68.いやがらせ
「とりあえず全部で78枚。大アルカナ、小アルカナ。剣や人、悪魔、有名な吊るされた男とか」
「78枚あるんですね、フィリピンでいうトランプも枚数が多かったですよね」
「何をもってトランプというかで花札も日本でいうトランプだ、まあややこしい話だよ。占い師はタロットカードがトランプより先だ、マジシャンはトランプのほうが・・・ってなっているようだからねえ、こんなこといってて100年経ったら世界共通のトランプが33枚になってるかもしれねえんだから」
タロットカードをテーブルに並べ絵をじっと見つめる南。
「こ、これ全部覚えるとこかですか」
「そうだよ」
「む、む、無理ですー。勘弁してください!」
「ちっならせめて22枚くらいは覚えな、大アルカナだけで占う方法もあるんだ」
(なんで占いを勉強することになってるんだろ)
老婆は南が持つタロットカードをしまうよう促し、自分の持つ22枚のカードを手渡した。
「0愚者・・・Ⅰ魔術師・・・Ⅱ女教皇・・・・」
「ひええ・・・ご勘弁を!」
「あんたうるさいね!男なんだろ!しっかりしな!それを裏向きでシャッフルしたらテーブルに置いて時計回りに混ぜる、混ぜたら三等分にして別の順番で1つの山に戻す」
「ワンオラクル!」
「ワンクルクル?」
「・・・・・1枚その中から選ぶんだよ!上下が変わらないように」
南はタロットカードをテーブルから取り、ヒンズーシャッフルを行う。裏向きのままテーブルに置き、山になったカードを手を押し付けて右回りに広げながら渦上にしていく。
「手品のフラワーシャッフルに似てますね、花の形に見えるからその名前なんでしょうけど、花の形にあまり見えないですよね・・・」
無言のまま顎で次の指示をする老婆に観念し、黙ったままカードをカットして三等分にする。
カットした3山のカードを揃えて1山に戻す。
「この中から一枚選ぶんですよね、うーん」
「早くしな、どうせ何も変わりやしないよ」
テーブルで横向きに広げられたタロットカードの中から1枚人差し指で強く押し出す。
残りのカードを老婆は素早く回収し、テーブルの1枚について語る。
腕組みをして目を閉じ、誇らしげに微笑む姿は何かの勝負に勝った喜びのようにも見えた。
「・・・・横向きにめくるんですよね?」
南は早くこの場を去りたいこともあり、老婆の返答有無関係なくカードをめくる体制に入っていた。
「待ちな、このカードの・・・カード・・・・」
驚いた顔をしたものの、すぐにその顔はしわが寄り今にも怒声を出すサインへと変わる。
「・・・・・・・ふう。はあ・・・・うーん」
深呼吸をして表情を取り繕う老婆。・・・・少し間をおいて南はカードを表向けた。
「おお!これは、ローブを着た魔法使い??ですか!やった!!」
「逆さまなのによく絵が理解できたねぇ。そいつぁ隠者のカードさ」
「・・・忍者みたいなやつですか?」
「・・・・・・帰りな」
満面の笑みの南は椅子から立ち上がると深くお辞儀をして店を出た。タロットカードを片付け、食器を洗い・・・重く椅子に座り込む。
「・・・・よう、やってるか?」
一人の男性がドアを開けカウンター席につく。
「あんたの入れ知恵かい?まあ違うにしろ詰めが甘いね」
出されたコーヒーにはフレッシュが2個、黒い角砂糖が1個。
「わしはなにも言ってないぞ、ただ、うちの店を集会場所や練習場所にしていたから様子は見れたが」




