことを口走る剛。
「どうしたの?」と教室からでてきた渡辺が居合わせてきた。
「それがギラの奴、トイレに行ったあと待ち合わせていた教室に戻ってこないの。私たちと一緒に帰るはずだったのに、女をすっぽかすなんてサイテー」
巴さんは得意の皮肉で平気みたいだが、私と渡辺さんはそうは思わなかった。
「・・・やっぱり剛君の言ったとおり、もうあの乱場さんっていう先輩が声を掛けてて」
「もし彼女が本当に能力者で催眠をかけて杉田君を操っていたとしたら・・・」
私たちにとってギラは少なくともこの菫楼高校では間違いなく最強の能力者だろう。そんな男が操られた日には、
「人類滅亡・・・・」
と、さっきまでヘラヘラとしていた巴ちゃんが、ガタガタ身震いしながら呟いた。
「「「「「そこまで!?」」」」」
となると早くギラを見つけなければ!
私と渡辺さんは急いで2年生エリアの階に向かった。
渡辺よ・・・。君の推理は間違っていた・・・・。
彼女は能力者じゃない。
ただの、調教師だった。
俺は乱場先輩に連れられるがまま先輩が金に物を言わせて手に入れたという学校の一室、“特別教室”に入れられ、イスに縛り付けられているのだ。部屋はもう完全に風俗店のそれになっていた。周りにはロウソク灯がたくさん並べられてるし、三角木馬に一本鞭、バラ鞭、馬上鞭など、SMプレイに必要な道具ばかりが揃っている。さらに壁なんか完全防音壁になってるし、これなら過激なプレイでもヤれそうだな。
この学校こんなん許していいのか・・・?いや、こいつらが良いから認めているのか・・・。
さっきまで俺を囲んでた乱場先輩の従者である2年生男子たちはというと、部屋に入るなり制服を脱いで下に履いていた貞操帯一つといったスタイルに早変わりして待機中だ。しかも、自分から首輪をつけて鎖まで付けちゃって。
「さあて、どうやって遊ぼうかしらねぇ~」
と、とことんエロいボンテージ衣装着た乱場先輩は鞭選びに入っていった。
「あの~乱場先輩。何のつもりで俺を誘ったんです?」
と、俺が質問すると、先輩は一本鞭で俺のすぐ傍まで伸ばしてバシィッ!!と鳴らした。
「お黙り!ここでは私のことはご主人様とお呼び!」
うわー。正体現しやがった。さっきの後輩君☆は何だったんだよ・・・・。
「神田の使用人たちを全滅させた話を始め、北野奈々と決闘して勝利、学力テストでは全国一位を獲得、そして学校中の不良たちを次々と倒し、最強の"はぐれ部員"薙刀使いの柳田剣との決闘でこれまた勝利。これほどのすごいことをやってのける後輩男子、逃さない手はないでしょ?しかも、同級生の子からのアプローチをフり続けてるなんて。何かワケありなのかしら?」
しばらく聞いてみたが、客観的に見れば俺の行動は奇行に走った子供でしかない。もはや自分は暴れん坊高校生だ。
「・・・好きな相手がいたんですけど、去年完全に失恋しちゃいましてねー。今は誰とも付き合いたくないんです」
「じゃあ今あなたを壊しても誰も困らないよね☆」
ほほーい、コイツ俺を壊すって言った?
「ここにいる下僕たちも、最初は強気でいたけど自分の本質に気付いて以降はみーんな従順になったわ。だからあなたも、2年生たちのように生活に影響なく慣れるわ」
目覚めちゃったんだ・・・・。要するにこいつらは"THE M男集団"。通りで能力者なのに従っていたワケだ。欲望に忠実ってことか・・・。家庭内問題に発展しなきゃ別に良いんだが・・・。
「だからあなたも・・・、いい加減ご主人様とお呼び!!」
バシィッ!!ビシィッ!!
