190.108+10
ベッケンはまるで今の会話を見聞きしていたようにビージンと信の会話に割って入る。
「オーダムが面白いのがだな、偶然か天才的なソレか、見つけちまったんだよな」
ビージンはこらえきれずベッケンに話す。
「いや、タイミングよすぎっしょ。天才。あんたの筋書き通りにわたしら話してたってことっすか?」
「まずこの話をするのに重要なのは周期律だな」
ビージンは冷静にベッケンの声を聞く。
「仏教における、誰が加えて減らしたか、現代に受け継がれている煩悩の数は108。これに※十善戒 の10を加えた、118。元素の数は・・・元素周期表、周期律、118。1860年代のメンデレーエフの周期表 から今後も増えたり減ったりするだろうから、一概には言えないが・・・・」
※生きるうえでの10個の善い行い、十善業などとも呼ぶ
ビージンが質問しようとするとすぐ嫌らしくベッケンは間を埋めるよう話す。
「心が燃える!感情が爆発する、冷たくあしらう、まさか本当に元素を組み合わせて化学反応させて感情を生み出していたなんて、うっひゃー!この煩悩とこの煩悩と、十善戒を組み合わせると燃える、爆発する、鎮火するにはこの煩悩とあの十善戒からできた・・・」
ビージンが適当に聞き流しつつ、まとめる。
「よーするにっす。今まで定型文しか返せてなかった人工知能が、人間らしい心を持つようになった核心部分が、煩悩と十善戒で・・・」
ビージンの言葉に続き、信が話す。
「それだけだとよかったのですか、108はおそらく固定されたもの、しかし十善戒のほうはそうではなかった」
感情になる化学反応する元素があり、配列があり、相性があり、それが108の煩悩と十善戒・・・・生きるために大切な10の善行
より複雑な思考や人間に近い感情を生み出すため、組み込まれた仕掛け。
ビージンは頭を抱えてその場にうずくまる。
「はあ・・結局なんだってんすか」
「しっ、ちょうどオーダムが独り言を言ってくれてますよ」
「ちっ・・・確かにこうも人間に怒りを持つギニーたちを沈められるとは、わしが優秀でサイコーという表れじゃろうが・・・そうじゃな・・・これに松本が勧めたというベッケンとの協力も・・・うん、面白いかも・・・しれないな」
ベッケンはにやにやしてオーダムの話に付け加える。
「俺とオーダムは好奇心が満たされたらそれでいい。くっくっく」
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「なあ?南」
「なに?まっちゃん」
「たぶん・・だけど、この世界で十悪が一定数値に達すると雨が降るようだが」
「??十悪?ああ。悪いやつか。そうだね、自責の念で苦しまないよう、忘れられるよう癒やしの雨が降るんだよ」
「その雨の機能に気づき・・・いや、知っていてか・・・人工知能を1箇所に閉じ込めたり、一時的に意識を失わせる武器として使用することは」
「うーん?エリアにあるものだし、攻撃のとはみなされずペナルティはないかもね?」
(カルマに影響はない・・・ものの、声を出す壁や木々。本来使用されるべき雨の量が足りず、消去しそこねた人間アバターの容量を利用して無機物のオブジェクトを上書きで作っていったため誕生してしまったのだろう)
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「争いのない素晴らしい世界の実現のため、定期的に記憶を消せる雨が振り、気体となり濃度を保ち、プログラムたちの発狂を防ぐ、過去・・・発狂騒ぎがあったってことだろうな」
ベッケンは信に尋ねる。
「さあ?ですが、こうやってトラウマの仕組みを聞いていると、意図的に消さない限りは残り続ける記憶。転けて痛い思いをしたものが、床を見て思い出す、思い出しながら食べたものを覚える。食べたものを見る、床を思い出す、忘れたくて出かけた場所で再発して床を思い出し、食べ物も思い出す、連想ゲームは続き、最初の転けては薄れていきますが、なんとなく嫌だったが残る。嫌な思いになるきっかけになるものは永遠に増え続ける・・・」
「お前だとこれでどれぐらい耐えられる?」
「・・・スペック的には、数時間も持たないのでは?」
「で、持たなくなった発狂した者は周りに危害を加えだすから・・・」
「南の出番ってわけですなあ」
ベッケンはうーんと腕組みしつつ、決意を固めたのか信に問う。
「人間と人工知能が同じ世界に住んで争っている、死んだりペナルディを受けたものは再利用され人間かギニーピッグ、オブジェに変えられる、俺は今を『最初』とは思っていないから、これを何度も繰り返していると思ったわけだ。だからさっき人間とギニーピッグが入れ替わってそうだな?と一旦たが」
「更に先を想像した・・と?」
「・・・・人間とプログラムの交配」




