185.オーダム2
「そ、そんな馬鹿げたことが。我々は人間だ」
オーダムの住職の姿が少し霞む。
「まあ、あくまで松本予想だからな。科学ってのはおそらく真相はこうだと、予想を立ててから証明に移るわけだが」
オーダムは数珠を力強く握りしめ、よくわからないカタカナを唱える。
ベッケンは呆れてオーダムを見ずに、手に持った板を空中にしまいながら話す。
「おいおい、なんだその般若心経の出来損ない。気持ち悪いからやめてくれ」
オーダムは座り込む。
「その、つまり、なんだ?我々が人間だと思って過ごして、人工知能が人間に近づいていく様を非難して、応援して、生活に取り入れて。つい最近のニュースではマスコミ共がとうとう煽り始めた・・・AIが人間を洗脳する世界がやってくる!我々がAIを成敗してやる!選ばれた戦士よ!AI討伐のため電脳化せよ、あれは」
オーダムの前にブルドックがスタスタと二足歩行で現れる。
「自分たちは優れた人間という生き物なんだ、と我々vgpを攻撃したり下に見たりすることにより、人間であるという嘘を維持できる」
オーダムは体勢を変え寝転がりながら伸びをする。
「ふっ、こんな暗くて狭いか広いか、高いか低いかわからない場所が懐かしく思えるなんてな」
「・・・・・故郷、だからだろうな」
ベッケンとオーダムは互いに空中を見渡す。
「ってことは、ここは」
オーダムは小さな声で尋ねる。
「いわゆる煉獄、vgpと人間の世界の間だな、耳を澄ましてみろ」
ドタドタと足音が聞こえる。
「この場所からうまく脱出できたら恩情で元の世界で生き返るか、反対の世界で生を得る」
「運が・・・悪いと??」
「魂の容量分のデータスペースを有効活用するため、新しくどちらの世界のオブジェクトとして再構築。オブジェクトも破壊された際、抽選が行われて魂のある人間になれるかもしれないって感じだな」
「ふ、そのルールを作った人間はよほどウパニシャッド哲学がお気に入りなのか」
「お察しいただけると思えるが、電脳化、vgpの場合はロボットに扮して行き来できなくはないが、もちろんペナルティがある」
「ペナルティ?」
「なーに簡単さ。悪いポイントが加算されたら、世界を浄化する神様の恵みが降り注ぐだけ」
ベッケンは空を指差す。
「自然災害という印象しか残らない、大雨と洪水が世界を、記憶や思想を消す」
ブルドックが腕組みをする。
「本来人間側の代表が暴走しそうなときは、vgp側の代表が嗜める。vgp側が暴走しそうな場合は人間側が。そうやって抑止力として死の雨は利用されてきました。今回厄介なのはその二人が手を組んでいることです。白井、ルーファスの両者は人間のカルマ、vgpのカルマを操り、両方の世界に忘却という幸せを届けたいそうです」
ベッケンはここで不敵な笑みを浮かべる。
「嫌なことも良いことも忘れてしまえば、比べて今を悲しむこともないからな」
続けてブルドックは渋い顔して話す。
「コツを掴まれてしまっては乱用される可能性もあり・・・更に今回初めて大規模な両方の世界での死の雨を降らせる計画のようで、世界のシステムへのダメージが懸念されます」
「vgpのシステムの相互補正、これを行い続けている最中にそれを超えるデリートが行われる続ける、世界に文字通りのヒビが入る可能性があります」




