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ケンチとマーちゃん──転生して25年、やっとアイテムボックスが使えるようになったんだが、中に『変なトカゲ』が住んでいて俺に色々と頼んでくる  作者: お前の水夫
第3章 トカゲさんと山

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第24話 新しい能力

 吸い取るさんが長いパイプの付いた手押しポンプを撤去し、砦跡地とりであとちから地下水を100万リットルも吸い上げるのはあっという間に終わってしまった。


 俺がマーちゃんに公国の歴史について話をしながら、適当な鍛練で身体をほぐしていたら全てが終わっていたのだ。今回は2体で吸い上げたらしく本当に早かった。


 正直な話、もうちょっとここでのんびりと過ごしていたかったが仕方がない。


 取りめの無い俺の頭の中身は、砦が無くなってしまったことに関してエランダラ達が何も言わなかったことを思い出していた。おそらく連中の頭の中は、砦よりも巨大でヤバい存在と会話したショックで麻痺していたのではないだろうか。


 そんな事を考えていたのだが、気がつけばもう昼の時間である。食事をしたらここから目の前の山脈へと出発しなければならない。


 今日は朝から晴れていて雲も無くなった。山へと分け入るには理想的な日に違いない。

 

「マーちゃん、いよいよ山ん中だ。鉱脈を見つけるもよし、ただ掘るのもよし、遺跡を探すのもよしと来たもんだ! 土の精霊とドラゴンと、あとは古代兵器だけは勘弁してもらいてえな」


 昼食後はいつもの装備にマスクをして、マーちゃんが頭に乗ったら出発だ。もちろん歩いて行く。あせってはいけない。


「ケンチ、1人忘れている男がいるぞ。ダレランデス氏は相手のグループのリーダーだそうな。そして他のメンバーとは違う方法で戦うと聞いた」


「忘れてねえさ、マーちゃん。ただ出来れば会いたくねえってだけだ。それによ、いくら800年も前の物だからって、チラシに古代兵器の情報が載ってんのが、もうすでにおかしいだろぃ」


 今回の遺跡情報の内、兵器の存在については怪しい部分が多いのだった。ツボルハイル博士の元に持ち込まれたのは瓦版かわらばんの様な印刷物だったらしい。

 ただし非常に古いもので、かつ大量に印刷されたと思われる印象があり、背後に失われた魔法輪転機(りんてんき)の存在を想起させるのに充分な代物だと判断された。


 最悪は技術情報だけでも奪取だっしゅしてこようとのことで、可哀想なダレランデス氏はこんな山奥に送られる羽目になったのだ。








 のんびり歩いていても、目の前にあるのだから麓にはあっという間についてしまう。

 

「近くで見ても中々に雄大な山々だ。隣の国からの分も合わせて2000キロメートルぐらいはあるのだろう? シメノウドン川より西側なら理想的なのだったな」


 頭上にいるうちの山師姉さんのいう通り、ここはそれなりの山脈だったりするのだ。


 ヴァンドヴォシュー地方の東方とうほうヴォーカル山脈と言えば、地殻変動と悠久の時による音楽性の違いから、解散するまで5千万年はかかりそうな峨々(がが)たる山の連なりだった。


 ここで言うシメノウドン川とは、俺のいるオーデン領と隣のヴァンドヴォシュー領の境界なのだ。西側がオーデン伯領で東側はヴァンドヴォシュー伯領になってしまう。このそれなりに広い川は、山脈の間を貫いて流れている為に、2つの領地のさかいとしても使われていた。


