164.転移
「なんだここ」
ベッケンは目が覚めてすぐ大声を出したつもりだった。
「あれ?声が出せない?いや、出せているのか?」
普通なら落ち込んだり、パニックになってもおかしくない状況だが、ベッケンには慣れたものだった。
夢が現実に近く感じる経験が多いベッケンにとって、ああ、いつものリアルな夢ね、と受け入れが早かった。
「それを証拠に、今さっきなにしてたか、もう曖昧になってやがる、それで今何をしたかったのかも曖昧に」
・・・・足音が聞こえる。
「姉ちゃん、やっぱりやめておいたほうがいいでござるよ」
「うっせーな、おばけなんてプラズマ現象にすぎねえんすよ、ば、馬鹿!ひっぱんな」
「プラズマ現象ってことは科学的に証明されてるってことで存在するってことでござるか」
「あーもううっせーっす、しねしね!」
「拙者がしんだら、おばけがもう一匹増えることになるでござるよ」
「マジうっさい」
「マジ?そのマジ、マジ?」
「・・・・はいもうキレました、あんた独りでクリアしな」
「う、嘘でござる、姉ちゃん待って」
・・・・足跡が遠のく。
「駄目だった、声はやはり出せていない、あいつら・・・・リカちゃんにゲン、笑顔の家の。白井の、籠目、あれ、今、なにを」
ベッケンがゆっくりしか喋れなくなる中、声が一つ加わる。
「危ない危ない。こんなことになっている、というかわざとか?」
「ベッケンさん、とりあえず連れていきますね」
少し時間が経つ。
「あー。ベッケンさん。お久しぶりです。とりあえず応急処置はしました。喋ったり動いたり、できるはずです」
自信なさげに男がベッケンに話す。
「そんな、不安、そうに、いうなよ」
「不安ですからな。うまくいく不安よりもこれから起こる不安に対して・・・ですが」
「は、はは。そういうと、きはま、ず今の不安から解決するのがおすす、めだぜ」
「そうですな、ベッケンさん。ヒデ、とりあえず、メーンの・・・そうじゃな」
「アメージング。。ベッケンさぁん。もう少しの辛抱よぉん」
ベッケンは少し話すだけで1日の体力を使い切った気分だった。




