19.人の物は勝手に触らない
――――魔王城から馬車に揺られること20分ほど。あたりが黒い霧で包まれた森の中にそれはあった。
「こんだけ黒くて濃い霧なら異臭がしそうなもんなのに、視界が悪く感じるだけか」
小林は霧を払いのけながらふらつきながら森の中を歩いている。
「そうでござろう?陰湿な雰囲気でござるが、貴重なアイテムが流れ着く場所なので部下たちに清掃させてるでござるよ」
ウィイーーン
小林は足を止めて魔王のほうを見る
「・・・・さっきから気になっていたんだがなんに乗ってるんだ?」
「ここらで拾った、機械というものでござるよ」
どうみてもセグウェイだが、楽しそうだしそっとしておこう。
「魔王様は運動不足でし。少しは運動するでしよ」
野球帽をかぶった小さいモグラ、サッカーボールくらいなので間違えたら蹴ってしまいそうだ。いや決して小林は蹴りたいのではない。
小さい成りをしているが、戦力はなかなかのものらしい。確かにモグラは狂暴ではなさそうに思われがちだが、鋭い爪は固い土を掘り進める。昔の人が龍の巣と勘違いしたように、疲れ知らずに穴を掘っていく体力や素早さは戦闘に向いていそうだ。
「モグ太郎もうすぐだったか、そろそろ疲れていたな」
魔王がセグウェイに乗りながらあくびをしている。それよりそのネーミングはなんなんだ。
「やめてくださいでし魔王様、そんな畏まらずにモグ太でいいでしよ」
「いや畏まるってなんだっけ!」
我慢できなくなった小林が突っ込む。
「コバ殿もモグ太、いやモグ・・・でもなんでもいいでし、仲良くお願いしますでし」
「なんでもいいって言っちゃったよ」
魔王幹部の中でもモグ太は魔王と一番仲がいいようで、本日お留守番のロッドは今回の黒い泉に同行したがっていた。二人の天然の掛け合いが面白くて絵日記が進むそうだ。
「ふふふーコバ殿、大きな声を出してツッコミを入れているのは怖いのを隠すためじゃないか?」
確かに日中のくせに森の木々が増えていたせいか妙に暗くなってきた。黒い霧も相まって、そろそろ足元も心配になってきた。
ガサガサガサ・・・!
「ひぃ!!」
モグ太と魔王が抱き着く。
「な、なんだ!!敵か!拙者の最終奥義をくら・・」
魔王を引っ張り詰め寄る小林。
「魔王さまぁ~?魔力は消費しないよう節約しなければいつ何時大きな戦いがあるかわかりませんからね~?」
魔王はあごに綿を押し付ける。
「や・・やめるでござるよ!その綿!もう勘弁でござる!」
先日また勝手に小林の物を漁っていた魔王様は、湿ったこの綿を発見。良かれと思ってドライヤーで乾かしていたところ発火、爆発。驚いて気を失ったところがロッドの絵日記の1ページに加わったわけだ。
「その綿は発火性が高いから、使用するまでは濡れたまま保管しておくんだよ!」
爆発に気づき小林が部屋に現れたころには、ロッドが絵日記の色塗りを始めていた。




