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第75話 援軍④

 真っ赤な髪の獣は全身に真っ黒な炎が燃え移るのも構わずにガンガン!ガンガン!とデッドフェニックスを斬りつける。


 『狂獣状態バーサクのダフネです』


 「ヒーローがピンチになって強くなる奴よね?」


 『HPがなくなるか、動くものがなくなるまで、本能のまま暴れ続けます』


 「ヒーローじゃなかったよ?!」


 ――ホーリーレイ!!


 空からダフネに魔法を放とうとしていたベルゼブブに、息を切らしながらもミュリーが聖なる光線を放ち妨害する。


 禍々しい力を集めていたデッドフェニックスは、へばりついて攻撃してくるダフネにたまらず、大規模攻撃を止めてブレスを放つ。


 体を反らしギリギリでブレスをかわしては、狂った獣は、ガンガン!ガンガン!とデッドフェニックスを斬りつける。


 たまは動き出す。ひっそりと。


 少し話はさかのぼる。


 カラス獣人のクロームは荷物の配達でドラゴンクラッシャーシティーへ向かって飛んでいると、空にやべーのがいるので距離と高度を取って進んでいた。気がつけば同じ方向。気が付けばドラゴンクラッシャーのメンバーが戦闘。気が付けばあねごが吹っ飛び。気が付けばあねごがやべー魔物を撃墜して、残りは翼が手のひらサイズの魔物だ。


 鳥獣人の中では翼の大きな方が強いと考えなしに判断する傾向がある。もちろん、実際はそうではない。


 日の光を背に高高度から一気に落下、クロームのシャムシールがキラリと光る。


 ――くらえ!羽足らず(****)!スラッシュ!!


 ピンポイントで手のひらサイズのハエの羽を狙った攻撃。ダメージはそれほどないが、飛行スキルに数秒の飛行障害を与えた。


 ベルゼブブは落下する。ドラゴンクラッシャーのメンバーが待ち構える地獄の釜へ。


 落下したベルゼブブは運悪く(・・・)、霜の下にあったしおしおのツタに絡まってしまう。


 ――こうげき!!


 チャンスを逃すほど、愚かなメンバーはここにはいない。第4部隊の槍による飽和攻撃、第5部隊による波状攻撃、第7部隊による連携攻撃、第2部隊による遠距離攻撃。


 アララもピシッピシッと鞭を繰り出す。


 ベルゼブブはもがきながらも風の魔法で、盾ごと鎧ごと魔法障壁ごと冒険者たちを裂き大ダメージを与えていく。


 ――ハイヒール!!即死回避!!ハイヒール!!魔法耐性特!!


 冒険者たちの一撃一撃のダメージは小さいが、確実に積み重ね、触覚を折り、羽を破壊し、杖を砕く。


 ベルゼブブは防御を捨て2本の杖に無慈悲な魔力を高めていく。


 ――何かはわからないがアレをやらせたらダメだ!


 冒険者たちの攻撃に力が速度が魔力が増す。


 無慈悲な魔力によってギギギギギッと空間が悲鳴をあげる。


 ――距離を取って!プチメテオ!!


 ベルゼブブの直上から一直線に推定5メートルの隕石が落下してくる。


 真上を見たベルゼブブの顔面にぶち当たり衝撃波が広がる。


 隕石に体の大半を潰されたベルゼブブの魔力は霧散し、もう完全に動かない。


 同時にダフネが斧で斬り続けていたデッドフェニックスも完全に動かなくなり、発動者か対象者が死ぬまで消えない暗黒の炎が消え、次の獲物はどいつだと目を細める。


 僕の眷属が・・・・なんでこんなにいっぱい邪魔するんだよ。


 ふと、たまはそんな声を聞いた気がした。


 ――油断するな!油断すれば簡単に死ぬぞ!!


 おっさんは叫ぶ。


 ヘキシアが魔力を練ろうとするとダフネの視線がぎろりとヘキシアに、ミュリーが魔力を練ろうとするとダフネの視線がぎろりとミュリーに移る。


 ――あねご・・・


 カイリリがつぶやく。


 ――はぁ、これはどう考えても年寄りの俺の役目だよな


 おっさんは猛毒ナイフを袖に隠す。


 「ヤシマ作戦を開始するよ。でん、でん、でん、つつつ、でん、でん、でん、つつつ」


 『なんですかそれ』


 たまは、時間を加速してまで造った軍服と白手袋、サングラスで偉そうに宣言する。


 打ち合わせ通りにやってと、たまが目で催促する。


 「弾は一発しかない最後の希望だ!人類の命運は君にかかっている!コア少年!トリガーをトリガーを引くんだ!」


 迫真の演技をする少女。


 『逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。はっしゃー』


 棒読みのコアのセリフとともに罠が起動する。


 ヤシマ作戦全容。


 試しに1メートルの手羽を指定したら出たので、ニンニクをふんだんに使った甘辛の巨大手羽先を造りました。


 これをダフネの目の前にフリスビーのように投げたら、それ追って冷静になるまでどっかいくんじゃない?作戦。


 ダンジョン外の予備ダンジョンコアを使い配置した巨大スリングから巨大手羽先が射出される。


 バイーン・・・シュッ!!


 「速過ぎだよ?!」


 ダフネの目の前を一瞬で通り過ぎ遥か先の森の上へと飛んで行く。


 たまは次の弾を造ろうと加速しようとしたが、すでにダフネが高速で飛翔する手羽先を追って森の木々を飛び跳ねていた。


 ジラとオーテリアも走り出したくなったらしく、尻尾を股に挟んでこらえる。


 ――ダフネは俺が追う


 おっさんはミュリーに目で語る。


 ――お願い。私たちは魔物にとどめの確認よ!


 おっさんは森へ消え、残った冒険者たちは、動かなくなった2体の特級魔物へ2重3重の陣で近づく。


 「なんかあちこちベトベトしたのくっついてるね・・・気持ち悪いから掃除だよ!」


 『ベルゼブブの毒です。初期段階ですので万能薬で相殺できます』


 「コアありがと!万能薬まくよ!」


 とんてんかん!とんてんかん!


 次々とダンジョンからたまコロ虫(・・・・・)が排出されぴゅーぴゅーっと万能薬を吐き出し転がるのであった。

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