11発目 昔の友達に会うとテンション上がることってあるよね。
「出会いが欲しい・・・」
ある昼休み、昼食をとっていたところ剛がそう呟いた。
「一応聞くが初恋は?」
「一度も。もしするならなんかこう、フワ〜っとしてドキッとくるような出会いがいいなぁ・・・」
「強面のお前には、そういった出会いは難しいと思うんだが・・・」
「おいギラ、あり得ないことはないぞ。お前がモテるなら俺だって彼女はできるって!」
「いや否定はもちろんしないって。むしろそう信じてる!剛だってモテるさ」
剛は良い奴だ。人間もできているし、他人への思いやりも持ち合わせている。好意を持ってくれる女の子が現れるのもそう遠くないだろう。ただ本人が希望しているシチュエーションは無理だと思うが。
「ん?ちょっと待てよ。さっき"俺がモテてる"って言ったのはどうしてだ?たった二人に告られたぐらいで」
「ははっ。俺が気付かないとでも思ったか?知ってるんだぞ、ギラが自分の下駄箱からラブレターを取り出すのを」
この丸刈りのストーカーめ。見てたのかよ、あれ。
「まあ愚痴ぐらい付き合ってやるよ。朝までは付き合わないが」
「おい今の発言、薄い本待ったナシだぞ」
確かに。
「ま、商店街付近にある良い店を知ってるんだ。帰りにそこで話でもしようぜ。おごるぞ~」
「それじゃ、お言葉に甘えて」
男二人の会話を盗み聞きする唯と奈々。
「なんか男同士だけで愚痴り合うみたいだな・・・」
「私たちを誘わないなんてずるいなぁ」
「たまには良いだろ。だからよ、あたし達2人も一緒にどこか店に行かないか?」
「まあ別に良いけど」
「あの、3人で良いかな」
いつの間にかそばに来ていた細川さんが参加を希望してきた。
「お、珍しいな細川、良いのか?」
「問題ない。私もこの際あなたたちと関係を築きたいと思ってたところ」
「あ、じゃあもういっそのことあの人も呼ぼうよ!」
「で?なんで私なの?」
放課後に学校を出て、私が前から行ってみたいと思っていた店を女子会の場に決め、今そこに向かっているところだ。メンバーは私、奈々、細川さん、そして誘われた理由が分かっていない渡辺実央さんだ。
「この会は杉田義羅と何らかの形で関わっている女子の集まりっていうのがテーマです!」
「だから何でわざわざ私がそれに参加しなきゃいけないの。ちょうど部活も生徒会の仕事も無いからって・・・」
「「「友達になりたいからです!!」」」
「・・・う~ん、とりあえず、どうもありがとう・・・」
「よし、じゃあ行こっか!」
「「おう!!」」
「お、おう・・・」
さあ、女子会に行こう!
