183.ブルドッグ
「たかゆきが変わったら、その度に前任者は南により抹消されると。その南もまた自己消去を行う、これは独裁者を生まないための処置であり、権力を独占させないための配慮である・・・だったか」
「そしてこのたかゆきにも抗えない消去機能があると・・・」
ベッケンが立ち尽くす足元にブルドッグが現れる。
「よっこいせっと。・・・・うまくいきましたよ。ベッケンさん」
「laboratory conditionsって短編映画を思い出すよ。題材になった魂の重さを測る・・・ってさっきそういうや21グラムとか言ってたな」
「ふっふ。昭恵さんに負けず劣らず、私も演算システムの端くれ。ベッケンさんが言いたいことなど先読みできます」
「昭恵に負けて悔しいがにじみ出てる発言、どうもありがとうございます」
「ぐぬぬ」
ブルドックが悔しそうな顔をしてこっちを見ている。
「にしても、犬に魂を移してしまえばセーフなんてズルくね??」
二足歩行するブルドックを指でつつきながら不満そうにベッケンはボヤく。
「・・・簡単そうに見えますが正直うまくいくかは賭けでした。たかゆき様が残された方法論でして」
ベッケンは空中をつまむように探る。
「死の雨か。・・・・神の怒りに触れたとき群青色の水滴が降り注ぎ、全てを水に還す。わざわざそんな言い伝えだけ記憶させてるなんて正確の悪いこった。とはいえその死の雨も湿気となって大気に存在することで、ギニーたちの忘れられない苦しみを助ける機能になっていると」
「我々のプラスになるものは綺麗な水、汚れた水は瘴気があると」
「19世紀までごく当たり前の考え方だったわけだが・・・いや。それよりも南だ」
ブルドッグは腕組みして座り込む。
「単純に考えてよいかと。南の武器である手袋には神の雨である群青色の輝きがあります。日夜触れているからこそ、誰よりも耐性が高いのでしょう」
「たかゆきよりも・・・ということか」
「そうでしょうね。この瘴気がなければたかゆき様とて生きてはいけませぬよ」
「楽しいことも悲しいことも忘れられるから生きていける、ってことだわな」
ブルドックは空中にメモを取り始める。
「ひとまず、たかゆき様の方法論は正解だったので、これをこの地域あたりに展開してみましょう。山を丸ごと覆ってみます。ベッケン様を祀る神社でも作りましょうか、天照、ここに在り・・・天在様、お、いいですねえ」
一人妄想を始める信を尻目に、ベッケンはふと空中を見る。
『・・・??!なにコイツ、ま、まさかこっちを見ている?・・・わけないよね』
ベッケンは何かに気づき急いでブルドッグを見る。
「どうした?信?」
「もう・・・一人いますね、排水口に」




