60.弾丸キャッチ
億一と先生は西大橋に向かい歩く。
「で、さっきは結局何を探してたの?」
「な、なんでもないです!ロシアンルーレットのメンタルマジックで使用するエアーガンなんて探していません!」
「・・・・あんた、絵にかいたような素直な人ね。。私に気を使わなくてもいいわよ」
肩を落としながら億一は謝罪する。
「お父さんの天在さんは、その。残念なことでしたね」
「本物の銃を使った、弾丸キャッチ。撃った弾を口や手、灰皿などで受け止めるという危険術に分類される奇術・・・。演目中に事故が起きて失明、命を落とした者も少なくないわ。チャン・リン・スーがもっとも有名だったかもしれないけれど、私の父がそれを塗り替えてしまったわ」
手で空中の弾を取るようジェスチャーをしてみせたあと、先生は微笑みながら億一を見る。
「まぁ、当時の私は小さすぎて実感がなかったからさ、死ぬってなんなんだろう?みんな悲しそうにしているから悲しい顔を作らなきゃな、なんて思ってたわ。」
「・・・は・・・はぁ」
億一は生返事するしかなかった。
「・・・・弾丸キャッチから天在というキャラクターは変わっていったのかもしれない、命を懸けた奇術なんて望んでいるのは演者だけかもしれないわね」
先生は心臓に手を。静かに置いた。
「・・・確かに。弾丸キャッチが生放送で失敗、胸から血を流した天在さんが起き上がるなんて誰も思いませんでしたからね。。少し、少しだけ過激な演出とは思いました」
「あ!そうだ億一、あそこ見てごらんなさい」
(100時間カレー)
「100時間カレー?!先生、晩御飯はあそこにしましょう!私予約してきますね!」
「・・・・一緒に歩いているのが小林じゃなくてよかったわ」




