第50話 加速
レティシア姫はあまりの柔らかさに、両手で捕まえていた柴丸を抱き寄せて頬ずりをする。
――レティシアねー様・・・
ウルウルとミラグロサ姫はレティシア姫を見つめる。
――仕方ないわねミラグロサは。一緒にさわりましてよ
ぱぁっと笑みを浮かべ柴丸に触れる。
――きゃん!
よくわからないが、姫たちにモフモフされて柴丸はご満悦である。
――話の途中ですよ。ミラグロサ
王妃がたしなめ、ダフネとハーフエルフたちは、元の位置に戻り片膝をつく、ミラグロサが聞いていないのをいいことに、王妃は次々とドラゴンクラッシャーとの日程と経路を決めていく。
「あ?!そろそろ、ランジェリーとお弁当の時間だよ?!ランジェリーは用意してあるけど、こんな人数・・・ってか巨人の分の弁当なんて間に合わないよ!時間を止めれたらいいのに!」
『時間止められますよ』
「ほえっ?」
『正確にはマスター空間の速度を加速させることができます』
「それ採用だよ!加速そーち!にやり」
コアに映し出されている映像がほぼほぼ止まった。
『なんですかそれ?』
「昔のマンガでニヤリと笑うのがトリガーになって加速するんだよ!」
たまはマスター空間のボス部屋に3つ星ホテルなみのキッチンを用意すると、シャッシャッ、トントントン、じゅぅぅぅ、ぐつぐつと料理を始める。巨人用の食材は大根にしろニンジンにしろ、皮をむいて鍋にぶち込み、更に鍋の時間を加速させて煮込んでいく。
じゅわぁ~
じゅわぁ~
柴丸のアクセサリーがピカリと光り、謁見しているハーフエルフたちの背後に、ワゴン車サイズの馬鹿でかい宝箱が現れる。
?!!
大岩に腰を下ろした巨人のナサレー大王は目を大きく見開き、王妃はキョトンと思考が止まり、眼帯のおっさんはン、ギョッと二度見する。
訝しく思ったダフネは振り返り、目を少し見開いて語り出す。
――ご安心ください。まだ、報告前でしたが、こちらのゴブリンと連動し日が高いときにでる第4宝箱になります
ダフネを見るヘキシアの視線が最初に言っておいてよと訴えている。
――うむ
巨人が右手で髭を撫でながら重厚に答える。
――して、どのような物が入っているのですか?
王妃がたずね、姫たちは興味津々でうんうんとうなずいている。
――回復アイテムにございます。退出して頂き、速やかにこちらで開けますのでご安心ください
――王が宝箱から逃げたとあっては笑い話にもならん。それに、このサイズだ。わしが開けよう。ちと頼むぞ。エルベルヘル将軍
――はっ
エルベルヘルがナサレー大王の座っている石の上に腰を下ろし、ゆっくりとナサレー大王が立ち上がる。
ずん、ずん、ずん
ナサレー大王の通り道をあける。
――鉄壁!
グォンとナサレー大王の体が鉄色へと変化する。
グギギギッ・・・バカン
馬鹿でかい宝箱は開けられるとゆっくりと消失し、中身があらわになる。
「じゃじゃーん!柴丸印の唐揚げ弁当よ!・・・ご飯はゆかりと梅のご飯、それとお味噌汁!巨人さんにはマンガ肉で作った唐揚げだよ!」
ヘキシアたちは大丈夫だと思っていたが、流石に王自ら開けるのだ。何も起きなかった事にほっと胸をなでおろした。
――これが、わしのアイテムじゃな
畳サイズの弁当箱とドラム缶サイズのお味噌汁を持って、ずんずんと石に戻る。
――キャッ?!
柴丸が暴れて姫たちを振りほどき、これは俺のだとフードボウルへまっしぐら。
ナサレー大王がミラグロサ姫を見る。
――黄色にみえるわっ!だから大丈夫っ!
――うむ
大王が弁当のフタを開け、おおきな指でマンガ肉で作られた唐揚げをつまみ頬張ばる。
――あなたどう?
――なるほど。そちたちがコソコソと食べるわけじゃわい
――コソコソとなんかしていません。私たちも食べましょ
ハーフエルフたちが走り回り、王妃、姫、眼帯のおっさんへ、弁当と味噌汁を渡していき、自分たちの分も確保すると食べ始める。
――いつも送られてくる回復アイテムと何だか違いましてよ?
――レティシアねー様。私もそう思いますわっ!
――そうね。何だか違うわよねぇ?
ヘキシアがダフネに問いかける。
――ああ、上手く言えねーんだけど、こっちの方がガツンとくる
「お弁当とデザートだもん違うよ!それにしても、これに頼るとギリギリまで何もしなくなる奴だよ。あんまり頼らないようにしよ・・・・」
――――― ――――― ―――――
○○「おっ?まだ生きてたのかよ。まぁ、お使いもできない愚物だし好きにしていいよ」




