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第82話 旅商人

 今日も朝早くから、ミュリー、第5部隊、アララ、柴丸は移動を開始する。


 ドラゴンクラッシャーシティーから西南の方角に伸びる道を進む。


 弁当を楽しみ、そろそろ野営の準備をしようかという矢先に前方でゆっくりとした足取りで歩く一団と遭遇した。


 ――商人の一団です


 兎獣人のマーリャ隊長が耳に意識を集中し聞き耳をたてる。


 ドラゴンクラッシャーの方が足が速く、徐々に近づいていく。


 ――やー!やー!みなさまごきげんよう!おお!これはこれはアララ王妃に、ドラゴンクラッシャーの方々ではありませんか!


 商人の一団の中から、高い声、王子の衣装、青毛、短い赤マントをたなびかせて、身長1メートルくらいで猫風味の顔立ちをした少年。ケット・シーが顔を出す。


 ――これはレオン皇子。王位は娘レティシアへ譲り、今はただの冒険者でございます。お忍びですので内緒にお願いしますね


 アララはしーと指を口にあてて答える。


 ――そうか。商人、名を何と申したか?アララに名乗るがよい


 5名の護衛に守られている中年の男が前へ出る。


 ――はっ!私は商人クランのクアッデクロッスィのオーナー、ツヴァイと申します。何かご必要な物がありましたら、いつでもお声がけください


 ――あら?他国の大手商人クランですわね。そのオーナーが旅などしているのですか?


 アララが疑問を口にしたときには、すでに柴丸は暇を持て余していた。


 ――ハハハ。大手とは名ばかり、オーナー自ら国々を回って開拓をしております


 ――ちょっといいでしょうか?扱っているアイテムを聞いても?


 ミュリーが話に加わる。


 レオン皇子と目を合わせた柴丸がきゃんと胸をはる。


 ――いろいろ取り揃えております。ポーションからウッドクラフト魔術のスクロールまでニーズに答えるのが私のモットーでございます


 ふんとレオン皇子が胸をはる。


 ――武器も?


 ――ハハハ・・・


 ――アララ。他国の商人が自衛以外の武器を持ち込めるわけないでしょ?


 ――冗談よ。最近はどのような物が売れているの?


 柴丸があごを持ち上げる。


 ――最近はなぜか魔物の被害にあう者が多く、回復ポーションがあればあるほど売れております


 ――そうなのね。今、ドラゴンクラッシャーが町をつくっているのは知っているでしょ?ウッドクラフト魔術のスクロールはどのような品が?


 レオン皇子があごを持ち上げ尻尾をたてる。


 バチバチと他の者にはわからない戦いが行われている。


 ――残念ですが、手持ちのウッドクラフト魔術のスクロールはベーリン式になりまして・・・そうそう!ビァーとサァケのスクロールならございますよ!


 「ベーリン式?」


 『ハンブルク式の建物が巻貝型になり、ベーリン式の建物はキューブ型になります』


 「そうなの?!そのうち見れたらいいね!」


 ――鞭は何かありまして?


 アララが今欲しい物を直球で聞く。


 柴丸も負けじと尻尾をたてる。


 ――いえ、武器は・・・


 ――少し長く話過ぎたわ


 アララが話を区切るが、だいぶ日が落ちてきている。


 ――レオン皇子、私どもも野営場所を見つけませんと


 つま先立ちしているレオン皇子は声をかけられ注意が戻る。


 ――うん?そうだな!よし!アララよ!今日はともに野営しようではないか!


 ――ええ。それはよい提案ですわね。そうしましょ


 ミュリーもツヴァイも渋い顔をするのだった。

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