第87話 魔動機プロト64
――妨害したほうがよかったんじゃないのぉ?
ジト目でミュリーを見る。
――そうね。スクロールを回収して分析した方がよかったわね・・・
側部の魔法陣からハンマーを持った腕と盾を持った腕が現れ、背中の煙突からポーッと黒い煙が勢いよく立ち昇る。
ヴオオオォォォッン!ドカッ!!
魔動機プロト64のハンマーが唸りをあげマーリャを狙う。マーリャは素早く回避したが大きく薙ぎ払われたハンマーにより、周辺にいたオークやツヴァイの護衛が吹き飛んでいく。
――ツヴァイ!俺たちもいるんだぞ?!
――だから何だ!死にたくなかったら離れてろ!
ヴオオオォォォッン!ドガガガッ!!
ヴオオオォォォッン!ドガッ!!
マーリャを狙って次々と追撃のハンマーが振られ、その度にオークが暗くなり始めた夜へと吸い込まれるように飛んで行く。
――剣舞!!
キキキキキン!!
マーリャの双剣がゴーレムの胴体に傷をつけていく。
「始めての独り暮らしで」
――ハーッハハハハ!!全然、効かんぞ!!
――魔人より弱いです!
「新品のテーブルに火からおろした鍋を置いたら、丸いあとがくっきり着いたの思い出したよ」
牛獣人のジューヌがどすどすどすと走って斧を振る。
――ふんっ!
ズゴン!!
魔動機プロト64の右足がごっそり削れた。
――尻尾ありがっ!!
ヴオオオォォォッン!ドカッ!!
――ハイヒール!!
吹っ飛ばされ転がりながらハンマーのダメージにより皮鎧が消滅し、ジューヌの真っ白なスポーツブラがあらわになる。
――グランドスパイク!!
さらに塔を一つ消滅させ前方からの矢は止んだ。ヘキシアはMP回復ポーションをカパカパと何本ものみ、永い詠唱を始める。
――オーテリア!いくぞ!
ダルメシアン獣人のジラとともに、ダックスフント獣人のオーテリアが俊敏に魔動機プロト64の左右に回り込み両手剣による同時攻撃!
ガイィィン!!
ジラの攻撃は右足をかばった盾で防がれるが、オーテリアの斬撃が左足を削る。
――鬱陶しい!鬱陶しい!鬱陶しい!先ずは後衛を壊滅させる!そいつらを止めておけ!
ツヴァイの護衛が、マーリャ、ジラ、オーテリアへと斬りかかり、魔動機プロト64がドスンドスンと大きな歩幅で詠唱中のヘキシアたちがいる家へ。
――即死回避!!
ミュリーは熊獣人のエプリン副隊長に即死回避をかけ、エプリンは家を消滅させて突き抜けるだろうハンマーを迎え撃つ力をためる。
魔動機プロト64のハンマーが振り下ろされる。
「柴丸?!」
ヴオオオォォォッン!グシャッ!!
たまは目を覆う。
冒険者たちは目を疑う。
――へ?
テントを激しく殴りつけた結果。殴ったハンマーを持つ腕がもげてテントの後方へ弾き飛び、塔にぶち当たって塔を巻き込み消滅する。
――グアアアッ!
ドゴン!!
力をためたエプリンが吠え、斧の斬撃が走り魔動機プロト64を大きくのけぞらせる。
――ふんっ!
走ってきたジューヌの追撃により10メートルの魔動機プロト64がゴロンゴロンと転がっていく。
――たたた、たいきゃーく!!
立ち上がりドスンドスンと逃げていく。
『たま様。悩んでいましたが結局、何の皮を使ったんですか?』
「ん?えーと。可愛いピンク色の皮があったの!これ!」
『特級魔物の皮ですね。ピンクということはサーペントの亜種レッドサーペントの更に亜種になります』
カラン・・・
詠唱しながら何本ものMP回復ポーションを飲み続けたヘキシアが目を見開き最後の言葉を口にする。
――メテオ!!
後方から推定20メートルの隕石が落下し一直線に魔動機プロト64を追っていく。
魔動機プロト64の頭と肩を溶かして追い越し、一直線に遠くの森へと消え、光が世界をつつむ。
KABOOOOOOM!!!
衝撃派で大地がうねり、爆風で魔物たちが吹っ飛んでいく。
エプリンがフラフラとしているヘキシアを支え、ミュリーが急いでヘキシアの口にMP回復ポーションを突っ込む。
――初めての特級魔法ね!おめでとう!
ミュリーは称賛する。
――ええ。上級魔法のアブソリュートゼロを超えたわぁ・・・・
――でも、もう2度と使わないでね?町とかなくなっちゃうから。S級犯罪者になっちゃうから
――ええ。そうねぇ・・・・
ごっそり遠くの森が消え、周りの木々が傾き、前後に何度も爆風が吹き荒れる。
82歳を経験した、たまは気にしない。旅行先で食べたのが上天丼だったのか特上天丼だったのか答え合わせしても、おばーちゃんがまた変なこと言ってると煙たがれるだけなのだから。
すぴすぴ、すぴすぴ
赤タイツ姿の柴丸も気にしない。赤タイツのフードについたラビットイヤーは助けを呼ぶ声をとらえない。耳を伏せ、うるさそうに顔をしかめながらも夢の中へと戻るのだった。