目的地の店は町の商店街の入口付近にある。店の名前は『TEISHOKU』。何故わざわざローマ字なのかは分からないが、日本の一般料理のみならず、フランス・ロシア・スペインなどの有名な色んな料理を複数注文メニューに並べているそうだ。一流ではなく、どんな国の人でも大歓迎なインターナショナルな店だそうだ。
「お、ここだ!」
「レストランって言うより、カフェっぽいね」
店は西洋造り、テラスで食べられるように外にはテーブルとイスが2セットほど置かれている。外から見た中の様子だと、今の時間では時間潰しの感覚で客が入ってるという感じだ。
「「いらっしゃいませ!!」」
入店すると私たちは一同に揃って驚いた。なんと接客しているのが自分たちと同年代らしき男女二人だったのだ。奥で食事を運んでいる男の方は執事のような身なりで背が高く、それでいて顔もイケメンかつ澄んだ目をした人だ。私たちの接客をしにきた女の方は金髪で青目の外国人らしく、奈々と同じくらいに美人なメイドさんだ。
「4名様でよろしいですか?」
「うえ!?あ、はい!」
「4名様、2番テーブルお入りでーす!」
「あいよ~」
また驚いてしまった。外国人だからてっきり片言の日本語で喋るのかと思ったので、流暢な日本語が出て反応が遅れた。
「って、あれ?ビ…むごっ」
次の瞬間、細川さんが突然何かを言いかけた金髪店員の口を塞いだ。
「しっ」
細川さんは人差し指で何も言わないでと言わんばかりな目で訴えていた。
「え、知り合いなの?細川さん」
「また、後で話す。先にテーブル行こう」
「お、おう」
若干変な疑問ができつつも、テーブルにみんな付き、さっそく奈々が取り仕切り始めた。
「さて、揃ったところで始めようか、女子会を!」
「じゃあさっそく聞くけど、あの杉田義羅ってどんな人なの?」
質問を投げてきたのは渡辺さんだった。しかし私はその質問に違和感を覚えた。
「ギラはなんと言っても、あたしが出会った男の中でイッチバンかっこいい男なんだ!」
それを大声で答えたのは奈々だ。
「5年前、船の上で初めて会って共通の敵達と戦ってた時、あたしの動きに合わせて立ち回りながら戦ってる姿にまず惚れたよ。そんで最近気付いたんだけどな、あいつ周りの人のことも気にして男女問わず落とした物を拾ってあげたり、転びそうな人を支えたり、他の人のために扉を開けてあげるとか、小さなことでも良いことを普段からやっているんだぞ!あとな!」
「お、落ち着いて北野さん!あなたが杉田君に惚れてるのと彼が親切なのは十分理解したから!」と渡辺さんが奈々を止めた
そうだ。ギラは中身がしっかりしている。それでいて私たち女の子の気持ちを理解した上で接してくれている。とても良い人なんだ。それのせいでモテてるのでいつかまたライバルができるのではと心配もあるが。それとは関係無いけど目の前になりそうな人はいる。
「そういえば渡辺。お前こそギラとどういう関係なんだ?教室で会った時いきなり泣いたんだよな?」
「あ、そこ私も気になってた。もしギラと会ったことあるなら細川さんとも会ってるんじゃない?」
ならば細川さんも知り合いであることを隠しているかもしれない。そしたら細川さんが。
「渡辺さんとは会ったことはない。それは間違いない」と答えた。
「私も杉田君とは会ったことはないの。何であの時涙が出たのかも分からない。でもその日までよく見た夢が関係してると思う」
「「「夢?」」」
「うん。夢なのにはっきり覚えてるの。雨が降っている中、ヨーロッパっぽい町の人気のない路地裏で私を抱えて泣いてる男がいるの」
「それがギラだったのか?」
「うん。会うまでは思い出せなかったけど、顔は同じ。でも白髪が無くて普通の黒髪だった」
「あ、それなら間違いなくギラだ。あたしが会った時も黒髪だったぞ」
「え!?それ本当?」
初耳だ。じゃああの白髪は染めているのだろうか。
「ねえ、細川さんは何か知ってる?」
プイッ。
細川さんは何も言わずそっぽを向いた。怪しい。
「でも渡辺。夢でしか見た記憶がないんだろ?本当に現実で会ったことないのか?」
「うん。全く」
「お待ちどお様!グランドパフェです!」
いつの間にか注文してた細川さんがパフェが来るなりがっつき始めた。持ってきたのはさっきの金髪メイドさんだ。
「あの〜すみません。大変失礼なことを聞くんですが、メイドさんおいくつですか?」
「あなたたちと同じ、今年で16よ」
「え!?じゃあ今やってるのはバイトですか?」
「いいえ、ちゃんとした正社員ですよ」
「「「学校は!?」」」
「もちろん行ってます。この店は学校が終わり次第始めるという形でやってるんです」
「それって法律とかに引っかからねえか?」
「ああ、それは・・・」
ガチャンッ!
