178.お墓
「蟻・・・」
ベッケンはふと・・・声に出してしまう。信はその声に反応してベッケンを見る。
「あ、いや。すまない。ふと蟻の話を思い出してな。どんな生物にも魂はあるのかって議論があってだな。脳みそが大きい、大きくてシワが・・・複雑な思考ができる脳みそを持った生き物は霊がある、って感じで」
信はベッケンの言葉を選ぶ仕草に気づき、丁寧に応対する。
「人間にだけ霊がある、それは傲慢だ!・・・といったのかはわかりませんが。犬や猫、ペットが死んだ時にこの子達に霊はあるよね?あるから死んだあとの世界はあるよね?・・・じゃあ他の生物たちにはあるの?虫や他の生き物には?霊がある?ならあの世は魂がいっぱいで大変だね、え?いっぱいじゃない?決まった生き物しかあの世にいかない?知能が関係してる?」
ベッケンはため息をつく。
「はー。解説ありがとうございましたー。そう。ナニカに選ばれた我々だけの特権としてあの世を定義したい人とー、魂は平等だからってあの世を定義したい人はいるわな」
「しかし、実際ですよ?魂というエネルギーが仮にあるとして、生まれ変わってどうのこうのしたとしましょう。昔より人間の人口が増えている今は説明がつきませんよね」
少しの沈黙が流れるが信はベッケンからの返事をしっかりと待つ。
「わざといってるだろ、魂の分散。だから何時代の何人かわからない記憶を持っている人が存在しているし、同じ記憶を持つものもいる・・・なんて話があるな。縄文人1人の魂が7人に分散して」
「同じ人種じゃない人間は乱暴に扱ったりしてもあの世からの制裁はない、ってか神様が人間を監視しているなら滅んでも仕方ないことたーくさんしてますもんね」
「・・・・ご機嫌に語りやがって。。ってか2度3度ほど滅びかけているけどな」
「選ばれた生物から、生き残ったってことですかね?」
「さあね、実際今回も滅びかけてしまうかもしれない窮地に立たされているわけだから、選ばれてはなさそうだけどな」
信はニコニコする。
「待ってくださいよ。我々は死にたくないと言っている人間がいるから、それなら入れ替わってみるか?と言っているだけで支配をしようなどとは」
「みーんな最初はそういうんだよ。まぁ悪意を持って最初からしているやつもいるだろうけど・・・それに」
「それに?」
「その入れ替わろうかうんぬん、気に入らないんだよな」
「なんでです?永遠に生きたい人は機械の中で。機械もメンテナンスが必要ですし、外側からなにかしないといけない、我々が外に出て人間として働けば」
「あー。。すまんすまん。そっちの話じゃなくて」
「???」
信はベッケンが本当に何を考えているのかわからないため、・・・・それに合わせる表情も用意できずにいる。
「入れ替わるかどうかの論争してるとこ悪いけど、すでに『入れ替わった後だった』らどうするんだよ?」
信は生まれて初めて大きな声で驚いた・・・のだろう、思ったように声が出なかった。
「ああああ、あ、あ」
ベッケンはニヤニヤしながら信の様子をうかがう。
「いやいや。タイムマシーンの話であるんだよ。もし過去をやり直せるなら何歳がいいですか?って。記憶や財産が引き継げないとしたら意味ないよね、とか一通り話した後で、『今の自分が実はタイムスリップして未来からきた自分』だったらどうするかって話」
「・・・・それを我々の今に当てはめると」
「一つの考え方としてだ、一つの考え方。んでだ」
ベッケンは砂漠の何箇所かにある金属の棒を指差す。
「話の流れ的にお前に聞くまでもないが・・・この避雷針のようなものは」
「バーチャルギニーピックでいう、墓石、ですね」




