表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学園で無能扱いされた俺、鑑定不能なだけで全属性最強でした ~面倒なので黙ってたら、なぜか学園と国に監視され始めた件~  作者: 黒羽レイ
第2部 選ばれない世界のその先で

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/107

第88話 止まらない前提

 夜の会議棟は、ほとんどの灯りが落ちていた。


 人の気配は少ない。


 それでも中央は動いている。


 止まらない。


 止まらないことを前提に。


 エルドは資料室の前で足を止める。


 中から微かな光。


 扉を開けると、カルディアが一人で端末を見ていた。


「……まだ起きていたんですね」


 エルドが言う。


「ええ」


 カルディアは視線を上げる。


「確認していました」


「何を」


「今日の補正ログを」


 淡々とした声。


 エルドは少しだけ近づく。


 画面には、先ほどの二段階補正の波形。


 美しいほどに整っている。


「完璧ですね」


 エルドが言う。


 カルディアは頷く。


「はい」


 迷いのない肯定。


 その一言に、揺らぎはない。


 エルドは画面を見る。


「一度、拡大しかけた」


「はい」


「それでも収束した」


「当然です」


 間を置かない。


「演算は常に最適を更新します」


 正しい。


 そして強い。


 エルドはゆっくりと言う。


「もし、更新が間に合わなかったら」


 カルディアは少しだけ考える。


 だがすぐに答える。


「間に合います」


 同じ答え。


 同じ前提。


 エルドは視線を上げる。


「その前提は、どこから来るんですか」


 問い。


 カルディアは少しだけ沈黙する。


 そして言う。


「積み重ねです」


 エルドは待つ。


「我々は何度も検証しました」

「何度も失敗し、改善しました」


 静かな声。


「その結果、止まらない設計に至った」


 そこに嘘はない。


 努力もある。


 積み重ねもある。


 だから強い。


 エルドは頷く。


「だから、信じている」


「ええ」


 カルディアははっきりと言う。


「止まらないと」


 エルドは少しだけ目を閉じる。


 そして言う。


「信じているんですね」


「はい」


 カルディアは迷わない。


 その強さは、本物だ。


 エルドはゆっくり息を吐く。


「俺も、信じたいです」


 カルディアがわずかに目を細める。


「なら、なぜ疑うのですか」


 その問いは、以前と同じ。


 だが今は、少し違う重さがある。


 エルドは答える。


「止まったときのことを、考えるからです」


 静かな言葉。


 カルディアは少しだけ視線を外す。


「止まりません」


 それでも、同じ答え。


 だがその言葉の後、


 ほんの一瞬だけ、間があった。


 エルドはそれに気づく。


 だが何も言わない。


「止まらない前提で設計する」


 カルディアは続ける。


「それが合理的です」


「はい」


 エルドは頷く。


「止まる前提で設計すると、無駄が増える」


「ええ」


「効率が落ちる」


「その通りです」


 すべて正しい。


 だからこそ。


 エルドは小さく言う。


「……止まる余地が、なくなる」


 カルディアは黙る。


 その言葉の意味を、測るように。


 だが否定はしない。


 否定できないのかもしれない。


 窓の外。


 街は静かだ。


 揺らぎもない。


 完全な安定。


 それが、今の世界だ。


 カルディアが言う。


「明日、提案が出ます」


「国際接続ですか」


「ええ」


 確定事項のように。


「これで、揺らぎはさらに減る」


 エルドは頷く。


 減るだろう。


 確実に。


 カルディアは端末を閉じる。


「止まらない世界に、近づきます」


 その言葉に、誇りがある。


 エルドはそれを否定しない。


 できない。


 ただ、心の中で思う。


(止まらない前提)


 それは強い。


 だが同時に、


(止まったときの逃げ場がない)


 夜は静かだ。


 あまりにも静かに、


 すべてが整っている。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