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魔王様は手品師  作者: ゆたか
比企田天在編
75/191

75.探求心

「奇術と占いがまだくっ付いて共存していたとき、」


車が走り数分ほど経つと松本が急に口を開く。


「教祖と呼ばれたり、魔女、悪魔、そう卑下され殺されたものも少なくなかったが、その力を使って町や国を統治していたものはいたはず。しかし今、こうして俺らはその知識を知ることが出来て学べている。不思議だよなぁ。歴史の強者は本来都合の悪いものは削除していくはずだから、残ったことを奇跡というべきか、いや、あえて昔の権力者の知恵や力を公開することによって同じ方法を使って権力を奪還されることを阻止しているのか」


爪を磨きながら明恵は松本の話に笑いだす。


「はっなんだい、藪から棒に。自分語りでもしたいお年頃なのかい?」


明恵はそっと南を見ると、南は幸せそうに眠っていた。


「スポンジのようになんでも吸収する、こんな悪魔のようなやつをあんたや私のところに寄こした神様はほんとふてえやつだよ」


「培ってきた知識を伝えるときに自分を見つめ直したり、新しい発見に気づけたりするそうだから、案外教育されているのは俺らかもしれねえぜ」


「・・・・確かにな」


少しの間があり、明恵がアルバムを何ページか開くよう、断片的な昔話を始める。


「・・・・ってな色々私もあったわけだけど、明子が死んじまったのは、きつかったね、人前に立つ恐ろしさを知った時だね」


ハンドルを強く握りながらルームミラーに映る明恵を見つめる松本。


薄く目を開けながら南も明恵の話に耳を傾ける。


「あんた達がマスターマスターいう、あの手品屋のオヤジとは長い付き合いでね、戦中孤児のあたしらは飼われた大人達に芸を仕込まれたよ。飯が食いたきゃ客を楽しませろってね」


明恵は爪のカスを息で拭き落とすとルームミラー越しに松本と目をあわせる。


「1970年80年代田舎だとまだ見世物小屋は存在していたみたいだけど、テレビや映画で民衆の娯楽意識は変わっていき、チンドン屋やサーカスに鞍替えしていった人もいた、と聞いている」


松本はそう話すと、明恵の次の言葉を待つ間もなく続ける。


「マスターの話だと、一緒に見世物小屋で働いていたものはほとんどが死んでしまったらしい、腕だけがやたら長い愛層のいい兄ちゃんがいたんだけど、ある日来たら代わりが用意されてたって」


「そうだよ、あたしらは物だったんだよ、運が良かったのと、死にたくない一心さ。あたしの古いタロットカードもその兄ちゃんがくれたものだったねえ」


アルバムをめくり終えたのか、明恵は爪研ぎをやめて南を見る。


「んで、なんだい?極上の占いのイロハと手品の知識をこの子に与えて、また明子みたいな物でも作る気かい?」


「・・・あんたも最初は嫌だったけど今はノリノリじゃねえか」


松本は笑いながらルームミラーから目をそらす。


「あんたやあたしみたいな研究肌の人間にはどうもこう、後継者がほしい欲望と新しい何かを生み出したい、エゴを押し付けたい偉そげで悪いとこがあるねえ、で?この子がやりたいって言ってたからやらせたんだ、何かあっても俺は悪くねえって、あんたそんなタイプじゃねえだろ」


「・・・・・」


ため息を付きながら明恵はペンとメモを取り出す。素早く殴り書きをしてメモを引きちぎるとサイドブレーキのあたりに叩き置く。


「あんたが南に教えてる間に目覚めた探求心や欲求、ここに行けば少しは落ち着くんじゃねえ?休みの間にでも行ってみな」


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