1発目 入学初日に友達作りは面倒だけど、やらないと後悔する時があるかもしれない。
初めての高校生活!
私、原賀唯は今まさに受験合格したこの菫楼高校の入学式に参加している。憧れの高校生活はどんなかな〜と楽しみにしているのに、式目の校長の話がつまらなくて、同じ新入生の人たちがウトウトと眠くなりかけていて、始まりは正直良いとは思えなかった。
だがそんな中で、私は隣に座っている人の方が気になっていた。その人も校長の話のせいなのか眠っていたけど、横から顔を覗いたら少しドキっと心に何かがきた。その人は椅子に座っているのに身長が高いことが解るほど座高が高く、髪は黒だけど左前髪の部分が白髪になっていて顔立ちはそれなりに整っていてむしろ良いと思えるほどだった。つまりイケてる。この人がどんな人なのか知りたい、私はそんなことを考えながら入学式を後にした。
(さっきの人、同じクラスになれるかな...)
指定のクラスにて、
同じクラスにその人がいた!心踊る展開とはこのことを言うんだろうなと、私は担任の先生の今後の予定の説明を聞きながら内心嬉しがっていた。
説明が終わって15分間の休憩が入ると、私はその人にどうやって話しかけようか少し悩んだ。
(いきなり話しかけたら変な目で見られるかもしれないし...どうしよう)
そしたらその人は、音楽プレイヤーとイヤホンを取り出して曲を聴き出した。この高校では携帯、スマホなどの電子機器の使用は許されているけど、入学初日に早々音楽を聴くのには驚いた。よっぽど音楽が好きなのか私はそれを切っ掛けに話しかけてみることにした。
「ねえ、君なに聞いてるの?」
「ん?映画音楽だよ」
「映画音楽? ああBGMか。で、なんの映画?」
「スター・ウォーズ」
「うん?・・・スター・ウォーズ?」
正直ピンと来なかった。どんな映画か思い当たりもしなかった。
「・・・・ハァ〜、これだから今の世代は。いいか?スター・ウォーズってのはジョージ・ルーカス監督の下に製作され、1977年に公開されて以降続編映画、スピンオフ映画、3DCGアニメなどでとある銀河系を舞台に物語が展開していくSF超大作シリーズのことなんだ」
うん、よくわからなかったけど、この人のものすごい愛だけは感じた。
「・・・好きなんだねー、その映画。あっ私、原賀唯。よろしく!」
「おう、俺は杉田義羅だ。こちらこそよろしく」
高校生活初日、私はイケメンだがちょっとオタクっぽい男子生徒・杉田義羅と知り合いになってしまった。
二度目の高校生活初日、
俺はいきなり初対面で話しかけてきたクラスメイトの原賀唯と知り合いになっちゃった。
俺の中での原賀の第一印象はこうだ。同級生で必ず一人はいる可愛い子!である。何故話しかけてきたのかは分からないが、ただ話しかけてみたいって極普通の女子高校生が考えてる表情だった。物語で主人公を貶めるのが目的で話しかけてくる悪女っていう線もありえるが、一応理由を聞いてみた。
「な、何でってそりゃあ、高校初日に音楽プレイヤー使ってたら気にもなるよー」
「・・・・顔赤くしてるのはツッコまないが、まあ確かにそうだな」
「し、してないよ!赤くなんて!」
・・・・・・・・してるじゃん・・・・。
「まあそれよりさ、お前ジャンプ読者か?良かったらジャンプ談義でもしながら帰ろうぜ」
「え、ジャンプ?まあ、コンビニに寄るときたまーに読むくらいなら・・・」
「それは本当か?」
突然、会話に第三者が入ってきた。多分クラスメイトだと思うそいつは、丸刈りで強面な顔で体は俺より一回り大きい筋肉質といった男子生徒だった。いかにも運動系男子って感じ。存在筋肉だ。
「お前も、ジャンプ読者なのか?」
「ああ、そうだけどそう言うお前もジャンプ派か?なら俺たちと一緒に帰らないか?」
「ああ、もちろんだ!よろしく頼む。俺は鈴村剛だ」
「俺は杉田義羅だ。こちらこそよろしく」
「私は原賀唯。こっちもよろしく!」
しばらくはこの二人と仲良くできそうだ。