「失礼します!」
突然、大きな音を立てて店に入って来るなり大声で叫んだのは、ガラス越しで確認するところ後ろに20人ほどのSPっぽい男たちをズラリと引き連れた白ジャケットの男だった。
「なんだなんだ?」
「誰?」
他の客たちもざわついた。
「また来た・・・しつこいですね」
「千恵、知り合い?」
細川さんはものの一瞬で金髪メイドさんの横に立ち身構え、彼女に耳打ちをしていた。やっぱり知り合いらしい。
「例の地上げ屋・・・」
冷静に答える金髪メイドさん。細川さんと知り合いともなればギラとも知り合いのはず。いやもしかしたら…
「いや~どうもどうも『TEISHOKU』の店員さん!例の件ですが、考えてくれましたか?」
「どの口が言うんですか…何度も言ってますように、あの看板を見てるでしょ!」
メイドさんが呆れながら指を差した方には、会計の横に置かれている大きな看板がある。内容は“日本国特別許可店”と記されていた。
「あとまた付け加えますけど、この店を侵そうとする者に対しては一切の責任は問わない、自衛は自らやるべしって決まってるんですから」
(何その取り決め・・・)
私と奈々、渡辺さんの三人が心の中で同じツッコミを入れた。
「もちろんこちらだって了解している。っていうか何度も返り討ちにされているからね!」
(しかも、返り討ちにされてた!!)
またツッコんだ。
「だから今回はお前らの店潰すためにSPじゃないけどSP並に強い奴ら百人動員してきたんだからな!!」
(微妙な集団・・・!そして思ったより多かった!!)
ツッコミ3連続。
「営業妨害として訴えますよ」
「やかましい!そんな暇与えるワケないだろ!こちとら去年ここにマンションを建てる計画を進めようとした矢先に、お前らがここの土地を取ってくれたおかげで計画が凍結状態なんだよ!!上からはとっとと取ってこいと一点張りなんだぞ!」
「いくらそちらの事情を理解したとしても私たちは廃業も立ち退きもしません!そっちがその気なら、“いつもの”でやりますよ!」
そう言いながら金髪メイドさんは出入口にいる地上げ屋たちに向かって歩き出した。
(“いつもの”って?)
「千恵~。一人で平気か~?」
調理場から赤いバンダナをつけたシェフが顔を出しながら聞いてきた。メイドさんは会計場所に置いていた身の丈以上の長い棒と木製の十字剣を手に持ちながらそれに答えた。
「大丈夫です。入りたければ、いつでも!」
ドォォォン!!
ほぼ一瞬だった。私が見た感じでは、メイドさんがすごい勢いで白ジャケット男の横に行き、そこから低く構えて長い棒でSPモドキ集団を吹き飛ばしていた。店員さんはそのまま白ジャケット男には目もくれず、そのまま店の外に出た。
「さて、掃除を始めますか」
「く・・・!お前ら何してる!早くその女を抑えろ!」
強い。その金髪メイドさんはもはや戦士だった。相手との間合いをうまく取りつつ、長い棒と木剣を巧みに操り集団一人一人を瞬く間に切り伏せている。その姿はまさしく美しさを表現している感じだった。
「お前ホント何者!?絶対高校生じゃないだろ!!」
ピクッ。
その一瞬を私は見逃さなかった。白ジャケット男の発言に、金髪メイドさん、ノッポ執事、そして赤バンダナシェフが同時に反応した。その時、SPモドキの一人がその一瞬のスキを突こうと飛び出したところに一つの影が飛び込んできた。
「ほわたぁぁぁぁぁ!!」
大声と飛び蹴り付きで。
5分前。
「能力の把握。やってみて色んなことできることが分かったんだけどよ。正直俺の能力最強なんじゃねえかって思うわ」
「それは何よりだ。でもな、能力を持ってる依然に自分は人間であることは忘れるなよ。でないと、能力を持ってる人間とそうでない人間との間に溝が生まれっちまう。X-Manシリーズのようにな」
