77.墓場
「大先生??」
南がもう一度その大先生の姿をゆっくり観察する。髪はボサボサ金髪、アロハシャツの短パン男、ポリポリと背中や足を掻きむしり大きなあくびをしながら笑っている。
「サインサイン、-----はい。どうぞ。」
「うわああ!ありがとうございます!」
何度もお辞儀をする松本の隙を狙い、手に戻った本を奪い去った南はペラペラとめくりだす。
「ソクラテスと釈迦??」
「そう、この本ではな、ソクラテスと釈迦が居酒屋で現世を憂いて語り合うってお話で」
「糞本じゃないの!捨てなさい!すぐに!」
「やめろ!お前!馬鹿馬鹿しい中にも無知の知の深さに釈迦がわかるわーって」
「馬鹿馬鹿しいって言ってるじゃないの!」
本を引っ張り合う松本と南。手を叩きながら喜ぶアロハシャツの男。
「むぅ、とりあえず座られよ。菓子と茶は用意しよう」
――――――
「ねえねえ、いくつも本(ゴミを含む)はわかったけど、あの二人やっぱり怪しいわよぉ、一人はスト〇ートファイターに出てきて人を瞬殺しそうだし、反グレの支店ボスみたいな」
「そこは親玉ではないのね」
「むぅ、では菓子と茶だ。熱いので気を付けよ」
茶菓子が出てくるとすぐ、2~3袋をカバンに詰め込む南。
「この場で全部食べろよ」
「嫌です。ダイエットしているから、この大きさを見るに2個以上は食べては駄目!」
「せっかく大先生が用意してくれたんだから全部食べるんだよ!」
「持って帰って全部食べます!今あるものもいただきます!」
また口喧嘩が始まったタイミングで、アロハシャツの男は胡坐をかき二人の前に座る。
右手親指、人差し指の先を合わせて丸を作り、他の指は伸ばす。
左手も同様に丸を作り、右手は縦、左手は横にしたポーズを取る。(説法印)
少し現場の雰囲気が重く、静まり返る。
「さてさて、明恵さんから聞きました。手品師で名を残すため修行の一環で占いの勉強をしてきたそうですね。・・まあ。面白い取り組みです。」
いつになく真剣な顔をした松本が大先生に熱弁する。
「今テクニック系の手品がブーム、そして映画やアニメではSFが多くそろそろ需要の変化の時期です。超能力オカルトがくると確信してこいつに宗教の所作を勉強させたく・・・」
「いいよーん」
軽快な声で返答を受け呆気に取られる松本。南は饅頭を食べている。
「若い人はそれ科学的じゃないですよね!って科学って宗教に妄信しがちだからお客様が少なくて少なくて君たちが来るの楽しみにしてたんだよね~」
少し間を開け
「・・・・ようこそ、宗教の墓場へ」
そういうと男は少し悲しい笑みを見せた。




