第84話 デッドヒート
ミュリーはテントを片付け、さっさと出発して分かれてしまいたかったので急ぐ。
――やー!やー!朝からせわしないね!そうだ名案が浮かんだよ!僕の国に立ち寄るといい!イアレフ国でゆっくりするんだ。いい考えだと思わないかい?
――はっ!とても良いお考えです。ツヴァイもよろしければ寄らしていただきます
――そうね。では、寄らせていただくわ
ミュリーは渋い顔をし、ツヴァイもどことなしか渋い顔をする。
レオン皇子を先頭に歩き出す。
そのペースはゆったりしている。
レオン皇子以外の全員に後悔の念が浮かぶ。
――きゃん!
おせーぞ!おせーぞ!とリードを引っ張るが、オクテーがどうしようかとミュリーの顔を見る。
――いいわ。一日中そうしているわけにもいかないでしょ?先にいきなさい
――はっ!
タタタと柴丸に連れ添ってオクテーが走り、セプテーが後を追う。
ふふんという顔で先頭のレオン皇子を抜く。
?!
レオン皇子はスタスタスタと柴丸を追い越しふふんという顔をする。
そして、ゆっくりと始まる柴丸とレオン皇子の小競り合い。
抜きつ抜かれつ、徐々にペースが早くなる。
ほぼほぼ小走りになって競いだす。
「可愛いね!可愛いね!」
柴丸と猫獣人の双子、それにケット・シーが競争をしているのだ可愛くないわけがない。
そして気づけば、日は高くなっていた。
――オクテー戻りなさい!
ミュリーから指示が飛び、オクテーはリードを操って折り返す。
負けじとレオン皇子も折り返す。
――レ、レオン皇子!向かう先はこちらです!
ツヴァイがギョッとして止める。
――ん?おー。そうだったな!
また、てくてくと先頭を歩く。
――そろそろ第4宝箱でしょ。今回はみんなの分が出なくてもいいから、悟られないように距離を取って。私はレオン皇子に休憩の打診をしてくるわ
――はっ!
柴丸を連れてオクテーとセプテーがゆっくりと下がっていく。
ミュリーが打診して戻る頃には、隊列からみんな離れているのだった。
タタタと柴丸を連れたオクテーが戻ってくる。
――みんなヒドイわよ?!で、私の分は出たの?出なかったの?
――大丈夫。むこうの分も出たけどどうする?
――そうなの?意外と範囲は広いようね。でも、クアッデクロッスィにはムリね。取引のない商人に渡すなんて危険はおかせないわ
すぐに広々とした野原で休憩することになり、ミュリーたちは見られないように折りたたみ式の家を出して5人交代で見張りをしながら食べることにした。
柴丸はテントの中央でガツガツと食べる。
――やー!やー!どうしたんだ?家なんて出して、ん?この匂いは何だ?
――妖精のささやきが弾む回復アイテムがあるのですが、どうでしょうか?
流れるようにミュリーは勧めてしまう。
――ん?そんな物があるのか?いただこう!
余分に出た7つの内の1つをレオン皇子に差し出したため、残りの6つを前半後半の見張りで3つづつ分けることにした。前半3つは、ジャンケンで、アララ、オーテリア、セプテーに決まった。
「初めて会った人に弁当渡されても怖いよね。とうぜんだよ。もう、初見の人の分をつくらないほがいいかなー?」
『中途半端なことをすると規定違反で消滅する恐れがあります。行動は一貫すべきです』
「そっかー、投げ出すのは良くないね・・・うん!これからもつくるよ!」
――うんうん!これは弾むぞ!弾む弾む!ならば、これを・・・ん?!・・・こ、こんなになのか?それで娘に継承したのか?!
レオン皇子が目を見開いてアララを見る。
――ええ
アララは優しく微笑む。
――惜しいが武器マニアが武器を、僕の誇りだけは渡せん
休憩メンバーは食事を終え、見張りと入れ替わる。
余りの3つをジャンケンで決めようとしたとき、テントの外から声が聞こえた。
――変な家があると思ったら、やっぱりよねぇ。この匂い、私の分もあるのかしらぁ?
2つに減ったことを悟り、これまで以上にジャンケンに力が入るのだった。




