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魔王様は手品師  作者: ゆたか
魔界編
26/191

26.せるふわーきんぐ

「準備をしておけばほぼ自動でできるマジックのことを指すかな?最近はそこに少しテクニックが加わったりしてもセルフワーキングと呼んだりするし、トランプマジック以外にも使うことはあるかな?」


「自動でござるか!それは凄いでござる!!」


「でもコバ様、そんなに簡単で凄いものなのに、あまり乗り気じゃなさそうなのはどうしてなのですか?」


本日の絵日記を書き終えたロッドが近づいてくる。


「うーん?乗り気じゃないわけじゃないんだけど、とても難しいマジックと個人的には思っているわけよ」


魔王は首をかしげる。


「簡単なのに難しいでござるか?」


「簡単にできるからお話をどうつけるか、観客に手伝ってもらうことが多すぎる、準備を間違うと失敗する、失敗したときにやり直しが効かない」


「う・・・うむ。。そういわれると不思議に演じられる自信がなくなってきたでござる」


「変に元と違うように変えようとするとウケが悪くなったりするしな、これはお話を変えるのもやり方を変えるのも一緒、んで最後にあるのが・・・・」


「最後に・・・??」


「えーっと、じゃあ有名なエース四枚出すやつをするから見てな」


小林はトランプを左手に置き、魔王に手を出すよう促す。


「好きなところでトランプを持ち上げて2つに分けてほしい」


半分よりやや少ないくらい、20枚ほどを魔王は持ち上げた。


「じゃあそれを左右左右と一枚ずつ交互に置いていってくれ」


「わかったでござる、さっさっさっと多いでござるな、全部配るでござるか?」


トランプをテーブルに配りだす魔王。


「全部配ると多いだろうから持っているトランプ半分ぐらいになったらやめてもいいぞ?」


「うーん??じゃあ数枚残るでござるがここでやめるでござる」


「残ったのはいらないからさっきのと重ねて避けておくわ、今テーブルには二山のトランプがある」


小林はロッドを呼ぶ。


「2つあるけど好きなほう持ってみて、残ったほうは魔王な」


「ではわたしはこっちで」


「拙者はこちらでござる、また配るでござるか?」


「そうだな、うーんでもその前に。予言をしておくよ。魔王がスペードのエースを見つけ出すと思うわ」


「へ?ほんとでござるか?」


「では配っていきますね、コバ様」


ロッドと魔王はそれぞれ、持っていたトランプを左右左右と配っていく。


「今回は少ないし全部配り切ってしまおうか、よし終わったな」


「終わったでござる!」


「ロッドの左から順番に1番上を見てみろ」


「あっ!ハート、クローバーのエースですわ!」


「拙者のトランプもめくるでござるよ、ダイヤのエースでござる・・・」


「さあ、一番最後のトランプ見てみようか、予言していたよな」


「ぎゃああ!!!スペードのエースが出てきたでござる!!」


「ってな感じのマジック、アピアリングエーセースみたいな言い方するかな?アレンジはしているが大体やることのベースは同じだわ」


残りのトランプを見るとバラバラ、2人はエースを見つけ出した。


「このマジックの種は・・・・って感じなわけだ」


「た・・・単純でござるな」


「だからこそ、指示をして言う通りにしてもらわないといけないところ、自由にしてもらっていいところがはっきりしているな」


「そうでござるな、あそことあそこは実は関係ない選択だったでござるな・・・」


「うまく偽物も入れつつ、いうことを聞いてもらわないといけないことを隠すってことだな」


「あっ!拙者、わかったでござるよ!」


「最初の配っていく作業の時、コバ様は左右に配っていくように指示はされましたが、すべて配るかどうか聞いたのは魔王様(笑)でしたね」


「ちょっと!セリフ取らないでくれますか!」


「ここまで良くとうまく場をコントロールできてるから、このマジックがより不思議になるってことだな」


「もちろん同じようなセリフを言われない場合もあるが、ある程度想定しておいて利用したら種に近づかれる可能性も減るわけよ」


小林は続ける。

最初に指示することが自由にしていいですよとアピールしすぎると、次に観客に指示する行動が「制約されている」と思われるということを聞いてもらえない。


最初から最後まで「誘導などされていない」と感じさせないのがセルフワーキングマジックの大切なことだという。


「配っていくだけだと不思議じゃないんだわ、相手にすべてしてもらうから逆算して勝手に不思議なことが起こるマジックなのね!と観客に思われる表裏一体なのがセルフワーキングなんだよ」


「うむ・・・今までのマジックの中で一番奥が深いかもしれないでござる」


腕組みをして考え込む魔王。


「気づかれないようにしゃべりすぎて面白くなくなってしまう場合もあるし、蓋を開けてみないと成功するかマジシャンもわからないものもあるな(笑)」


「ひょええ、そんなのがあるでござるか・・・」


「まぁ、大事な部分をわかってもらえたと思うから、次のマジックな」


「頭がこんがらがるでござるよ・・・」


「おバカですもんね」


「え?ロッドなんか言ったでござるか??」


「がんばってくださいと言いましたわ」

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