61.二代目
老人風の男と小林は手を握ったまま数秒沈黙が続いた。
ふと我に返った小林が後ろに素早くのけ反る。握られていた手をズボンにこすり付けながら小林は老人風の男を足元から見始める。
古めかしい見た目をした下駄。黒い長袖の甚平は汚れと痛みでとても衛生的とは言えない。
更に長い髭、結った髪はともにややフケがかった白髪。その割に肌や手は綺麗に見える。
「なんじゃ、じろじろ見て。師匠。気持ち悪いのう」
頭を掻きながら男は不敵に笑う。
「能力を視覚に訴えかけるのはとても大切なこと。淡々とした映画はつまらんからのう、しかしまぁ」
男の手が小林の頬に近づく。
「何も見えないが何かある、これも一つの表現方法じゃな、ヒッヒ」
頬と手には間違いなく距離があった。しかし小林には触感があった。
同時に脳が命令しているのも感じた。後ろに下がれ・・・と。声は次第に大きくなった。
頬からゆっくりと手は小林の目の前に動く。
「なんだ・・・??これ」
「わしが考えた・・・いや、再現した?か、うーむ正しく言うと」
「おい糞野郎」
老人風の男の背中に綺麗な蹴りが一発。
「急にいなくなったと思ったらなにしてんだ?」
何度も頭を下げる女性に合わせて小林も一礼をする。
「ああ!忘れてた、先生たちを追わないと。おっさん・・・・」
女性と男は動きを止めて小林を見る。
「まああれだ。話聞いてくれてありがとうな」
足早に去る小林を見ながら老人は髭を撫でる。
「なかなか面白いやつじゃが・・・・いててて」
「二代目、また一発ほしいですか?マッサンからいなくなったと思ったら何してんだよ。船場センターいくんだろ?」
「そうじゃったそうじゃった、あそこのインド人社長元気にしとるかのう。マックスメイビンが着ていそうなマオカラースーツ、日本にはないのかのう」
ため息をついて女性は口を開く。
「新しい衣装買っても普段はずっとあの白装束着るじゃないですか。もういい、行きますよ天在様」
「敬語に戻ったと思ったのに肩パンするのやめてくれんかのう」




