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ケンチとマーちゃん──転生して25年、やっとアイテムボックスが使えるようになったんだが、中に『変なトカゲ』が住んでいて俺に色々と頼んでくる  作者: お前の水夫
第3章 トカゲさんと山

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第33話 新しい居候

※本日は2話投稿します。

 マスコミ志望のドラゴンである、スーラネオラ姉さんの住居兼新聞社を解体中の俺達は、彼女の状態と記事の酷さに同情した結果、ドラゴン姉さんの面倒を見させてほしいと提案することになった。


「そういうことならお世話になろうかしら。やっぱり人って、自分が暮らしている場所の情報を欲しがるものよね。分かってはいたのよ。でも安全に行ける様な場所って無いし」


 聞けばスーちゃんは800年以上もここに居るとのことだ。


 彼女の言うことによれば、情報そのものの価値は、いずれは世界をおおうことになるだろうとのことだった。俺もマーちゃんもそれに異論は無い。


 人を超える聡明さが予想外の方向へ噴出ふんしゅつすると、時にはこういうことになってしまうものなのだろうと思える話に聞こえた。


 今のところ、人間の中でその重要性に気が付いているのは、国や教会の上層部と大商人ぐらいなものなのだ。


「気持ちは分かるぜ、スーちゃん。街にそのままで行ったら、外壁から大型弩弓(どきゅう)の矢が飛んでくるだけだしよ。これからは安全に情報を集められると思うぜ。ただ、偉い人の醜聞だきゃあ書かねえでくれ」


 不思議な同居人が増えることについて、余計なことを言うつもりは一切無い。俺だってマーちゃんのヒモ(▪▪)なのだ。







 スーちゃんにはヤバいことを書かないようにだけお願いした。人間にとって危険なことというのは、何も文化的なものや法的な内容だけではないのだ。


 月報げっぽうの『ガーデニングコーナー』に書いてある植物は、美人草びじんそうといって綺麗な花をつけるのだが、栄養が足りなくなると人間にツタで襲いかかることも付け加えておいた。充分に育つと樹高2メートルもあるのだ。自力で移動もする。


 それから『突撃ご近所さん』という記事があるのだが、これも駄目出しをしておいた。

 この記事は、下層の遺跡の守護者であるハーケンケイムとの不毛なやり取りが主な内容なのだが、通算9600回目の突撃取材でも徹甲弾と光学兵器で追い返されるという、いつもの悲惨ひさんな結果でくくられていた。


「スーちゃん、うっかりこいつを読むとな、探索者やら国のつかいの人やらがここに来ちまうんだよ。ベアグリアスって御人おひとが前に来ただろ? 今度はブラバさんが来たんだが、今は土の精霊のエっちゃんに面倒を見てもらってんだ」


「そうなのね!? 私、前にね、この月報を空からいたことがあるのよ。それを読んでくれた人が居たのね。インパクトが大事だと思ったんだけど、なかなか上手くいかないのよね……」


 居候いそうろうを決めたスーちゃんの為に、俺が使っている東屋あずまやの100倍は大きいものが建てられた。


 俺達はそこに陣取って、茶を飲みながらスーちゃんの記事についての感想をべ、遺跡の情報について改めて聞いていたのだ。


 詰め所の遺跡の方は解体も終わりそうで、紙の製造設備と印刷機の収容もとっくの昔に終わっていた。


 スーちゃんの住居については、俺の住んでいるカマクラ『気楽イン』から100メートル離れた場所に、巨大な東屋あずまやと一緒に転送されてきて一瞬で建った。


「スーちゃんの住む場所ってこったから、デケえだろうたぁ思ったけどよ。黒いし、光を反射してねえんじゃねえか?」


 スーちゃん用のカマクラは全くつやの無い黒で、あまりの黒さに建物ではなく空間に空いた半球形の穴のように見えた。


「これは大きいだけあって安全性が高いぞ。電磁波は光を含めて遮断しゃだんする。音もだ。爆発などの衝撃波からも内部を保護する。霊体にも侵入できない。そして水も出るぞ」


 うちの安全住宅姉さんからは、変わらぬ頼もしい回答が飛んできた。過剰な気もするが付近にある倉庫の中身も想像すると、ここまでの物件でも安心できない部分があるのが不思議だ。


────────────────────


高強度保管ドーム『ハイランドデレンドラ』


あらゆる電磁波と放射線の影響を排除する保管ドーム。至近の超新星爆発の影響まで防御することが可能。

霊体でも侵入不可。内部の微生物の活動も極端に阻害そがいする。

内部に空気供給設備と給排水施設あり。

直径100メートル。


────────────────────


 つい鑑定を使用してしまったのだが、マーちゃんに教えられた通りの性能で、書き物も多いドラゴンのスーちゃんが生活するのに問題は無さそうだ。


 スーちゃんには後で、直径14キロメートルの吹き抜けや、白い豆腐のような巨大倉庫に近付いてはいけないことを教えなくては。


 このフロアは一応セーフハウスではなかっただろうか。


「スーちゃんには分かりにくかったな。紙やインクが劣化せず、物も腐りにくいから活動がやり易いぞ。1日に1度は様子を見るし、食事が必要な頻度ひんどについては後で教えてほしいのだ」


 うちの世話焼き姉さんは、こういうところにそつがない。







「すごい……建物の表面が本当に全然光らないのね。中も見たけど、あの印刷機は良いものだわ。詰め所のやつはもらってくれて構わないから。そう言えばあそこには、地震計の予備と緩衝器かんしょうきって物があったわね」


 スーちゃんも、新しい住居に満足してくれたようで何よりだ。


 今回の『詰め所遺跡』については、実は印刷機以外にも収穫があった。緩衝器かんしょうきを発見したのだ。


「マーちゃん、印刷機と緩衝器かんしょうきの技術情報についちゃあ高値で買い取ってもらえるぜ。そのカネで美術品でも何でも買えるんじゃねえかな。文化遺産ってやつだ」


 大貴族から買うのは無理だろうが、街の内区にいる役人で金に困っている奴はそれなりに居るだろう。そういった家に渡りをつければ、そこそこの品を売ってもらうことは出来そうだった。

 俺達には鑑定があるから、贋作がんさく寄越よこすような野郎には8人の陽気な男達が飲みに誘いに行くわけだ。


 ちなみに、オストロラ・シーシオンという美術商の知り合いも居る。こいつは出し渋りで有名だが、マーちゃんに協力してもらえばたたきようはいくらでもあった。


「ケンチ、緩衝器かんしょうきについては、大森林に行く時に最近導入されたと聞いたが、それでも高値で売れるものなのか?」


 マーちゃんからは、今回の成果について質問が返ってきた。


「そう思うのも仕方がねえよな。実はあんまし上手くいってねえそうだ。独自技術の邪魔をすんのも何だがよ、今回は研究者さんに泣いてもらおうぜ」


 1つ目の遺跡については、疲れるようなこともあったが、高値で売れるような成果もあって何よりだった。










※お読みいただきましてありがとうございます。

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