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魔王様は手品師  作者: ゆたか
比企田天在編
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157/191

157.心理的盲点

個室に女性アナウンサーとテーブルに座るベッケン。


白い仮面をつけた黒いローブの男と赤いオシャレなドレスと着た女性。番組を見慣れない人には違和感のある非常にシュールな画である。


「こちらは少し変わった志向のファジートリックです。今回ゲストにいらしている、AI。ルーファスくんと博士にだけ楽しんでもらうトリックです。視聴者、他の観客の方には別の楽しみ方をしてもらいます。決してルーファスくんたちの楽しみの邪魔はしないよう、ご覧ください」


会場は少しのざわつき後、すぐに興味は別のものへ移る。ベッケンとルーファスたちそれぞれの個室の映像だ。


ベッケンの前にカメラマンが1人。1台のカメラを持っていてベッケンを撮影する。2人目のカメラマンは1人目のカメラマン、そしてベッケンたちが写るよう遠い位置から撮影している。


3人目はルーファスたちと同じベッケンとは違う部屋におり、1人目の撮影動画を見ているルーファスたちを背中から撮影している。ルーファスたちの背中越しに1人目の映像が見える。


観客たちは2つのモニターを使い、1つは3人目の映像。ベッケンの演技を見るルーファスたちを見つつ、ベッケンの演技を見ることができる。2つ目のモニターで2人目のカメラマンの映像を見て、ルーファスたちが見られない画面外のベッケンたちを見ることができる。


「つ、つまり、ルーファスさんたちには不思議に見えつつ、私たちには種がわかるよう、見比べながら楽しんでもらおうということですね」


見習いはスモークを片付けながら観客席の後方から見守る。


「AIとの対決が決まったとき、ベッケンさんがリチャードワイズ氏の演技が適任かもな・・・って言ってたんだよ。Colour Changing Card Trickってタイトルでyoutubeにもあるらしいけど、それとマコミ?なんだっけマコミカルデック?の演出を組み合わせようって話だな」


先輩は片づけを終え、見習いの手助けを始める。


「マコミカルデックって手伝っている人とそれ以外の観客が違う不思議を感じるってマジックでしたっけ」


「そう、さて・・・どう料理してくれるか楽しみだな」


ベッケンの部屋。


「そちらの、遠くから撮影しているカメラマンには重要なポイントのときだけ、映像をオンにします。少し見にくいですが、皆さんも最初はルーファスくんたちと同じ画面をルーファスくんの背中越しに見てください」


2人目のカメラがオフにされ、2つのモニターのうち1つだけが映し出される。


画面にはルーファスと博士の背中、その前のモニターにはベッケンと女性アナウンサーが座っている映像が映し出される。


ベッケンは青いトランプを手にファンにして持つ。テーブルにトランプを裏向けて広げてながら


「どれでもいいので一枚選んでください」


とアナウンサーに声をかける。


アナウンサーの前にトランプが裏向きでスプレッドされている。


「わかるように選ばれたトランプを1枚カメラ側に突き出してください」


カメラがアップになり、黒いテーブルに広げられたトランプをアナウンサーが1枚、迷いながら選ぶ。


選ばれたトランプを1枚裏向きのままテーブルに残し、残りのトランプはベッケンが回収する。


黒い仮面のベッケンがアップになったかと思うとすぐ、表向きにトランプをファンにする。


「ああ、そういえば忘れていました、このトランプは全てバラバラです、選ばれたトランプを見てもらいましょう」


カメラが移りアナウンサー側を映す。アナウンサーはテーブルの1枚裏向きのトランプを取り上げる。


「ダイヤの3です、みなさんも覚えてください」


アナウンサーがそういい、緑のドレスの袖を手で押さえつつ、トランプを手を伸ばしてカメラに示す・・・と同時に、消えていたモニターがつく。


観客はルーファス側のカメラも気になりつつ、点灯したもうひとつのモニターを見る。


アナウンサーの声は続く。


「特に裏から見て分かるトランプというわけではなさそう、ってベッケンさんがそんなトランプを使うわけな・・・」


新しく点灯したモニターにはベッケンが人差し指を唇近くに当てて、観客に内緒だよとゼスチャーを行う。なんとアナウンサーがトランプを調べている間に脇にいたアシスタントにトランプを手渡し、トランプを丸々取り替えてしまった。


すぐさまモニターは消え、ルーファスたちのモニターのみになる。アナウンサーは伸ばしていた腕を曲げ、テーブルにダイヤの3を裏向きに置く。


ベッケンは手に持つトランプを表向きにファンする。テーブルのダイヤの3を取り表を観客側に向けて手に持ったファンに押し込む。


揃えたトランプを表向きにベージュのテーブルに広げる。


「選んだトランプがわかるよう、おまじないをかけます。色を変えるのです」


ベッケンが指を鳴らす。ルーファスたち以外の観客はこらえきれず微笑する。


「え??なになに笑うとこですか?博士?」


ルーファスたちにも観客の声が聞こえるのか、微笑に反応する。


ベッケンはテーブルに広げられたダイヤの3の裏を見せ、青いトランプ。残りのトランプを裏向けて赤い色に変わっていることを見せてお辞儀をする。


「すごい!色が変わりましたよ博士!なんじゃこりゃ!!」


ルーファスが驚くのに遅れ、微笑していた観客が驚きの声を上げる。


「あ、あれ?なんか他の人たち、な、なにを驚いてるんだろう?」


・・・・・終始無言だった博士はルーファスのモニターを強く握りしめていた。

参考資料

リチャードワイズマン カラーチェンジングカードトリック

https://youtu.be/v3iPrBrGSJM

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