173.信の後悔2
「まるで初めて興味本位で飼ったペットを死なせそうになって悲しんでいる。そんな言い方に聞こえるぞ」
ベッケンはどこからともなく取り出したトランプで手遊びしながら信にトランプを引かせる。
「答えはイエス。歴代のたかゆき様は災難に見舞われています」
「たか・・・ゆきねえ。・・・たかゆきとは?」
「孝幸。ブランドです。品種というべきでしょうか?孝行、幸せをもたらす」
ベッケンは何かが解決したように頷く。
「人口孤児の中でもエリート中のエリート。それを御老体どもがブランド人間として手に入れたがっていたとでも?」
「おやおや。ベッケンさん。次は私の質問です。順番抜かしはだめです」
「・・・・」
「このギニーピックの世界を見て回る気はありますか?」
「それはもちろんいえすだ。歴代のたかゆき様の功績を拝ませていただけるわけだろう?」
「それは質問ですか?それであれば、さきほどの質問はキャンセルでよろしいでしょうか?」
「・・・・もう一問一答はやめようか」
「イエス、わかりました」
信はトランプを表向け、ベッケンに返す。表向いたトランプには不気味に微笑むクラウンの絵が描かれていた。
「ふっ。トランプをマジシャンから引いたら裏返しで返すもんだぜ?」
「なるほど、それでは今度からトランプゲームをするとき、ディーラにマジシャンか確認するように・・・」
「そうじゃないんだよなあ」
信はベッケンが持つトランプを興味深く見つめる。
「ああ、これか。手持ち無沙汰だなぁ、と思って触る仕草だけしてたら、いつの間にか出てきててな」
「いくらたかゆき様のアバターとはいえ、いきなり想像から物は作れるとは考えにくいですので・・・」
「・・・・いつかのたかゆきの持ち物・・・てことか」
ベッケンはトランプを片手ファン、ワンハンドシャッフル、ワンハンドカット、アームスプリングを試す。
「いいトランプだ」
「・・・それでは行きましょう。たかゆき様。まずはあちらから」
信が指差す方向にベッケンはゆっくり歩き始める。