「今更思うんだが、色んな映画のタイトル上げて大丈夫なのか?この小説」
「大丈夫!!なぜなら作者が好きだからだ!」
「気持ちの問題じゃなくて著作権の話・・・ん!?」
まだ遠いが、ギラが誘おうとしてる店の前でSPっぽい集団っというか軍団とそれを距離をおいて見物している人たちで、通りを埋め尽くされている。
「なんだこれ?なんかの催しか?」
よく見ると、軍団の中心で誰かが暴れている。
「おやおや」
ギラはなにやら楽しげだ。
「けんかか?加勢するか?ギラ」
「いや、剛。お前はまだ能力を人に向けるのは早い。ここは、"俺たち"に任せろ!」
そう叫んでギラは、能力であの木刀を出し、ジャンプして突っ込んでいった。
で、ここ。
「ほわたぁぁぁぁぁ!!」
「「ギラ!?」」
まさかのギラが突然の飛び入り参戦にびっくりした。
「LUMEで事情は知ってたけどよ〜、ここまで派手とはなぁ!」
「ギラさん!お久しぶりです!」
「おうよ!」
笑顔で言いながら、後ろから飛びかかろうとしたSPモドキを振り向かずに左手の裏拳でボコッとぶちのめしているギラ。さすが。
「けんか祭りときたら参戦しないわけにはいかないな!いっちょ共同戦線と行くか!巴!お前も入りたいなら参戦しろよ!!」
いつの間にか私の中で存在が消えていた細川さんがガチャガチャと2丁のウージーを用意してて、ギラに呼ばれるや否や、ジャキッと両手で構えて答えた。
「Yes, sir!!」
ニヤリと笑って。
次の瞬間、もうスピードで突っ込んで両手のウージーを使ってSPモドキたちを吹き飛ばした。
それに合わせるようにギラと金髪メイドさんが木刀・木剣でそれぞれ細川さんの背後の敵を横凪ぎに吹っ飛ばした。さらに追い打ちをかけるように二人は飛んで細川さんは360度回転しながらウージーを撃ちまくった。見たところ本物の実弾銃みたいだ。
「え!?ちょっとあれ銃刀法違反じゃ...」
渡辺さんがそう言いかけたところに店から出てくる人がそれを制した。
「大丈夫だ。あいつが使っている弾丸はあの“ALIVE”が使用してる相手を電撃で行動不能にするだけの弾だ。それにあいつは銃の使用を国に許可されているし、なぁ!!」
そう言いながら赤バンダナシェフは、エプロンを脱ぎ捨ててバンダナを結び直し、木刀を振り上げて突っ込んでいった。
「「「あんたもかィィィィィ!!」」」
残された私たち3人揃ってツッコんだ。
「ギラ!お前が参戦するなら、俺も黙っちゃいないなぁ!!」
「よう!トラ!!シェフが調理場ほったらかしていいのかよ~」
「注文の分はもう調理し終わってる、あとは正士に任せるだけだ!」
二人とも会話をしながらSPモドキたちを切り伏せるほどの余裕があるそうだ。
「ギラさん!信司!一旦こっちへ!!」
ある程度敵との距離を取りながらギラと細川さん、そして赤バンダナシェフと金髪メイドさんがお互いを守る形で集まった。
「ギラ、どう?敵の数は」
「もう半分もいないな、あとは好きにやればいいだけだな.トラ、“使う”なら一つか二つ、そして“小さい方”にしてくれよ。お前の流れ弾はゴメンだ」
「分かってるって。蘭丸、これに!」
『はっ!御屋形様』
赤バンダナシェフが蘭丸と呼んだ相手らしき人の声が電子音混じりに響いたと思ったら、シェフのすぐ近くに1つの火の玉がボッといきなり現れた。
「M16A2アサルト・ライフルを2丁展開、弾丸はいつも通りエレクトリックで、不殺で頼む」
『御意』
シェフがそう命令すると、もう一つ火の玉が現れ、それぞれの中心から銃口が出てきた。おそらく今シェフが口にした名前に該当する銃なのだろう。そしてこれがこのシェフ本人が行っていることで、きっと私や剛と同じく彼も能力者なのだろう。