 そのため、西側で良い鉱山が見つかったりすれば、マーちゃんは城を買って懐に入れられるかもしれないのだった。


 もしも東側だった場合には、報償金がしょっぱいので、掘りくす勢いで持っていこうということにもなっていた。


 あんまりな結果にならない為に、教会に一枚()んでもらう必要もあるが、それだと俺が出世コースに乗ってしまうので複雑な思いもある。


 そんな欲望と戸惑とまどいのこもった目で、周囲を見ていたマーちゃんと俺は、その日は山中を20キロメートルも前進して終えた。








 日付は教会暦805年3の月9日に替わって、季節としてはもう夏に入ったということになる。


 マーちゃんと出会ってからだと16日目がやって来た。今日はフロアが雨の日である。


「ケンチ、今日は採掘ポイントを決めて掘ってしまおうかと思う。ここまで来れば今までより大きいロボットさんを出しても目立たないだろう? 雄大な山にはそれ用の装備があるのだ」


 今朝の東屋あずまやでは、シトシトと降りながら寒さを感じさせない雨を見ていた俺に、マーちゃんからそんな提案があった。


「いよいよか。ところでな、もしも外が雨だったら今日は止めにしておこうぜ。ここには2ヶ月いますつって出てきちまったしよ。合言葉は『食う掘る寝る』だ」


 最低でも2ヶ月間、ここから動きたくない俺としては、うちのボーリングマシン姉さんにそのむねをやんわりと告げた。


 それにしても内部で雨が降るとか、こんな妙な空間系の能力スキルを持っているのは世界で俺だけだろう。


「取りあえずは日課を済ませようぜ。お祈りってのぁ毎日やることが大切なんだ。自分は信徒であることを忘れていませんって神様に言い続けねえとな」


「そろそろ、この光の調整機能を付けていただきたいところだ。折角せっかくの透明化が通用しない相手が出てしまうのも良し悪しなのだ」


 そう言って今日も、お互いの神に加護を求める為に祈ることにした。


 実のところ、今の俺は具体的な希望というものがない。


 遠距離系の攻撃手段があれば良いとは思うが、あれも無双出来るほどに強力なものになれば授かるのは難しかった。それに、素材が全部駄目になってしまう上に、猛烈に疲れるのは割に合わないだろう。


 そんな考えは一旦止めて、真剣にお祈りしているところでその変化は訪れた。


「神よ、ありがとうございます。本当にこれが……俺にこんな……やっぱり見るべきところを見ていてくださる御方おかたは違うぜ……」


 感動がすごかったのだろう。俺の言葉づかいは、少しだけまともなものになっていた。

 

 俺は新しい能力スキルを得たのだ。

 

 マーちゃんの方へ振り返って伝えようとしたところで固まった。うちのトカゲ姉さんにも変化が出ていたからだ。


「ケンチ、非常に不思議なのだがな、私の身体が縮んだようなのだ。それから翼が生えてきた」


 確かにマーちゃんには変化が出ていた。困惑のアルトボイスも当然だろう。


 頭胴長は50センチぐらいにまで縮んでいたし、尻尾も同じくらいになっていた。

 外観は変わらず青い鱗に包まれた丸まっちいトカゲで、頭の上に8枚の葉っぱと光る輪っかが乗っているのは同じだ。

 ただし、背中に身体と同じ青い色の鳥の翼が生えてたのはえらい変化だった。40センチぐらいの小さな翼は割と似合うのではないだろうか。


「マーちゃん、取りあえずはおめでとうを言わしてもらうぜ。俺の方もな『鑑定』を授かったんだ。博物学の勉強もやって鍛練しなきゃならねえが」


 うちのミニ天使姉さんの変化も驚いたが、俺も『鑑定』を授かって驚いた。


 強化系の術は武術の鍛練、治療系は医学の勉強が必要であるように、鑑定は諸々(もろもろ)の知識の充実が不可欠だが、確実に自分の役に立つのだから勉強を頑張るつもりだ。

 そうやって視界に表示される内容は、関連する知識ともリンクしながら増えていくのだと聞いた。


 最初は大した情報は得られないが、これでも能力スキルなので、物の確認の時に誤認が無くなるだけでもありがたい。


 あとはマーちゃんがどういった能力を得たのか確かめなければならない。










※お読みいただきましてありがとうございます。

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