56.アードネス
「・・・アードネス、お前を捕まえないといけないなんて」
カビ臭く、昼か夜かもわからぬ部屋の中。男二人が壁越しに揉み合う。
「アードネス、今からでもボスに謝るんだ、お前には殺人容疑がかかっている、とても一人で国外逃亡などできまい」
かび臭い部屋に近づく複数の足音。足音が聞こえなくなったと同時に部屋の扉が蹴破られる。
「アードネス!!おとなしく出頭せよ、すでに証拠や証言が出そろっている」
「・・・・くそ、まさか警察が今日乗り込んでくるとは、、アードネス!おい!!」
先ほどまで顔が強張っていた男が一転、口元に銃口を突き付け微笑む。
「じゃあな」
「アードネス!!」
~魔王城~
「アードネス!!働き者で妻と子を養っていたギャンブラーが敵対するマフィアつぶしの口実にギャンブラーテクニックを種明かしする本を出版するもそのマフィアに裏切られ全ての責任を負わされ自殺に追い込まれるも・・・・」
魔王が早口で独り言を言う。
「あぁ・・・・。魔王様、アードネスは男の中の男、5対1の絶体絶命のピンチにも一人で銃を手に・・・」
ダイルと魔王はアードネスの戦歴を熱く語り合う。
小林が持つスマートホンが光る。
「・・・・ねえ?コバちゃん。黙って聞いていたけど、いくらなんでもアードネスが光る棒を持って巨大化して怪獣と戦ったり、ナイスバディのお姉ちゃんと一緒に泥棒家業するのはどうかと思うわよ」
更に熱く語り合うダイルと魔王。耳を傾けていたレイディが話し出す。
「そんなことだろうと思ったけれど、この話一体どこまでが本当なのよ?」
レイディは手に持った本を指さしながら小林に問い詰める。
「ザ・エキスパートアットザカードテーブル。今までにはなかった数のイラストで丁寧に解説されたギャンブラーのカードテクニックとそのテクニックを用いた奇術の数々。出版された際、著者の名前がS. W. Erdnase、実在しない人物の名前のため、アナグラム解析された。解析された名前の自分物は指名手配犯。遊ぶ金欲しさにギャンブラーの技術を世間に好評したとされる」
小林は口を開けたまま光るスマートホンを見つめる。
「と、億一が全部説明してくれました,、付け加えると、かのダイバーノンが推奨する本としても有名な非常によく作られた本であり、ダイバーノン、マーチンガードナー達によって作られた偶像とも考えられる」
「というと?」
レイディは本を読み進めながら聞く。
「本の図解を担当した者にマーチンガードナーが名前がアナグラムであることを確認、そこからアードネスのアナグラム、M.f.アンドリュースにたどり着くことになるのだけれど・・・そのほかには作者が複数いると推察する人もいたそうだ」
「・・・ちょっとコバちゃん、遠くから歌声が聞こえてくるんだけど」
しかめっつらであろう億一が小林に声をかける、小林はすぐさま後ろを振り返る。
「いやぁ魔界でもアードネスのファンを増やせてよかったよ。色々な解釈があって今もなお研究が続く人物だからな。はっはっは」
「歌が2番に入ったようだけど、いつまで続くのかしら。。ああ、そういえばコバちゃん、本当かわからないけれど、マジックの発明賞、厚川昌男賞 が復活するとかしないとか聞いたわよ」
「厚川・・・アードネス・・・」
小林はあごに手を当てる、少しの沈黙の後・・・億一の声が小林の顔色を変える。
「ああ、そういえば、厚川さんもアードネスもどちらもアナグラムだったわね、有名な小説は――」
「億一、助かったぜ。ひっかかっていた謎が一つ解けそうだ」
急な大声に億一は驚く。
「なっなによ。まあ力になれたならよかったけど」
(ヨギーガンジー、厚川さんこと、泡坂妻夫の小説に登場する探偵・・・。泉から得た情報なのか、しかし、そうなると俺以外にも手品に・・・・)
「予言者ヨギガンジー。超能力者かどうか確かめに行こうか」
レイディは本をテーブルに置くと、小林に近づく。
「あら?こんな魔法や魔族がいる世界で超能力に興味を持つなんて今更じゃない?」
歌うダイルと魔王を止めにいく小林。レイディの声は届いていないようだ。
「レイディちゃん、それはコバちゃんが超能力に関して少し・・・ね」




