83.模写
「あんたぁ、いつからアレに気づいたんだい?」
明恵は珈琲を受け取るとすぐに本題に入った。
「いつからって、そりゃあ3回目くらいかな。買って帰ったDVDを丸々コピーしたような動きを見せられたらさ、面白いことに駄目な部分も丸々真似ててさ」
明恵が何か言うそぶりを見せたが、マスターが遮るように話す。
「しかしなんでまた真君のところに行くように仕向けたんだ?彼の傷をえぐるような」
「ふんっ、ならあたしのところにあの子たちが来るのを止めなかったあんたはなんだい」
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「これ明子さんが着ていたローブですか??いいんですかもらって」
「はっ、いいよ。どうせあたしは着れやしないんだ。新品を買うことももうないし、お古しかないけど我慢しな」
南はローブを被り始める。
「えーっと、こんな感じで」
「・・・・なにしてんだい」
南は振り向き、手と手を胸の前で重ねた。続けて笑顔のまま声を出した。
「ありがとう、お母さん」
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「占いの修行のため、うちにあった明子の映像を見ていたらしい。いいかい?見ただけだよ?」
「明子本人を知っている私らが、実物を見たことないあの子に明子を見せられるなんてさ。形態模写もここまでくると・・・悪いけど不気味だよ」
「着ぐるみを着ている本人に会っているような気分だったよ」
明子、いや南の話が止まらない明恵だったがふと我に返る。
「まぁなんとなくわかったよ。あんたがしたいことが。明子よりもより形態模写に秀でた南はこのままいくと明子と同じ運命を、なんならそれ以上の不幸が待っているかもしれない」
冷めた珈琲をようやく口にしたマスターがカップをテーブルに置く。
「会うたびに南君が南君じゃなくなっていく様を、いやわしらはそもそもの南君を知らないわけだから・・・・」
「あたしも本当のあんたなんて知らないからね、あの子には能力がある、だから別人格に乗っ取られるなんて勝手な心配してんのかい?人が人に影響を与えないことなんてないだろ、それに」
「それに?」
「何人も人格があるってのがひょっとしたら長所になるかもしれねえだろ?」
「・・・いやぁポジティブだねえ。人が人に影響を与えないことはない・・・か、確かにお前さん元々珈琲は飲めなかったもんな」
「うっさいね、そんなこと言ってたら二度とこないよ」




