163.籠目
「カントリーは国という意味です。ですが、日本で全国は全都道府県を指し、全世界という言葉が別に存在します。色々な解釈ができるでしょうが、私はそれだけ言葉の違いや文化の違い、移動手段が限られていて、隣の件にいくだけであっても別の世界だった、そんな日本が昔あったのだと思っています」
博士はルーファスを撫でながら続ける。
「そんな中、芸人は比較的容易く国の移動を許可されて各国を旅して過ごした。旅する間に人が増えたり減ったり、どこから旅をしてきたか土産話を聞かれたり、土産話をもらったり」
小さな白井は数日分の新聞に目を通しながら、適当なところで頷いてみせる。
「政府の密偵が芸者になり、夜は忍術や暗殺術で国を陰から支えていたと」
新聞のいくつかに丸を付け、小さな白井はほくそ笑む。
「おやおや、次期大統領に立候補される貴方様ともあろう方が、そんな都市伝説を信じておられるのですか?」
小さな白井はゆっくりと息を吐きながら続ける。
「作詞作曲不明の童歌が『悪い』広め屋の仕事内容の実体を歌ったものだとうちの父は話していたよ、籠目紋を体のどこかにつけているものが近づいてきたら気をつけろとね」
「・・・・ほう?どのように気をつけろと?」
「願いを叶えてくれる代わりに魂を地獄へ連れて行くそうだ」
博士は笑ながら高層ビルの外を掌で示す。
「地獄ですか、間もなく略奪や犯罪行為が日常と化す、この現実と、果たしてどちらの方が過ごしやすいか、興味深いですな」
小さな白井はゆっくりと立ち上がると震えながらも窓に手をやる。不規則に光る赤い炎を前に諦めて、笑うことにしたようだった。
白いマオカラースーツの首元に光るピンバッジ。バッジの六芒星は怪しくも強い光を放っていた。