「ほら、ほら、ほら、ほらぁ!!」
こんな時になんだけど。俺が一度人生を全うしたってことは知ってるよな。
実のところ、俺結婚もせずにずっと独身貫いたんよ。人生で独身を貫いたってことはあの何とかワゴンの爺さんと肩を並べるくらいになったってワケよ。さらに言えば、まじでまだ童貞なのよ。風俗も全く経験なし。100年以上生きておいて、あっちの方はまだご無沙汰な点ではキャップとも張り合えるんだ。
まあ、性知識はあっても、肝心なところで使ってないんじゃ俺もまだまだ腰抜けってことだ。
さて、しばらくこの乱場先輩に初体験のSMプレイを料金なしで色々と試してもらっているんだが。
目隠しに吊るし、手錠、首輪、鎖、スパンキング、踏みつけ、鞭打ち、言葉責め、三角木馬、とにかくあらゆるSMプレイを受けてみたけど、
・・・・・・全っ然、目覚めない。・・・・っていうか。
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・何で、何の反応もないの?この男・・・。次ィ!!」
「ご主人様。今の亀甲縛りでこの男へのSMプレイ一式は終わりました!」
「!・・・・嘘でしょ・・。全部耐え切ったってこと?」
こんな男、初めて・・・。
「・・・っは!なかなかやるわね!まさかこんなに理性を保てる男がいるなんて。とんだ掘り出し物」
「・・・・・・・・ぬるい・・・・・・」
「へ!?」
ようやく口を開いた杉田義羅だが、何だか様子がおかしい。
「攻めが・・・・・・ぬるいわぁぁぁ!!」
ブチブチィッ!!
怒号と共に杉田は自分に縛られていた亀甲縛りをいとも簡単に破った。
え、何ソレ・・・。
杉田義羅は、それはそれはお怒りだった。
「おい!先輩さんよぉ!まさかさっきのあれが、あんたの全力SMプレイだとでも言うのかぁ!?ああっ?」
「だ、だったら何よ!」
「甘いねぇ、甘い甘い甘い甘い!」と、杉田はここだけ何故かV字サングラスをかけて叫んだ。
「種類がたくさんあるトコは良かった。だがな、それだけだ!肝心の鞭打ち、スパンキング、踏みつけ、物理的なプレイ全体が弱すぎる!やるなら徹底的にだ!こんな風に!!」
そしてどこから出したのか、自分の手で持っていた一本鞭で私の尻を的確にバシィッ!!と打った。
「んぎぃっ!?」
すごい痛みが私を襲ってきた。でも。
・・・え。何今の・・・。ゾクゾクした♥・・・?
「そしてぇ!そこら中につっ立ってる2年生先輩方ぁ!あんたらもだ!!こんなんで悦んでんじゃねえよ!!」
バシシシィッ!!バシシシィッ!!
今度は一本鞭を2本使って、そこらにいる私の僕たちを打ちまくった。
「あああ〜んんっ♥」
あまりにも強烈だったのか全員うっかり能力を発動して犬の顔になっていた。
・・・立場が、逆転してる・・・?
「乱場ぁ!!」
「は、はいィっ!!」
「お前、何で自分をご主人様って名乗ってたんだ!?普通女なら女王様を名乗るはずだろ!!言葉責めも弱々しいんだよ!『あなたの奥に眠る性癖を解放しなさい』、それだけか?もっとこう『お前のエゴはそんなもんかよ!おったててみろ、この豚が!』、最低でもこれくらいは言えないとな。大体、そんなエロいコスチュームしておいて、自分の乳を押し付けて相手を興奮させたりしないのか!?」
「す、するわけないじゃない!!」
もう先輩後輩の関係なんか忘れて喋っている私たち。
怒りすぎて敬語忘れちゃってるよコイツ・・・。
「あ〜あ〜、そんな可愛い一面があるんじゃ、お前はもうSM嬢として失格だな!」
「か、可愛いってぇ!?」
ほ、本当に何を言ってるのコイツ!一瞬ドキッとしたじゃん!!
