72.日常
「あーあ、なんで僕が掃除しないといけないのー」
占いの館でふて腐れながら拭き掃除をする南。手を止めて館内に飾られた明子の写真を眺めながらラジオの音を大きくする。
「・・・えー時代はまさにコンピューターAI、コンピューターがプロ棋士に勝ったというニュース・・・」
ラジオを強く押さえつけた手が、ラジオから聞こえる音を消す。すぐさまラジオから南は離れる。
「南ちゃん?音は小さく、あと、放送は駄目。用意されたCDじゃないと駄目って言ったよねえ?」
南は青ざめながら小さく何度か頷くと持ち場に戻っていく。
「はあ、根性座ったやつなんか小心者なのか掴みどころのないやつだねえ」
―――――
「ええ?!ご、、合格?」
「なんだい、不満なのかい?雇ってやるって言ってんだよ」
後日、占いの館に来た南と松本。会うなり早々、ふてふてしく老婆は腕組みして座り込む。
「合格おめでとう!南!凄いな!」
にやつく松本に南は強い殺意を向ける。・・・同時に本当に嬉しそうにしているようにも見えた。
「なにすんだか知らねえが、収入と経験はあったほうがいいだろ?数か月でも働いてみな」
―――――
「まあ確かに~。手品の練習はしていいし~。お婆さんも結構いいひとみたいだからいいんだけど~。」
「不満そうだね?南ちゃん?」
「ひえ!いえ!お昼ごはん美味しかったです!あのオムライス最高でした」
「明子も天国で喜んでるよ」
「ひえ!いえ!はい!ごめんなさい!」
(松本が連れてきたという色眼鏡なしに見ても、確かにこいつは役に入ったときの凄みはなかなかだけど)
「・・・・あんたぁ、なにかを演じてなきゃ不安なんだろ?」
「えっ」
「どんなことでもいいことと悪いことがある。これは自分がしたことじゃない、自分ではない人がしたことにしよう。芸人ならあの人の真似をして滑ったらあの人が滑って俺じゃないのような、その程度だったらいい向き合い方だけど、」
「あ!掃除掃除!外も掃除しなきゃ!」
足早に去る南を腕組みをしながら見つめる老婆。
「ふんっ、逃げやがったか、掃除終えたらこっちに来な」
掃除を終え、疲れ果てた南はチェリオのライフガードを一気に流し込む。
「いやーやっぱこれ、うん!掃除終わりました!」
「よし、よくやった、だけど残念ながら今日は休業して出かけるよ」
「ええ!じゃあなんで掃除させたんですか・・・!!」
南の前に大きな顔が突如現れる。
「店は閉めている時こそ綺麗にしとくんだよ、行くよ!」
「あ、手ぶらでいいんですか?」




