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ケンチとマーちゃん──転生して25年、やっとアイテムボックスが使えるようになったんだが、中に『変なトカゲ』が住んでいて俺に色々と頼んでくる  作者: お前の水夫
第3章 トカゲさんと山

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第21話 要塞ビフォーアフター

※何とか間に合ったので、本日は3話投稿します。

 砦の解体が始まってから2日目、俺がマーちゃんと出会ってから14日目になると、それなりに堅牢けんろうだった歴史的建造物も基礎部分から消失することになった。

 壁を含む城郭じょうかく部分は地面のみぞになり、本体の四角い建物については同じく四角い穴になってしまったのだ。


 穴の部分には地下の隠し部屋があって、何と言って良いのか分からないが、そこにあった諸々《もろもろ》のお宝は全部がうちのトカゲ姉さんのふところに入ってしまった。


「マーちゃん、今回は大当たりだな。金貨がさらに200枚と昔の武器まで手に入ってよぉ、それをしまってあった術の働いてる保管庫まで持って行けるって中々ねえぜ」


 隠し部屋の中身については、公国側の誰かのヘソクリみたいな物だろう。


 要塞自体が消失してしまったし、目撃者もいないのであれば、俺たちのことがバレる心配はまずない。


「ケンチ、今回は収穫の多い旅で良かった。最近の物との違いは小さいが、それでも古い武器や防具なのは分かるものだな。他国の武器類の購入資金も手に入った。これは山の遺跡にも期待出来るかもしれんのだ」


 今日は曇りであるし、この後から雨も降ってきそうではあったが、まだ夕方前に作業が完了したこともあり、俺たちは小躍こおどりして喜んでしまった。


 マーちゃんと俺は、実際にその場で両手をつないで向かい合い、クルクルと回転しながら自分たちの大いなる前進について祝い合ったのである。


 砦には他に、10台の荷馬車と20頭の普通のイノシシまでいたものだから、うちの生き物王国姉さんはさらに喜んだ。


 シランミッチネルとマヨタディオンの2頭まで呼んできて、その牽引けんいん用家畜たちの世話をかいがいしく始めてしまった。







「ところでよ、マーちゃん。良いことしか起きなくて2日経ったんだけど、あれからあいつらぁどうしてやがんだよ? 51人もいただろぃ」


 空は曇ってきたが、まだ陽は高い。時期は夏の前で、時間は夕方前である。


 砦の跡地から少し離れた場所で、簡易厩舎まで設置したうちの触れ合いファーム姉さんは、水桶みずおけやエサ箱の近くを飛びながら、イノシシ達の様子を熱心に見ている。


 そんな中で悪いとは思ったのだが、エランダラたちのことについてマーちゃんに聞いてみた。


「エランダラ氏については普通の人間に戻しておいた。他の兵士達については反応が2つに別れたのだ。彼らには私の目的と立場を正直に話したのだが、結局は御使みつかいとして認識されてしまった」


 うちのトカゲ姉さんは結局、自身のことについて連中に正直に話してしまったらしい。ところがそれが良い方向に働き、エランダラと一味の人間は結果的に2つに割れてしまったとのことだ。


「そんじゃ、連中には話が聞けそうかい? 前みてえな雨が降りそうだからよ、そろそろ中に引っ込もうかと思うんだがどうだい?」


「その方が良いのだ。イノシシ達の面倒は黒クモさんにみてもらうとしよう。出来ればあの地下水()み上げポンプも貰って行きたいが、あれを抜いた時に水が噴出すると不味いだろうか?」


 イノシシ達は意外にデリケートな動物であるということで、このまま要塞の近くに居てもらうことになった。

 黒クモさん達に加えて、うちのサイボーグ角猪コンビも一緒にいてくれるそうだから問題は無さそうだ。厩舎きゅうしゃにしているパイプテントの屋根もある。


 要塞跡地については、近所から瓦礫がれきを運んできて穴を埋めた。


 その為、岩の多い場所に平たい土地が出来て、その中に手押しポンプのついた井戸だけがポツンと在るという不自然な光景ができてしまったのだ。


「あの井戸な……変な圧力はかかってえと思うが地下にある穴をふさいじまおうぜ。ポンプは抜いちまえよ。マーちゃんの好きにしてくれ」


 マーちゃんが持っていきたいと言い、それが社会的に問題無さそうであれば、俺の意見はいつも「好きにやってくれ」一択なのだ。

 そういうわけで、井戸はここから移動する前に持っていくことになった。


 次はエランダラ・バッティングスタに話を聞いてこなければならない。







「2日ぶりだな。ケンチ、お前は俺が思っている男と違っていた。ロスナッシは本当に旅に出たのだな……聖都へ……。俺も馬鹿らしくなってな、他の何人かと聖都へ行くことにした。腕を売りに行く。情報も教会に渡す」


 久しぶりに会ったエランダラは少しせた様に見えた。頭の角は無くなったし、身長は196センチだそうだ。


 今は東屋あずまやのちゃぶ台を俺とかこんで、黒子さんが出してくれた緑茶を飲んでいた。


 うちの怪人戻しちゃう姉さんはといえば、先程から俺の左隣に浮かんで青い身体を包む光を周囲に振りまいていた。


 残りの50人の連中は全員が紺色のジャージを着て、東屋あずまやの外で焼き肉パーティをやってご機嫌だった。もう飲んでやがるのである。


 全員がトングの使い方に慣れているのが分かった。こいつらもだ。


 この世界にも全身に長い毛のある牛がいるのだが、その肉が要塞にあったのでそれを食っているらしい。元々はこの連中の持ち物だし好きにしたらいいのだ。


「あんたのことはバッティングスタって呼べば良いのかい? 俺が聞きてえのぁあんたらの目的と、どうやってここまで来たかってことだけだ」


 黙っていても仕様しょうが無いので切り出すことにした。


「俺たちの目的はもう知ってるだろう? 残りの連中が来るかどうかは俺も知らんのだ。だが、ダレランデスの旦那だんなが探している物は厄介だぞ。技術情報ではなく兵器だそうだ」


 わざわざ拠点までこっそりと作って、こいつらが探していたのはより直接的な力だったようだ。


「教えてくれてありがとうよ。ところでよ、あの姉弟は何で殺すつもりだったんだよ?」


 これだけは是非とも聞いておかなければならない。


「あの姉弟の継承権はまだ消えていない。今の伯爵はヨバンサード卿に乗り換える代わりに謀反むほんの後押しをしてもらったそうだ。叔父だとか聞いた。問題は1年経っても統治が安定しないことだと聞いたな」


 領地を乗っ取った男は、不安から逃れられない状態のようだった。領主向きの人間ではないのだろう。


「なるほどねえ……そんじゃあんたらはどうやってここまで浸透しんとうしたんだい? ずいぶんと大変てえへんだったんじゃねえのかい?」


 この連中は何度も要塞へ物資を運び込んだはずだ。ここまで来るのに慣れているということになる。


「大勢が鎧を着ているところしか見ていないと分からんものらしいな。商人と護衛としてきているのだ。ここがどういう土地か一番よく知ってるだろう?」


 山脈は公国の南東部域にある。ここから北上すれば商用街道に出られるし南下すると港街があるので、この山脈以外の地域では商人の往来おうらいが激しいのだ。


 正直に言えば一本とられた気分だった。










※お読みいただきましてありがとうございます。

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