表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ケンチとマーちゃん──転生して25年、やっとアイテムボックスが使えるようになったんだが、中に『変なトカゲ』が住んでいて俺に色々と頼んでくる  作者: お前の水夫
第1章 トカゲさんと探索

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/80

第3話 パンツの行方と風呂

 

 (なつ)かしいお茶漬けをご馳走(ちそう)になってからのこと。マーちゃんからまたも重要な指摘と提案があった。例のアルトボイス(女性の低音)でだ。


「ケンチ、こちらの文化程度だと風呂はあるのか? 衛生(えいせい)管理は大事なのだ。それに、ここに来た時から裸足(はだし)だが、それはいつもそうなのか? ポケットに入っているのはパンツに見えるが、それは普段からそのようにして携帯しているのか?」


 至極(しごく)真っ当(まっとう)なご指摘(してき)だった。


 実のところ探索者のアパートに風呂なんぞ無い。近所の公衆浴場にたまに行くだけだ。俺もいつの間にか、そういうのが普通だと思うようになってしまった。


 それと俺はパンツを持ったまま変なテンションでこの空間に来てしまった。


 そのパンツは今どこにあるかと言うと、ジャージみたいな俺の部屋着のポケットに入っている。

 文化の発展具合(ぐあい)は低くとも、ややグレーのダボっとしたジャージみたいな物はあって、寝るときにはいつもそれだ。能力(スキル)を得たのは朝のお(いの)りの直後の出来事だったのだ。


 そんな状態だったものだから、当然のように裸足(はだし)だった。俺自身は、家の中で靴を脱ぐ人なのでこれも仕方がない。


 慣れというのは怖いもので、探索中でも裸足になることがある俺は、そのまま簀の子(すのこ)の上の絨毯(じゅうたん)に上がり込んで食事をしてしまったのだ。

 そう言えば手も洗ってない。こっちの生活が長いと、人間が野蛮(やばん)になっていくものらしい。


「マーちゃん、すまねぇ。マナーも何もあったもんじゃねえな。興奮しすぎて、すっかり忘れてたらしいんだ。今度から気を付けるよ。パンツは……いつもはバックパックに入れてあるんだけど、今日はたまたまここなんだよ、ウン」


 マナーについての駄目っぷりは素直に謝った。パンツについては誤魔化(ごまか)すしかない。いつポケットに突っ込んだのかも(おぼ)えてないんだ。


 それに俺はこの25年の異世界暮らしで、すっかり(がら)が悪くなっていた。これについては10年も続けてる探索者業界が特に悪い。


 今話している日本語にまで、その悪影響はまんべんなく(およ)んでいた。引きずられ過ぎだと思うが、実際に割と凄まじい仕事だったりするので仕方がないと思うことにする。


「そういうことなら納得した。マナーは気にするな。

 あそこに丸い建物があるだろう? あの『かまくら』みたいなやつだ。あの中に寝室と風呂とトイレとドラム式洗濯機を用意してある。好きに使ってくれ。入る前に足は()いた方が良いぞ」


 マーちゃんはパンツについてはスルーしてくれた。ありがてぇ。


 建物については俺が食事をしている間に用意されたのだろう。


 もやっとしたアイテムボックスの収納口から10メートルほど離れた所に、直径8メートルぐらいの丸い『かまくら(▪▪▪▪)』みたいな物が出来ていた。色はピンクだ。


 ちなみになんだが、こちらの世界でもメートル法が国に採用されている。

 それなりの仕事をやってしまった同郷人がいるのは間違いない。俺の方はそんなことはやりたくもないと思っている。


「マーちゃん、あれ……いつ建てたんだよ? それとも運んできたのか? 本当に良いのか、アレ」


 こんな世界に流れてきて苦節(くせつ)25年、俺は本当に運が向いてきたようだ。


「ああいった生活用ユニットならまだある。アレは運んでおいたものだ。

 それからな、このフロアの真ん中あたりに『吹き抜け』があるだろう。あそこには近寄らない方が良い。空気も重力もないし、気温はマイナス270℃しかないのだ。すぐに凍死はしないが、最初の50秒で肺がダメになる可能性がある」


 まさか自分のアイテムボックスの中に宇宙空間があるとは思わなかった。


 『吹き抜け』には近寄らない。俺に新しいルールがインストールされた。


 ここはセーフハウスでもあるが、アウトサイドでもあるのだ。間違えると死ぬ危険もある。

 注意点も聞いたところで、俺はピンクの『かまくら』に向かってダッシュで走り寄った。裸足(はだし)でも問題ない。そういえば小石も転がってないな。







 この生活ユニットの扉はごく普通の外開きの物だった。


 新しい部屋ってのはテンションが上がる。もちろん建物に入る前に足は()いた。タオルまで用意されていたのだ。


 寝室のサイズは5メートルぐらいで、生活感は無いものの、家具は必要そうな物はちゃんと(そろ)っていた。とは言っても、寝心地の良さそうな大きいベッド、椅子と机が一つ、壁に収納されたクローゼットで全部だった。充分だ。


 これからは野営(やえい)する必要が無いのが何よりもありがたい。


 お次は風呂だ。


「ドゥフゥゥゥゥ……いかん、快適(かいてき)過ぎてしばらく出たくねぇ」


 風呂に()かって手足を()ばした俺から、そんな駄目人間(しゅう)がする台詞(セリフ)が思わず()れてしまった。ここがジェットバスなのも原因のひとつだろう。


 もちろん身体をよく洗ってから入った。


 石鹸(せっけん)の汚れ落ちが良くて、無茶苦茶に(あか)が出たし、シャンプーなんか久しぶりなものだから、髪の色が目と同じ茶色に戻った。俺はアッシュ(灰色)さんになりかかっていたわけだ。


 浴槽(よくそう)は大き過ぎず、小さ過ぎず、2メートルぐらいで手足が伸ばせた。俺の身長が187センチメートルぐらいだから丁度いい。


 転生して(うれ)しかったことの一つは背が高くなったことだ。背が低いと探索者業界では()められる。


 それにしても、こんな住居を簡単に用意出来るマーちゃんには恐れ入ってしまう。

 こんな物をいつ運んだのか分からなかったし、ここで使われているお湯も何処(どこ)から来ているのか不明だ。

 食料を含む大量の物資があるとも言うし、ロボットの従者たちも大量にいるかもしれない。


 ここに住んでいる理由も謎だ。


 地球について知っている所もそうだ。風呂にある製品や寝室や洗濯機を含めて、地球にあった物で(そろ)えられるのは、聞いて知っているからか、直接観察したことがあるからだろうか。 


 マーちゃんが見たまんまのトカゲじゃないことだけは確からしい。


 趣味で世界の観察と採取をやってるそうだが、一体どういう理由があるんだろうか。

 






 


※お読みいただきましてありがとうございます。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