「あ、じゃあ私も加勢に…」
「唯たちは手を出すな、俺たちで十分だ。おいそこの白ジャケットさんよぉ!」
ギラに呼ばれるまで存在を忘れられてた当の白ジャケット男は、腰を抜かしてアスファルトに尻をついていた。
「このままSPモドキたちをほっとくつもりでいるのか?命令の一つや二つぐらい出してみろ!」
「い、言われなくてもやるわ!!おい!さっさと数に任せてそいつら押しつぶせ!!」
それまで怖じ気づいてたSPモドキたちが命令されたことで奮起し、ギラたちに一斉に襲いかかった。
木刀を握りしめ、迎え撃つ構えをしながらギラは満面の笑みを浮かべて叫んだ。
「野郎ども!勝負に出るぞ!!」
「「「Sir,yes,sir!!」」」
なんというか、後の展開は予想通りだった。
金髪メイドさんは長い棒を軽々と大きく振り回したりやり投げのごとく飛ばしたり、木剣で接近してきた相手を振り払っている。細川さんはお馴染みのウージー2丁でまるで鞭を振るってるかのように弾道を展開しながら撃ちまくっている。後の二人は木刀を振るっているが、以前戦っているところを見たことのあるギラはともかく、赤バンダナシェフの方もその太刀筋からして歴戦の侍を思わせる動きをしている。そして彼の能力である二つの火の玉から出た銃口は4人の援護射撃をそれぞれ自動で行っている。
さらに4人全員強く、それぞれがどう動くのかを知っていかのように立ち回り、お互いの死角を守りながら戦っている。
この4人には付け入る隙が全く無い。
あえてもう一度言おう、
この4人には付け入る隙が全く無い!!
100人のSPモドキが全滅するのにそれほど時間は経たなかった。行動不能になったSPモドキたちが何台もの軽トラックに積み込まれていくのを私と奈々、渡辺さんでお茶を飲みながら店の中から見ていた。
「あの白ジャケット、一応手配してたんだな」
「負けるのを前提で100人動員して仕掛けただなんて、呆れるにも程があるわ」
「なんでそこまでこの店にこだわるんだろうね」
そんなに件のマンション建設が大事なのだろうか。
「おい!次こそは覚悟しとけよ!今度は倍以上動員してでも店潰すからな!!」
まさに負け犬の遠吠えよろしくな捨て台詞を残して車で立ち去ろうとする白ジャケット男。
それに対してギラは、
「やるなら軍団引き連れてくるんだな。もっとも、そんなことができるのならな!」
「「「あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!」」」
細川さんを除いた3人がギラのジョークを機に思いっきり高笑いをした。
地上げ屋がいなくなって4人が店に入ると、
「では!『TEISHOKU』、ただいまから再開店します!お客様、いらっしゃいませ!!」
「「「「「は~い!!」」」」」
金髪メイドさんの一声で店が再び稼働し始め、今の今まで待ってくれていたお客さんたちも笑顔で入店してきた。金髪さんは接客に、赤バンダナシェフは調理場に戻った。そしてギラと細川さんは私たちがいるテーブルにやってきた。
「ここの店って、いつもこうなの?」
「いつもじゃなく、たまにこうなるらしい。LUMEで聞いたところ何度かやるうちにけんか祭りの一環として近所で人気になってるんだとよ」
「あれでけんか祭りで済むなんて…」
渡辺さんは呆れながらも、おすすめデザートのグランドパフェを食べている。
「あたしらだって、加勢できたのに。なんで止めたんだ?ギラ」
「お前らなぁ、俺たちがただ暴れていただけだとでも思ってんのか?近所の建物のことも考えながらの戦闘ってのは素人じゃできないことなんだぞ。あれって結構キツいんだから。それを考えると唯と奈々のパワーはかえって特に危険なんだ」
