63.誘惑
「松本君!何読んでるの??一昨日とは違う本だけど昨日の本もう読んだの?100ページはあったと思うんだけど!関連書籍??それとも全く別の書物??」
(こ、こいつ。出会ったときはおどおどしていて全然しゃべらなかったくせに、ここ数回出会ってるうちに自己主張が強くなったというか、この性格が本当の姿なのか?)
「うるせーな。本読んでるんだから静かにしろよ、集中できないだろ」
「集中するんなら歩きながら歩道で読んじゃだめだよ?警察に捕まっちゃうよ?店長のところで読もうよ?ね?」
「あああ!!!お前があの店にいつもいるから読めないんだよ!なんでついてくるんだよ!」
松本の本の前に顔を上下させる南。
「江・・・・戸・・・から・・・くり・・・」
「首痛めるぞ」
「江戸からくりってゼンマイ仕掛けの?そういえば愛地球博で復元された万年時計もゼンマイ仕掛けだったっけ」
勢いよく本を閉じた音がしたあと、松本は南の顔をじろりと見る。
「そうなんだよ!あのデザイン、中のオーパーツとされたギミックの解明、1度巻くだけで狂いなく1年稼働するという天体と連動した伝説の時計!ああ!こんなもんを思いつく人間の頭は一体どんな構造をしているのか考えるだけで眠れない」
にやりとにやけた松本は本を強く抱きしめる。
「・・・・借りてる本だから乱暴にしちゃ・・・だめだ・・・聞いてないや」
(それにしても店長がいっていたように、自分が好きなものが好きな人には高圧的に出ないというか。)
「江戸からくりで代表的なからくり人形だが、ゼンマイを巻いてお茶を運ばせる茶運び人形が有名だけど今読んでる本はそのからくり人形を更に発展させようとした試みが書かれていてだな」
「あ、まだ続いてた。なにこれ糸?」
「人の髪の毛等を用いて、人形が動く方向を変えたり、テーブルにあるものを動かしたり。西洋だと操り人形は上から吊るして動かすものが主だが、この本に書かれているのは舞台の横から黒子が引っ張ってゼンマイでは動かせないものを動かして演目をしていたようだ」
「ふーん?でもそんなに太い糸だと見えてたんじゃないの?こんなに沢山の糸、操作も大変そう」
「当時は電気もなかったし遠くからだと肉眼で見えなかったか、操っているものとして演じていたのかもしれないし、なんにせよ誰か再現して演じてくれてたら見に行くのになあ」
「今はもう見れないんだ??」
「演技が大変だったのもあるだろうし、この手の文献は後世の人が伝え聞いたものを記しているから真偽不明なものも多いしなあ、200年以上前になってくると書きたい放題書いているだけの本もあるからなあ。。でもこうやって残っているってことは近いものは存在したし、チャレンジした人間もいたってことだろうぜ」
ふと松本が我に変える。
「もういいだろ、早くおやじのとこにでも帰ってやれよ。ああ見えてさみしがり屋だからな」
少しうつ向いた南は松本の顔を見ずに口を開く。
「相談・・・じゃなくて、協力してほしいことがあるんです」
全てを聞き終えていない松本だが結果を察してか顔を歪めていた。
「手品で歴史に残るような大きなナニカを一緒にしませんか!」




