第51話 譲らずと飛びつく
――では、ミラグロサ姫の私物はマジックバック1つまで、護衛はドラゴンクラッシャーのみ、往復は最短距離、3日後に冒険者に変装して出発の決定でよいですね
王妃が主にヘキシアと話し合った内容を総括する。
――せっかくの旅行だもの海を見たいわっ
ミラグロサ姫が柴丸をモフモフするのに満足して発言する。その発言を聞き王妃とヘキシアの顔に疲れがドッと出る。せっかく、まとまった話の根幹をいともたやすくひっくり返されたのだ。
それから再度、主に王妃とヘキシアの話し合いが始まる。
――そうね。ロストック湾の距離ならついでに立ち寄れないかしら?
ミラグロサ姫のわがままと切り捨てるのは簡単だ。だが、星読みの力があり、ほとんど城から出られない孫娘の願いを少しでも叶えてやりたい王妃。
――水が見たいのでしたら直線距離にある、塩を含まない湖の方が波もなく美しいですわ
この地位まで登り詰めたドラゴンクラッシャーにリスクばかりの余計なことを持ち込みたくないヘキシアの会話によるリスクと責任の湾曲。
パッパッパー!
軽いラッパの音が鳴り、ホールの入り口にある巨大な石扉が開いていく。
――誰かしら?誰も入れないように言っておいたはずなのに
王妃が目を細めて入り口を見つめる。
――やー!やー!みなさまごきげんよう!おお!これはこれは王家の方々に、今、名をはせているドラゴンクラッシャーの方々ではありませんか!
高い声、王子の衣装、青毛、短い赤マントをたなびかせて、身長1メートルくらいで猫風味の顔立ちをした少年が入ってくる。
――これはこれは。レオン皇子
「ケット・シーね!ケット・シーよね!こっちの毛って刺さりそうな毛ばかりだけどケット・シーよ!」
『イアレフ国のガラクタ武器マニア。第2皇子のレオンです』
――うむ。良く参られた
巨人が右手で髭を撫でながら重厚に答える。
ドラゴンクラッシャーの面々は、レオン皇子に王の御前を譲る。
――何度もきて悪いね!でも、僕も譲れないものがあるのだよ!
――何度来られても譲りませんわ
ぴしりと王妃が言い放つ。
「なんだか邪険に扱われてるね?」
『推測はできます。たま様の造った武器を譲れ、譲らないと言い合っています』
「原因わたしだったよ?!」
――そー。そー。確か、この武器の本当の持ち主はドラゴンクラッシャーだったね?
――今はハンブルク王国のものですわ
――今はなんだね。なら君たち、僕に幻の剣を差し出さない
――レオン皇子。人の国でスキルによる強奪なんてはしたなくてよ
レティシア姫が柴丸を抱きかかえながら答える。
ダフネの額から汗が垂れ、チラッとそれを見たレオン皇子が目を細める。
「コア?何してるのかわかる?」
『ハンブルク王家のスキルと、イアレフ国王家のスキルがぶつかっています』
「あ!あのプリンを手にもって上下左右移動して譲らなかったやつね!」
『そんな単純な・・・・』
「深い話はいいの!めんどくさいから!」
――失礼ですね。僕の家のスキルは飛びつくだ。何かいい話があるんだよね?そこの
膝をついたダフネとレオン皇子の視線が合わさる。
ダフネはごそごそと背中に括り付けたバックから、浪人猫を取り出す。
――みゃふぉーーーーーーーっ?!
目にも止まらぬ速さで、浪人猫はレオン皇子の手に収まる。
――っ
――これいいね!これいいね!ふーん!ふーん!ミスリルカッター、斬撃+50%?!こんなの存在してたんだ!だけでなくて距離延長!距離延長って僕たちケット・シーにとってどんだけメリットあるんだよ!いいね!これいいね!
スキップでもしそうなテンションで、レオン皇子はホールを去ろうとする。
――おまちください。レオン皇子
ダフネのいきなりの発言にヘキシアとハーフエルフたちは息を飲む。
――何かな?まさかだよね?
レオン皇子の目がいびつに歪む。
――布ゴーレムの方はお返しください
ダフネは汗をダラダラ垂らしながら目線を合わせる。
――・・・・ふーん
プチ
ミスリルカッターに括り付けられた紐を爪で切るとダフネへ投げ返す。
――ありがとうございます
ダフネはホッと胸に浪人猫を押し付ける。
――まさか強奪されたなんて言いふらさないと思うけど、王族として何かあったら助けてあげるよ。それに、この剣を手放し妖精のささやきが青くなるのは僕にもわかる。代わりに僕の装備しているホーリーフラッシュレイピアを下賜してやろう、ブラッディ・デストロイ
腰から外された剣がぽいっとダフネに投げ与えられる。
――はっ!!
また取られてはたまらないので、そそくさとダフネは浪人猫と剣をバックにしまう。
シンリリが目を瞬かせ、ぼそりとつぶやく、刺撃+2%、先がちょっと光る・・・
――はぁ
思わずヘキシアが溜息を吐く。
――すまん。また、やっちまった
――いいえ。今回はいいわ。ハンブルク王家に譲らなかったものを、イアレフ国王家に譲ったら、それこそドラゴンクラッシャーは終わりよぉ。ただ報告不足よ。小人の剣とは言え、なんでダフネが私も知らないレジェンドアイテムをもってるのぉ?
スキップで歩いているレオン皇子がホールの入り口に近づくと、ラッパが鳴り石扉が開く。レオン皇子は両手で持っていたミスリルカッターを腰に装備し満足そうに去っていった。
――――― ――――― ―――――
○○「よしよし。壺の中にアイテムを設置っと!」