「あ、そっか…」
確かに、店の前は騒動があったにしてはあまり荒れた様子は無い。銃弾による痕も無くSPモドキが吹っ飛ぶ先も考え込まれながら戦闘による被害が出ないようにギラたちは戦っていたのだ。
「はいギラさん、緑茶お待たせ!」
「お、ありがとう」
「そうだ!なあギラ。この店の人たちとは知り合いなのか?」
「あれ?奈々はあの時見てねえのか?まあどっちにしろ紹介がまだだったな。こちらの金髪美人さんは木槿高校の榊千恵だ」
「からかいはよして下さいよ」
そう言って少し小突く榊さん。衝撃だった。
「え!?店員さん日本人なんですか?とてもそうは見えないんですが…」
そう言われて顔を見合わせるギラと榊さん。
「あ~、私はちょっと特殊でして、ちゃんと日本人夫婦の間に生まれたんですが・・・」
「ワケあってこの通り金髪美人に生まれたんだ」
「どんなワケ?」
「「それは秘密」」
二人揃って人差し指を口に当てて答えた。一体どんなワケなのだろう。それより、
「随分と仲がよろしいんですね...」
「さっきの戦闘も息ピッタリだったし、もしかしてあんたもギラを」
「「え!?」」
私と奈々が睨みながら言うと、榊さんと何故かギラまで驚いた。そして、
「「あっはっはっはっはっはっはっは!!」」
すると二人揃って盛大に笑いだした。少しムッと来た。
「ちょっと、何なのですか?」
「確かに、私もギラさんは素敵だとは思いますよ。でも大丈夫、私は彼には惚れてませんから」
笑い過ぎて少し涙目になりながらも答える榊さん。
「お前ら、少なくともこの店で俺に惚れてる奴はいないからな。それに、千恵はもうこいつと付き合ってるからな」
ギラはそう言いながら、いつの間にか近づいていたシェフさんに親指を指した。
「恥ずかしいこと店ん中でバラすな」
「おいおい元天下人のおっしゃる言葉とは思えませんな〜。ちなみにこちらのトラも千恵と同じ高校で、名前は八代信司だ」
「あ、どうもよろしく〜、うちの店をどうぞご贔屓にっておいこらっ!」
「はっはっはっはっはっはっは!」
「さらに同じく木槿高校の青木正士です。いつもギラがお世話になっております」
「おい、お前は俺のオトンかオカンかエーブ」
さりげに紹介からのノリツッコミ、さらにオカン発言。彼らの仲の良さはかなりの付き合いと見た。
「ところでさ~、ギラ君」
すると八代さんはギラと無理やり肩を組んで後ろに振り向かせ、
「お前いつの間に“あの子”とコンタクト取ってんだよ」
「俺も予想外だったんだよ。まさか学力テストの件で絡んでくるとは思わねえし」
なにやらコソコソ喋っているみたいだが、会話が聞こえてこない。
「ちなみにその学力テストの成績はどうだったんです?」
さりげに榊さんも2人の会話に入り込んだ。
「・・・全教科満点」
「「それは仕方ない」」
「おいこら」
「だったらコンタクトは慎重に取るように、分かってますね、ギラ」
榊さんと青木さんを入れて4人で何やらコソコソと話しているが内容までは分からない。
「あの、どうかしたんですか?」
「あ、いやいやいやいや!何でも無いぞ~」
渡辺さんに声を掛けられ、一瞬かなり動揺したギラ。また怪しい。
「そういやトラ、さっきの地上げ屋、もう何度も来てるのか?」
「ああ、別の地上げ屋もいるっちゃあいるんだが、あいつらは特にだ。店を始めてもう5回以上は仕掛けてきてる」
「それはしつこすぎるな。あいつの言ってた上ってのが気になるし、今度ブラッキーにその辺の調査を頼んでみるか」
「そうだな」
「なあ、いい加減お前らの関係が何なのか言ったらどうなんだ!」
しびれを切らした奈々が話を割って入ってきた。
「お前“あの時”の暴走学ラン少女だな、俺たちのことは戦争帰りの集まりとでも認識しといてくれ。それ以上はもう話さない」