「不本意だが、教えてやるよ。お前らに本場もののSMプレイ一式ってヤツをなぁ!!(小声:俺も初めてやるけど)」
最後の喋りは小声過ぎて聞き取れなかったけど、
私はこの後、杉田義羅のおかげで、新世界に到達することになる・・・。
「・・・ここが、特別教室・・・・」
私たちはギラを探して、2年生先輩方からようやく聞き出して、彼が連れていかれたこの特別教室とやらを見つけた。
「何でわざわざ部屋に入れる必要があるのかな・・・」
「よほど見られちゃマズい禁術とか・・・」
「それとも能力の発動条件の関係で長く続けないと完成しない催眠だとかじゃねえか?」
「他に何か可能性のある方法は・・・」
特別教室のドアの前で試行錯誤している私と奈々、巴ちゃん、そして渡辺さん。
そこへ全てを解決する答えを剛と柳田が出した。
「「既成事実じゃね?」」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「「「「っは!!」」」」
一方、中では。
「はーい、亀甲縛り組ぃ!どうだぁ、縄の感想はぁ!!」
「It's the best,sir!!」とギチギチと縛られている縄を軋ませながら答える犬だけど豚先輩たち。
「OK!次はぁ、吊るし組ぃ!どうだぁ、このハリセンの味はぁ!!」と叫びながら俺は、吊し上げた犬だけど豚先輩たちの背中をハリセンでめちゃくそ叩きまくった。
「Oh〜,it's the best,sir!!」と悶えながら答える犬だけど豚先輩たち。
「OK!そしてぇ、電マ責め組ぃ!調子はどうだぁ!!」
「ん"っん"っん"〜ん"ーっ!!」とギャグを咥えて悶えながら答える犬だけど豚先輩たち。
「OK!何言ってるかわかんないけど。最後はぁ、広子ぉ!三角木馬に手錠、目隠しそしてこの鞭打ちは最高かぁ!?」
「ひぎぃっ!!はああい"い"い"い"い"♥!!最高でぇす♥!!最高なんでぇす♥!!ご主人様ぁ♥!!イく!イく♥!!イっちゃうぅぅっ♥!!」
と、乱れに乱れてイきまくる乱場広子。
「ひゃーははははははっ!!いいぞ、いいぞぉ!もっとさらにこれからぁ、電マ責めを加えてぇ!!」
っはっ!!
その時、俺はやっと気付いた。
部屋のドアがこじ開けられ、唯、奈々、巴、渡辺、剛、柳田、五十嵐の全員が俺の一部始終を見ていたことに。
俺はヴイイインと起動させたおもちゃを片手にゆっくりと部屋の入口に顔を向けたが、みんなの顔は、既に死んでいた。
そして、石にされる魔法にでもかかったようにその場で全員後ろへ一斉にバターンと倒れた。
おーい!誰か倒れたぞー!と廊下にいた2年生が声を上げていたが、俺はすぐさま鍵を壊されたドアを閉めて、わざわざ溶接して完全に閉めきった。
「ご主人様ぁ、どうかこのメス豚である私の処女を貰って下さぁい・・・♥」と、目隠しされてて何が起きてるか分からない乱場先輩がおねだりしている。
・・・・・なんか、すんません。
よくあることだが、小説、漫画、アニメ、映画とかのどんな物語でも、主人公は必ずドン底を味わう。いくら長編シリーズモノでも10年越しで兄弟を失って味わったり、何度も味わってその度に口にはしなくても頭の中では『・・・・なん・・だと・・・・』って絶対に考えたりしてる。
この小説ではここだ。今読んでるところ。
ドン底へ、はい"堕ちた"〜。
「じゃねえよ!!色々とツッコミたいが、さっさと下校しろ!!」
