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魔王様は手品師  作者: ゆたか
比企田天在編
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158/191

158.械霊

撮影を終えたベッケンはインタビュアーとともにテーブル席に座る。


男性のインタビュアーと女性のインタビュアーが書類を忙しく整理し、観客席へ声をかける。


「えー。先ほどの収録もお見事でした。観客席のお客様にはこの場に残ってもらい、このインタビューもご覧いただくことになっております。えー。ルーファスくんたちが戻るまで今しばらくお待ちください」


ざわざわと観客たちが話す声がベッケンの耳に入る。


「さっきのトランプの色が変わるマジック、皆何に驚いてたの?」


「馬鹿、お前。あれはトランプ以外のテーブルだろ?ベッケンさんの服、仮面、えーっとあとは」


「女の人の服も、あと背景じゃなかったか?」


「マジか、放送日に見直すか」


ベッケンは観客のほうを見ながら、表情には出さないが内心安堵していた。


(いやぁ、実際ルーファスたち以外に種明かししつつ、その人たちには別の不思議を見せる、とは言え生半可な不思議じゃ駄目だったし、とは言え複雑すぎてもルーファスたちが見ているモノの邪魔になる。ここは長い間俺のファンを続けてくれている観客に賭けてみたんだが・・・上手くいったようでよかった、音楽やドラマ、映画とは違い何度も見てもらえる、見直してもらえるマジックができたのなら監督も喜ぶだろうな)


「あ、えー。ルーファスくんたちが席についたようなので、あー。えーっと公開取材を進めさせていただきます。わたくし竹田といいます、隣にいるのは柳本です」


女性インタビュアーが開口一番、拍手とともに質問を投げかける。


「ごほん、それでは現役最後の収録となりました、今作についてですが・・・・」


いくつか今回の撮影についての話題が進む。


「・・・・なるほど、それではハリーフーディニー、ジェームズランディ、お二人の影響を受けて収録されていた超能力者との対決ですが、今後もそちらの活動は続けていくつもりと」


「需要があればですけどね、正直、あまり視聴率はよくなかったと聞きます。マジックを演じている今回のような番組のほうが視聴率が良かったようですから」


(初めてのテレビで場慣れしてなかったのもあるだろうけど、目的は別にあったからなあ)


「あの超能力者のバトルでご一緒された大学教授とのコンビ、また復活してほしいものですね」


(そう、その大学教授と会うことが目的だったわけで)


「教授は超能力者に否定的立場で科学者として超能力への・・・・」


女性インタビューアーに割り込み、男性インタビュアーが話す。


「しかし、番組が終了する後半あたりには、教授がベッケンさんを超能力者のように称えていましたね」


(そう、教授のお墨付き、種が分からないとか凄い、これを手に入れたかったわけで。フーディニーとマッケンジー所長のような関係性。科学で証明できないものは信じないが教授の口癖だった、裏を返せば、科学で証明できた超能力は超能力と認定してくれる、一度認めてしまうとグレードを落としても認め続けてくれる、怖いものだ)


「最近教授も見かけなくなりましたね、超能力ブームが途中からAIの占いブームに取られたのも大きいかもしれませんが」


(明恵、そういえばこのタイミングだったか)


「まぁ、占い師や超能力者よりもデータを科学的に駆使したAIの占いのほうが流行って当然かもしれませんが」


(科学的根拠のない占いに、科学的なAI・・・ねえ)


ベッケンは博士とルーファスのほうに目をやる。


(結局、色々調べた結果・・・笑顔の家と明恵、白井は無関係そうだったが、明恵の話だとルーファスは弟?みたいなもんだったか)


白井博士はベッケンと目が合うと、ゆっくり手を挙げた。


ベッケンが眉にしわを寄せている最中に白井は語りだす。


「いやぁ、ベッケンさん。さすがでした。これで天国にいるルーファスの親も喜んでくれるはずです」


「てっ天国?」


男性インタビュアーが大きな声で聞き返す。


「天国ですよ天国。ルーファスくんの父はもう亡くなっているのですが、彼もベッケンさんの大ファンでして、死に際にルーファスくんが有名になったら共演できたらいいなと言い残し亡くなっていったのですよ。なぁルーファス」


「うん、パ・・・博士。天国のお父さんも喜んでると思います」


ルーファスを持ち、博士はその場から立ち去ろうと立ち上がる。


「インタビュー途中ですいません、私たち次にいかないといけない予定がございまして」


男性インタビュアーと女性インタビュアーが同時に立ち上がり、博士を止める。


「いえ、あー。すいません。忙しいところを。個人的な興味でですね、もう少しだけお話を伺えたらと」


「・・・なんの・・・ですか?」


白井は冷めた返事で女性インタビュアーと男性インタビュアーを見る。


「天国です天国」


「付喪神を信仰してきた日本ならではですね、本にも・・・このペンにも、人形にも大切にしてきたものには神様が宿るという考え方。専門の供養する施設もあると聞きます」


「食べていい動物、食べてはいけない動物、代わりに食べられる食物。知能が高いから、心がある。だから傷つけてはいけない。知能とはなんでしょう?情報処理能力が高い?ボタンを入力すれば答えを出してくれる電卓は知能が、心が、魂はある?」


「あー。えーっと。話が見えてきませんが・・・・」


男性インタビュアーは引き留めたことを公開してベッケンのほうに戻り始める。


「あぁ、いえ、知能がある人間に魂があるなら、機械にも心が、魂があってもおかしくない、なんていう人がいましてな。わたしも馬鹿馬鹿しい話だなと思ったのですが、夜な夜な聞こえる電気の・・・そうジリジリという電気音が、いえ、わたしも聞いた話なのでよくわかりません。みんな言ってませんか?私が知らなくてみんな気づいていて信じているものとばかり、霊会との通信にエジソンが・・・」


インタビュー席のベッケンの傍に監督がふらりと現れ小声で話しかける。


「ベッケン、こりゃあヤバイぞ。観客はアイツの言葉に夢中になりつつある」


ベッケンは呆然としつつ、饒舌に話す白井を軽蔑して見る。


「・・・・やられた。最初から俺の最後のショーをダシに使う気だったのか、あの野郎」


一通り喋り終えた後、白井は嬉しそうにルーファスを指差す。


「そう、機械の霊、械霊かいれいは存在するのではないか」

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