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ケンチとマーちゃん──転生して25年、やっとアイテムボックスが使えるようになったんだが、中に『変なトカゲ』が住んでいて俺に色々と頼んでくる  作者: お前の水夫
第3章 トカゲさんと山

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第10話 泉の真実

「シンデル先生、俺ぁ田舎者いなかもんなんで言葉が汚えのは勘弁しておくんなさいよ。話を聞いてもらうのぁやぶさかじゃねえんだが、うちの姉さんに許可をもらわねえとならねえんで」


 こちらを手招てまねきしている幽霊先生にはそう声をかけ、頭上にいるマーちゃんとは何をどう話すか協議することにした。


「ハハハ、そう言われればここは田舎じゃったのぅ。そういう事は気にせんから。昔の学生にもそういう者がおったな」


 そう返すシンデル教授は、随分ずいぶんと昔に人間をやめたというのにフレンドリーな人柄のようだった。ああいう人でないと、この周辺の水の精霊と付き合うことは難しいのかもしれない。


「そういうわけだマーちゃん。今から質問タイムみてえなんだがどうするよ。ガタガタと言われることはねえかもだが、今の常識が通じねえこともありそうだぜ」


「あの方はこの界隈かいわいの街や村に興味があるようには見えん。あの家の水道管が破裂してから、あそこが泉になるまで相当な年数が経過したかと思う。おおらかな人柄なのではないかな」


 俺とマーちゃんはシンデル・メイ教授に対してどう対応するかを小声で話し合い、聞かれたら全部を話してしまおうということになった。俺たち以外にここに来そうな奴もいないだろうと思われたからだ。


「シンデル先生、もしよかったら茶でも出しますんでこちらに来ませんか。うちのマーちゃんも歓迎してくれるみてえなんで」


 俺のその返事に合わせて、黒子さん達や黒クモさん達、休止中の吸い取るさんが収納口からアイテムボックス内へと全て戻った。


「まさか! 空間系の能力スキルなのか? あんな大きいものまで入るのか。ひょっとすると人まで入れるのではあるまいな。あれは伝説じゃと思うておったわぃ。それにあの人形達は金属で出来ておるのか?」


 どうやらこの能力スキルは幽霊先生の度肝どぎもを抜いたらしい。ロボットさん達にも驚いているようだった。


「先生はぁ茶ぁは飲めねぃでぃす! 水じゃねぇくて煙みてえなもんでぃす」


 俺の誘いに対しては、水っぽいブーラブ姉さんの方が突っ込んだ。


 シンデル先生は精霊のブーラブと共にこちらへ滑るように近づいてきた。足元の水は戻ってきていたが、元々が空中に浮かんでいるので問題は無いのだろう。


 ちなみに、四角い水の湧き出し口には先程見かけた肉食両生類であるチクワーブが顔を出していた。幽霊先生はあの生物とも仲が良いのではないだろうか。


「シンデル先生、恐ろしく広いが中へ入っておくんなさい。ところであのチクワーブは放っておいてもよろしいんで?」


 幽霊先生を収納口から中へと招き入れながら、ついでに2メートルの両生類の扱いについて聞いてみた。


「あいつは最近になって住みついた奴でな。あの水没してしまったわしの住居が気に入っておるのじゃ。

これは不思議な空間じゃな。本当にえらい広いのう。何ザトーあるのやら」


 そう言う幽霊先生とブーラブ姉さんを俺達はカマクラの方へと案内した。


 幽霊先生の言ったザトーという単位は、メートル法施行(せこう)前のものだ。およそキロメートルと似た距離であるらしい。


 俺の先輩達が単位の問題に介入したのは先史文明崩壊が関係している可能性もある。彼らがこちらに来た時期は不明だが、社会を維持する知識が途絶とだえてしまった後なら大変だったのかもしれない。


 とにかく先生が大陸公用語の話せる御人おひとなのは助かった。







 フロア内に戻った俺たちは、いつもの東屋あずまやにあるちゃぶ台を囲み、自分達についてかなりざっくりとシンデル先生に説明した。


 幽霊先生は半透明の身体で器用に座布団に座ってそれを聞いていたし、ブーラブは例の玉を持った状態で木のたらいに水を張った中に座っていた。


 うちのトカゲ姉さんは俺の左隣に浮かんでおり、今度はシンデル先生に質問を投げることにしたようだ。


「シンデル先生はあそこに何年ぐらいおられるのかおぼえておいでかな? 水道管の修理は可能だが、泉になってしまったあそこはどうなさるのだ?」


 マーちゃんの境遇については相手に驚かれたが、落ち着いてもらうために幽霊先生の住居の修理について先に聞くことにしたらしかった。


「ここには1000年はおるのではないかのう。滅多めったにない地震が800年ぐらい前にあってのぅ。水道管が壊れたのはその時じゃ。水を止めてくれたら助かる」 


「あんのぅ泉がねぇと困るんでぃす! 川は死にますか!? みんなぁ切れ散らかすでぃす!」


 シンデル先生の返答に対して、後からこの地域にやってきたらしいブーラブ姉さんが抗議の声を上げた。水の精霊的には死活問題というやつなのだろう。


「そう言えばそうじゃったな。あれは地下水をみ上げておるんじゃ。装置が頑丈じゃったから、あそこが泉になってしもうたんじゃよ。わしもこんなじゃから皆が気にせんかったしのう……」


 地震災害とその修理を後回しにし続けたことによって、あそこは精霊の住処すみかになってしまったようだった。


 水資源は天然のもので、幽霊先生は精霊の同類に近かったのが見事に合ってしまったのだろう。人通りが無いのがさらに好条件だったのだと思う。


「その辺は明日だな。水中作業班を編成しよう。シンデル先生の住居には別の入り口を設置し、泉はそのまま使えるように水道管を延長する。ここは任せてもらおう」


 全員が困ったなという雰囲気の中、うちの頼れる建築土木工事姉さんが良い感じの案を出してくれた。


「そんじゃあ明日の件はこれで解決だな。俺ぁまだ生身なんで、申し訳ねえが先に休ましてもらいますぜ。マーちゃん、シンデル先生には質問をまとめてもらった方が良いんじゃねえか?」


 俺は精霊さんとの戦いや交渉では何もしてないが、精神力(MP)が減るという理不尽な現象に直面していた。次は知性の無い野生生物にしてもらいたいと思う。


 正直にいうと、今日はもう飯を食って寝てしまいたかった。


「ケンチ、それは良い案だ。ちょうどここに収蔵している書籍を大陸公用語に翻訳ほんやくしたものがある。シンデル先生にはこれを読んでもらって、経験の一部を共有していただくのが良いだろう」


 俺は久しぶりに良い案を出したらしい。


 そして、うちの異世界語学習中姉さんは、地道な勉強を続けていたことが判明した。










※お読みいただきましてありがとうございます。

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