と、呆けてる間にいつの間にか門限時間になっていて、教師に注意されちゃった俺と乱場先輩、そして半裸状態の2年生先輩方。
みんなと一緒には帰らなかった。っていうか帰れない。あんな現場見れば俺だってドン引きだわ。でもそれでも受け入れたいとは思うが、唯たちが同じ考えとも限らない。こうなれば手段は一つ。
電話をかけた。親父に。
「もしもし親父。俺、もう一回死んで人生やり直す」
『現実はクソゲー、やり直しは無いって言葉、自分の口でよく言ってるだろお前』
杉田宅にて。
息子・ギラから今日の学校のことをリビングであらかた聞いた。娘たちと一緒に。
「目覚めちゃったのか・・・お前」
「お兄ちゃん!どうせなら私たちと一緒にSMプレイやろ!」
「そうすればきっと気も楽になるよ!」
「はっはっはー、そうかもなー。じゃあ、さっそくヤっちゃう?」
「やめろ、薬をキメる感覚で俺の前で近親相姦しようとするな」
「「ちぇ、は〜い」」と退散していく娘たち。
「しかし、重症みたいだな。そんなに怖いのか?友達に嫌われるのが」
「自分でも驚いてるよ。ここまであいつらと関わって、楽しんでたとは。
そして、いつの間にか、嫌われて欲しくない存在になっていたなんて・・・・・。
昔の俺だったら、こんなことが起きても淡々としていたかもしれないのに・・・・」
と、さびしそうに俯く息子。
俺にはそんな経験はない。100年も長く生きている息子でも初めての経験だ。だから的確なアドバイスはしてやれない。親として俺が息子にやれることは、一つだけだ。
「ビシッとしてろ!お前の性癖を見つけたぐらいで普通嫌いになんかならないって。一緒に戦った仲だろ?」
背中を押してやることだ。
「・・・・・そうだな。明日試してみるよ・・・」
「Do.Or do not.There is no try.(やるか。やらぬかだ。試しなどいらん。)だろ?」
「・・・・・だな、親父」
そして翌日。
俺は自分の教室の前で止まっていた。なぜなら、教室では昨日俺のあられもない姿を目撃した唯たち全員が勢揃いしていたのだ。
こっからはただの男として出なければいけないんだ。
彼女たちの前に立って、言うんだ。
・・・・・言うって何て言えば良いんだ?自分はドSで、実は調教の才能がありました~ってか?
馬鹿馬鹿しい!そんなこと言えば、間違いなく孤立確定だ。タイトルも即変更、『俺、高校で孤立しちゃったからアメリカのニューヨークに飛んで、アーマー着て傭兵の仕事でめっちゃ悪人殺しまくって超グロいスーパートルーパーになって暮らすことにした』に決定。もうどこでどうやって省略して呼べば良いのかわからないくらい長過ぎて一番文字数が多いタイトルとしては有名になれそうだけど、絶っ対コケる。だから、
「あのー、さっさと入ってくんない?」
いつの間にか後ろはクラスメイトの何人かが集まっていて、俺がドアの前で立ち往生しててずぅっと入るのを待っていたらしい。
「前のドアがあるだろ、そっち使えよ!俺は今、この小説の運命の分かれ目を思案中なんだ。だかr」
「お前の都合はどうでもいいんだよ。いいから入れ」
「あん!やめて、エッチ!」
クラスメイトに無理矢理押し出され、教室に追いやられた俺。すると、
「あ、やっと来たギラ!」
「なあギラ!この焦らしプレイって何だ?」
「ギラ!あなたどの攻めが好きなの?鞭打ち?スパンキング?それとも吊るし上げ?」
「杉田君!性癖は良いとして、もっとこう・・・節度ある行動をしないと!」
「ギラ!お前どうやって乱場先輩を従わせたんだ?」
