82.ちゃんと
「ってことで、最後は認識の話。これはわかりやすいです!目で感じる世界、耳で感じる世界、匂いで感じる世界。五感それぞれで世界あるよね。それぞれの世界について語られてるんです。これにさっき話した世界は幻なんじゃないかって話が現代科学から見ても面白いのです」
「目で見てるから世界はあったりなかったりってことですか」
「そう、それで心理的盲点って話です。手品でもよく言われる話ですね、自転車のたとえが良く出ます。目から入った情報すべてを処理できていません」
松本が先生の話に頷きながら手に何かを隠し持つ動作をする。
「パームに関しての話で、何かを不自然な手で隠し持つよりも、見えていても自然な手のほうが何も隠していないと認識されるって話がある」
先生はホワイトボードにさらに書き足していく。
「事故しないように注意しないといけないところは見ていても、それ以外は見ているのに認識していない、自分にメリットがないからです。途中で見かけたあの家はどんな形?と聞かれても目に入っていたはずなのに、見ていたはずなのに見たことになっていない」
南は少しずつ頷きながら聞く。
「これは見る以外の他の事にも当てはまると思いませんか?自分に都合のいいものに無意識に焦点が当たっている。焦点があったものを信じてしまい、それ以外は見えなくなっている」
先生は松本を見る。
「・・・・そしてその信じた自分を納得させるために、不都合があると『信じた自分を信じたい』ために無理に合理化しようとしたりして、限界が来ると最後は私は騙されただけで悪くないという」
松本は少し目を閉じていたが、目を開け頭をかく。
続けて先生は南に微笑む。
「・・・・少しだけ、明恵さんに聞きました。南君、私に占いをしてもらっても?」
南はきょとんとした表情になるが、すぐに着替え始める。
「ああ、・・・これは・・・確かに」
先生は我慢せず、ちゃんと泣くことにした。