入学して初日に、俺、鈴村剛は高校初めてのクラスの誰かと仲良くなろうとウロウロしていたら、大好きな漫画雑誌の話をしている二人組を見つけて、これはいけるかもと思い切って声をかけてみたら、その二人組と一緒に漫画雑誌について語り合いながら帰ることになり現在に至る。
「杉田って、もしかして2世紀前の漫画が好きなのか?」
「ん?なんでそう思うんだ?」
「漫画ネタでPCを使いすぎ、忍ばずもっと派手に登場するべきだとか、なんか考え方が90年代のそれに感じるぞ」
「ん~別に2世紀前の漫画に思い入れがあるわけでもないけど、もちろん面白いと感じるものもあれば感じないものもあるし…あ、でも映画は2世紀前のものがお気に入りが多いな」
「さっき言ってたスター・ウォーズも含めて?」
「そうそう。他にも『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『ジュラシック・パーク』『ターミネーター』『ダイ・ハード』『プレデ」
「ストップ、ストップ!全部言わなくていいから!」
「それだと今時珍しいな。その時期の映画の存在は知っていても中身が好きで見る人は少ないよな」
「まあな~、確かに共有できるヤツは少なかったな・・・」
最後の言葉は少し寂しそうに喋っていた。頑張れ。
「ま、まあ80,90年代の映画の魅力は今の世代じゃ通じないから仕方ないよ。大体最近の映画だってヒューマンドラマ系ものばっかりだし」
「そうなんだよな~。今じゃ」
「おいっ!俺の財布返せ!」
その時突然、後ろの遠くから男性の叫び声がしてきた。振り向くと声の主らしき中年男性とそれに追われている帽子・マスクで顔を覆うといったいかにも窃盗犯らしき格好をした人物がこっちに向かって走ってきていた。
次の瞬間、その窃盗犯がいつの間にか右に吹っ飛び住宅のブロック塀にバンと叩きつけられていて、窃盗犯がいた場所に原賀が立っていた。
「Wow・・・」
杉田はなぜか英語で驚いた。
「いや~助かったよ嬢ちゃん。あの男能力者らしくて、腕をゴムみたいに伸ばして俺の財布取りやがったんだ。ありがとう!」
「いえいえ!当然のことをしたまでです!」
窃盗犯を警察に引渡したあと、被害者のおじさんにお礼を言われながら、また帰り始めた俺たち。
おじさんとも別れた直後、さっそく原賀に質問した。
「原賀お前、能力者だったのかよ!しかもあんなパワー初めて見たぞ!」
「うん、まあそんなところ」
「にしても良い平手打ちだったな。単純なパワー増強系みたいだがちょっとまだ加減が甘かったな。もしかして発現したのって最近か?」
「そうなの。だから初めて発現した時なんか自分のベッド壊しちゃって本当に大変だったよ~・・・ん!?」
原賀が何か違和感を感じて口を止めた。俺もその違和感に気づいた。なんで杉田は原賀が窃盗犯を平手打ちで吹っ飛ばしたのがわかったのか。俺ですら認識出来なかったスピードだったのに!
「ね、ねえ杉田君、今の見えてたの?」
「ああ見えたぞ。原賀の・・・あ」
杉田は左目を閉じながら何かを思い出したようだ。
「何?どうしたの?何を見たの?」
「すまん・・・見ちゃいけないものも見た」
「だから何・・・て!」
そう言って原賀は顔を赤くしながら自分のスカートを抑えていた。なるほど。
「ああ、パン」と言いかけたが、
「「言うな!」」
二人同時にツッコまれた。
2112年、世間では「科学の進歩が当然進んでいるように、人類もまた今以上に進化しているのではないか」という説が出ていた。それもその筈。地球上では今、映画・漫画・絵本などの作り物のおとぎ話でしか存在しないと言われていた異能な力を持つ人類が誕生し始めていた。確認されている異能は小さな風を起こす、少量の水を出すなどのまだイタズラ程度並の威力と認知されている。だが公になってないもののとてつもないパワーや理を越える能力を持っている人間もいると言われている。
人々は今の22世紀のことをこう呼んでいる。
「進化の世紀」と。