53.出会い
「ということで、これが江戸時代の黄身返し卵と呼ばれているものです。八田教授が万法料理秘密箱を研究されて、当時のやり方を解明されました。更に現在は簡易なストッキングの遠心力を用いた方法も考案され、広くメディアでも講義をされております」
「長らく再現ができなかった理由としては、伝承書物が全てノンフィクションではない場合、創作であるもの。人に聞いた話を『あったらしい』程度で書いてあるものや、当時の気候と現代の気候、さらに湿度が異なっていたり、使用するアイテムが入手できない、水でさえ塩素解できない日本語が使用されていたり・・・・例えば単位や物の固さを例えるとき、身近にあるものを使って例えると思いますが、現代の身近にあるものと江戸時代にある身近なものは間違いなく異なって・・・」
大学祭の端にこじんまりと並べられたパイプ椅子が20個ほど。半分も埋まらず空席が目立つ。
少し経つと一人立ち、2人座ったかと思うと3人が立ち上がり去る。
「ねえねえ?君。最初からこの講習聞いてるよね?私億一って言うんだけど、君も手品をするの?」
「あ・・・はい、手品はしたことがないです。なんとなく面白そうな講義かな?と思いまして」
なんだこの馴れ馴れしいやつは、と思いながらも小林は「一応年上だった場合」を考慮して敬語で返事と軽い会釈をした。
<江戸からくりと江戸忍術・万年自鳴鐘の再現について>
「現代の科学者が過去の発明家に挑む」という話は古今東西存在する。科学が進んだ今、過去に作られた発明品で現存して尚且つ、発明者や発明時期がある程度・・・、ある程度確定しているものを現代科学から見て当時としては画期的だの、森羅万象、あらゆるものに精通していないと実現不可能ではないのかとテレビ的に煽ったりする<わくわくはするもの>は存在する。
「聞いてた?リュクホルスの聖杯も万年時計( 万年自鳴鐘)も現代では再現不可能なんだって!」
億一が小林に飛び跳ねながら(座ってます)話を続ける、横を見ながらパイプ椅子が軋む、異様な光景ではある。
「やっぱりね、私、うちゅうじんが関与してると思うの!だってさ、そうしたら全部ああそういうこと!って納得できるじゃない?!」
一億の一方的な声かけに終始頷きを続けようとしていた小林だったが、ここは反射的に声を出してしまう。
「いや、<現代では作ることができる>わけだから、宇宙人がいるっていう証明にはならないと思うけど」
カッチーン
聞こえるわけはないのだが、その場にいた者は聞き取れたであろう。
「なによ!うちゅうじんが関与してなかったとして、貴方はうちゅうじんがこの世に一切存在しないって証明できるの?」
横にいた小林はすぐに立ち上がり応戦する
「はあ?今している話は現代の施工技術を昔の人が可能だったかそういう話じゃない?科学的に考えるならうちゅうじんなんてものはそもそも言葉にさえ出すべきじゃないと思うけどね!!」
カッチーン
「はあ?!うちゅうじんがそもそもいるかいないか完全証明もできない現代科学な分際で、科学的なんてよく言えたものよね!!」
かっちーん
「いないなんて言っていないからいるっていう証明をしてみろ!」
「なら。いるなんていわないから、いないって証明をしてみて!」
二人の押し問答に周りは空気を読み始める。
・・・・・。
静まり返った会場でマイクのスイッチが入った音が聞こえた。
「お前ら〇〇〇〇〇〇〇△△△かボケ!!」
声がするほうに目をやるともう遅く、小林と一億の頭にはトランプが数枚勢いよく弾かれていた。その先には長い黒髪の女性が仁王立ちして更に続ける。
「てめえらボケ!あとで〇〇〇〇!!とりあえず楽屋こいやアァン!!」




