87.寝る子は育つ
「兄さん!」
「弟よ!」
真と松本は強く抱擁し合う。それを冷たく見る人影が2つ。
「あんた、仲良くなった人皆弟にして何がしたいんだよ!」
と、小声でつっこむ実、続けて南が
「昔からあんな感じだったんですか?」
ため息をついて実が頭をかく。
「最近また任侠映画を見始めたから余計でしょう。一時遠のいて安心していたんですが」
「色々聞きましたが、任侠映画も見てるって本当多趣味なんですね」
インカムのついた宮司の帽子を手に取り、自分にかぶせながら笑っている。
「趣味・・・というよりは奇術の研究に関係しているので、あ、でも奇術も趣味と言えば趣味だから。・・・まあ、映画の歴史にも手品師が出てくるんですよ。プロの手品師もいれば趣味で手品をしている人もいたり様々ですが。ジョルジュ・メリエスは特撮SFの父なんて言われていたり、市民ケーンのオーソン・ウェルズは趣味?ながらプロ級の腕前だったそうです」
「映画だと、ヒッチコックやキューブリックがどうのこうのって松本君が語ってました」
「ヒッチコックのドリーズームは手品手品しておらずそれでいうとギャンブラーズテクニックに近いでしょうね」
「でも今はCGとかあるのに研究しているんですか??」
「VRなどの仮想現実に人が入り込んだらって長々話をされましてね、聞きます?」
「・・・・いいです」
南は帽子を深くかぶり直した。
「はは、では小乗仏教の続きの話でも。実は初期の仏教は壊滅の危機がありまして、それは梵我一如で有名なあのバラモン教、ウパニシャッド哲学のですね、生まれ変わりで実質身分の制度があったバラモン教の変革にあり、バラモン教はヒンドゥー教に仏教は部派仏教、そして大乗仏教になるわけです。つまり互いに影響を受け合い変化してきたわけで、なんと日本に来た仏教はその後の土着化もあり、ウパニシャッド哲学の・・・・あっそもそも、ある時期にはお釈迦様って本当にいたの?となったこともあって、それは対機説法を大切にされたお釈迦様が自分に対する像や書物を残さなかったためとも考えられています。皮肉にも現在は像や書物は沢山あります。しかしこのおかげで2500年前の教えを学べるわけです。色即是空空即是色なんて文字の漢字になったからこそより素晴らしさがあると私は感じているのです、でお釈迦様の足の跡以外で石板に名前がでてきたり、遺骨が見つかったりで・・・・(早口)」
南は宮司の帽子をかぶったまま眠ってしまった。




