第17話 魅了を疑うギルメッシとプリン無双
ミュリーは朝から嬉々としている。布ゴーレムのマークがたった3回で変わったので、今日からの布ゴーレムは自分の物だ。しかも、次のマークも自分の物!
良いことがあったら、悪いことが起きる。そんな天秤は存在しないが、ミュリーにとって今日はそういう日である。
――本部から派遣された調査班3名です。これから調査しますが、よろしいでしょうか?
「普通の人がきたー。逆に新鮮に感じるよ!」
――はい。私はクランハウスにいますので、何かあったら、マーリャ隊長の指示に従ってください
――はっ!
ミュリーが静々とクランハウスに歩いていく。
――俺と副隊長は2階を調べる。ギルメッシはここを調べろ
――はい、はーい
ギルメッシは適当な返事をするが、調査班の隊長と副隊長は、ため息を飲み込んで2階へ移動する。
それを見送ったギルメッシは、石を拾い、ダンジョンコアに投げる。
「?!」
パシッとマーリャがキャッチする。
――何するですか?!
――いやー、罠がないかなーとおもいましてー
――スキルで確認!それとコアの調査は不要!
――はい、はーい
「ビックリした。石くらいでコア壊れないよね?」
『わたくしの造った石でわたくしを壊すことはできません。ダンジョンは自分で出した武器で壊されたふりをして、ほとぼりが冷めたら復活することもあります』
「なーんだ!安心安心」
『さっき投げられた石は、硬化のかかった外の石ですけどね』
「安心できなかったー?!手紙!手紙!あいつをコアに近づけないように手紙を書くの!」
『規定違反です』
その後も、ギルメッシは、家柄だったり金だったりをちらつかせ、ナンパまがいに護衛に近づき、コアにちょくちょくとちょっかいをかけてくる。
「キーっ、犯人がわかっているのに、どうしようもない映画みたい!」
その後、第2宝箱が出現し、ミュリーや他の冒険者たちが集まってきたのでギルメッシはおとなしくなる。
――調べます
調査班の隊長と副隊長が、軽くこんこんと叩いたり匂いを嗅いだり、指を光らせて鍵穴を覗いたりして確認していく。
――罠はありません。開きます
宝箱を開くと宝箱が消失し、2段のテーブルとその上に紅茶の注がれたティーカップと洋菓子が12人分現れる。
「じゃじゃーん!苦味を消すことに成功したからシンプルな紅茶と生クリームたっぷりプリンよ!・・・ファンタジー界最強のプリンを堪能あれ!」
――危なーい!!!
ガシャガシャ!ガシャシャァァァン!!
テーブルは砕かれ紅茶やプリンが地面に散乱する。空気が氷りつき、全員の視線がギルメッシに集まる。
――いやー、危なかった、僕がいなかったら、魅了アイテムを口にしていましたよ
ミュリーがゆっくりと調査班の隊長を見る。
――いえ。先ほど出現した回復アイテムに魅了の効果はありませんでした。むしろ、ポーションはハイポーションを越えていました
――だ、男爵の僕が魅了アイテムって言ってんだぞ!魅了アイテムに決まってるんだ!
――ギルメッシ。おまえの鑑定は鑑定(小)のはずだ、俺の鑑定(大)に文句を言うのか?
――うるさい!うるさい!平民は男爵の僕に従ってればいいんだよ!
――ドラゴンクラッシャーに入る制約に身分は振るわないと誓っているはずでしょ?
――だまれ、エルフ!
ざわっ
――(あいつ常識ないのか、S級冒険者って伯爵位だよな?)
――(いやいや!エルフへの禁句を言いましたよ!)
――お、おい!謝れれ!俺たちも一緒に謝ってやるから!!
調査班の隊長と副隊長が顔を青くしてギルメッシを諭す。
――はん!うちは200年続く男爵だぞ?平民に頭を下げられるか!
――わかりました。クランの代表の一人としてギルメッシ。今日付けて、あなたを免職します
――はん!元々、いてやったんだ!コアを壊して魅了がとけたあと感謝しな!そして、今日から俺はダンジョン攻略者だ!
ギルメッシがスラッと短剣を抜きヒハー!とダンジョンコアに襲い掛かる。自分がダンジョン攻略者になって地位と名誉を手にしている姿を思い描きながら。
バババババチイィィィーン!!!
ミュリーの高速往復ビンタがギルメッシに炸裂し、空中で回転し続けてからべちゃりと落下する。
――すみません。勝手なことをしました
ミュリーが、調査班の隊長に謝る。
――いえ。俺らも、妖精のささやきに試されるのに限界でした。ありがとうございます
――(見えたか?何回ビンタされた?!)
――(あいつ、手加減で叩かれたよ?オーバーダメージ分気絶するってことは1年寝たきりになるんじゃない?!)
――失礼ね!聞こえてるわよ!せいぜい10日よ!
「コア。見てた?!歴史的瞬間よ!ファンタジー界のプリン無双が止まったの!止まったのよ!」
『意味がわかりません』
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○○「そうか。こういう愚物は使えるのか・・・ぐひひ」




