174.案内
「以上が、免疫過剰、病原菌、基礎疾患のシミュレーションを行った実験で」
淡々と語る信はベッケンの顔色を伺う。
ベッケンは信の顔を見るなり、顔の前で手を振り笑う。
「いちいち反応を確かめられても困るぜ。はぁ。そりゃあマウス実験以上のことをしていれば、恩恵を得る神様はさぞ幸せになられるだろうよ」
意外な反応に信のほうが困り果てる。
「意外と冷たいのですね」
「神様の世界に病気が生まれ続けて、苦しみ続けているのも、神様が人体実験されるからかもしれないなあと思ってな」
ベッケンは信の顔色を伺い返す。
「歪んだ思考をお持ちのようだ」
「俺にそんなこと期待していないくせに」
「確かにそれはそうですね」
ベッケンはトランプを取り出したときのように今度は本を手に出現させる。
「何も知らないで過ごしている人に、あなたが今日食べたものは侵略した我々の祖先が武力で原住民から奪ったものです。今日から食べないようにしましょう、あ、その日用品も曰く付きです。今日から使わないように」
信は静かに聞く。
「いいことを言っているし、いいことをしたいのも十分理解できるが。この手の話、内ゲバで事態がさらに悪化することが多い」
ベッケンは本を閉じると次の行き先を指差す。
「ってことで次の案内頼むわ」
「ふふ」
信は笑みを浮かべながらベッケンを次の場所へ案内する。
ベッケンは歩きながらダラダラと愚痴を言う。
「まあ。マウスの神様には感謝されてるんじゃね?これ以上の犠牲を我々から出さないよう身代わりになっていただきってな、あー嫌な奴俺嫌な奴」
信は苦笑いしながらも歩くのをやめず次の場所へ進む。
「あちらでの械霊騒ぎは一段落してるだろ?現金な奴らだよな。機械を使うことを禁止していた項目に、しれっと例外を設けてこの場合の機械の使用は問題ない、と機械を使った便利な暮らしに戻るため逆算するだろうよ」
「たくましいのか、なんというか」
「っはっは、舐めんなよ信。日本人がどれほどの見えないものと戦い和解し暮らしてきたと思ってんだ。むしろ械霊に怯えてるのは・・・お前らだろ」
信は複雑な顔をしてベッケンに話す。
「はは、なんでもお見通し・・・ってことですね。それでは・・・ご案内しましょう」




