第78話 大人数のティータイム
たまは一時的に、マスター空間から人を見えなくし、ボス部屋に3つ星ホテルなみのキッチンを用意すると、シャッシャッ、トントントン、じゅぅぅぅ、ぐつぐつと料理を始める。
見えなくしたのは、重なったり話し声が聞こえたりで料理に集中できないからだ。
たまは燃えていた。
これだけの人数に料理したことは地球での人生経験の中にもない。
だから、決して失望させてはならないと。
シャッシャッ、トントントン、じゅぅぅぅ、ぐつぐつ。
手際よく、鍋が、オーブンが複数の調理が同時並行で進んでいく。いや、タイミング悪いものは、こっそり時間停止や加速を使ってなかったことにしている。
そして最後にデコレーションがつけられる。
「完成だよ!」
――っ?!
ボス部屋に集まっていた者たちは息を飲む。宝箱が出るとわかってはいたが、あまりにも大量の宝箱だ。
テーブルの上はもちろん、壁際や、人と人の間に至るまで、大小さまざまな宝箱が現れたのだ。
――すげぇな、こりゃ・・・
ダフネが感想をのべる。
――相変わらず、罠も鍵もないな
一番に動き出したおっさんが問題ないと告げる。
――こんな光景をどれだけの冒険者が見れたのかしら、部屋ひとつ分にも満たないダンジョンだからと下賜したことを後悔するわね
アララが意見を言う。
――開ける
牛獣人のジューヌに視線が集まりゴクリと息を飲む。宝箱が開く・・・
いくつもの寸胴から湯気が立ち昇り、テーブルの上には何段にも食べ物が並べられ、台ごと現れた飲み物の入ったポット、取り分けようの大量の食器が並ぶ。
「じゃじゃーん!今日は人数が多いからパーティー仕様にしたよ!飲み物は紅茶、ホットコーヒー、オレンジジュース、豚汁、コーンスープ、オニオンスープ!軽食はハムサンド、レタスサンド、フルーツサンド、マルゲリータ、チキンマヨネーズピザ、ハチミツのピザ、唐揚げ、カレー味唐揚げ!でデザートはショートケーキ、チーズケーキ、フルーツタルト、アップルパイ、シュークリーム、桜もち、バニラアイス、キャラメルアイス、イチゴアイス!お腹いっぱいになるまで食べてってね!」
――きゃん!
柴丸の顔が描かたフードボウルへまっしぐら!これは俺のだとガツガツと食べ始める。
――・・・・
あまりの光景からのあまりの光景に静まり返るボス部屋。
――おー!!
獣人たちが吠えた。獣人以外の者も吠えたかったが声が出なかった。初めて見る結晶族たちは展開についていけない。
――んっー!弾む!!
ダフネはがっつり2つ重ねたハムサンドにかぶりつくと、他の者も次々と思い思いの品へと手を伸ばす。
――困りましたわ。困りましたわ。どれにしましょ?!
ロイヤルメイドたちがどれを転写しようかとおろおろとする。
――これだけあるんだもの、試してよかったものを転写しなさい
――はい!
アドバイスを放つアララだが、すでに寸胴からコーンスープをカップによそって味わっている。
その中、ボス部屋から去る者がいた。
――ねぇ。試さないの?
ミュリーが声をかける。
――ああ。一人くらいはここの外から冷静に分析しないとな
――分析する年寄りじゃなかったの?
おっさんは後ろ姿のまま、手を振ってダンジョンを去っていく。
――あねご!これスゴイです!
カイリリがマルゲリータのチーズを口から伸ばしながら叫ぶと。
――こっちもスゴイぞ!
ダフネが生クリームで口のまわりをべとべとにして叫ぶ。
――ん♪
双子の猫獣人のセプテーとオクテーが桜もちをモチモチと食べる。
――ステキ!
結晶族たちはアイスが気に入ったようだ。結晶族というのはよくよく見ると透明ではなく、少し周りが写る皮膚で皮膚の色は水色味がかっている。
ワイワイ、ガヤガヤ。
食べに食べ続け、30分の経過とともにすべての食べ物や食器が消えてしまう。
「お粗末様でした!」
ボス部屋の中は、満足に腹をさすりながらも名残惜しさに哀愁が漂うのだった。




