74.繁盛
夜になると大阪の町はまた違った賑わいを見せる。夕方までは20代30代がメインだが、夜になると女性を目当てに目をギラつかせた中年が増え始める。
「そろそろ夜か。じゃああたしゃ迎えに行ってくるよ」
「おうおう、今じゃ完全に保護者って感じだなあ・・・あっ」
マスターは、はっとして茶化したことを取り繕うよう準備していたが明恵の顔を見るとすぐに口を閉じた。
「そうだね、保護者だよ。ほんと」
今日も周防町通りは人が行き交えして賑わう、が、その中でも一際は賑わう場所があった。
「すんませんー。今日のお昼の部はここまでで。夜は申し訳ないですが用事があってお休みさせてもらいます、あと申し訳ないんですが、修行のため、はい。そうなんです」
ローブ姿をした男が10人ほどに名刺を配り頭を下げて回っている。
「・・・あんたなにしてんだい。」
明恵がローブの男に話しかけるとローブを払い松本が顔を見せた。
「なにって手伝いだよ手伝い。警察呼ばれてから交通整備するならって警察の許可降りたんだから、誰かが交通整備しないといけないだろ?」
「ふう、終わりました。最後の人なかなか楽しかったです。お子さんがもうすぐ生まれるか何かで」
南はメモ帳を取り出すと名刺をテープで丁寧に貼りペンを走らせる。
「短髪、顔やや右斜め、両手皮厚め、虫歯跡3,耳大き目、手を叩く癖」
南は書いた文字の横に人の顔を書き始める。
「ちょっと多いね、4つくらいにしな」
明恵は南がメモした短髪と耳にバツをする。
「これらは四季によって変わる、髪を伸ばされたら耳が隠れてるかもしれないだろ?」
「あっそうか、なるほど~。」
「もしもう一度来た時に髪が同じ整った感じだといい客になるかもしれねえな。アポはつけたかい?2か月後?腕時計もいいものしてたし、カフスは見たかい?」
「目立たない感じでしたが、緑の・・・エメラルド、エ・・メイ・・・ラルド、メイ、5月!」
「男で誕生石のものを着けたりはしねえだろうから、まあ奥さんもいいところの人なんだろうね、やや猫背、」
南と明恵が話し込むところに松本が咳ばらいをして制止する。
「あ~?お二人様お楽しみのところ申し訳ないんですがスケジュールが押してしまいますので」
松本の車に荷物を積み込むと、南は待ってましたと言わんばかりに喜びローブを脱ぎ始める。
「ぷはーーーー!!ようやく休ませてもらえる、いやあなんか疲れたけど楽しかった」
「鶴橋の高架下や今宮戎のときはなかなか絡まれてて大変そうだったよな」
「そうなのよ、聞いてよあの時さ!」
車の運転席に松本、後部座席に南が乗り込むと、後部座席の右ドアを叩く音がした。
「あたしも乗せな、途中まで送ってくんなよ」
明恵は親指で目的地あたりを指さし車のドアを開ける。
「なんだよ、婆さん。タクシーで福島まで帰ればいいだろ?」
「いんや、今日は墓参りにいくんだよ、つべこべ言わず乗せな」