「ギラ!昨日、乱場先輩にやっていたプレイのテク、教えてくれ!」
「私たちもそれやってみようかと思うの!」
唯、奈々、巴、渡辺、剛、剣、五十嵐の順で俺に駆け寄ってきた。
・・・・・・・・。
『普通嫌いになんかならないって。一緒に戦った仲だろ?』
俺はただ、昨夜親父に言われた一言を思い出していた。
「ふっ、だーっはっはっはっはっはっはっは!!」
ただ笑った。笑って答えた。
「おいおいギラ。ついにここまでおかしくなったか?」と頭を指差して聞く剛。
「いや剛、逆だ。俺は今ごいすー冴えてる!あとみんな!そういうのは相手と話し合った上でやるんだ!」
「「「目の前に相手がいるから聞いてんじゃん!!」」」
と、反論する唯、奈々、巴の3人。
それでも笑い続ける俺。
・・・そうだな、親父。この光景が証拠だ。
その中で一人、巴は少し意外そうに考えていた。
(ギラって『TEISHOKU』でもだったけど、あんな笑顔で笑ってたんだ・・・)
この面子では一番ギラと長い付き合いの彼女でも、彼の満面の笑顔を見るのは珍しい類いなのであった。
「杉田く~ん!おっはよ~♥」
おっとぉ。来やがった、元凶。
もうすぐHRだというのに、1年生エリアの教室に笑顔で乱入してきた乱場先輩だった。
「自分の教室に戻れあんたぁ!」
「もう!ご主人様のイ・ケ・ズ~♥昨日のあなたのスンゴイ愛の鞭で目が覚めたのよ!もう私、ご主人様無しでは生きていけないの♥」
そう言いながら歩いて、俺の手を両手で握って叫んだ。
「私と結婚して、そして下僕にして♥」
「嫌ですあなた誰ですか?」
俺の即答に乱場先輩は、わかってた、わかってたけども!体をクネクネさせて悶え、さらに悪化した。
「んん~♥即断だけじゃなく、関わった記憶すら消して他人行儀だなんて!!どこまであなたは私の琴線に引っかかることをしてくれるの!!」
えー何あれー。 あれって確か2年生の乱場先輩じゃね? 杉田の奴ついに年上にまで手を出したのか・・・。 っていうか愛の鞭って、アイツ先輩にナニをしたんだ?
はっはっはー。周りの評価はいつもながら冷ややかで痛くて、ホント超キくね~。
そしてもちろん、この朝の出来事がすぐ学校中に広まるのは当然のこと。
さらに放課後、倉田会長によってまた生徒会室に呼び出されるのは言うまでもない。
「え~っと、俺も噂を聞きつけて呼んだワケなんだけど・・・。昨日今日でカーストトップになるとはね、杉田君」
「ちっとも嬉しくないんスけど・・・・」
肩を落とす俺だが、右隣にいる奴はそうでもなかった。
「ええ~?良いじゃんご主人様ぁ~♥私は嬉しいですよ?ご主人様イッチバ~ン♥」
と、上機嫌な乱場先輩。
「離れて下さいよ先輩!!っていうか付き合い通り越して結婚+下僕って!メチャクチャ過ぎます!!」
「そうだ!第一ギラは付き合うのを拒んでるんだからな!ちなみに先に付き合うのは絶対にあたしだからな!!」
「抜け駆けは許さないよ、奈々。もちろん私よ」
と、不機嫌な唯たち。
「実央ちゃん・・・、君が頼りだ。杉田くんは一体、何をしたんだ?」
恐る恐る倉田会長は、頼みの綱の渡辺に聞くも、当の本人が答えに困っていた。
「ええっと~、一言で言いますと・・・、調教師爆誕!ですかね・・・」
やめたげて!会長はもう“ムンクの叫び”状態でHPも0よ!!
「何ソレ怖い!実央ちゃんの口から出ちゃいけない言葉が出てきちゃったよぉ!!」
最後は俺がまとめよう。
“人類皆エロい”だ。




