66.ぼやき
一軒家の軒先を改造した占いスペース。
未だ険悪な雰囲気が漂う二人に挟まれ、南はとても窮屈していた。
「はいよ、あんたはどうする?」
松本の前にカフェラテを置くと老婆は南の注文を聞いた。
「こ、紅茶とかありますか?」
「あらあんた紅茶好きなのかい?ならいいのがあるよ、まっときな」
老婆が裏へ行くのを見計らい、南は松本に尋ねる。
「あのおばあさん誰なの?どこかで見たことある気がしてるんだけど」
「占い師」
「いやそれはわかって・・・・」
優しく紅茶が南の前に届けられる。
「うわ~。凄いいい香り!」
にこりと微笑みながら老婆はその場に腰を掛けた。テーブルには占いに使うであろう水晶、タロットカードが置かれている。テーブルを挟んで対面には南と松本が座っている。
「・・・・あの子は元気なのかい?」
「ぼちぼち」
「ふーん」
少しの沈黙の後、南が壁にかけられた写真を指さす。
「あ!!明子!スピリチュアルの!」
「あたしの娘だよ。ほんと馬鹿な子だよ」
老婆がため息をつき呟く。
「んで、その馬鹿な子の娘と結婚したのが俺」
「・・・・?!えええ?!!」
南は漫画のように床に転げ落ちた。
「なんだいリアクション芸人つれてきてご機嫌取りかい?」
こぼした紅茶を拭きながら南が声を荒げる。
「違いますよ!何も知らずに連れてこられましたし!」
「婆さんと違って上品で綺麗だから口説いちまったんだよなあ、そうしたら成り行きでさ!」
「うんうんわかるわー!ってこの集まりなによ?!」
南のノリツッコミが空しく響く。
「別に。あんたを恨んでるわけでもないわよ。実際あのときのうちの状態は最悪。連れ出してくれて正解だったわ」
手品と超能力、心霊などのスピリチュアルは10年周期でブームが到来するとされている。
手品がテレビで流行り10年、そのあとに来たのが明子が先導したスピリチュアルブームだった。
しかし、この時のブームは10年も持たず、更には色濃く終わりを迎えた。
南を見ながら老婆は重い口を開いた。
「明子はあたしと違って占いよりかは風水に力を入れていたわ。彼女がコーディネートする部屋や服は一大ブーム、市場は彼女に合わせて動いていたわ」
「自分たちが調子がいい時は彼女を褒めたたえた。しかし、そのあときた世界恐慌を前に彼女は批判の対象になっていったわけさ」
「ひどいそんなの、、明子さんは何も悪いことしていないのに」
南がしんみりしていると松本が口を開く。
「市場を動かしていたからな。何も関わりがないわけじゃない。それに実際にきな臭い噂もあったわけよ」
「この婆さんは戦後すぐの厳しい世の中を占い一つで生き抜いた。その周りにはあまりよろしくない取り巻きもいた、マスコミからしたらこんな面白いネタはない。すぐさま明子の母親についてのリークが出た」
「イカサマ占い師と闇の組織」
老婆はタバコを吹かせながら当時を思い出しながら煙草の灰を灰皿に落とした。