失礼な覚え方されてるな。奈々が暴走するってところはあながち間違っちゃいないけど。
「あの〜すみません、注文いいですか?」
他の客もそろそろ注文を頼み始めた。
「あ、はいただいま。それでは私たち仕事に戻りますね。あとお三方、私のことは千恵でよろしくお願いいたします」
「ついでに俺もトラさんでよろしく」
「私も正士で構いませんよ。では」
そう言って3人ともそれぞれの仕事場に戻っていった。
「お前の知り合いってみんなああなのか?」
剛がそう聞くと、ギラはニヤッと笑いながら左目を閉じて言った。
「こんなもんじゃねえよ、俺の知り合いは。これから知る度に驚愕間違いなしだからな、お前ら」
2096年、俺は二度目の人生を始めた。てっきり生まれ変わりを果たしたのは自分一人だと思っていた。
だけど実際は違った。そうじゃないと分かったのは生まれてから5年経ってからだった。
生まれ変わりは、他にもいた。
その内の一部が『TEISHOKU』のメンバーたちだ。
オーナー兼シェフの八代信司の前世は、1534年から1582年。
戦国時代後期において日本のほとんどの領土を支配下に置き、天下人とも言われたが家臣の裏切りによって全国統一という志半ばで自ら命を絶った猛将、
織田信長。
接客・給仕を務める青木正士の前世は、1809年から1865年。
アメリカ合衆国分裂の危機という名の南北戦争が起きた時代。奴隷解放宣言、ゲティスバーグの演説や数々の名言を残した第16代アメリカ合衆国大統領、
エイブラハム・リンカーン。
接客・メイドを務める榊千恵の前世は、1412年から1431年。
ヨーロッパの百年戦争時代、イギリス軍に脅かされ崩壊寸前だった故郷フランスを救った“オルレアンの乙女”、
ジャンヌ・ダルク。
彼、彼女とはそれぞれ違う形で出会ったが、俺が一時掲げた“ある目標”に共明し行動を共にしてから、互いの絆を色濃く刻んだ。
人生とはやはり何が起こるか分からないものだ。例えると、かつて不可能とされていたことが現在では実現できていることのように。遠くにいる人と会話をするなんてできないだの空を飛ぶのは人間には無理だの、それら全てがやがて当たり前になっていく。そんな風に彼らも、"俺たち"のように生まれ、育ち、能力に目覚めてもなお現在の自分を受け入れて、超人ではなく人間として真っ当に生きようとしているのだ。
俺は、そんな元偉人たちと共に二度目の人生を歩んでいる今を、11年前では予想できなかった。でも予想できないからこその人生なのだ。誰にも、本人にも、人生全部の内容は決められない。できるのは本人が自分の心に掲げた目標にただひたすら目を向けながら、信念という名のレールを自ら作りつつ進むこと、それが119年生きた上で俺が今そうだと思う人生の在り様である。
そしてその人生はまだ、俺にとって第1,2章が終わっただけなのである。
どうもみなさん!!1月ぶりの投稿です!
ついに本編では、早く書きたいと思っていた場面が出てきました!
昔の仲間たちに再会し、一緒に暴れるという展開。単純に見えてなかなかそういう場面は意外と珍しい(作者本人の勝手な認識)。こんな話が書ける日が来るなんて2年前では考えられませんでした。
今回はそんなうれしさもあって、戦いの場面は特に気合いを入れて書きました!ちなみに、けんか祭り終盤でギラたち4人が揃って戦う場面は、映画『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』で終盤の廃墟化した教会でのヒーロー達の戦闘シーンを思い浮かべながら書きました!!
それではみなさん!自分はこれからもまだまだ進み続けます、弾丸の如く!!




